第68話〜恭也と澪
「……恭也君って約束守る人だよね…?」
…いきなり何?
朝、教室に着くとすぐにそんな質問って…
せめて挨拶から始めない?
「まぁ、基本的には守るけど。」
「……じゃ今度の日曜日空けといてね…」
え!?
何で!?
「…俺何か約束したっけ?」
「……忘れたの…?」
正直覚えてない…
澪と約束…?
スイレンだったら夕飯の約束はしたけど…
「……ほら、前に一緒に買い物行った時…」
……………?
…………。
…あぁ、あの時か!!
「今度また一緒に買い物行こうってやつか?」
「……それ…」
すっかり忘れてたな…
けっこう前の話だし…
…てか覚えてる人っている?
「……あの時行けなかった所にも行きたい…」
「そういえば…それってどこなんだ?」
「……邪魔が入りそうだからまたあとで…」
…へ?
「おはよ〜♪…あれ?珍しく2人きりね?」
あぁ、コイツ(悠希)のことか。
よく来るタイミングわかったな…
(……詳しいことはメールで…)
(…わかった。)
またこの前みたいについて来られたら俺の負担が増えるからな。
「…あれ?もしかして大事な話してた?」
「いや、別に。」
「……勉強教えてただけ…」
「ふーん…今さらマジメになろうとしても手遅れなのに…」
「うるせぇ!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【日曜日:駅前】
待ち合わせ時刻まであと10分…
…結局どこに行きたいのか聞けなかったな…
メールしても『……当日までヒミツ…』って返事だし…
…言ったら俺が拒否するような場所なのかな?
「……待ち合わせ場所には早めに来るタイプ…?」
「うわぁっ!?澪!?」
背後からいきなり出てくるのやめてくれ!
心臓に悪い!
「……まだ慣れないの…?」
慣れるわけないだろ!
「……今日は行く場所少ないからゆっくりでもいいのに…」
「…そういうのは前日に言ってくれないか?」
別に遅刻しようなんて考えてないぞ?
ただ、もう少しゆっくり寝れたなぁ…って思っただけ。
「とりあえず、まずはどこに行きたい?」
「……本屋さん…」
…前回も行かなかったっけ?
あの時は緋乃姉妹と黒城がいたけど…
「……その次はぬいぐるみを見に行って…その次はペットショップを見に行って…その次は…………」
かわいいもの巡り…?
てか少なくない気がするんだけど?
「……それじゃ、行こ…」
「ああ。」
…買いすぎには注意してね?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【夕方:駅前】
「……お疲れ…」
「…どうも。」
疲れきった俺の両手には買い物袋…
本やぬいぐるみを買うのはいいが、なんでこんなに…?
…もしかして澪ってお金持ち?
「……なにか飲みたい…?」
澪が俺の顔を覗き込みながら聞いてくる。
確かにノドが渇いたけど、女の子に買ってきてもらうわけにはいかないよな…
「いや、いいよ。俺が買ってきてやる。」
「……やさしいね…」
いや、これくらいは当然だろ?
「……そこが恭也君のいい所だよね…」
澪が俺に微笑みかけながら言う。
その笑顔はいつもの澪とは違うように思えた…
「…そ、そんな事言われると照れるな…」
「……クス…顔赤くなってる…」
「…!と、とりあえず飲み物買ってくるよ!何が飲みたい!?」
「……恭也君が選んだのなら何でもいいよ…」
「わかった!」
俺は逃げるようにその場から離れた。
…あんな顔であんな事言われたら顔が赤くなるのは仕方ないだろ…
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「…お待たせ!」
「……どうも…」
澪にジュースを渡し、2人で並んで座る。
そして無言のままジュースを飲み始める。
…さすがにもう顔赤くないよな?
「……こうしてると私たちってカップルに見えるのかな…?」
「…!?れ、澪!?いきなり何を!?」
危うく吹き出すところだった…
突然なにを言い出すんだ!?
「……恭也君は…私とじゃ…イヤ…?」
「い、いや!そういうわけじゃないが…!」
「……よかった…」
そう言う澪の顔は本当に嬉しそうで…
俺はただそれを横から見てるだけだった。
…何を話したらいいかわからない。
何をしたらいいのかさえわからない。
ただ黙ってジュースを飲むだけ…
…俺って本当にこういうの苦手だなぁ…
「……それじゃ、そろそろ行こ…?」
「…え?あぁ、もしかして前から行きたがってた所にか?」
「……うん…」
…でもそれって結局どこなんだ?
「……私が行きたかったのは…………」
…………え!?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…………。
…本当にここが澪の来たかった場所?
「えぇと…とりあえず…中に入るか?」
「……うん…」
とりあえずも何も、入るしかないんだけどさ。
他にする事ないし…
《ガチャッ》
「まぁ、とりあえず…ようこそ?」
「……これが恭也君の部屋…」
俺の家に来たって何も無いのに…
なんでこんな所に来たかったんだろ?
「どこか適当に座ってくれ。今飲み物出すから。」
「……さっき飲んだばかり…」
「…いらないか。」
かと言って何もしないのは…
お菓子も普段食ってないから置いてないし…
「……何もしなくていいよ……………一緒にいてくれれば…」
「え…?」
「……な、何でもない…」
今…後半の方が聞こえなかったんだけど…
いつもより声量が小さいってことは聞かれたくなかった事なのかな…?
あまり深く詮索するのはやめておこう。
……さてと…
「…………。」
「…………。」
…この沈黙をどうしようか…
このままじゃいけないよな…
でも話題が…
「………ヒツジ…」
「…ん?」
「……ヒツジのぬいぐるみ…大事にしてくれてたんだ…」
あぁ、あれか。
「そりゃ澪からもらったモノだからな。大事にするよ。」
「……ありがとう…」
いや、お礼を言われるようなことじゃないんだけど…
「………恭也君……」
「…?なんだ?」
…?
さっきより…真剣になったような気が…
もしかして大事な話?
…ヒツジ返してとか言わないよな?
「……真剣に聞いてほしいの………私……やっぱり……」
「………恭也君のこと…………好き……」
「…澪…」
…冗談?
スイレンみたいな悪質な冗談か?
いや、でも澪の性格じゃそんな事するわけないし…
なら本当に…?
いや、そんなわけないだろ。
俺のどこがいいんだ?
俺を好きになる理由がわからん。
…どっちだ?
「……ゴメンね…いきなり…こんな事…」
「…………。」
《ギュッ!》
「………え…?……恭也…君…?」
「…謝ることじゃないよ、澪…」
…冗談か本当かを考えるのは後にしよう…
…これ以上その悲しそうな顔を見ているなんて俺にはできない…
冗談で言われたなら、後で笑われたっていい…
その顔が笑顔に変わるなら、俺は恥をかかされたっていい…
「……恭也君………」
《…ギュッ!》
…どのくらいそうしていたかはわからない。
ただこの時の沈黙は、いつものように居心地が悪くなるようなモノではなかった…
「…澪…俺は……」
「……待って…」
「…?」
俺が言おうとした事を澪が止める。
「……返事はいらない…」
「…??」
それって…どういうこと?
やっぱり冗談だったのか?
「……私は私の気持ちを伝えただけ…恭也君の気持ちは…恭也君が本当に私の事を想ってくれた時に伝えてほしい…」
…えぇと?
つまり、俺が本当に澪の事を好きになるまで返事するなって事か?
「……それまでは今まで通りの関係で…」
告白された状態で今まで通りって…難しくないか?
「……ワガママかな…?」
「いや、澪がそうしたいならそれでいいよ。」
「……そう…ありがとう…」
返事…か……
今までそんな風に見てなかったからな…
澪には悪いけど、時間がかかりそうかな…
「……時間…」
え!?
心の中読まれた!?
「……もう帰らないと…」
「…え!?もうそんな時間!?」
「……買い物に時間かけすぎちゃったから…」
少しとか言いながらあちこち行ったからな…
一番時間かかったのはペットショップだけど。
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「…本当に送って行かなくていいのか?」
「……私のお父さん、うるさいから…」
そういえばこの前もそう言ってたな…
「……今日はありがとう…また明日…」
「おう!それじゃ!」
俺は澪の姿が見えなくなるまで見送った。
…それにしても、澪が俺の事を好きだったなんてな…
今までの様子からは全然そんな感じはしなかったけど…
多分これからも俺のことが本当に好きなのかどうかわからないような事してくるんだろうな…
今まで通りって言ってたし…
…今まで通りか…
またヒドい事されるのか…
…そこだけは変えてくれないかな?
…やっぱり恋愛は苦手ですね(苦笑)。 リクエスト作品って事で頑張ってみたんですが、どうだったでしょうか? 期待に応えられてなかったらゴメンナサイ! …とりあえず今回はこの辺で。 感想・評価・質問・要望・質問など、お待ちしています!