第57話〜探求心=不幸に直結
「ねぇねぇ恭也!やっぱりさ、晴れてる日って外で遊びたいよね?」
…朝からそんな話してたら勉強やる気なくならない?
「そりゃまぁ、勉強やるよりは何百倍もいいな。」
「だよね♪」
…それだけ?
俺に話を聞いた後、悠希は別の人の所に行って話し始めた。
もしかしてみんなに聞いて回ってるのか?
何のために?
「…なぁ恭也?何で悠希は俺に質問してくれないんだろ?」
…大地、お前骨折したんじゃなかった?
もう治ったのか?
ってか悠希がお前に話しかけない理由は一つしかないんじゃないか?
「お前が原因で前回子供にされたからじゃない?」
「それって俺のせいなの!?」
少なくとも悠希は自分が悪いとは思ってないだろ。
「どうやったら話しかけてもらえると思う?俺、女子に嫌われるのって嫌なんだよ。」
お前、大半の女子に嫌われてんじゃないの?
自覚なし?
「そのうち悠希が忘れたら話しかけてもらえるんじゃないか?」
「そうか…」
おっと?
もうそろそろ授業が始まる時間か?
…やる気しねぇな。
やっぱり悠希の言うとおり天気のいい日は外で遊んでた方がいいよな。
ま、そんなわけにはいかないけど。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「先生!こんな天気のいい日は勉強なんかより外で遊んだ方がいいと思いませんか?みんなそう思ってますよ?」
悠希!?
お前授業中に何言ってんの!?
さっきの質問はこのため!?
もしかしてまだ子供のつもりで言ってんじゃないだろうな!?
ってか言う先生を考えろよ!
相手は…!
「あ?何ふざけた事言ってんだ?」
やっぱり機嫌悪いよ!
黒城相手にそんな事言ったら保健室送りにされるぞ!?
「だって勉強なんか雨が降ってても、夜でもできるじゃないですか?外で遊ぶなんて晴れてる日中にしかできないんですよ?」
…お前何しに学校来てんの?
「俺の授業はこの時間にしか受けれないに決まってんだろうが。」
「授業を受けても理解できません。それだったら遊んだ方が時間を有効に利用できると思います。」
ハッキリ言い過ぎだ!
何でこういう時だけは頭の回転早いの!?
そういうのを勉強に生かせよ!
…ってかよく黒城キレないな?
普段ならとっくにチョーク投げてるのに…?
「…もういい。他の連中の邪魔だ。教室から出ていけ。」
「やった♪先生直々に遊びの許可が…」
「そういう意味じゃねぇ!」
あ…もう逃げてる…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【休み時間】
…やっぱりあれはいつもの黒城の反応じゃないよな。
いつもは問答無用でチョークを投げてくるはずなのに…
黒城に一体何があったのか…
その謎を解くためにコイツの所まで来たんだが……
「………すぅ…すぅ……」
…やっぱり寝てるか。
「あん?神堂、何でお前がA組にいるんだ?」
げ!?赤樹!?
久しぶり…じゃない!
会いたくないヤツに会っちまった…!
「…スイレンに用があるだけだ。」
「あぁ、コイツか?コイツ、ウザイからお前らのクラスに連れてってもいいぞ?」
そんな事できるわけないだろうが!
ってかスイレン嫌われてるの!?
「いや、遠慮しとく。とりあえず起こすのもかわいそうだからもう教室に帰るわ。」
「…ちっ、厄介払いできると思ったのに……」
…コイツ赤樹に何してんの?
「そうだ!お前今度もう一回俺と闘……」
「パス!それじゃ!」
誰がお前なんかと闘うか!
千秋と闘ってろ!
…さて、スイレンがダメとなると…他に誰か知ってそうなヤツいるかな…?
…黒城と仲良さそうな人とか?
そんな人いたっけ?
「あら?銀髪君じゃない♪」
会いたくない人、二人目来ちゃった!?
いや、でも加賀なら黒城の不調の原因も知ってるはずだ!
「珍しいわね?今日は逃げないの?観念して私の実験体になる気になった?」
「違います!ちょっと聞きたい事があって…今日の黒城先生ってどこか調子悪かったりするんですか?」
「何で私があの男のこと知ってなくちゃいけないのよ?」
…あれ?
もしかして加賀に黒城の話はしちゃいけないのか?
明らかに機嫌悪くなったよな?
「いや、いつもケンカしてるみたいだから…」
「ケンカするほど仲がいいって言いたいわけ?あまりふざけた事言ってると本気で実験体にしちゃうわよ?」
「す、すいませんでした!!」
俺はその場から全力で逃げ出した!
あんな空気耐えられないって!
今までで一番の殺気だった…!
結論!加賀の前で黒城の話はしたらダメだ!
殺される!
…ってか今まで本気じゃなかったんだ!?
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【昼休み】
…結局、午前の段階では黒城の不調の原因は謎のままだった…
…だが、冷静に考えてみよう。
今の状況でできることは二つ!
一つはもう諦める!
別に黒城が不調だろうが、俺には知ったことじゃないし。
しかし、これはあくまで最後の行動としてとっておきたい!
もし本当に黒城が不調ならば、ささやかな復讐をしてやりたいからだ!
…あくまでささやかな復讐だからな?
ちょっとイヤミを言うだけ。
そしてもう一つは…!
「…俺が不調なのかって?」
「はい、今日の授業のときに悠希を野放しにしていたので…」
…ぶっちゃけこれは賭けだ!
もし黒城がいつも通りだったら俺が保健室送りにされるからな…
「悠希…?あぁ、あのバカ女か?確かにいつもの俺なら黙らせてただろうな。」
「何で今日は見逃してたんですか?」
さすがにこれは聞きすぎか…?
「…弾切れだ。」
「…え?」
弾切れ?
何それ?
「手持ちのチョークが無かったんだよ。それにあのチョーク自腹だぞ?そんなに使ってられないだろ。」
……………。
何てくだらない理由!
確かにあれだけチョーク使ってたら経済的にはキツいだろ!
その前にお前はチョークがなきゃ注意もできないのか!?
…悠希はこの事を知っていたのかな?
知ってたんだろうな…
でなきゃあんな発言できないもん。
…悠希なら知らなくても言うかもしれないけどな。
「…で?聞きたい事はそれだけか?」
まぁ、聞きたい事はそれだけだけど…
今なら何を言っても怒られないってことだろ?
…だったら好き放題言わせてもらうしかないだろ!
「それって生徒を一回一回チョークで罰するからいけないんじゃないですか?」
「今時のガキが口で言っただけで素直に言うこと聞くと思うか?」
「だからってわざわざ保健室送りにしなくても…ってかそんな事したらその人はその日の授業受けれませんよね?」
「次から頑張ってマジメに授業受ければいいじゃねぇか。」
…あれ?
黒城も意外と言い訳得意なんじゃね?
「とりあえず、俺はチョークはできるだけ使わない方がいいと思いますよ。」
「あ?もしかしてお前、俺に指図する気か?」
指図じゃないんだけど……
それくらいでキレなくても…
だが、今日のお前はチョークを持っていない!
恐くないんだよ!
…正直、殺気だけでもかなり恐いんだけどね…
「…さてはお前、俺が今チョークを持っていないと思って調子にのってるな?」
バレた!?
「バカが…別に投げるモノはチョークじゃなくてもいいんだよ。例えば鉛筆とかな。」
それもそうだ!
やべっ!
俺かなりバカじゃん!
しかも鉛筆ってチョークよりも攻撃力あがってない!?
「ついでに言うなら、俺はチョークがもったいないから『使わない』だけで『使えない』わけじゃない。授業でも使ってるだろ?」
…あ。
「…ってわけで、素直に土下座して金を出すのと保健室送りにされて金を盗られるのとどっちがいい?」
恐喝!?
教師がそんな事していいのかよ!?
…ってかどうせ金を取られるなら土下座を選択するに決まってるだろ?
プライド?
そんなもんはとっくに捨ててるから。
「…すいませ……」
「遅いんだよ!!」
《ガスッ!》
「ぐぁっ!?」
問答無用!?
実際、俺即断したんだけど!?
決して遅くはなかったのはずなのに、黒城の手から放たれた白い物体はまっすぐに俺の額に直撃した…
…調子に乗りすぎたか……
………………。
…あれ?
まだ意識が無くならない…?
いつもならとっくに意識なんか無くなってるはずなのに…?
「…おい?まさか消しゴムをぶつけただけで気絶するのか?」
…消しゴム?
そういえばいつもよりは痛くない気が……
でも痛い事には変わりないけど。
「う……」
「お?ちゃんと意識あったか。それにしても、消しゴムでもそれなりに威力あるんだな?さすがにチョークほどではないけど。やっぱり持ち慣れたモノの方が威力が高いってことか。」
…人を実験体にするなよ。
「とりあえず、もうすぐ授業始まるから教室に帰れ。ただ、俺をナメたからには次の授業を楽しみにしておくんだな。あの女にも伝えておけ。」
まだ怒りがおさまらないの!?
俺そこまでした!?
…悠希はやったと思うけど。
でも、その伝言は悠希には絶対に伝えるわけにはいかないな。
だってアイツならどんな手を使ってでも逃げるから。
…最悪、大地を盾にする可能性だってある。
さすがにまた子供になられたらキツいし…
「…は、はい!」
…あぁ、次回の数学は憂鬱だな………
「…あ、待て!金置いていけ!」
マジで金取る気ですか!?