第51話〜悠希の自業自得な災難(?)
「…掃除当番ってめんどくさいよね?」
六時限目が終わった所で唐突に悠希からそんな質問がきた。
確かに掃除当番はめんどくさい。
でも、俺は今週の当番じゃないからそんなのは関係ない。
そう!
もう一度言うが、俺には関係のない話だ!
だが、悠希がこんな事を言ってくる目的は一つしかない…
「…誰か心優しい人が手伝ってくれたら早く終わるんだけどなぁ?」
「大地、悠希が手伝って欲しいってさ。」
「なぜ俺にふる!?ってか俺も別な所の当番だから!」
ちっ!
役にたたねぇな!
「じゃ澪…」
「澪ならとっくに逃げたわよ?」
逃げ足早っ!?
悠希の話を聞いた瞬間にこうなる事を予測してたのか!?
「いいから大人しく手伝いなさいよ。」
「いやいやいや!別に俺はお前を手伝う必要ないよね!?なんでそんなに上から目線なの!?」
「…文句ある?」
「あるに決まっ…!」
《ベキッ!》
「…いや、文句ありません。」
「よろしい。」
…さて、問題。
今コイツは何をしたでしょうか?
1:鉛筆を折った
2:シャープペンシルを折った
3:定規を折った
正解は…………
「…大丈夫か?」
「…大丈夫……じゃ…な…い……」
…4:大地の肋骨を折った(多分)でした。
さすがにすぐには復活できないみたいだな…
ま、大地ならその内治るだろ。
「…お…俺が……何を…し…た…?」
「近かったから。」
それだけの理由で骨を折られたらたまったもんじゃないな。
当然目の前でそんな事をされたら文句があるなんて言えるわけがない。
「…仕方ない、手伝ってやるよ。…で、場所は?」
「体育館。」
…めんどくさっ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【体育館】
「さ〜て、部活が始まるまでに掃除を終わらせなきゃね♪」
…部活やったらまた掃除しなきゃいけないんだから、やる意味なんかないよな?
ま、そうはいかないんだろうけど。
…それよりさぁ……
「…掃除の係って確か六人だったよな?」
「そうだけど?」
周りを見渡しても誰もいないような…
「…他の人は?」
「風邪が一人、早退が一人、残りの三人は黒城先生の被害者に…」
なるほど……
だから俺を誘ったんだな?
「こんな広いところ、一人じゃ大変だからさぁ。とりあえず頼んだわよ?」
「…へ〜い。」
要は体育館全体をモップを引きずりながら歩き回ればいいんだろ?
少し言い方は悪いが、それだけでいいならすぐに終わりそうだな。
「…でもさぁ、ただ掃除するだけってつまんないと思わない?」
いや、掃除に面白さを求めてどうする?
「そこで!私いいこと思いついたんだ♪」
…悪いこと思いつきやがったな?
「体育館の両端から同時にモップがけして、より多い面積を掃除した方が勝ちってのは?」
「却下。」
「早っ!?何で!?」
冷静に考えればわかるだろ!
「誰が陸上部相手にそんな勝負をする?負けるのはわかりきってるじゃねぇか!」
「あ、バレた?」
このやろう…!
どうせ負けたらとんでもない事させるつもりだったんだろ!
「仕方ないわね…それじゃ普通に…………」
そうそう、普通に掃除を…………
「……遊ぼっか♪」
「遊びより掃除を優先しろぉ!!!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【部室:ヒカリ視点】
そろそろ部活を開始する時間。
…でも今日はまだ私とカゲリちゃんと澪さんの三人しか来ていない。
他の2人はどうしたんだろう…?
「ねぇ、キョーヤは〜?」
「……悠希さんに誘拐されて体育館掃除…」
…恭也さんがかわいそうになってきた……
いや、いつもの事なんでしょうけど…
「…ところで大地さんは?」
「……さぁ…?…私、途中で逃げたから…」
…もしかして恭也さんと一緒に悠希さんの手伝いをされてるのかな?
「ダイチならさっき保健室にいたよ?」
「えっ!?な、何でですか!?」
体調不良!?
それともケガ!?
「何か骨折とか言ってたような…ま、ダイチなら大丈夫でしょ(笑)」
骨折して大丈夫なわけないでしょ!?
「私ちょっと見てきます!」
「……いってらっしゃい…」
普通に学校生活をしているなら骨折するなんてまずあり得ない!
きっと誰かにやられたんだ!
絶対犯人を見つけて大地さんのかたきを!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【カゲリ視点】
「…ヒカリ行っちゃったね。」
「……うん…」
ってか部活をサボっていかなくても…
そこまでダイチの事が心配なのかなぁ?
…でも……♪
「…レイ、ヒマじゃない?」
「……ヒマ…」
「それじゃ見学に行かない?」
「……何を…?」
「私の予想だとこの後面白い事が起きそうなんだよね♪」
「……面白い事…?」
「ま、体育館に行けばわかるよ♪」
「………?」
ヒカリの考えそうな事はだいたいわかるしね♪
だとしたら間違いなくヒカリは……♪
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【体育館】
「…ふぅ、終わった〜。よし、部活行こうっと♪」
「待て待て待て!お前まだ4分の1しかやってないじゃねぇか!」
手抜きにも程があるだろ!
コラ!マジで行こうとするな!
「なによ?私は女の子なんだから男のアンタが多めにやるのが普通なんじゃない?」
…お前はもう女じゃなくて男として見た方がいいと思う。
たまたま近くにいたヤツの骨を折る女なんかいないぞ?
…いや、そういう男もいないよな。
「キョーヤ&ユーキ発見!」
「あ、カゲリだ。」
…問題児が増えたし。
カゲリが来たならこっちからは下手に関わらない方がいいよな。
……絶対に逆らえないから(泣)
だって二対一なら絶対に勝てないじゃん!
「……いろいろ大変そうだね…」
「…あぁ。」
わかってくれるならアイツらの暴走を止めてほしい…
多分無理だろうけど…
「…ところでお前ら何しに来たんだ?」
「……さぁ…?…私はカゲリさんに連れてこられただけだから…」
…カゲリが?
何か悪い事が起きそうな予感…
「あれ?そういえばヒカリは?」
「ヒカリなら保健室に行ったよ。多分もうすぐ……♪」
最後の『♪』は何!?
絶対悪い事考えてるだろ!!
「……逃げた方がいいんじゃない…?」
「それはそうなんだが…多分手遅れになる気がする…」
それが俺の悲しい宿命なのさ(泣)
「あ!ヒカリが来た〜♪」
…ほらね。
…待てよ?
今回はヒカリ関連?
珍しいな…
「おい、カゲリ?ヒカリに何かあったのか?」
気のせいか、不機嫌に見えるんだが…
「ん?それは見てればわかるよ♪」
何か起きてからじゃ手遅れになるから聞いてるんだけど?
…ってかお前は止める気ないんだな?
「…ヒカリ?どうしたの?」
「…悠希さん…」
《パァンッ!!》
…なっ!?
「……え?」
「…アナタがあんな事をする人とは思いませんでした。少し反省してください。」
…ヒ、ヒカリが……お、怒って…る?
ってかまさかヒカリが悠希にビンタ………
……ならまだいいんだが……
「ちょ、ちょっと!ヒカリ!?」
「お前…そ、それ…」
「……まさか……拳銃……?」
《バタッ…》
体育館に悠希の倒れた音が響く…
そして沈黙……
当たり前だ…
いくら何でも拳銃は………
「…そんなわけないじゃないですか。いくら何でもそんなものは造りませんよ。」
いや、でもお前が手に持ってるそれは…!
「安心してくださいよ。弾なんか入ってませんから。……針は入ってますけど。」
…十分危険物だと思うのは俺だけ?
「ヒカリ!まさかそれって……」
「そう、例の新作♪」
…おい?
お前らまた変なの造りやがったのか!?
今度は一体何を……
「……恭也君…悠希さんが…」
「ん?どうし……!」
な…!?
「いった〜…ちょっとヒカリ!アンタいきなり何すんのよ!」
……………。
「…?どうしたの?みんな私に注目して?」
「ヒカリ、これって…♪」
「どうやら成功みたいですね♪」
「……あり得ない…」
コイツら…こんなものまで造れるのかよ…!?
「ちょっと!?何よ!?私に何かあったの!?黙って見てないで誰か説明しなさいよ!」
…いや、教えたら騒ぎになると思うんだが……
ま、かと言って教えないわけにもいかないしな……
「…悠希、とりあえず立ってみろ?」
「…?」
立ったら違和感に気がつくだろ。
「…あれ?みんな…そんなに身長高かったっけ?」
「…いや、『俺たち』は何の変化もない。」
「…ってことはもしかして私が………?」
気づいたみたいだな…
「……はい、鏡…」
「な、何よこれ!!!?」
「ユーキ、声でかすぎだよ?」
「だ、だって!何で私が『子供』になってんの!?」
そう、ヒカリの発明品によって悠希は子供の姿になってしまったのだ。
多分、針に薬品でも仕込んでたんだろう…
…普通に考えてあり得ないけど。
何でこんなすごいもの造れるの?
ちなみに今の悠希はだいたい小学生くらいの姿かな?
「ヒカリ!今すぐ元に戻しなさいよ!」
「反省したら戻してあげますよ。ただ、元に戻す薬はまだ造ってませんけどね。」
「…!?」
使う前に造っとけよ!
失敗したらどうする気だったんだ!?
ってか成功するかどうかわからないモノを使うな!
「…ちなみに今から造ったらどのくらいで完成するの?」
「そうですね…明日には完成するんじゃないですか?」
「ふざけないでよ!この姿じゃ帰ることもできないじゃない!」
…親も信じてくれるわけないしな。
「……別にこのままでもいいんじゃない…?…かわいいし…」
「元からかわいいでしょ?」
「……………。」
「何よ、その目は!?何か言ってよ!」
「…で、マジでどうすんの?」
「明日は確か休みじゃなかった?だから誰かの家に泊めてもらえればいいんだけど…」
「……私の家に来る…?」
「…やめとく。何か嫌な予感がする。」
…確かに。
以前KYO-YAにネコミミとかつけてた事あるからな…
「……残念…もっとかわいくしようと思ったのに…」
予感的中!?
「ならさぁ、みんなで誰かの家に泊まろうよ♪その方が面白いし♪」
面白さより造る方を優先しろよ…
そんなんじゃいつまでたっても完成しないじゃん。
「さんせ〜い♪」
悠希!?
お前はそれでいいの!?
「カゲリちゃん、私たちは薬を造る方を優先しなきゃ。」
「え〜!」
いや、そっちが正しい選択だから。
「それじゃどこに泊まろっか?当然私の家はダメだし。」
「……私の家は…?」
「カゲリたちの家に行ったら邪魔になっちゃいそうだし…」
「……無視…?」
「というわけで、恭也の家に行ってもいい?」
やっぱりそういう流れになる?
…でもなぁ……
「俺の家もダメ。」
「何で!?アンタ一人暮らしだから別に問題ないでしょ!?」
「一人暮らしだから他の人が寝る場所がないんだよ。ベッドは一つしかないし、布団なんてものもない。」
あっても邪魔なだけだからな。
これで俺の家も泊まるのは……
「…じゃ一緒のベッドで寝る?」
「バカなこと言ってんじゃねぇよ!」
何考えてんだこのバカは!?
だいたいに澪もいるだろうが!
「……恭也君の家がダメなら私の家が…」
「澪の家って親いなかったっけ?」
「………いる……」
「じゃ却下で♪」
「…………。」
でも他に一人暮らしでベッドや布団があるヤツなんて………
……あ!
「ちょうどいい所があったぞ!」
「え?」
「……どこ…?」
アイツの家なら大丈夫だろ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「なるほどねぇ…それなら別に泊まりに来てもいいけど。」
「それじゃよろしくな。スイレン。」
…断られなくてよかった〜。
もし断られたら無理やり俺の家に来るだろうからな。
「……恭也君…?…いつの間にその人とそんなに仲良くなったの…?」
「ん?そういえばいつの間にか仲良くなってたな。」
「安心しなよ。ボクはキミたちみたいに狙ってなんかないから(笑)」
「うるさいわよ!スイレン!」
…狙ってる?
何を?
「とりあえずこれで泊まる場所は決まったな?それじゃ俺は帰るか…」
「何言ってんのよ?アンタも来るに決まってるでしょ?」
いや、決まってないと思うけど?
「言っておくが、無理やり連れて行くのは不可能だぞ?今のお前や澪にそんな力はないし、スイレンはそこまでするようなヤツじゃないから。」
「そうね、言うこと聞かないんだったら、私が元に戻ったらアンタの右腕を…………」
「行きます!」
…俺に自由はないのかなぁ?
「うわぁ…子供の脅しにビビってる…」
…見た目は子供でも中身は悪魔だぞ?
逆らえないって(泣)
「それじゃレッツゴ〜♪」
絶対ひどい目に会うんだろうなぁ…
……行きたくねぇ…
子供化…よくあるパターンですよね。 まぁ、あえてそれを使うのもありかなって思って書いてみました。 まさか老人化はマズいでしょうし… …今度試しにやってみようかな? とりあえず今回はこの辺で。 感想等お待ちしています。