第79話〜お弁当
【4限目終了】
「…あれ?」
午前中の授業が全て終わり、さっきからグーグー鳴ってるお腹に食料を与える時間…
つまり弁当を食う時間なんだが……
「…ん?恭也?どうしたのよ?」
「弁当が……」
「あ、やっぱり言わなくていいわよ。だいたいわかったから。」
見捨てる気!?
少しくらい同情してくれよ!
「確かにカバンに入れてきたはずなんだよ!せっかく作ったのに…まさか忘れるなんて…」
「そんなにショックなの?」
「当たり前だろ!」
「そう…。それなら言っておくわ。『ごちそうさま』。」
…………。
…は?
「あと、コレ返すわね。」
悠希が机の上に置いたのは、空になった弁当箱……
…あれ?
思いっきり見覚えあるんだけど?
何で空っぽになってるのかな?
「…悠希?どういう事だ?」
「3限目が終わった頃にお腹が空いたからもらったのよ。」
「何で当たり前のように言ってんの!?一番最初に言うべきセリフがあるだろ!?」
「だから『ごちそうさま』って…」
「違ぇ!」
「じゃ…『おいしかったわよ』?それとも『おかわり』?」
「わざとか!?謝れって言ってんだよ!」
「…誰に向かってそんな事言ってんのよ?」
「す、すいませんでした!!」
…え?
何で俺が謝ってるの?
「と、とりあえず!お前、自分の弁当は?」
「これから食べるに決まってるじゃない。」
何でそれを食わないで俺の弁当を盗んだ!?
「それを俺によこせよ!」
「バカな事言わないでよ。お母さんが私の為に作ってくれた弁当を何でアンタなんかにあげなきゃいけないのよ?」
俺が俺の為に作った弁当はどこに行った!?
「俺の昼飯はどうするんだよ!?」
「購買にでも行ったら?」
うわぁ…
完全に他人ごとだよ…
「昼飯買う金なんて無いんだけど?」
「…仕方ないわね。少し待ってなさい。」
待ってなさいって…何をする気なんだ?
まさかカツアゲ…?
…そんなわけないか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…………。
「キョーヤ〜♪ユーキから話を聞いたよ♪」
「お弁当を忘れたそうですね?」
「キミも意外とドジだね。」
「……かわいそうだから、私たちのお弁当を分けてあげる…」
「感謝しろよ?俺が男子に分けるなんてめったにないんだから。」
別に忘れたわけじゃないんだけど…
コイツら、いいヤツだな…
「感謝しなさい。わざわざ呼んできてあげたんだから。」
「…いや、原因はお前なんだから感謝する必要は無いんじゃ…?」
「それじゃ、みんなのお弁当を見ましょ?」
聞いてねぇ…
「私たちのお弁当はお母さんが作ってくれたものなんですが…」
「とってもおいしいんだよ♪」
緋乃姉妹の弁当は2人とも中身が似ていて、玉子焼きやウインナーなど、弁当に定番のものが入っていた。
違うのは、カゲリの弁当にはハンバーグが入っているが、ヒカリの弁当には代わりにポテトサラダが入ってるってとこだけだ。
…性格の違いが弁当にも表れてるのか?
「…そういえば、お前らの弁当を見るのは初めてだよな?」
「そうですね。いつもはクラスの友達と食べているので。」
「誘ってくれればいつでも来るんだけどね♪」
同じクラスの人と食べてるなら、あまり呼ぶわけにはいかないだろ。
「じゃあ、このハンバーグを半分あげるね♪」
「私は…玉子焼きでいいですか?」
「ありがとう。…まさか弁当を分けてもらえる事がこんなに嬉しいことなんて…」
「大切な事を学べたわね。私に感謝しなさいよ。」
「お前には感謝したくない。」
・ハンバーグ(半分)
・玉子焼き
…を手に入れた。
「……恭也君はどれ食べたい…?」
「…いや、澪からもらうのは…」
「……私の弁当じゃイヤ…?」
イヤじゃないけど…
…量が……
どのおかずも一個ずつしかないし……
「澪、いつも思うんだけど、アンタこの量で足りるの?」
「……足りる…」
「へぇ…。私だったらダイエット中じゃないとこんな量にはしないわよ。」
人の弁当まで食ったお前と一緒にするな!
「わぁ!タコさんウインナーだ♪」
「かわいいですね。」
「もしかしてこれってキミの手作り?」
「……うん…」
そういえば澪も手作りなんだっけ…
…余計にもらったらいけないような気がしてきた。
「えっと…澪のオススメは?」
「……このウインナー…」
「え!?これいいの!?すごく上手くできてるのに…」
「……だからこそ恭也君に食べてもらいたくて…」
「澪…」
「……よかったらアーンしてあげるけど…?」
「あ!私もキョーヤとやってみたーい♪」
「いや、それはいいよ。」
「そうね。そんな事したら昼はずっと保健室で寝なくちゃいけなくなるわね。」
…今、怖いセリフが聞こえたような…?
とりあえず…
・タコさんウインナー
…を手に入れた。
「次は俺が分けてやるよ。」
「いや、お前はいいよ。」
「何で!?お前は男子からはもらわないのか!?」
イヤな言い方をするんじゃねぇ!
お前と一緒にするな!
「だってお前…それって購買のパンだろ?」
「おう!しかも、定番とも言えるヤキソバパンだ!」
…やっぱりお前バカだろ?
それから何を分け与えてくれるって言うんだ?
「キョーヤ、よかったね♪このパン全部くれるんだって♪」
「そうなのか?それはありがたいな。」
「違うよ!?そんな事したら俺の昼飯が無くなっちゃう!」
「じゃキミは何をあげるのさ?」
「このパンのかけらを……」
そんなものいらねぇ!
おかずになるわけがねぇだろ!
「大地さん…それは余りにも……」
「だ、だって俺が分けてあげれるものって…」
「……そのパンに挟まってるのは…?」
「…あ!そ、そうだ!このヤキソバを…」
「もちろん全部あげるわよね?」
「…え?」
ちょっと待て!?
それはいくら何でもヒドすぎないか!?
「…恭也……」
「いや!いいって!その気持ちで十分だから!泣きながら渡されたら食えないから!」
「…すまん。だけどいつか……」
「次はボクがあげるね。」
「まだ喋ってるんだけど!?」
いつかって言っても、お前からもらうことは多分無いから。
お前に借りは作りたくないし。
まぁ、とりあえず…
・大地の気持ち
…を手に入れた。
・大地への優しさ
…をほんの少し身につけた。
…あれ?
これってマイナス要素じゃね?
…キャンセルで。
「さぁ、どれがいい?どれでも好きなのを持っていっていいよ。」
「…お前、もしかして毎日コレ?」
「そうだよ。昼にわざわざ購買に行くなんてめんどくさいじゃん?」
確かにそうかもしれないけど…
「…コレってコンビニ弁当だろ?」
「うん。学校に来る途中のコンビニで買ってくるんだ。」
「飽きないのか?」
「…最近ちょっと。」
だろうな。
少しくらい料理覚えろよ。
「ボクのオススメはこの梅干しかな?」
「…バカにしてるのか?」
「じ、冗談だよ!」
くだらない冗談はいらないから。
「…どれを選んでもいいのか?」
「うん。あ、『全部』ってのは無しだよ?」
「そんな事言わねぇよ!」
「それにしても…コンビニ弁当のおかずなんかもらっても嬉しくないわよね?」
「……うん…」
「仕方ないじゃん!あげない人よりはマシだよ!」
…それは言わないでくれないか?
大地が落ち込んでるから。
「…じゃあ、コレもらってもいいか?」
「エビフライ?いいよ。二つあるし。」
他にいいの無いしな…
・エビフライ
…を手に入れ………
「…ん?アンタ、二つともあげるの?」
「え!?違…!?」
「そうなんですか?スイレンさんって優しいんですね?」
「いや、だから…!」
「……太っ腹…」
「心が広いね♪」
「俺があげれなかった分まであげるなんて…感動だ!!」
「………。」
「ス、スイレン…?俺は一つでいいぞ?」
「…えぇい!持ってけ泥棒!!」
「お、おい!?いいのか!?」
「いいよ!あげなかったらボクが悪く見られるもん!」
…………。
…ラッキー♪
・エビフライ×2
…を手に入れた。
「よかったわね?優しい友達を持って。」
「…おい?何で『もう終わり』みたいな感じで喋ってるんだ?まだお前からもらってないぞ?」
「え?私からも取る気なの?」
当たり前だ!
そもそも、お前が原因だろ!!
「それとも人の弁当を全部食っておいて、自分の弁当は分けてあげないとでも言うのか?」
「言うわよ?」
言うのかよ!?
最低じゃねぇか!?
「悠希さん…それは余りにも…」
「それはヒドいよ、ユーキ…」
「……最悪…」
「キミには人の心が無いの?」
「いくらお前が女の子でも、あの発言をされたら恭也の味方になるしかないな。」
「ア、アンタら…!」
みんな…
当たり前の事なのに、なぜかとても嬉しい…!
「わ、わかったわよ!どれでも一つ好きなものを持っていきなさい!」
やったね♪
どれどれ…?
…悠希の弁当も、緋乃姉妹と似たような中身だった。
やっぱり、これが弁当の定番なのか…?
「ん〜…どれでもいいんだよな?」
「いいわよ!私は半分だけなんてケチなマネもしないわ!」
「ユーキ!?それって私の事!?いいじゃん!大好物なんだから!」
…このハンバーグは返した方がいいのか?
「…一応聞いておくが、後で撤回とかしないよな?」
「もちろんよ!私に二言は無いわ!」
…………。
…ふふふ……
その言葉を待っていたぞ!!
「それじゃあ…」
「何よ…?」
「…『ご飯』をもらおうか。」
「…え?」
いくらおかずを分けてもらっても、ご飯が無いとなぁ…
「…えっと?ま、まさか…全部?」
「半分とかケチなマネはしないんだろ?」
「そ、それはおかずの話じゃない!?」
「二言は無いんじゃなかったか?」
「うっ…!」
まさか自ら墓穴を掘ってくれるとは…
ありがたくて涙が出そうだ。
…出るわけないけど。
「わ、私のご飯はどうするのよ!?」
「お前はさっき食っただろ?」
「さっきはさっき!今は今よ!」
「自業自得って事であきらめろ。とりあえずもらってくぞ?」
「あ〜!?私のご飯が恭也の所に〜!!」
…仕返し完了!
久しぶりに悠希に仕返しできたような気がする…!
すっげぇ嬉しい!!
あ、マジで涙出そう…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「それにしても…キミもヒドい事するねぇ?」
「何とでも言え。悪いのはアイツだ。」
「でもさ…彼女がこのままおとなしくしてると思う?」
…思わない。
逆にアイツがおとなしくしていたら不気味だ。
「…そうだ!いい事思いついたわ!」
予想通りかよ…
たまには予想を裏切るような展開になってくれてもいいんじゃないか?
絶対、俺に復讐という名の八つ当たりをする気だよ…
「みんなでドッジボールやらない?」
前回と同じパターンで俺を始末する気!?
自分で書いといて何ですが、弁当の定番ってなんでしょうね? 私のイメージでは玉子焼きやウインナー、それにエビフライやミートボールなんですが… 弁当も地域によって違ったりするんでしょうかね? …どうでもいい話でしたが、とりあえず今回はこの辺で。 感想・評価・意見・質問・要望・助言など、お待ちしています!!