第54話〜お泊まり会(3)
「…さぁ、ついにこの時間が来たわよ。」
…来ちゃいましたね。
俺にとって最も不幸になる確率が高くなる時間が…
「『何が起こるかわからない!?ドキドキスゴロク大会』の始まり〜♪」
…ってスゴロクかよ!?
てっきりトランプでもやるのかなって思ってたのに!
その前にそのスゴロクはどこから出した!?
「……このスゴロク…手作りみたいな気がするんだけど…?」
「うん♪恭也と澪が買い物に行ってる間に私とスイレンで作ってた♪」
…ヤバそうな気がするのは俺だけか?
だけど今の内にマスに何が書いてあるのか確認しておけば多少覚悟は…
「ちなみにマス目にはシールが貼ってあるからどんな指示があるかは見てみないとわかんないよ?スイレンの案なんだけど、その方が面白そうでしょ?」
普通のスゴロクなら面白そうだけどな。
お前らのはスリルがありすぎて怖ぇよ!
「ちなみにボクと悠希で適当に作ったからボクらもどこにどんな指示があるかわからないよ。これなら公平でしょ?」
…どのみちスゴロクは運が左右される。
自分たちも危ないマスに止まる可能性があるからあまり変な指示は作ってないはず…だといいけど。
「それじゃ順番決めよっか?サイコロの目の大きい順でいいよね?」
【順番】
悠希⇒澪⇒スイレン⇒恭也
…俺が最後か……
まぁ、最終的にゴールに行けば別にいいんだが……
「それじゃ行くよ〜♪それっ!」
力込めてふっても目は変わらないって。
もう少し軽くふれよ。
「…3か…ビミョ〜じゃない?」
「いいから進め。」
「はいはい。…え〜と、『次の自分の番まで喋っちゃダメ』だって。」
…本当にあまり危ない事は書いてないんだな。
ずっとこれくらいのレベルならいいけど。
「……3…」
「澪も!?ってかいつの間にふった!?」
4人中2人も沈黙なんて…
「スイレン…絶対に3は出すなよ?俺は沈黙した中でプレイするの嫌だからな?」
「そ、そうだね。頑張るよ。それ!」
…でもこういう流れの時はたいてい3が出るんだよな。
「やった!5だよ!」
「マジ!?」
スゴロクの神様ありがとう!
「…えーと、このマスの指示は……『次の自分の番まで口を開いちゃダメ』……」
結局ダメじゃねぇか!
前言撤回!
このスゴロクに神はいねぇ!
「………」
「………」
「………」
…さっさとサイコロふって喋れるようにしてやろう。
それっ!
……1かよ…
運ねぇ…(泣)
そして周りが何も言ってくれないのがすごくさびしい…
『最初から1なんて残念だね。』
…スゴロクに慰められてもなぁ……
『かわいそうだから特別に10マス進んでいいよ。ただしマスの指示に従うこと。』
うおぉ!?
一気に10マス!?
ラッキーじゃん!
これで一気に差をつけることができ……
…『スタートに戻る』
…………。
…カンペキに嫌がらせだよな?
「…ぷっ!」
「…スイレン今笑っただろ?お前が書いた指示か?」
「………。」
…そうか、喋っちゃダメなんだよな。
でも首をふるくらいはしろよ。
「ハハハ(笑)恭也、運ないね!ちなみにコレは偶然だよ?『スタートに戻る』は私が書いたけど、『10マス進め』は私書いてないもん。」
…イヤな偶然。
「さーて、喋れるようになったついでに一気に進ませてもらうわよ!」
こういう事いうとたいてい1が……
って6かよ!?
マジで一気に進みやがった。
「やった〜♪さて、ここはどんな指示が…」
『2進む。ただしマスの指示に従うこと。』
運よすぎ!
合計で8マスも進んでるじゃねぇか!
「…………。」
「…ん?どうした?8マスも進めるのに嬉しくないのか?」
「…ここから2マス進んだらさぁ、恭也が止まったマスじゃない?」
「…あ。」
『スタートに戻る。』
…最初からスタートに戻る確率高くないか?
しかもなんで『…進め』の時に『指示に従うこと』とか書いてんだよ!
それのせいで全然進まないじゃねぇか!
…ん?
何だ?
スイレンが俺の袖を引っ張って…
(ゴメン!思いっきり笑っていい!?)
…わざわざ紙に書いてまで聞きたい事か?
しかも相当笑いをこらえながら…
「自分の番までガマンしろ。」
(そんなぁ…)
「次スイレンの番だからもう笑っていいんじゃない?」
…はい?
もしかして見てない間にもう澪の番終わった?
「ちなみに澪は2マス進んだから。」
「…そこって確かスイレンが止まった場所じゃなかったか?」
「うん。」
……って事はまた澪は『喋っちゃダメ』か?
「ギャハハハハ!みんな運なさすぎ!普通のマスもあるのに変なマスばっかり!」
「お前と悠希が作ったからだよ!」
「アンタもスタートに戻っちゃえ!」
「…実際確率は高いよね。ボクの位置からだと4か6出したらスタートに戻っちゃうからね。」
「「出せ!」」
「ヤだよ!それっ!」
………5……?
「やった〜!スタートに戻らなくて済んだ!」
「しかも大きい数字だし…変な指示出ろ!」
「そうそう変な指示ばかり出ないって(笑)」
『3歩進んで2歩下がる。ついでに指示にも従うこと。』
…結局1進むじゃねぇか。
ってことは…?
『スタートに戻る。』
「…なぁ、このスゴロク本当にゴールできんの?」
「…わかんない。」
「…正直キツいと思う。」
…………。
「…もし次に誰かが『スタートに戻る』に止まったらもうやめね?」
「「賛成。」」
…とりあえず1を出したらおしまいだな。
…1出ろ!
…………6……
未知のマスか…
怖いな…
えーと、指示は……
『あなたの次の人に命令を出す事ができる。』
「げっ!それは私が書いた…!」
「ハハハ!墓穴掘っちゃったね!」
「ほほぉ…ここはラッキーマスだな。」
さて、何を命令しようか……
「…じゃまずはベッドの上に寝てくれ。」
「な…!私に何する気よ!?」
「……恭也君…本当に何する気…?」
「ボクのベッドで変な事しないでよ?」
変な事って何だよ?
「いいから早く寝ろよ。ちゃんと目も瞑ってな。」
「…確認しとくけど、恭也ってロリコンじゃないよね?」
「んなわけねぇだろ!ってか何の確認だ!」
だいたいにこの指示とロリコンって関係ないじゃねぇか!
「…寝たよ?これだけ?」
それだけで終わるわけがないだろ。
「じゃその状態でヒツジを50匹数えろ。」
「…え?」
「キミ…まさか…」
「……これだけで悠希さんが寝ると思ってる…?」
思ってる。
だって実際に悠希は子供の頃にそれで寝た事があるし、スイレンのベッドはフカフカで気持ちいいから余計に眠りやすくなってるはずだ。
悠希が寝ればスゴロクも終わるだろうし。
…終わるよな?
「バカにしないでよ!そんなんで寝るわけないでしょ!見てなさい!ヒツジが一匹、ヒツジが二匹、ヒツジが………」
「……そんな大声で数えなくても…」
「多分これくらいやらなくちゃ本当に寝ちゃいそうなんじゃない?」
「……ヒツジが五匹………ヒツジが六匹……」
「……間隔が空いてきてない…?」
「声も小さくなってきたし…ってかまだ六匹目だよ!?いくらなんでも早すぎるでしょ!?」
「………ヒツジ…が…七匹……ヒツ…ジ……が……はち…匹…………ヒツジ…が………くぅ…………」
「いや、くぅじゃないでしょ!?本当に寝ちゃったの!?」
「……周りでこれだけ騒いでるのに…ある意味スゴいかも…」
…俺もここまで早く寝るとは思わなかった。
「…とりあえず、これでスゴロクは終わりだな?さすがに悠希が寝たら続行できないだろ?」
「……それが狙いだったの…?」
「うん。」
「…それはいいんだけど、ボクはどこで寝ればいいの?」
実はそこも考えての指示でもある。
スゴロクも終わらせる事ができるし、スイレンへのささやかな嫌がらせもできる。
うん、ナイスな一石二鳥だ。
「……私が悠希さ…ちゃんと一緒に寝たい…」
「いや、それは別にいいけど…それじゃボクは別な部屋で寝るってこと?」
「そういう事だな。じゃ、俺は先に寝てるから。」
一番イタズラしそうなヤツはすでに眠った…
澪も悠希(小)の事を気に入ってるからわざわざ俺にイタズラなんかしないだろうし、スイレンは一人でイタズラするようなタイプじゃないはずだ。
これで安心して寝る事ができる。
「…ねぇ、キミさぁ今日ボクに結構嫌がらせしてきてない?」
「気のせいじゃないか?もしそうだったとしても自業自得ってやつだろ。」
「…真夜中にイタズラされるのと早朝にイタズラされるの、どっちがいい?」
「お前多分俺より先に寝て俺より遅く起きるんじゃないの?」
「…………。」
お前は寝るのが大好きなヤツだから夜と朝は怖くないんだよ。
悠希が寝たからには怖いものなどない!
「…覚えてろぉ!」
いや、正直覚えておきたくないし。
「……それじゃおやすみ…」
「あぁ、おやすみ。悠希を抱き枕にするのはいいが、寝相には気をつけろよ?」
「……大丈夫…縛っておくから…」
…悠希がかわいそう。
まぁ、助ける気はないけど。
……さてと、それじゃ俺も寝るかな。
明日も朝から疲れそうだし……
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「……というわけで、仕返ししたいからさぁ…手伝ってほしいんだよね。キミ、そういうの好きでしょ?」
『うん♪大好き♪』
「それじゃ深夜によろしく。多分ボク寝てるから決行する時に起こしてね。」
『わかった〜♪』
…これでよしっと。
きっと恭也君は油断しきってる。
まさかボクがここまでするなんて思わないだろうし……
ふふふ…深夜が楽しみだ。
…予想外に長くなってしまったお泊まり会…悠希はいつまで子供のままなんでしょうね? なるべく早く次の話には移りたいんですけどね。 他に書く事がないので、今回はこの辺で。 感想等お待ちしています。