第64話〜賛成派vs反対派その2【なんでもありのリレー対決!】
「…さて、両チームとも準備はできたか?」
「もちろんよ!」
「……こっちも…」
準備って言っても、バトンは悠希が陸上部の部室からパク……借りてきたから、走る順番を決めるだけだ。
予想通り、それほど時間はかからなかったみたいだ。
「一応途中で順番を変えたりしないように聞いておくか。」
「……読まれた…」
いや、読んだわけじゃないが…ってもしかして状況によっては順番変えるつもりだったのか!?
「……一応順番は決まってるからいいけど…」
「ふん、どんな順番にしても私たちには勝てないわよ!」
…ウサギとカメみたいな組み分けだもんな。
コイツらなら本当に油断して負けそう…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
第一走者:大地、スイレン
第二走者:カゲリ、ヒカリ
第三走者:悠希、澪
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…さて、反対派がどこまで対抗できるか…
「第一走者は位置についたか?」
「その前にさぁ、ハンデとしてボクたちのチームは半周にしてくんない?」
「ダメ。」
「…ケチ。」
一応ルールはルールだからな。
大丈夫だ。
お前らならいい勝負になるさ。
…根拠はないけど。
「女の子を相手にすることになるなんて…だが相手が女の子でも、俺は『?ちゃん』の為に勝ってみせる!」
…隣にいるのが本人ですけど?
もしその事を知ったらどうなるのかな…?
「ねぇ、どうでもいい話はいいから早く始めようよ。」
「カゲリの言うとおりよ。待たされる方の身にもなりなさいよ。」
そんなに文句言わなくても…
まぁ、実際待たされる方はウンザリしてるだろうな。
それじゃあさっさと始めてやるか。
「それじゃあ、ヨーイドン。」
「いきなりかよ!?しかもすごく投げやりじゃねぇか!?」
だって俺にとってはどうでもいいんだもん。
それより…
「ダイチ!早く走ってよ!」
「…え?あ!もうあんな所に!?」
大地がツッコミをいれてる間に、スイレンはもうけっこう前の方を走っていた。
反対派で唯一運動神経がいいからな。
ここで差をつけとかないと。
「なんの!女の子を追いかけるのは得意だ!」
最低の発言じゃね!?
「……変態…」
「ぐはぁっ!心に突き刺さ…!」
「…大地、さっさと走らないと本当に突き刺すわよ?」
何を!?
「わ、わかりましたっ!」
って言ってもこれだけ差がついたらいくら大地でも追いつけないんじゃ…?
「うおぉぉぉぉ!!俺の命と『?ちゃん』の為に!」
「速ぇ!?」
「うわっ!?キモいのが追いかけてくる!?」
「…………。」
あっ、減速した。
その代わりにスイレンがスピードアップ…
…大地、ダメダメじゃん。
「…ん?悠希、どこに行くんだ?」
「ちょっと先の尖ったモノを探しに…」
「ま、待て!ほ、ほら!お前とカゲリが頑張ればまだ勝てる可能性が…!」
「…それって私たちが遅いって言いたいんですか?」
「いや、そういうわけじゃ…!」
片方を宥めたらもう片方が機嫌悪くなるのか!
一体どうしたらいいんだよ!?
「……ヒカリさん…そろそろ順番…」
「あ、はい。わかりました。」
ナイス澪!(あと、早く戻ってきてくれたスイレンも!)
「もう交代!?かなり差がついてるじゃない!?」
「うぅ〜…ダイチのバカァ!!」
「…!?くそぉっ!!俺とした事が女の子を怒らせちまった!」
いや、いつもの事じゃないの?
「うぉぉぉぉ!!フルスピードォォォォォ!!」
さっきより速い!?
これってもしかして一気に差を縮めることができるんじゃ…!?
「……そういえばさっき学校で『?ちゃん』を見たような…」
「何だとぉ!?それを早く言ってくれぇ!!」
「あっ!?ちょっとどこに行くのよ!?」
「せめてバトン渡していって〜!」
…澪の作戦勝ちだな。
それにしてもあんなのに引っかかるなんて…
「……時間稼ぎ成功…頑張って…」
「わかりました。」
ここで反対派は第二走者のヒカリにバトンが渡った。
「あ〜怖かった…!もう二度と彼とは競争したくないね。」
「…おつかれ。」
あんなのに追いかけられたらトラウマになっちゃうよな…
「とりあえずこの調子ならボクたちのチームの勝ちだね。」
「そうだな。……相当走るスピードが遅いけどな。」
「…あれ?あんなに遅いの?」
予想以上の足の遅さだな…
大地が澪に騙されなかったら確実に負けてるんじゃないか?
「しばらくは大丈夫そうだけど…でもこのままじゃ私たちのチーム負けちゃうよね?ユーキ、どうする?」
「…とりあえず戻ってきたらぶっ殺す!!」
戻って来なかったらお前らの負けだけどな。
でも学校まで行ったとしたら相当時間がかかるよな…
なかなか帰ってこないんじゃ…?
「スマン!!バトン渡すの忘れてた!」
「え!?もう戻ってきた!?」
予想外の早さだな…!
途中で勝負の事を思い出したんだろう。
…さぁ、どうする反対派!?
「キミ!さっき悠希が『戻ってきたらぶっ殺す!』って言ってたから逃げた方がいいよ!」
「え!?マジで!?」
「コラァ!止まらないで早くバトン渡しなさいよ!」
お前が物騒なこと言うからだろうが…
「早く渡さないと本当に…」
「は、はい!今渡します!」
…ここでようやく賛成派もカゲリにバトンが渡った。
そしてやっぱり大地は悠希に殴られていた…
「うわっ、ヤバッ!」
「あぁ、このままじゃ大地の命に関わるな。」
「いや、そっちじゃなくて…って本当にヤバいじゃん!?止めなくていいの!?」
放っといてもその内回復してるって。
それより、確かにリレーの方も反対派にとってはヤバいことになってるな。
あれだけあった差が見る見る縮んでいく。
このペースだとアンカーにバトンが渡る前に抜かれるよな…
「……発明品使えばいいのに…」
「それじゃリレーじゃなくなるんじゃない?」
そうだぞ。
何でもありってルールじゃないんだから。
少しはマトモに勝負しようよ。
…マトモにやったら勝ち目無いけどな。
「やった!抜いた!」
「あ〜、抜かれた…」
今度は賛成派が差をつけていく。
…これはもう勝敗は明らかかな?
「……悠希さん…陸上部なんだから足速いよね…?」
「…?それがどうしたのよ?」
「……私なんかに負けるわけないんだから、ハンデがあっても大丈夫だよね…?」
おい!?
いや、確かにそうでもしなきゃ負けるけど!
「ふん!そんな手には乗らないわよ!」
「……負ける可能性があるってこと…?」
「そんなわけ…!」
「……だったらハンデがあっても大丈夫だよね…?」
「うっ…!」
…はい、澪の勝ち。
どうせこのままじゃ余裕で勝っちゃって面白くなくなるんだからハンデくらいやれよ。
「えぇい!それならハンデあげようじゃないの!」
「……だったら私がコースの4分の3を走ってから悠希さんがスタート…」
すごいハンデきた!?
せめて半分にしてやれよ!
「いくらなんでもそんなんで勝てるわけ…!」
「……勝てる自信ないの…?」
「ないわよ!」
…この挑発にのったら負けだもんな。
さすがに引っかからないよな。
「……じゃ悠希さんの代わりにイグちゃんを走らせるとか…?」
「イグがバトン持てるわけないでしょ!」
…よく考えたらイグを肩に乗せて走る時点でハンデがある気がする…
「アンタこそ、代わりにあの白蛇を走らせたらいいじゃない!」
「……ミョージンなら留守番…」
「何で連れてきてないのよ!」
いや、澪の方が正しくないか?
は虫類が苦手なヤツだっているんだから。
「……ウサギ跳びは…?」
「ウサギ跳びで一周!?体力的にキツいわよ!それだったら…!」
「…ねぇ、ユーキ?」
「何よ!?今澪と話してる最中でしょ!?」
「バトン…」
「…あ。」
カゲリが来た事に気がつかないくらいに話に夢中になるなよ…
「………。」
「………。」
「…行っちゃえ♪」
「……あ…」
ハンデは!?
「ちょっとちょっと!キミ、ハンデくれるって言ってたじゃん!?」
「私たちの勝利を確実にするためよ!誰がハンデなんかあげるもんですか!」
最初からハンデやる気なかったのかよ!?
ヒドいヤツだ…
「……そこまでして勝ちたいの…?…最低…自分の事しか考えてない…これだから最近の若い人は…」
「何ですってぇぇぇぇ!!!?」
戻ってきたぁ!?
ってか怖ぇ!!
「キョーヤ、悪いけど盾になって!」
「あ、ボクも!」
「悪いと思うなら盾にするな!ほら、あそこに『俺が盾になってやるよ』的なアピールしてるバカがいるからアイツを盾にしろよ!」
「「却下。」」
「…あ、泣いた。」
ってかアイツさっき死にかけてなかったっけ?
もう復活したの?
やっぱりアイツを盾にした方がいいんじゃないか?
「……あれ…?…確実に勝つために先に走ってるんじゃなかった…?」
「あんな事言われたら戻ってくるわよ!」
「……独り言なのに…地獄耳なんだから…」
「何ですって!?」
澪!やめろって!
殺されるぞ!?
あんなヤツの目の前にいて怖くないのか!?
「あ、あのぅ…バトン持ってきたんですけど…?」
いや、今持って来られても…
「…あの状況で渡しにいける?」
「無理です!」
当然即答だよな。
「でも渡さないとボクたちのチーム勝てないよ?」
「…な、投げ渡してもいいんでしょうか?」
「…特別にありにしようか。」
このままじゃバトン渡せないもんな。
問題は澪が上手くキャッチできるか…
「…えいっ!」
《スコーン!》
…訂正しよう。
問題は澪が上手くキャッチできるかじゃなかった。
…ヒカリが上手く投げれるかだった。
ヒカリが投げたバトンは澪の手には渡らず、頭に直撃した……
……悠希の頭に……
「………。」
「…あれって絶対怒ってるよね?」
「無言なのが怖いよ…!」
「あ、謝ったら許してもらえると思いますか…?」
「…ムダだと思う。」
あんなに殺気立ってる悠希を見るのは久しぶりな気がする…!
今回ばかりはケガじゃ済まないような…!
「…アンタら…」
『ヒィッ!!』
悠希の顔がゆっくりとこっちを向く…
その時に発せられた静かな声と鬼のような表情に俺たちは完全に恐怖を抱いていた…
…しかし、俺が一番怖いと感じたのは声ではない。
…そのセリフだ…
今、『アンタら』って言ったよな?
複数形だったよな?
それってつまり…俺も危ないってこと?
「私を怒らせて無事でいられると思うな!!」
『ギャァァァァ!!!?』
逃げるしかない!
これはもう逃げる以外に選択肢はない!
「待てぇ!!」
「えぇ!?ボクの方に来た!?バトン投げたのボクじゃないよ!?」
「それじゃそっちかぁ!?」
「違うよ!同じチームなんだからそんな事するわけないじゃん!」
誰がやったかわからないのか!?
少し落ち着けばわかるだろ!
「それじゃあ…」
「言っとくけど俺も違うからな!?」
「ウソだ!」
何で俺の時だけ疑う!?
「私に恨みを持っているアンタが一番怪しいのよ!」
恨み!?
日頃俺にヒドい事ばかりしてるから俺が恨みを持っているとでも!?
…多少はあるかもしれない…
「そう思ってるなら今後恨みを持たれるような事はするな!」
「うるさぁい!!」
ヤバい!
追いつかれる!
こうなったら…!
「だるまさんが…」
「そんなので止まるかぁ!!」
「ぐはぁっ!?」
背中から悠希が体当たりしてきた!
そのまま俺は地面に倒れ込む!
殴られなかっただけまだ良かったが、それでも痛い…!
…当然これだけで済むわけがないよな…
何とかしないと…!
「ゆ、悠希!冷静に聞いてく…うっ!?」
俺が悠希に説明しようと仰向けになった瞬間、俺のお腹の上に悠希が座ってしまった…
…逃げれない…
「言い訳無用!」
「待て待て待て!本当に俺じゃないって!」
「それじゃ誰がやったって言うのよ!」
「ヒカリに決まってるだろ!」
「あの子がそんな事するわけないでしょ!」
お前、以前子どもにされた事あるだろうが!
それに今回はわざとじゃないし!
「そんなに疑うならボクが真実を教えてあげよう!」
「「スイレン!?」」
まさか助けてくれるのか!?
でもそれだとヒカリが犠牲に…
…たまにはいいか?
「…真実って何よ?」
「悠希にバトンをぶつけたのは彼の言うとおりヒカリだよ。」
「スイレンさん!?私を売るんですか!?」
「ほぅ…アンタだったのね?」
「ひぃっ!?」
何でスイレンの言うことはあっさり信じるの!?
…まぁ、俺の疑いが晴れたからいいけど。
ヒカリには悪いが、身代わりになってやる気はない。
俺はまだ死にたくないからな。
多分ヒカリが相手なら手加減するだろう。
…多分だけど。
「覚悟はできてるんでしょうね?」
「できてません!」
「まあまあ、落ち着いてよ。ぶつけたのはヒカリだけど、それは彼の指示だったからだよ。」
「…?」
そう言ってスイレンが指差したのは大地…
…うん、それが一番平和的な方法かな。
アイツさっき盾になろうとしてたからちょうどいいんじゃない?
「…大地が真犯人か。相手が大地なら容赦なく殺せるわね。」
殺人宣言!?
今普通に殺す発言したよね!?
「この世から消えろぉぉぉ!!」
「…え?ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」
…大地視点だと、何でこんな事になったのかわかんないだろうな。
さっきまで落ち込んでて、こっちの話を聞いてなかったから…
とりあえず大地は入院確定かな?
「救急車呼びましょう!!」
「大丈夫だ。アイツは死なないから。…それよりリレーはどうなったんだ?」
「……終わった…」
いつの間にか隣に澪が立っていた。
…何でいつも気づいたらいるんだろう?
「ねぇレイ、何で息切れしてないの?」
「……歩いたから…」
…実際は一周してないな?
ずるいけど、めんどうだからもういいや。
「それじゃこの勝負も反対派の勝ち。そういう事で2対0で反対派の勝ちだな。」
「やった!それじゃボクはもう二度とあんな恥ずかしい格好しなくていいんだね?」
…どうせその内また悠希にやらされると思うけどね。
「とりあえずお疲れ。さぁ、早くここから離れようか。」
「…?どうしたんですか恭也さん?」
「……そんなに慌てなくても…」
「あの殺戮の関係者と思われたかったらゆっくりでいいぞ?」
「………。急いで逃げましょうか。」
「……賛成…」
こうして悠希と大地を残して俺たちは帰った。
…あの後大地がどうなったかはわからないが、翌日の新聞やニュースにはあの事は出ていなかったから死んではいないだろう。
【後日】
「ねぇ、恭也?もう一度やりたいんだけど。今度こそリベンジを…!」
「やかましい!」
賛成派と反対派の勝負が完結しました。 当初の予定では三回戦まであったんですが、諸事情により今回は無しにしました。 いつか書けたらいいと思っていますが、いつになるのか… とりあえず今回はこの辺で。 感想等お待ちしています。