第35話〜開会式前
「よ〜し、お前らちゃんとジャージ持ってきたな?別に制服のままでもいいみたいだけど、どうせお前ら制服をボロボロにしたくはないだろ?だったらさっさとジャージに着替えてグラウンドに集合な。」
黒城の言葉を合図に、みんな制服からジャージに着替える為に更衣室へと向かう。
…ジャージもボロボロにしたらマズいと思うんだけど?
「イグにもジャージ着せた方がいいかな?」
いや、必要ないだろ!
その前にイグ用のジャージあるのかよ!?
「……良かったら使う…?」
「あ!ありがとう♪」
え!?あるの!?
何で澪がそんなものを持ってるんだよ!?
「あれ?これってもしかして手作り?」
「……うん…」
しかも手作り!?
ジャージって個人で作れるものなの!?
「じゃ、私達着替えてくるからね♪」
「……また後でね…」
悠希と澪は女子更衣室へと向かって行き、俺と大地は男子更衣室へと…
…あれ?
大地がいないような…
…もしかして…
俺は振り返って悠希達の向かった方向を見てみた。
たくさんの女子がはしゃぎながら女子更衣室へ向かっている。
そしてその中に…
…大地はいなかった。
アイツ本当にどこに行ったんだろう?
…とりあえずバカは置いといてさっさと着替えてくるか。
「キャーーー!!女子更衣室に男子がいる!!」
……そこにいたか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【グラウンド】
ジャージに着替えた俺達は決められた位置に並ばせられた。
…順番はバラバラだけどね。
天気は快晴、雲一つない…とは言わないが、ほとんどそんな感じの天気だ。
…中止になればよかったのに…
ちなみに、俺が今日学年レクを行うと知ったのは今日の朝。
悠希に聞いて初めて知ったのだ。
多分クラスの中には未だに何をやるか知らないヤツもいるだろう。
…黒城の野郎、連絡くらいちゃんとしろよ…
「学年レクねぇ…あんまりやる気は無いけど他のクラスの女子に良いところを見せるチャンスかな?」
このバカは…さっきあんな事やって女子に好かれる訳がない…あれ?
傷が一つもない?
驚異の自己再生能力でも持ってんのか?
「そういえばさっき女子更衣室に男子がいたみたいだけど、どこのどいつかわかるか?俺がもう二度とそんな事をしないようにお仕置きしてやるのに…」
…大地じゃないのか?
それなら一体誰が?
そんな事をするヤツが大地以外にもいるとは…
「…何か失礼な事を考えてないか?」
「気のせいだろ?いや、むしろお前のせいかもな。普段の行いが悪いからそういう風に思われるんだぞ?」
「やっぱり何か考えてたのかよ!?言っておくけど、俺は女子が嫌がるような事は絶対にやらないぞ!?」
…入学したての頃、嫌がる女子にしつこく付きまとってたのって誰だっけ?
「どうやらあれは勘違いだったみたいですよ?男子に見える女子がいたみたいで…私は見てないからよくわかんないんですけどね。」
この話し方は…ヒカリだな。
そう思って振り向くと、そこには赤いジャージ姿の双子がいた。
少し大きめのサイズなのか、袖から指が少ししか出ていない。
それが二人を子供っぽく見せる。
一言で言うならば、かわいい。
…言っておくけどロリコンじゃないからな?
てかさぁ…
指定ジャージじゃなくてもいいの?
周りを見てみるとみんな多種多様な服装をしている。
学校指定のジャージ、それ以外のジャージ、制服、部活のユニフォームになぜかメイド服のやつまでいた。
自由なら自由って一番最初に言っておけよな。
「…ところで悠希さんと澪さんはどこにいるんですか?」
そういえばアイツらどこにいるんだろう?
まだ来てないのかな?
「あの二人はまだ来てないみたいだよ?…ところでカゲリちゃん、いつ話し方を変えたの?」
え?カゲリ?
この話し方ってヒカリのはずじゃ…
「…あっちゃぁ〜、やっぱり女好きのダイチにはバレちゃったか…でもキョーヤは騙せたみたいだね♪」
…なっ!カゲリ!?
全然わからなかった!
そういえば普段大人しいはずのヒカリが話しかけてきて、普段騒がしいカゲリが黙っていたのは不自然だったな…
ってか大地すげぇ…!
多分この二人の見分けが出来るのはコイツだけなんじゃないのかな…?
「…どうですか?これでどっちがどっちだか分かりにくくなると思いませんか?」
確かに分かりにくい。
…なるほど、それを利用して何かの作戦にするつもりか…
ちなみに今喋ったのは本物のヒカリだ。
…あ〜、ややこしい!
「……今のうちに目印でもつけておく…?」
うわ!?
背後から澪の声がして俺は飛び退いた。
いきなりすぎてビックリするわ!
そして、澪の方を見てみると…
…何この格好?
澪が着てるのは…何て説明したらいいんだろうか…
「……どう…?…似合う…かな…?」
「うん!すごく似合うよ澪ちゃん!くの一ってヤツ?」
「……あんたに聞いてない…」
「ヒドッ!?」
そうだ、大地が言った通りに澪は忍者の姿をしていた。
…でも普通忍者の服って黒じゃない?
何でピンクなの?
忍者って目立っちゃダメじゃないの?
めちゃくちゃ目立ってるよ?
みんな澪の事を見てるし…
「……恭也君…私…似合ってるかな……?」
少し俯き気味で俺に聞く澪の顔は気のせいか少し赤く見えた。
こうして見ると澪も…何ていうか…かわいく見える。
「あ…う…うん!似合ってると思うぞ?かわいく見える。」
「…………ありがとう……うれしい……」
澪の顔がますます赤くなったように見えた。
声も小さなって最後の方はあまり聞き取れなかった。
「ゴホン!ところでレイ?ユーキはどこにいるの?」
いきなりの大きな声に俺と澪の体は一瞬ビクッと反応してしまった。
…も、もしかして怒ってる?
「……悠希さんなら…確か……」
「私はココよ!」
カゲリの問いかけに澪ではなく、本人のバカでかい声が答えた。
その方角にみんな視線を向ける。
…ちなみに『みんな』とは俺たちだけでなく、他の人たちも含めてだ。
あれだけ大きい声を出せば当たり前か…
…いや、それ以前の問題だった。
俺たちの視線の先にいたのは…もちろん悠希だが、問題はその格好だ。
「…何考えてんの、お前?」
「ふふふ…学年レクっていうのはね、他のクラスとの友好を築くものじゃないのよ?」
いや、質問の答えになってないし…
それに学年レクはそういうものだから!
「学年レクとは自分の強さを他者に見せつけ、恐怖を植え付け、逆らう者をいなくさせるイベントなのよ!」
絶対に違うから!
そんなイベント学校側が企画する訳ないだろ!
「…それとその格好の関連性は?」
「強い=軍人!だから私は迷彩服なのよ!」
まさにバカの発想!?
どう考えたらその結論にたどり着くんだよ!?
しかもイグまで迷彩服着てるし!?
着せる意味無くね!?
…ってか澪が作ったジャージはどうした!?
それとも、それも澪が作った服なのか!?
「……やっぱりサイズはピッタリみたいだね…よかった…」
予感的中!?
ジャージ以外にも作ってたんだ!?
…やべぇっ!!
最近、澪がマトモじゃなくなってきた!
元からこんな性格だったのか!?
それとも俺たちの影響のせいか!?
もしそうだったらスマン!!
「……どうしたの…?…急に悩んでるような顔して…」
「…いや、何でもない。気にしないで。」
「………?」
まさか『アナタがおかしくなってきた事に罪悪感を感じてました。』なんて言えないしな…
澪が頭に『?』を浮かべたままだけど、とりあえず話を進めておくか。
「悠希、今日のレクって具体的には何をやるんだ?」
「ん〜とねぇ、確かクラス対抗で『ハチマキ取り』だったかな?」
…ハチマキ取り?
「ルールは簡単、要は相手の頭に巻いてあるハチマキを奪えばいいだけ!手段は問わず!ハチマキを奪われた人はその場で即失格!そして、最後まで生き残ったクラスが優勝よ!」
…長い説明ご苦労様。
…ってよく聞いたらそれってかなり危ないんじゃないか?
手段問わずだろ?
絶対一人は怪我するヤツが出るだろ。
「しかも先生も参加するみたいよ?」
あ〜、100%怪我人出ちゃうね。
それって、加賀や黒城が参加するって事だろ?
それで怪我人0なんて奇跡が起こるはずないだろ。
…あ、今回は黒城は味方か?
だったら先生の中で気をつけなきゃいけないのは加賀だけか?
…他に変な先生がいなきゃいいけどな。
後は…赤樹にも気をつけないといけないのか…
ま、アイツなら多分奇襲してくる事はないと思うけど…
とりあえず用心しとかなきゃな。
おっと、今回は緋乃姉妹も敵なんだっけ?
…実は一番怖い相手だったりして?
コイツら、変な発明品ばっかり使ってくるから何してくるかわかんないんだよな…
…まさか危険なモノは使ってこないよな?
加賀の爆薬に匹敵するような…
…………。
…そ…そんなわけないよな!?
さすがにそこまでするような性格じゃ……
「それじゃ、そろそろ『新兵器』の準備でもしようか?」
「えっ!?カゲリちゃん、まさか『アレ』を使うの…?」
「もちろん♪『アレ』さえ使えば私たちの優勝間違いなし♪」
「…人に使っても大丈夫なのかなぁ?」
…オイオイオイ!
何かスゴく危ないもん造っちゃったんじゃねぇか!?
…ってか軽く言っちゃいけない事言ったよね?
『人に使っても大丈夫なのかなぁ?』って思うんならそんなモノを使うな!造るな!今すぐぶっ壊せ!
お前らは怪我人どころか死人を出すつもりか!?
「じゃまた後でね♪」
「…頑張って生き延びて下さいね?」
…自信ないなぁ。
こんな事なら仮病でも使って学校サボれば良かったかな?
…バレたら黒城に殺されるだろうけどね。
さて、緋乃姉妹もいなくなったし、後は開会式が始まるのを待つだけ…
「…何スか?この変な集団は?」
「全くだ。このクズ共は頭がおかしいんだろうな。」
…イヤなヤツが来ちゃったよ。
何しに来たんだ?
もうすぐ開会式が始まるっていうのに。
「オイ、お前。後で校舎裏に来い。そこで決着をつけてやる!」
あぁ、俺と戦いたいから呼び出しに来たのか。
「…わかったよ。」
絶対に校舎裏には近づいちゃいけない事がな。
「ちなみに、アンタは兄貴以外にも色んなヤツから狙われてるんスから、他のヤツらには負けないように注意するんスよ?アンタを倒すのは兄貴なんスから。」
…注意って言ったってさぁ、俺が何とかできる相手じゃねぇし。
それに赤樹とは戦わないから。
もうそっちの勝ちでいいから俺と関わるのやめてくれないかな?
「行くぞ、千秋。」
「はいッス!」
え!?
本当にそれを言いに来ただけ!?
…俺たちと馴れ合うつもりは無いってことか?
イヤなヤツだな。
…でも……
この2人のコスプレ見ちゃったらアイツがすぐに居なくなった理由がわかる気がするな。
なんていうか、同類に見られたくないよな。
「……今何か失礼な事考えなかった…?」
!!!!!
さすが澪!!
鋭い!!
「いや、絶対に何も考えてない!」
「……怪しい…」
完全に疑っちゃってるよ…
どうごまかしたらいいかな…?
…そうだ!
「いやぁ、実は澪のその姿がカワイイなぁって思ってさ…」
(少し照れてる感じで。)
「……そ…そう……?…な…なんか…照れちゃう…」
作戦成功!
心が痛むけど、体を痛めるよりはまだいい!
これでとりあえず開会式までは無事でいられ…
「…恭也ぁ?ちょっと話があるんだけどさぁ、あそこの草むらまで一緒に来てくれない?」
迷彩服を着た悪魔が現れた!?
前言撤回!
俺の命はここまでだ!
悠希は俺の腕を掴むと、そのまま俺を引きずっていった。
俺はアイコンタクトで大地に助けを求めたが、大地に悠希を止められるわけがないから、無駄に終わった。
「安心してよ恭也。すぐに楽にしてあげるから♪」
…それは安心できる事じゃないと思うんですけど?
「次回から主人公誰になるのかなぁ?私だったりして♪」
俺は死亡確定ですか?
「…さて、ここら辺でいいかな?それじゃ恭也、覚悟はいい?」
いや、全く覚悟できてません!
…あれ?
その鈍器どこから持ってきたの?
いや、そんなに振りかぶっちゃ危な…ぎゃあああぁぁぁぁ!!!!
…俺、次回ちゃんと生きてるかなぁ?
今回はあまり話は進んでませんね… やっぱりこれは長くなるかもしれませんね… なるべく長引かないように気をつけます。 短いですが、とりあえず今回はこの辺で。