第72話〜宿題を忘れたら…?
俺は、人は他人に頼ってばかりではいけないと思う。
少しは自分でやらないと、その人は堕落してしまうからな。
そりゃあ、たまには頼る事もいいと思う。
でも、それはあくまで自分が努力してもできなかった事に対してだ。
…だから…
「ねぇ恭也、宿題写させてくれない?」
「却下に決まってるだろ!」
全く努力もしてないヤツに誰が宿題を写させるか!
「ちぇっ…アンタもケチね。」
「お前なぁ…少しは自分で考えてみたのか?」
「ううん。宿題の範囲すら知らないわよ?」
なんで当たり前のように話してんだよ!?
最初から写す気だったのか!?
「…いいのか?黒城の宿題なんだぞ?」
「だから写させてって言ってるんじゃない。」
「自分でやって来いって言ってるんだよ!」
「イヤに決まってるじゃない。」
…みんなそのイヤな事をやってるんだからさぁ、お前もやれよ。
「あ〜あ、恭也が宿題を写させてくれなかったら私も黒城先生のチョークを当てられちゃうのかなぁ…痛そうだなぁ…」
たまにはいいんじゃない?
お前も少しは痛い目に会ったら?
「か弱い女の子をそんな目に会わせるわけないわよね?」
…か弱い?
ごめん、俺にはそう見えない。
…でも、このままにしておくわけにもいかないよな…
後で散々文句言われそうだし…
「…仕方ない、今回だけだぞ?」
「さすが恭也!恩に着るわ!」
…本当にそう思ってるのかよ?
どうせ言葉だけだろ?
…まぁ、さっさと宿題写させて静かな時間を取り戻すとするか。
確かカバンの中に…
《ゴソゴソ…》
…あれ?
机の中かな…?
《ゴソゴソ…》
………。
…き、きっと見落としてるんだ!
もう一度調べたらきっと…!
《ゴソゴソ…ゴソゴソ…》
……………。
…あれ?
「どうしたのよ?早くしなさいよ。」
「…すまん。」
「え…?」
「…家に忘れてきたみたい。」
「えぇぇっ!?」
どうしよう…?
このままじゃ俺まで黒城のチョークに…!
「な、なぁ悠希?俺は一体どうしたら…」
「自分の事くらい自分で何とかしなさいよ。私は澪に見せてもらうから。」
見捨てないで!?
てか、言ってる事が矛盾してない!?
「う〜ん…とりあえず別なノートに写させてもらうしかないか…せっかく自分でやったのに…」
「ちょっと!アンタも澪に写させてもらうつもり?私が写す時間がなくなるじゃない!」
仕方ないじゃねぇか!
俺だって黒城のチョークなんかヤダもん!
「…勝手に話に参加して悪いけど、澪ちゃんなら今日休みだぞ?」
「「うそ!?」」
なんでこういう時に限って!?
「…仕方ない、この際大地でいいや。宿題写させてくれ。」
「ほら、早く見せなさいよ。」
「お前ら横暴すぎないか!?」
澪がいないんだからしょうがないだろ。
むしろ、頼りにされてるんだから嬉しく思え。
「…てか、俺のノートは今あっちの女子に貸してるんだけど?」
「「はぁ!?」」
役に立たねぇ!
普段は嫌われてるくせに、こういう時だけは女子に頼りにされるのか…
…完璧に利用されてるな。
「…どうするの?このままじゃ私たち…」
「悪い想像はやめろ!こうなったら自力で…」
「大地!私の代わりに解きなさい!」
「えぇっ!?」
だから、人を使わないで自力でやれって!
だいたい、筆跡でバレるだろうが!
「大地く〜ん。ちょっとわからない所があるんだけど〜?」
「あ、は〜い。今行…ぐぼぁっ!!!?」
「…私の話を無視して逃げようとするなんて、許されると思ったの?」
ひでぇ…
…ってちょっと待て!!
「お前、大地に教えてもらいながらやれば早くできたんじゃ…?」
「イヤよ。私は教えてもらいたいんじゃなくて、写させてほしいんだから。」
…ワガママすぎ。
「ちょっと〜!大地くんを殴るなんてヒドいじゃないですか〜!」
「あら?ちょうどいいわ。私もアンタに話があったのよ。」
「…?何の話ですか〜?」
「アンタ、大地からノート借りてるでしょ?今すぐそのノートを私に……むぐっ!?」
「ゴメン!何でもない!早く席に戻って宿題写しちゃいなよ!わからない所は後で大地に聞くようにしてさ!」
「…??わかりました〜…」
「ん〜!?んん〜!」
…ふぅ、行ったか。
「…ぷはっ!ちょ、ちょっと!?いきなり口をふさぐなんてヒドいじゃない!」
「ヒドいのはお前だ!お前、あの人を脅してノートを奪おうとしただろ!?」
「…あ、バレた?」
やっぱりか!
バカかお前は!?
関係ない人を巻き込むな!
「でもこのままじゃ間に合わないじゃない!?アンタはどうするつもりなのよ!?」
「俺は一度自力で解いてるからな。少し時間はかかるが、今からやっても何とか間に合うと…」
「裏切り者ぉ!!」
《ブンッ!!》
「あぶなっ!?」
イグを投げるな!!
危うく直撃する所だったじゃねぇか!?
「お前は本当にイグを大事にしているのか!?」
「当たり前でしょ?この技だって互いに信頼しあってるからこそできる技なのよ?」
これって技だったの!?
てか、信頼のかけらもないように見えるんだけど!?
「それより!アンタはそれでいいかもしれないけど、私はどうしたらいいのよ!?」
「知るか!ちゃんと家でやってこないからこういう事になるんだ!」
「宿題っていうのは他人のノートを写すモノなのよ。」
そんなわけあるか!!
それだったら誰一人やってこないだろ!
「…とりあえず、終わったら見せてやるから宿題をやらせてくれ。」
「そんなの待ってたら写す時間なんかないわよ!だったらアンタも道連れに…」
「お前最低だな!?」
このままじゃ本当に俺まで道連れになっちまう…!
こうなったら…!
《キーンコーンカーンコーン…》
「うそ!?もうチャイム!?完全に間に合わないじゃない!?」
「ほら、諦めろ。俺は授業中に頑張って宿題終わらすから。」
「うぅ〜…!」
「…って、私が同じ手に引っかかると思ってるの?」
「…!?な、何のことだ!?」
「しらばっくれるんじゃないわよ!アンタまたあの発明品を使ったんでしょ!」
バレた!?
もう覚えてないと思ったのに…!
一応説明しとくと、さっきのチャイムは俺の仕業。
以前、緋乃姉妹からもらった『疑似チャイム音発生装置』だ。
これを使うのは三回目だからな…
さすがにもう引っかからないか…
「…アンタ、そこまでして私を黒城先生の餌食にしたいわけ?」
…あれ?
何この殺気?
もしかして状況悪化?
「ちょ、ちょっと待て悠希!冷静に…!」
「問答無用!!」
ギャァァァァァァ!!!?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…なぁ、俺この傷で授業受けなきゃいけないの?保健室に行きたいんだけど…」
「意識があるだけありがたいと思いなさい。私を騙そうとするからそんな目に会うのよ。」
そうでもしないと宿題できないだろうが!
「どうしても保健室に行きたいなら黒城先生に頼みなさい。」
「!!」
まさか…!
俺をよりヒドい目に会わせるために半殺しでやめたのか!?
(半殺しも十分ヒドいけど…)
鬼だ…!
…だが、今からでも遅くない!
授業が始まる前に保健室に逃げ込むことができたら…!
《ガラッ!》
「よし、さっさと授業開始するぞ。」
終わったぁーーー!!!?
タイミング良すぎだ!
もう少し遅く来いよ!
ヒソヒソ…
(ご愁傷様。)
くっ…!
でもお前も宿題をやってないんだろ!?
お前も結局黒城の被害を……!
「先生!恭也が宿題やってくるのを忘れたみたいです!」
「…あん?」
そこまでする!?
まさか、俺が気絶した後『保健室に連れて行きます』とか言って逃げるつもりか!?
卑怯者め!!
「…宿題?俺宿題なんか出したか?」
…はい?
覚えてないの…?
「先生!前回の授業の時に…ぐぁっ!!!?」
「うるせぇっ!勝手に喋るなって何回言えばわかる!」
…先生、悠希もさっき勝手に発言してましたよね?
これって差別じゃないんですか?
かわいそうなクラスメートA…
「だいたい、宿題なんか全員分チェックするのめんどくせぇよ…よし!宿題はなかったことにする!」
『えぇーーっ!?』×クラス全員
よかったぁ〜!
殴られ損だったが、命拾いはできた…
…てか、宿題やってきたヤツが『えーーっ!?』って言うのはわかるけど、なんで悠希も言うんだよ?
そんなに俺を保健室行きにしたかったのか?
「ギャーギャーうるせぇな…宿題なしになったのがそんなに不満か?そんなにうるさいと、代わりに小テストやるぞ?」
『………。』×クラス全員
「…わかりやすいなお前ら。じゃ静かになったし、さっさと授業開始するぞ。」
…さすがに悠希も静かにするしかなかったみたいだな。
さて、これで心配することもなくなったし、後はいつも通りの学校生活を……
ヒソヒソ…
(…放課後、校舎裏に来なさいよ?)
まだ怒ってるの!?
俺そこまで悪い事したっけ!?
最近、過去に書いたモノをもう一度使うことが多くなってきました。 わからない人は気にしないでください。 作者自身あまり覚えてませんから。 とりあえず、今回はこの辺で。 感想・評価・質問・要望・助言などお待ちしています!