第80話〜緋乃姉妹の来訪
【休日】
「………。」
…起きたばかりでまだ頭が正常に働いていない為、俺は今の状況を理解できなかった。
いつも見る部屋、そこには……
「あ、おはようございます。」
「オハヨー♪朝ご飯できてるよ〜♪」
…なぜか緋乃姉妹がいた…
何で緋乃姉妹がここに…?
…夢?
夢だよな?
だって、昨晩は誰も泊まってないし、カギだってちゃんとかけた。
つまり、本来ならコイツらがここにいることなどあり得ないことだ。
そう!
これは夢なんだ!
目を瞑って再び開ければいつもの光景に戻っているはず!
…ってわけでオヤスミ〜♪
『開ける気ないじゃん!?』ってツッコミは無しでヨロシク♪
「…あれ?また寝ちゃいましたね?」
「え!?また寝るの!?」
声が聞こえるけど、きっと気のせいだ。
ほら、だんだん聞こえ…な……く………Zzz
「ヒカリ?電気ショックと打撃、どっちを与えれば起きると思う?」
「そうですね…両方だと確実に起きると思いますよ。」
「わかった。」
「わかるな!!起こすなら普通に起こせ!!」
「「あ、起きた。」」
…残念なことに夢じゃないみたいだな……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…で、何でお前らが俺の家にいる?」
「今日はヒマでしたので、ちょっと見学に来ました。」
俺の家は観光地か?
てか、俺は理由じゃなくて手段を聞いてるんだけど?
ピッキングか?
警察呼ぶ?
「男性の一人暮らしって部屋が散らかってるイメージがありましたので、ついでにお掃除もしてあげようと思ったんですが…想像以上にキレイな部屋ですね?」
「まぁな…」
…どこかのバカが時々夕飯を食べに来るようになってからは、部屋は毎日掃除しているからな。
散らかってるはずがない。
「ところで…一応朝食を作っておいたんですが、勝手に台所や食材を使ってもよかったんでしょうか…?」
「ああ、それは気にしなくてもいいよ。わざわざ作ってくれてありがとう。」
「い、いえ!せっかくの休みの日なのに勝手に来てしまったんですから、このくらいはさせてもらわないと!」
朝起きて、誰かが朝食を作ってくれてるなんて初めてだ…
やっぱりヒカリはいいヤツだなぁ…
…それに比べて……
「ねぇキョーヤ〜、遊ぼうよ〜♪」
「…ヒカリ、コイツを何とかしてくれ。」
さっきからまとわりついてきて、邪魔なんだけど…
「もう、カゲリちゃん!そんなにくっついたら恭也さんに迷惑じゃないですか!ほら、早く離れなさい!」
「イ〜ヤ〜だ〜!!」
ヒカリが必死に引っ張っても、カゲリは俺の体から離れない。
…ゲームとかにある呪われたアイテムってこんな感じなのかな?
「…わかったよ。朝食を食べたら遊ぶから。とりあえず離れてくれないか?」
「ホント!?じゃあ、早く食べようよ♪」
「全く…それでは運ぶの手伝ってくださいね。あ、恭也さんは座っていていいですよ。」
「悪いな。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「さぁ、朝食も食べたんだから遊ぼうよ♪」
お前の頭の中には『遊ぶ』の二文字しかないのか!?
「カゲリちゃん、今日は休みなんですから。恭也さんを休ませてあげましょうよ。」
「え〜!?そんなのつまんな〜い!」
…ヒカリ、次からはお前1人で来てくれ。
「いつも部活中に恭也さんと遊んでるじゃないですか。1日くらいガマンしてください。」
「うぅ〜…。仕方ないな〜…。じゃあ、キョーヤと遊ぶのは諦める。」
お?
今日はやけに諦めが早いな…
「…その代わりに、キョーヤ『で』遊ぶ♪」
『で』!?
あれ!?
さっきよりヒドい扱いじゃね!?
「カゲリちゃん!それは面白そうですけど、そんな事したらダメですよ!」
「ヒカリ!?面白そうって何!?」
「あ…!い、いえ…その…!」
「スキありぃ!!とうっ!」
《ドガッ!!》
「ぐはぁっ!!?」
だからタックルはやめろって!!
しかも会話中にいきなりかよ!?
「よし!キョーヤが倒れた今のうちに…!」
「…カゲリ、前に同じ事をやってどうなったか覚えてないのか?」
今度は許さねぇ…!
コイツは少しお仕置きをしないとわかんないみたいだ…!
「…!?ヒ、ヒカリ!キョーヤを押さえつけるの手伝って!」
「バカが!ヒカリがそんな事をするわけ…!」
「え、えっと…!こ、これでいいですか?」
「えぇぇぇぇ!!?」
何でヒカリが!?
まさかさっきのセリフは本音だったのか!?
仰向けに倒れた俺の腹の上にカゲリが乗り、さらにヒカリが俺の両肩を床に押さえつけている…
これはさすがに逃げれないかな……
…かなりピンチ?
「ヒカリ!今日は1日休ませてくれるんじゃなかったのかよ!?」
「ほ、ほら!マッサージですよ!マッサージ!…ですよね?」
「そうだよ♪四の字固めとかでね♪」
「それはマッサージじゃねぇ!!」
…マズい!
コイツならマジでやりそうだ!
その前に脱出しないと…!
でも、どうやって…!?
…………。
…よし!
この作戦で行こう…!
「…ヒカリ。」
「…?何ですか?」
「…俺はお前の事が好きだ。」
「「え…!!?」」
動揺作戦!
どうだ…?
「そ、そんな…!わ、私には心に決めた人が…!」
よし!
ヒカリの力が緩んだ!
作戦は成功したみたいだな!
「とりゃあ!!」
「きゃあ!!?」
「…!?カ、カゲリちゃん!」
俺が起き上がった事により、カゲリはそのまま転んでしまった。
その間に俺は起き上がる。
「ハーッハッハッ!騙されたな?」
「「…え?」」
あんなウソで騙せるなんて…
俺って役者の才能あるんじゃね?
《…ガシッ!》
「…ん?」
「…恭也さん?今何て言いました?」
ヒ、ヒカリ…さん…?
そ、その殺気は何ですか…?
「私の聞き間違いでなければ、あれはウソで言ったという意味に聞こえたんですが…?」
「あ、あの…?もしかして本気で信じた…?」
「やっぱりですか…」
痛い痛い痛い!!!?
力入れすぎ!!
肩が砕ける!!
ってか、ヒカリってこんなに力あった!?
「カ、カゲリ!!助け…!」
「…キョーヤ?冗談でもあんな事言わない方がいいよ…?私、ちょっとショックを受けちゃったんだから…」
あの…?
いつもと雰囲気違わない…?
まさか…カゲリも怒ってる…?
「キョーヤのバカ!!バカバカバカーッ!!」
「カ、カゲリ…」
「女の子の純粋な気持ちを踏みにじるなんて…これはお仕置きが必要ですよね?」
「謝っても絶っ対に許さないんだから!!」
あれ!?
さっきより状況悪化してない!?
「ち、ちょっと待った!?落ち着いて話し合おうじゃないか!?」
「「問答無用!!」」
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【一時間後…】
「…そろそろ許してあげますか。」
…生きてる?
生きてるよね?
体は指一本動かせない状態だけど、意識はあるよね?
よかった…
生きてるってこんなに幸せな事だったんだ…
「え〜?もうやめるの〜?」
…え?
殺す気?
「これ以上やったら死んでしまいますよ?」
「え!?これってそこまでヤバい状況!?」
見てわからない?
瀕死だよ?
「キョーヤ!死なないで!」
《ギュッ!!》
《バキバキバキ…!》
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
力いれすぎだって!
骨が砕ける!!
「…カゲリちゃん?本当に殺す気ですか?」
「え?でも元気になったよ?」
「私には苦しんで叫んでるようにしか見えないんですけど…」
そう思うなら助けろ!
いや、助けて下さい!!
「でもさ、寂しいと死んじゃうって言うよね?だから抱きしめてあげてるんだけど…」
「それはウサギの話じゃないですか?」
「そうなの?なんでウサギは寂しいと死んじゃうの?」
「それはですね…」
…………。
…お前ら……!
「…いい加減にしろぉ!!」
「「ひぃっ!?」」
さっきまでは俺が悪かったから何の抵抗もしなかったが、ここまで来たらもうガマンなんかできねぇよ!!
「お前ら!マジで俺を殺す気か!?」
「げ、元気じゃないですか…?」
「元気に見えるか!?このボロボロの体が!?さっきまでは本当に瀕死だったんだぞ!?」
「そうか!私が抱きしめたから、愛の力で元気になったんでしょ?」
「そ、そうなんですか!?」
「そんなわけねぇだろ!!」
どっちかと言うと、ロウソクの最後の輝きって感じだ!
「ま、まぁ…確かに私たちもやりすぎましたね。」
「キョーヤ、ゴメンね…?」
うっ…!
謝られたら怒れないだろ…!
卑怯な…!
「お詫びとして、今日は私たちが家事をしてあげますよ。」
…え?
「炊事、洗濯、掃除…全部私たちに任せて♪」
そ、それは確かにありがたいけど…
「そこまでしなくてもいいって!気持ちだけで十分だから!」
「いいんですよ。もともと、私はそのつもりで来たんですから。」
「キョーヤは休んでていいよ♪その体じゃ動けないと思うけど♪」
動けなくしたのは誰だと思ってる?
「…じゃ、お言葉に甘えさせてもらうかな。」
「はい。何かあったら遠慮なく言ってくださいね。」
「何だか私たちメイドみたいだね♪メイド服でも着る?」
いや、それはいらん。
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…………。
…俺がベッドの上で寝ている間、ヒカリとカゲリは本当に家事をやっていてくれた。
てっきりカゲリが足を引っ張るかと思ったが、そんな事はなく、意外な事に料理に関してはカゲリの方が秀でていた。
最初は、『やっぱり俺は休日でもヒドい目に…』と思っていたけど、今日はいい事もあったようだ。
…………。
…毎回こんな感じで、いい感じに終わってくれればいいんだけどなぁ…
「…ねぇ、キョーヤってエッチな本とか持ってないの?」
空気読め!!
感想・評価・意見・要望・質問・助言など、お待ちしています!!