第76話〜部活のお手伝い
【昼休み】
「恭也さん、ちょっと聞きたい事があるんですが…」
「ん?何だ?」
ヒカリだけなんて珍しいな…
カゲリはどうしたんだろ…?
「…昨日カゲリちゃん、何かあったんですか?一緒に行こうって言っても『ヤダ!』って言うんですよ…」
…理由は一つしか考えられないな。
恥ずかしいならやらなきゃよかったのに…
「まぁ…とりあえずそのうち元通りになると思う。」
「…?」
知らなくていいよ。
俺も人には言いたくないから。
「…そういえば、風邪は良くなったのか?」
「あ、はい!…と言っても、まだ少し症状が残ってますが…」
「だったら教室で休んでた方がいいんじゃないか?」
「風邪は人にうつした方が治りやすいそうですよ?」
俺に風邪をうつそうとしてるのか!?
俺、ヒカリに恨まれるような事した!?
「…まぁ、冗談はさておき、せきをするくらいですから問題ありませんよ。」
「それならいいけど、あまりムリはするなよ?治りかけが肝心なんだから。」
「わかってますよ。…さて、あまり遅くなるとカゲリちゃんがかわいそうですから、私はそろそろ教室に戻ります。」
「おう、それじゃあ放課後。」
「はい。」
…放課後、カゲリは部活に出れるのかな…?
「…キミも…罪…な……男だ…ね……」
「うぉわっ!?スイレン!?」
いつの間に…ってもしかして最初からいた?
床に倒れて(寝て)たから気づかなかった…
やっぱり昼は眠いみたいだな…
「ボクは……キミ…たちの…行動を……知って……」
「寝言は自分の教室に戻って言え。」
「寝言…じゃ……ないよ……」
床に倒れて、目も閉じた状態で寝てないと言うのか?
会話が成立してなければ間違いなく寝てるって判断を下すぞ?
「とりあえず、起きろ。そんな所で寝たら死ぬぞ?」
「そんな……雪山で…遭難……してる…わけじゃ…ない……んだから……」
「……恭也君、ちょっと………」
《ふみっ》
「ぐぇっ!?」
「…キャ!?」
《ズデーン!》
…あ〜あ、だから言ったのに…
この場合、澪がかわいそうだな…
「澪、大丈夫か?」
「……う、うん…」
「…ボクの心配は?」
「そんな所で寝てるお前が悪い。」
「冷たくない!?差別だ!」
ちっ、澪に踏まれて目が覚めたか…
会話はしやすくなったけど、うるさくなりそうだな…
「……スイレンさん、ごめんなさい…」
「澪、謝らなくてもいいぞ?」
「…キミが言う事じゃないと思うんだけど?でも、面白いモノが見れたからいいよ♪」
「……面白いモノ…? …何を見たの…?」
「言っていいの?キミが倒れた時に見えたんだけど…」
やめろ!!
見てなかった事にしといてやれよ!
「……もし言ったらどうなると思う…?」
「わ、わかったよ!言わないから!」
澪が怖い…!
やっぱりこれは言われたくないよな…
「…さて、目も覚めたし、本題に入ろうか?」
「ところで澪、何か用か?」
「あれ!?ボクが先客じゃん!?」
だって、お前の場合は面倒事になりそうなんだもん。
だったら、先に澪の話を聞いて予定を入れといた方がいい。
「……シャープペンの芯くれない…?」
「…それだけ?」
「……うん…」
…残念ながら、スイレンから逃げる事はできそうにないな。
「はい、これでいいか?」
「……ありがとう…それじゃあ…」
…あれ?
もう行っちゃうの?
…巻き込まれたくなくて逃げたな?
「で、ボクの用事なんだけど…」
「ヤダ。」
「まだ何も言ってないよ!?…まぁ、昨日の事をみんなに言ってもいいなら断ってもいいけど。」
……………。
「お前がカレンって事をみんなに言ってもいいならそうしろ。」
「…うっ!?まさかの反撃!?」
いつも大人しく言うことを聞くと思うなよ?
「…だけど、キミはそれだけでいいのかな?」
「…?どういう意味だよ?」
「キミに関する脅迫ネタはこんなにあるんだよ?」
そう言ってスイレンが取り出したのは手帳…
……イヤな予感……
「ほら、このページ。次のページにもあるからね?」
なっ…!?
何でこんな事まで!?
いつの間にこんなの調べたんだ!?
「はっはっは!さぁ、どうする?」
「…わかったよ。話くらいは聞いてやる。」
「よろしい!」
…いつになったら俺は自由になれるんだろう?
「実はキミに頼みたい事があってね。」
「…どうせ断れないんだろ?」
「うん。」
「…………。」
「大丈夫だよ。簡単な用事だから。放課後、ボクの部活を手伝ってほしいだけ。」
なぜそんな事を俺に頼む!?
他のヤツでもいいんじゃない!?
「…そういえば、お前の部活って?」
「放課後になったらわかるからそれまでお楽しみに♪」
…マトモな部活じゃなさそうだな。
「てか、放課後は俺たちも部活が…」
「カゲリがあんな状態で部活になると思う?」
「…どんな状態?」
「見てないの?常にボーっとしてて、まるで魂が抜けてるみたいなんだよ。」
…眠い時のお前みたいな状態か?
「キミの話をすると、顔を真っ赤にして逃げ出すし。意外と純情な子なんだね?」
…相当ムリしてたんだな。
「…というわけで、キミの所の部活は多分休みになると思うよ?」
「もしならなかったら?」
「その時は大人しく諦めるよ。」
お?
無理やり手伝わせると思ったのに…
「その方が面白い展開になりそうだし♪」
テメェ!
少しは被害を受ける側の気持ちも考えろ!
わからないなら、またカレンにするぞ!
「それじゃ、放課後にA組に来てね♪」
「…わかったよ。」
…何をする部活か知らないけど、アイツが入ってるならそんなに大変な部活じゃないだろ。
それに、他の部員もいるだろうから、俺の被害は軽減する…はず。
せめて部長が優しければいいんだけど…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【放課後:A組教室】
「あ!やっと来た!」
「…お前だけか?」
少し早く来すぎたか?
まだ他の人が来てないなんて…
「今日はボクだけだよ?そもそも、この部の部員は2人だけだし。」
…は?
「2人!?それ、部活としていいのか!?」
確か、5人いないと部にならないんじゃ…!?
「この部を作る時にちょっとした裏技を使ったんだよ。」
「裏技…?」
「部を作るには5人いればいいんでしょ?だったら適当にそこら辺の人を入部させて、部として認められたらすぐに退部させればいいのさ♪」
ずるっ!?
そんなんでいいの!?
「…てことは…部長って…?」
「ボク♪」
やっぱりお前!?
お前なんかが部長で大丈夫ってことはマトモな部活じゃないだろ!?
「もう一人の部員は用事があって今日は休みなんだよ。だから今日だけはキミに手伝ってほしくてさ。」
「…何を?てか、ここは何の部活だ?」
「ふふふ…ここは…」
いや、もったいぶらなくていいから。
「『望壮高校疑問解明部』だ〜!!」
「何その部活!?てか、漢字多いな!?」
もう少し読みやすい名前にしろよ…
「名前の通り、この学校に関する疑問を解明するための部活さ。」
「…なるほど。だけど、それって俺には手伝えないんじゃないか?」
「キミには『アレ』を集めるのを手伝ってもらうよ。」
アレって…机の上に乗ってるポストみたいな箱か?
確かにあちこちで見たことがあるけど…
アレってお前らが置いたモノだったのか…
「はい、これはアレの場所を書いた地図だから。それじゃ、いってらっしゃ〜い♪」
…え?
「…お前は?」
「ボクは解明する側だからそんな事はしないよ。」
「…いつも?」
「うん♪」
…もう一人の部員がかわいそう…
「ほら、早くしないと時間が無くなっちゃうよ?」
「俺は別にいいけどな。お前の言った通り、俺たちの部活は休みになったし。」
「言っておくけど、この部活は終了時間なんて決まってないから。早く終われば早く帰れるし、終わるまでは例え夜になっても続けるからね?」
「行ってきま〜す!」
地味に厳しいな!?
やっぱり俺はあっちの部活の方がいい!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【数分後…】
「…ただいま。」
「あれ?意外と早かったね?」
だって…
「お前、一年の教室の近くにしか置いてないんだもん。」
「その方が回収に便利でしょ?」
…手抜きだろ。
2、3年生からの質問は受け付けてないのか?
「…にしても、意外と質問するヤツって多いんだな?」
「ああ…その中の9割近くは見る必要ないと思うよ。」
9割!?
ほとんどじゃねぇか!?
「何で見る必要が無いんだ!?」
「…ボクが答えたくない質問だから。」
「…?」
「とりあえず、順番に読んでいってくれる?」
「あ、うん。え〜と……」
…………。
「…『カレンちゃんにはどこに行けば会えるんですか?』…『カレンちゃんは何年生なんですか?』…『カレンちゃんの本名は何ですか?』…『カレンちゃんは……』…って何だコレ!!!?」
『カレンちゃん』に関する質問ばっかりじゃねぇか!?
そんなにファン多いのか!?
「…ね?見る必要ないでしょ?」
「…確かに。でも、これは答えなくてもいいのか?何でも答えるのがお前らの部活じゃ…?」
「カレンちゃんは謎の人物って事になってるから。」
…それで納得してないから質問してくるんじゃないのか?
「とりあえず、カレンちゃん関係の質問以外を探してくれない?」
「…了解。」
…あるのかなぁ?
============
【数分後…】
「…ふぅ、ようやく全部調べ終わったか…」
「お疲れ。で、質問は何通あったの?」
「カレンちゃん関係が52通。」
「そっちは聞いてないよ!?てか、わざわざ数えたの!?」
つい気になって…
まぁ、人気があるっていいことじゃん。
「その他は?」
「わずか3通。」
「…………。」
そんな明らかにショックを受けたような顔しなくても…
「…はぁ、毎回こんな調子だといい加減イヤになってくるよ。」
多分、宣伝とかしてないからだと思うぞ?
俺だって知らなかったんだから。
…でも毎回こんな状態なら、この部活って意味ないんじゃ…?
「…で、質問の内容は?」
「えっと…まずは、『私のクラスには見た目が完全にそっくりの双子がいます。あまりにも似ているので、2人の区別がつきません。どのように見分けたらいいのでしょうか?』…だって。」
…これって緋乃姉妹の事だよな?
確かにあの2人の区別は難しいけど…
「う〜ん…見分け方ねぇ…」
「あるのか?」
「ある変態君は、『心の眼で見ればわかる!』とか言ってたけどね。」
「…もしかして大地か?」
「うん。よくわかったね?」
簡単だよ。
変態=大地
バカ発言=大地
…ってことだ。
「外見での判断は、本人達に頼んで目印をつけてもらうしかないね。後は話しかけてみて、話し方で判断するくらいかな?」
実際、俺たちも話し方で判断してるしな。
…厄介な双子だ。
「次は?」
「あ〜…」
「…どうしたの?」
「いや…あまりにもバカげた質問だから…」
「いいよ。読んで。」
…………。
「…『アイツは俺の事をどう想っているんだろ…?』…だそうです。」
「何それ!?」
知らねぇよ!!
コイツは一体何を考えてこんな質問をしているんだ!?
匿名だから何を書いてもいいってわけじゃねぇぞ!?
てか、『アイツ』って誰だよ!?
質問するなら名前も一緒に書かないとわからないだろ!
「今までで一番バカげている質問だよ…」
「この質問にも答えるのか?」
「…いや、答えないよ。」
そうだよな。
だいたい、答えようが無いし…
「…そのかわり、この質問を書いた人を探し出して、その人の好きな人をみんなに公開するんだよ。そうしたら今後こんなバカげた質問なんかしなくなるでしょ?」
そこまでする!?
自業自得かもしれないけど、それはかわいそうじゃないか!?
「これってこの部活の宣伝にもなるから、一石二鳥だと思わない?」
「どんな宣伝方法だよ!?逆にみんな恐れて質問しなくなるんじゃねぇのか!?」
「あ、それもそうだね。」
…すでにほとんど質問ないけどな。
「よし!それじゃ最後!マトモな質問よろしく!」
俺に言われても…
俺が質問するわけじゃないんだから…
「…『《望壮高校23不思議》を全て教えてください。』だって。」
「パス。」
早っ!?
何で!?
「これは別に答えてもいいんじゃないのか!?」
「絶対ヤダ!」
「何で!?…まさか知らないとか?」
「バカにしないでよ!事実かどうかの確認はまだだけど、名前だけなら全部知ってるよ!」
それなら別に教えてもいいんじゃ…?
「…何か理由があるのか?」
「…うん。『23不思議』を全部知ってる人は他の人に教えちゃダメなんだよ…」
23個全部を知ってるヤツってほとんどいないと思うけどな。
覚えきれん。
「何でなんだ?」
「…………。」
「…呪われるから。」
…は?
「呪われるの!だからボクは誰にも教えないの!」
…そういえば、スイレンってホラー苦手なんだっけ?
だからか…
「あのなぁ、呪いなんて…」
「今日の部活はこれで終わり!」
待てぃ!!!?
人の話を聞け!!
「おいスイレン…!」
「間違って『23不思議』の内容言って呪われたくないもん!だからこの話はこれで終わり!さぁ、帰るよ!」
「待て待て待て!?わかった!もう何も言わないから!とりあえず片付けてから帰ろう!この箱と質問の紙はどうするんだよ!?」
「箱は明日設置するからどこか邪魔にならない場所に置いといて。そのゴミの山はゴミ箱行きで。どうせ見られて困るような質問なんか無かったでしょ?」
…強いて言うなら『アイツは俺の事……』くらいか?
まぁ、名前なんか書いてないから大丈夫だとは思うけど。
…言われて捨てるんだから俺のせいじゃないからな?
例え誰かに見られてちょっとした騒ぎになっても俺は関係ないからな?
「…捨てたね?よし、帰ろうか。」
「ああ。」
…予想よりは楽に終わってよかったな。
幸い、面倒事も起きなかったし…
…あれ?
もしかして今日は平和に過ごせた?
「…あ、せっかくだから今日の夕飯はキミの家で食べさせてもらおうかな?」
…そんなわけなかったか……
今回の話はスイレンが登場した頃に考えていた話です。 本当は先生方に対する質問も書く予定だったんですが… それはまた機会があった時に書きたいと思います。 とりあえず今回はこの辺で。 感想・評価・意見・要望・質問・助言など、お待ちしています!!