第40話〜切り札登場!
【恭也視点】
しゃあ!
久しぶりに俺視点だ!
…全く、主人公の俺が出番少ないってどういう事だよ。
おかげで自分のキャラを忘れかけちまったじゃねぇか!
こんなんでいいんだよな?
よし!
いいって事にしておこう!
「ちょっと!恭也!ちゃんと私の話を聞いてるの?」
「ああ、ちゃんと聞いてるって。」
その前にここまでの経緯を説明しなくちゃいけないだろ?
…まぁ、赤樹と戦うのを避けたかった俺はとりあえず見つかりにくいだろうという理由で、この林の奥まで来たっていう話なんだけどな。
それにしても、改めてこの学校はすごいと思ったね。
みんなここを林とか言ってたから俺もそう言ってたけど、実際これって森の方が表現合ってるんじゃねぇのかって思う。
どんだけ敷地広いんだよ…
でも、そのおかげであまり人と会う事もないからこうやってゆっくり話し合いが出来るんだけどな。
「…ボーっとしてないで人の話を聞けぇ!」
「ぬぉっ!?」
危ねぇ!!
危うく殺られるところだった…!
…ってか普通、ボーっとしてるだけでバットで殴りかかるか?
しかもそのバットはどこから出した?
「いい?さっきも言ったけど、私たちがしっかりしないと優勝できないのよ?」
…それってクラスメートが役に立たないって言ってるようなもんじゃないか?
そもそも学年レクの場合優勝じゃなくて単純に勝ちだけだと思うけど?
言い方が違うだけだけどな…
「とりあえず澪を探しつつ、他クラスの人を倒してくって感じで行くんだろ?」
「そうよ。」
「それなら早く行こうぜ!澪ちゃんの事が心配だ!」
「「お前が仕切ってんじゃねぇよ!」」
「…スミマセン。」
全く…大地のくせに…
「それじゃ早く行こうぜ?」
「そうね。」
「結局行くんじゃねぇか!だったら俺が言ったっていいじゃ……」
「「黙れ。」」
「…もしかしてさっきのまだ怒ってる?」
…実はこのバカは移動中に俺たちを酷い目に合わせたのだ…
だから俺と悠希は大地に対してこんな冷たい態度をとるようになった。
移動中に一体何があったのか…
それを説明する前に、悠希が俺たちに配ったアイテムの話をしよう。
開会式が始まる直前、悠希が俺に武器(小ハンマー)をくれたように、悠希は大地や澪にもアイテムを渡そうとしていたらしい。
もちろん、悠希もアイテムを持っている。
悠希は俺と澪には開会式の前に渡し、緋乃姉妹に自分のアイテムを見せてしまいそうな大地には後で渡す予定だったらしい…
それで、移動中に悠希が大地にアイテムを渡したのだが……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大地:『…何コレ?』
悠希:『見りゃわかるでしょ?それがあんたのアイテムよ。』
大地:『…このミカンの皮が?』
悠希:『そうよ。それを相手の目に向かって絞れば汁が相手の目を封じてくれるんだから。』
大地:『…………。』
悠希:『それで相手が何も見えなくなった時に恭也が相手のハチマキを取ればいいって事よ♪』
大地:『…あれ?この皮乾いてて汁が出ないぞ?』
悠希:『え?今朝剥いてきたばかりの皮なんだけどな…ちょっと貸しなさいよ!』
大地:『あっ!』
悠希:『どれどれ…?そんなに乾いてるようには見えないけど…』
大地:『ちょっと待て悠希!そっちは…!』
悠希:『きゃあ!!汁が目に入ったぁ!』
大地:『…そっちは汁が出そうな方だったのに…遅かったか…』
悠希:『目が痛いよぉ〜!』
恭也:『バカ!汁が手についてるのにそんなに振り回したら…ぐわっ!汁が飛んできたぁ!目がぁ!』
大地:『…俺知〜らね…』
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…という事になってしまった。
もちろんその後に大地を半殺しにしたけどな…
「俺は何もしてないぞ!?お前らが勝手に…」
いや、例えお前が何もしてなくてもさぁ…
例えば、イライラしてる時って何か殴りたくなるだろ?
それと同じ理屈だと思え。
「…ところで、澪にはどんなアイテムを持たせたんだ?」
「ん?何も持たせてないけど?」
へぇ、そうなんだぁ…
…………。
…ちょっと待て!!
「持たせてないって…それがどうしたの?ってノリで言うな!!他クラスのヤツに狙われたら終わりじゃねぇか!」
「だって…澪ってばリュックの中にとんでもないモノ入れてたんだもん…」
とんでもないモノ…?
「だから澪にはアイテム必要ないかなぁ…って思ってさ。」
「…何かすっげえ気になるんだけど?」
「特別に教えてあげようか?」
「…それってプライバシーの侵害じゃないのか?」
「知りたくないならいいけど?」
「ぜひ教えてくれ。」
今知っておかないと後々ヤバい事になる気がする…
悲しいけど、こういう勘は割と当たるからな。
それなら前もって覚悟を決めておいた方がいいに決まっている。
「実は澪のリュックの中にはね…」
「中には…?」
「…三択クイズがいい?それとも四択?」
「いいから早く教えろや!」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【澪視点】
その人は突然私の前に現れた。
「やぁ、君が澪っていう子?」
自分がどこを歩いてるかもわからない中、いきなり頭上から声が聞こえてきた。
見れば、木の上で何かの作業をしている人がいた。
「……誰…?」
ここからじゃ顔もよく見えない。
だけど、少なくとも同じクラスの人ではないのは確か…
「ボクかい?ボクは………」
『バキッ!』
「「……あ…」」
木の上の人物が名乗ろうとした瞬間、その人が乗っていた枝が折れてしまった。
そしてそのまま落下。
その人は地面に腰を強く打ちつけて倒れ込んでしまった…
「〜〜〜っ!」
あまりの痛みに声も出ないみたいだ。
「……バカみたい…」
「う、うるさい!」
改めてその人を見てみる…
そして改めて思う…
「……バカみたい…」
「二回も言うな!ボクにだってプライドはあるんだぞ!?」
…プライド?
パジャマ姿のくせに?
「…コホン、じゃ改めて自己紹介しよう。ボクの名前は《枕谷 翠蓮》(まくらたに すいれん)。普通に《スイレン》って呼んでくれればいいよ。」
「……ふーん…」
正直どうでもいい。
さっきのバカな行動のせいで完全に興味が失せてしまった。
「…その反応傷つくんだけど?」
「……へぇ…」
「…もういいや。」
落ち込んで俯くその様子は…かわい……
…あれ?
そういえばこの人…男…?…それとも…女…?
とても顔だけじゃ判断できない…
名前も微妙だし…
髪型はショートカットだから…
男の子も女の子もショートカットの子はいるしなぁ…
「…?どうしたの?そんなにボクに興味を持ってくれたの?」
「……性別は…?」
「いや、要点だけ言わないで他にも話してよ!?ってか他に気になる事無いの!?何で君の名前知ってるかとかさ!?」
「……同学年だから知ってる人は知ってるでしょ…」
「…君ってボクが今まで話した人の中で一番話しにくい人だね。」
「……ふーん…性別は…?」
「…女だよ。」
「……へぇ…」
「…他に聞きたい事は無いの?」
「……無い…」
あ、落ち込んだ…
…このままってのも可哀想だし、本題に入ってあげようか。
「……アナタのハチマキくれない…?」
「単刀直入!?そんな事言われて渡す人はいないでしょ!?…ま、ボクは別にいいけどね。」
「…………え…?」
自分で聞いてみてビックリしたのは初めてだ。
まさかそんな返事が来るとは思わなかったから言葉に詰まってしまう。
「ボクA組なんだけどさぁ、別に勝っても嬉しくないんだよね。そっちのクラスは勝ったら焼き肉に行くらしいけど、多分ボクのクラスは何もやらないと思うんだよ。だからさ、ボクも焼き肉の時に招待してくれるって言うならボクのハチマキあげてもいいよ。」
…本気?
一応、理にかなってるけど…
もしかしたら油断させる作戦なのかもしれないし…
「言っておくけど、これは最大のチャンスだよ?ボクは加賀先生に『切り札』って呼ばれてるんだから。ボクの気が変わったらそっちのクラスは勝てなくなっちゃうかもよ?」
加賀先生が…!?
…………。
「……あの先生の事だから、どうせノリで言ったんでしょ…」
「ハハハ、ボクもそう思う(笑)…けど、実際ボクを相手にするのは面倒だよ?ほら、これボクの戦利品。」
「………!?」
彼女の手にはたくさんのハチマキ…
この人…一体何人を失格にしたの…!?
その上、疲労している様子は全く無い…
もしかして…加賀先生や赤樹君よりも厄介な存在なんじゃ…!
「ほら、どうする?早く決断しないと他の人が来ちゃうかもよ?もしA組の人が来ちゃうとボクはキミを失格にしなくちゃいけなくなっちゃうよ?じゃないとボクが責められちゃうからね。」
「……わかった…」
罠かもしれない…
でも、こんな厄介な人を今の内に失格に出来るのはチャンスだ。
だったら私がとるべき行動は一つしかない…!
「……アナタのハチマキ…もらう…」
「そうか。それなら早く取りに来てよ?ほら、心配なら手を後ろに回しておこうか?」
「……その必要はない…無理やり奪い取るから…!」
「…え!?」
私は背負っていたリュックからあるモノを取り出すと、それを相手に投げつけた。
私が投げつけたモノ、それは悠希さんから貰ったアイテム…
…爆竹だ。
『パァン!!』
「うわぁ!?」
さすがに私みたいな子がいきなりこんなモノを投げつけてくるなんて思わなかっただろう。
多分悠希さんもそう考えて私にこれを持たせてくれたんだと思う。
…勉強は出来ないのに何でこういう事に関しては頭がいいのかなぁ?
こういう人をずる賢いって言うのかな?
「あ〜ビックリした…!まさかいきなりそんな行動に出るなんてね。その爆竹、悠希って人に貰ったんでしょ?そんなモノ使わなくてもハチマキならあげるってば。」
「…………!?」
な…何で悠希さんの事まで!?
しかもこの爆竹を貰った時、周りの人には見られてなかったはず…!
この人は一体…!
「それより、何で爆竹投げたのに攻めてこないの?ただ投げつけるだけじゃ意味ないんじゃないの?」
…私はそんな一瞬で距離を詰めてハチマキを取れる程運動神経は良くない。
どうせ、つまづいて転ぶに決まっている。
「ねぇ聞いてる?質問に答えてくれない?」
「…………いいよ………まず何で普通にハチマキを取らないのか…他の人が頑張っているのに私だけが楽していいと思う…?」
「やっぱりキミはマジメだね…あくまで正々堂々戦って勝ちたいってわけか。」
「……そして…爆竹を使ったのは…攻める準備をするため…」
「…準備?」
そう、あの一瞬でハチマキを取る事は出来なくても、リュックの中から『それ』を出す事くらいは出来る。
幸い、相手はまだ気づいていないみたい。
…後は相手の注意を引きつけるだけ。
「げっ!スイレンじゃないッスか!?しかも澪さんまで!?」
「「!?」」
千秋君!?
…マズい!
相手が複数いるならこの手は使えない!
一度バレてしまったらもうスキをつくことも出来ない!
どうしよう…!?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…ん!?」
「どうした大地?」
「女の子の声が聞こえた!」
「…だから?」
「敵かもしれないでしょ?」
「こっちだ!」
「「話を聞けぇ!!」」
【状況整理】
恭也&悠希&大地⇒大地が勝手に行動、それを追いかける二人…
澪&翠蓮&千秋⇒千秋が乱入、澪はけっこうピンチ…?
カゲリ&黒城⇒失格
ヒカリ&赤樹&加賀&佐村⇒失格…?
【残り人数】
A組⇒15/41
B組⇒9/41
C組⇒8/41
D組⇒11/41
E組⇒12/41






