第30話〜対戦・決着!(早っ!?)
「キョーヤ〜、がんばれ〜♪」
「ケガしないでくださいね。」
「そんな見た目だけのヤツに負けんじゃないぞ〜。」
「……負けたら罰ゲームね…」
…好き勝手言いやがって、誰のせいでこんな事になったと思ってんだ!
…そうか。
佐村のせいだっけ。
「そこのテメェ、この男の後はテメェをぶっ殺すからな。」
「俺!?」
大地よ、調子に乗るからそうなるんだぞ。
次からは気をつけた方がいいぞ?
「はい、竹刀ッス。ま、せめて一分くらいは耐えて欲しいッスね。」
…こんなチビにバカにされるとムカつくな。
上等じゃねぇか!
何とか頑張って二分は耐えてやる!
「負ける事前提で戦っちゃダメでしょ。」
うっ!?
心の中で考えてることにつっこまれた!?
誰だ!?
「あんたは剣道なんかほとんどやったこと無いんだから、あんたはあんたのやり方で戦いなさいよ。」
「…何で悠希がここにいるんだ?」
こいつ陸上部じゃなかったっけ?
「恭也が剣道部の人と戦うって聞いたからサボっちゃった♪」
どっからそんな情報仕入れてんだよ!
早すぎだろ!
しかも部活サボってんじゃねぇよ!
まぁ、俺らもサボってるけどさ…
「恭也、一つだけ言っておくわ。」
悠希は俺の耳元で囁くように言った。
「…無理して勝たなくていいから、昔みたいな事はやめてね。」
俺は無言で頷いた。
多分、悠希は俺が昔みたいにならないか心配で見に来たんだろう。
だが、俺もそこまでして勝ちたい相手じゃないからな。
ケガしないように戦うさ。
「…お前、剣道の経験無いのか?」
「ああ。」
「ちっ…ど素人か。くだらねぇ。」
うわっ、腹立つ。
部員がいなくなるのもわかるな。
「それならお前が俺の体のどこかに攻撃を当てたら勝ちってことにしてやるよ。別に剣道の技じゃなくてもいい。」
…ハンデってか?
なめやがって。
有り難いけど。
「頼むぞ神堂殿!そして拙者を助けてくだされ!」
あっ、忘れてた。
でもどうでもいいか。
「二人共、準備はいいッスか?そろそろ始めるッスよ?」
「俺はとっくに準備できてる。そこのクズはどうだ?」
さっきから人の事クズって…
落ち込むぞ?
「俺も準備は出来てる。さっさとやろう。」
俺は赤樹の正面に竹刀を持って立つ。
俺も赤樹も防具は付けていない。
俺は逃げやすいようにできるだけ装備はしない方がいいと考えたからで、赤樹は多分付けるのが面倒とか、そんな感じの理由だろう。
「じゃ……試合開始ッス!」
ヒュンッ!
うぉっ!危ねぇ!
試合開始の合図と同時に赤樹はいきなり俺の頭目掛けて竹刀を振ってきた。
俺はそれを何とか避けて、赤樹と距離をとる。
こういうヤツって大抵速攻で試合終わらせようとしていきなり攻めてくるだろうなって思っていたから避けれたけど、次は危ないかもな。
「ほぅ…それなりに出来るみたいだな。だけど、次はどうだ?」
そう言って赤樹はまるで刀を鞘にしまうかのように竹刀を自分の腰へと持っていった。
この構えは…居合い!?
隙がないな…
これじゃ下手に攻撃できない…
…ていうか結局お前も剣道じゃなくなってんじゃねぇか!!
確か剣道の技に居合いは無いよな!?
「おい、審判!これはもう剣道じゃない気がするんだけど!」
「兄貴が本気になったみたいッスね…どうやらあんたは潜在能力が高いと判断されたみたいッス。今まで兄貴の居合いから逃れた者はいないらしいッスよ?せいぜい頑張って下さいッス。」
止めねぇのかよ!?
審判の意味ねぇ!!
ってか何でみんな俺のこと過大評価するの!?
「……もう必殺技を使うの…?…早すぎない…?」
澪、ナイスツッコミ!
これであいつがやめてくれたらいいんだけど…
「うるせぇぞ!俺のやり方に文句言ってんじゃねぇ!」
やっぱりそうはいかないよね。
さて、どうしようか…
「……短気…」
え?澪…?
もういいよ?
「テメェ…!ぶちのめすぞ!」
ほら、赤樹が怒っちまったじゃん!
どうすんの!?
「女の子にも手を出すの?サイテー!」
「本当に、男の人は女の子を守らないとダメなんですよ?」
「ぐっ…!」
おぉ!
赤樹が押されている!?
「かと言って大地みたいな超女好きも困るけどね。」
「悠希!?どういう意味だそれ!?」
「ギャラリー!うるさいッスよ!」
ほら、うるさすぎるから審判に止められた。
でも今の会話で状況は…当然悪化してるよな。
ただ赤樹を怒らせただけだもん。
その八つ当たりが俺に来ちゃうんだよな…
…逃げてぇ。
「…行くぞ!クズ!」
いや、来なくていいから!
それから俺の名前クズじゃないから!
赤樹は居合いの構えのまま俺の所へと走ってきた。
このままただ待ってたら確実に強烈な一撃が襲ってくる!
こうなったら一か八かこれに賭けるしかない!
「喰らえ!」
俺は持っていった竹刀を赤樹に投げつけた。
「なっ!?」
さすがにこれは予想外だったみたいだ。
普通、自分の武器を投げつけるヤツなんていないからな。
「…考えたな。だが無駄だ!」
赤樹は自分の竹刀で俺の竹刀を弾き返した。
反応早っ!!
でもな…
「その一瞬の隙を見逃す訳無いだろ?」
「何っ!?」
俺は竹刀を投げた瞬間に、ヤツの死角へと移っていた。
竹刀に気を取られていたからだよ。
少しは相手の動きにも注意しないと。
よし、これで攻撃を当てれば俺の…!
「クズが!調子に乗るんじゃねぇ!」
「…え?」
赤樹はその場でしゃがみ込んで俺に足払いをかける。
まさか剣道の試合でこんな事をするとは思わなくて、俺はモロに食らって倒れてしまった。
マズい!
「くたばりやがれ!!」
赤樹が竹刀を振りかぶった。
防ぐ手段は無い。
避ける事も難しい。
なら…
「お前もな!」
俺は倒れた体勢のまま赤樹に蹴りかかった。
どうせ負けるなら相討ち覚悟だ!
バキィッ!!
剣道場の中に大きな音が響き渡った。
俺の意識はそこで途絶えた。
【保健室】
う…うぅ…
「あ!キョーヤが目を覚ました!」
カゲリ…?
あれ?ここはどこだ?
「恭也大丈夫?まだ休んでた方がいいよ?」
…あぁ、そうか。
赤樹ってヤツと戦ったんだっけ。
保健室に寝てるってことは俺の負けか…
「いや〜、恭也。お前すげぇよ!」
「あの赤樹って人は全国でも相当強い人なんだそうですよ?その人と互角に戦っただなんて、自慢できますよ?」
「……しかも…引き分け…」
…引き分け?
ってことは同時に攻撃が当たったって事か?
「はは…そうか。引き分けか。」
アイツは本当に強かった。
まさかあの状態から攻撃してくるなんて…
俺も鈍ったな…
次は絶対勝ってやる!
「恭也!」
悠希の声に一瞬ビクッとした。
まさか俺の考えがわかったとか…?
「もうアイツと戦ったらダメよ!あんたには暴力なんか似合わないんだから!」
暴力なんかじゃないんだけどな…
まぁ、また昔のあの感覚を取り戻したら大変だからな。
「わかった。出来る限りアイツとはもう戦わない。」
「そう…それはそうと、ハイ。」
…?
手鏡?
「自分の顔を見てみなさい。」
自分の顔?
それがどうか…って
「何だコレ!!?」
鏡を見た俺はそのあまりのひどさに驚きを隠せなかった。
顔中に落書き…
ネコミミ…
鼻眼鏡…
「逃げろ〜〜♪」
カゲリの言葉を合図にみんな保健室から逃げ出した。
「この…待ちやが……って何ぃ!?」
ベッドから起き上がってみると俺はなぜかメイド服に着替えさせられていた。
「ふざけんじゃねぇ、お前ら!!」
さすがにこの格好じゃ追いかけることなんかできない。
俺はただ保健室の中で叫ぶだけだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ちっ!まさか俺があんなヤツと引き分けるとはな…面白い!次こそはアイツを完全にぶちのめしてやる!」
「その意気ッスよ、兄貴!兄貴ならあんなヤツコテンパンに出来るッスよ!」
さて…そうと決まったら修行でもするか。
だが、その前に…
「おい千秋、そこのクズお前の好きにしていいぞ。」
「クズって拙者の事!?教師…いや、顧問に対して何たる無礼!今すぐこの縄をほどけ!拙者が成敗してくれる!」
バカが…
それができないからアイツを連れてきたんだろうが。
「千秋、そいつを黙らせておけ。」
「はいッス。」
後ろから鈍い音が聞こえて静かになった。
ふぅ…これでやっと落ち着ける。
…恐らくあの野郎は本気を出していない。
だが、それは俺も同じだ。
アイツになら俺は本気で戦えるかもしれない…
…まさかそんなヤツがいたとはな…
どうやらこの高校に入って正解だったようだ。
フフフ、またアイツと戦うのが楽しみだな!
…なんかあっけない感じですが、とりあえず恭也と赤樹の初戦はこれで終わりです。 次はいつ闘う事になるのか… それはそうと、皆さん明けましておめでとうございます。(遅っ!?) 違う時期に読んでる人も、とりあえずおめでとうございます。 これからもこの作品をお願いします。