第49話〜真夜中の学校(前編)
【深夜】
「…悠希?」
「な〜に?」
「現状を説明しろ!」
なぜ俺はこんな真夜中に、こんな場所で、こんな目にあわされているんだ!?
「え〜めんどくさいからパス。」
「ふざけんな!!どうせお前が首謀者だろ!」
…さて、そろそろ今の状況を説明しよう。
と言っても、俺の把握している状況だけだが…
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・現在地⇒学校の正門の前
・ここにいるメンバー⇒俺、悠希、カゲリ、スイレン
・俺の状況⇒ロープで縛られて身動きできない状況
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俺は部屋で寝ていたはずだよ?
それなのに何で目が覚めたらこんな状況になってるんだよ!
「人聞きが悪いなぁ…そりゃあ私が合い鍵を用意したけど、実行したのはカゲリだよ?」
計画犯罪!?
ってか合い鍵なんていつの間に用意した!?
「ユーキも手伝ったじゃん!?私のせいにしないでよ!」
「あ、言っとくけどボクは何もしてないよ?キミの就寝時間をこの2人に教えただけ。」
…テメェら全員誘拐の罪で通報してやろうか?
「…目的は何だ?」
「さすが恭也!諦めが早い!」
「いいから話せや!」
「そうね…ちょっと恭也に手伝ってほしいことがあってね。」
…『手伝ってほしい』じゃなくて『手伝え』だろ?
無理やり手伝わせるくせしやがって…!
「…何を?」
「それは……
『望壮高校23不思議』の解明よ!」
……そういやそんなのあったな。(第31話)
確かにこのメンバーはそういうの調べそうなヤツらだな。
悠希とカゲリは前回調べてたし、スイレンも情報通なんだから知らないものは知りたくなるだろう。
俺は正直どうでもいいんだけど…
「よし!それじゃ行くわよ!」
「「お〜!」」
「はぁ…。」
もうどうでもいいから早くこのロープをほどいてくれ。
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【音楽室】
「まずは音楽室の不思議からね。」
「どんな不思議なんだ?」
まさかよくある『勝手にピアノが鳴る』とか『音楽家の肖像画が動く』とかじゃないよな?
「確か…『ワープの曲』っていう名前の不思議だったはずよ。」
…何それ?
「やっぱりキミは知らないみたいだね?簡単に説明すると夜中にある曲を弾くと、いつの間にか気を失ってしまって目が覚めたら別な部屋にワープしてるって話だよ。」
「そんな事あるわけないだろ!?」
不思議を通り越して怪奇現象じゃねぇか!?
仮にそれが本当なら解明なんかできないって!
「…ってわけでキョーヤが挑戦してみてよ。」
「何で俺が!?」
「だってキミ半信半疑でしょ?」
「そうよ。それとも…怖いの?」
…なめやがって!
「いいだろう!やってやる!」
「お〜!キミって本当に単純だね。」
「スイレン!それは言ったらダメだって!」
…それがお前らの本音か?
「…とりあえず、何の曲を弾けばいいんだ?」
「それは………」
『……子守歌。』×3
…………。
………俺、この不思議の真相がわかった気がする…
「…そのワープした部屋っていうのはもしかして保健室とかだったりする?」
「そうだけど…もしかしてキョーヤわかったの?」
いや、冷静に考えればすぐにわかるだろ?
「いいか?この不思議の真相は…」
…説明が面倒だから簡単に言うと、
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1:子守歌を演奏
2:深夜のため、その内睡魔に襲われる
3:寝てしまう
4:警備員などがその人を発見
5:保健室に寝かせておく
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「…ってな事だろ。」
「さすがキョーヤ!」
「やっぱりあんたを連れてきて正解だったみたいね。」
「ま、ボクは最初から知ってたけどね♪」
ウソつくな!
俺の話を聞いて驚いた顔してたくせに!
「それじゃ次の場所へレッツゴー♪」
「「オー♪」」
まだやるの!?
一個でいいじゃん!
他のはまた違う機会にでも調べてくれ!
…もちろん俺抜きで。
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【廊下】
「次は…体育館ね。」
「「オー!」」
「………。」
…疲れた……
何でコイツらこんなに元気なわけ?
あれから5、6カ所は行ったのに…
…あ!コイツら何もやらないで全部俺にやらせてるからか。
「ほら、恭也。ちゃんと元気よく返事しなさいよ。」
「…へ〜い……」
「…私は『元気よく』返事しろって言ったんだけどなぁ?言うこと聞けない人は……」
「はい!スイマセンでした!」
「よろしい。」
…何様だよ。
でもそんな事言ったら多分ヤバい事になるだろうしな…
……俺弱っ…
『………ぃ…』
「…?」
ん?
今何か聞こえたような気が…
「…ねぇ、今何か聞こえなかった?」
「ユーキも聞こえた?私も人の声みたいなのが……」
「おかしいな…警備員はみんなサボってるはずはなのに……」
今とんでもない事言わなかったか!?
『……ぉ…ぃ……』
「ちょっと!本当に何なのこの声!?今この学校には私たち以外誰もいないはずでしょ!?」
「こんな声23不思議に無かったはずでしょ!?怖いよ〜!」
…いや、真夜中に学校に来た時点で少しは覚悟しとけよ。
普通の七不思議にはこういうのもあることもあるんだから。
全く、少しはスイレンを見習って……
「…何してる?」
「ははは…ボ、ボクだってこういうのは苦手なんだもん。」
気がついたら俺の服を掴んでいた…
……お前ら何で真夜中に学校来たの?
「キョーヤは怖くないの?」
「当然……
怖いに決まってるじゃねぇか!!」
俺だってこういうのは苦手なんだよ!!
『……ぉ…ぃ…』
「また聞こえた〜!キョーヤ〜!」
「えぇい!まとわりつくな!とりあえずあの声は無視して…」
「…やっぱりコレは解明するしかないわね。」
何でそうなんの!?
どうせまた俺にやらせる気だろ!?
「というわけで恭也、頼んだわよ。」
「予想通りの事を言うな!当然断る!」
「怖いの?」
「そんな挑発に乗るか!」
「…………」
「…………」
「それでも男?」
「男女差別はいけないんだぞ?」
「…………」
「…………」
「…らちがあかないわね。仕方ない、全員で調べるか。」
…勝った!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【ある教室前廊下】
『……お〜い…』
「…声はこの教室から聞こえてるみたいね。」
ここって…
「…キョーヤ、ここって私たちの部室じゃない?」
「…そうだな。」
…ってことは?
「…お前らまた何か変なモノ造ったんじゃないだろうな?」
「ち、違うよ!少なくとも喋るようなモノは造ってない…はず。」
はずって何だよ!?
「…とりあえずキミたち姉妹が造った可能性が一番高いね。…ってなわけでキミが調べてきてよ。」
「私!?やだよ!?本当にオバケだったらどうすんの!?」
「ある意味貴重な体験ができるんじゃない?」
「そんな体験したくない!」
「だって、キミたちって危ないモノばっか造ってるからさぁ…ボクたちが調べに行って危ない目にあっちゃ困るし。」
「うっ…!わ、わかったわよ!」
お?
諦めが早いな?
「キョーヤ!部長命令よ!私の代わりに調べてきて!」
「ふざけんな!今は部長とか関係ないだろ!」
そもそもお前部長だっけ!?
いつもヒカリが仕切ってる気がするけど…
「…仕方ないわね。みんなイヤみたいだし公平に多数決で決めよ?」
…それってもしかして……
「恭也がいいと思う人〜?」
「「は〜い♪」」
「よし!恭也に決定ね♪」
全然公平じゃねぇじゃん!
最初から俺に行かせる気だろ!
「…えぇい!仕方ない!こうなったら行ってやる!」
「おぉ!キョーヤがやる気だした!」
どうせ誰も行く気がないなら俺が行くしかないだろ!
このまま帰ったら気になってしょうがなくなるし。
「しゃあ!オバケでも何でも出てこいや!」
「…恭也、ヤケクソになってない?」
《ガラッ!》
ドアを開けて教室の中を見てみると、一カ所だけパソコンの光で薄明るくなっていた。
そこには見覚えのある顔が……
『………あ…』
「………あ…」
…なるほど、コイツが犯人か。
「キョーヤ、中の様子は?」
「大丈夫だ。犯人はコイツだよ。」
『犯人って何のだよ!?俺はただ人を呼ぼうとして…』
「…何コレ?」
「…パソコンがしゃべってる?」
あぁ、この2人はコイツに会うのは初めてか。
『…ん?久しぶりだな、悠希。もう一人は知らねぇ顔だな?』
「あ、初めまして。」
「いいよ、コイツに挨拶なんかしなくても。」
『ひどくね!?』
別にひどくないよ。
相手がお前ならな。
「もしかして…前に暴走したロボットの?」
「そう。それをヒカリが直してパソコンにいれたんだ。」
「名前はKYO-YAって言うんだよ。」
「…ボクにはサッパリわからないんだけど?」
「簡単に言うとキョーヤの人格を持ったオモチャだよ♪」
『オモチャって言うんじゃねぇ!』
…実際オモチャとして扱われてたじゃん。
最近見ないと思ったら、どうやらオモチャにされるのがイヤで昼間はおとなしくしてたみたいだな。
おかげですっかり忘れてたよ。
「オモチャじゃないならもう必要ないから消しちゃおうか?」
『待て待て待て!俺だって役に立つって!だから消すな!』
「お前が何の役に立つって言うんだよ?」
『とりあえず体を造ってもらえば…』
「また逃げるつもりだろ?」
『…………。』
「カゲリ、やっぱりコイツ消した方がいいと思うぞ?まだ反省してないみたいだし。」
「そうだね。」
『ヤメロ〜!』
全く…まだ諦めてないのか。
おかげで無駄な時間を過ごしちまったよ。
…最初からムダな気もするけど。
「…で、お前が人を呼んでた理由はなんだ?くだらない理由だったら本当に消すぞ?」
『決してくだらなくはないから消すな!俺は苦情を言おうとして警備員を呼んでたんだ!』
…残念ながら今日はサボっているそうです。
「ねぇ元ニセ恭也、苦情ってなんの?」
『KYO-YAって呼べ!わかりにくいだろ!』
「そういうツッコミはいいから早く苦情の内容を言ってくれないかい?パソコン君。」
…お前ら完全に遊んでるだろ?
『…笑い声だよ。』
「笑い声?そんなの聞こえたか?」
「いや、私は聞いてないけど?」
「ボクも聞いてないよ?」
「私も。」
…全員が聞いてないとなると、考えられるのは一つだけだな。
「嘘ついてないでさっさと本当の事を言え。」
『本当だって!笑い声がしたんだって!とりあえず電源ボタンから手を離して!』
おっと、危うく押すところだった。
…いや、別に押しちゃってもよかったか。
『知らないってことはお前らの声じゃないんだな?』
「そうだ。いい加減そんなウソは……」
《……クスクス…》
…………。
い、いや!今のは空耳だろ!
「…い、今…笑い声が……!」
「気のせいだ、だから気にするなカゲリ。」
「…ボクも聞こえたんだけど?」
「わ、私も…!」
…どうやら気のせいじゃないみたい?
《……クスクスクス……キャハハ…》
「…ねぇ、だんだん近づいてきてない?」
た、確かに笑い声がだんだん大きくなってるような…
『…なぁ、幽霊って人工知能も祟ったりするのかな?』
「知るか!」
《………クスクスクス…》
…ヤバいって!
確実にここに近づいてきてる…!
これは逃げた方が…!
「お前ら!早く逃げ……」
…あれ?
『他の連中ならもう逃げたぞ?』
置いて行かれた!?
一言くらい言ってくれよ!
…ってか一緒に逃げようよ!
《………誰かいるの…?》
『じゃ俺は省電力モードに切り替えるんで。』
「待て!この状況で一人にするな!」
『……………』
「一人にするなってぇぇぇぇぇ!!!」
《………この教室かなぁ………?》
もう教室の前に!?
これじゃ逃げれ……!
〈ガラッ!〉
「……………」
「……………」
「……夜中に学校に忍び込む悪い子見〜つけた♪」
………見つかっちゃった…(泣)
〜続く〜