【番外編】〜問題教師たちのテスト問題
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
お久しぶりです。
ついに私の出番がやって来ました。
…え?
私が誰かって?
…確かに一回しか出番が無かったので覚えている方もいないでしょう。
それでは改めて自己紹介致します。
私の名前は《白秋 玄冬》(はくしゅう げんとう)。
この高校の教頭です。
…あ、よく考えたら名乗るのは初めてでしたね。これは失礼しました。
さて、近頃の若い人たちは私の話を長すぎると言うのでさっさと本題に入りましょう。
今校内はテスト前ということもあってピリピリしたいいムードです。
勉強にやる気が出てるのはいいことですね。
…でもピリピリしているのは教室だけではないのです。
ここ、職員室の中もピリピリしています。
テストを作る側もそれなりに悩みますからね。
仕方のないことなのです。
…でも何人かの先生はすでにテストを作り終わったのか、のんびりとしています。
……少し不安ですね。
この高校には変な教師が多いのでその人たちが作るテストもとんでもないものになっているような気がします。
…いや、実際毎年問題が起きているんですけどね。
問題が起きる前に何とかしておきましょうか。
「…という訳でどのようなテストを作ったか確認しに来ました。」
「へぇ、そうなんですか♪大変ですね♪」
まず一番最初に確認に来たのは小松先生です。
いつも思うんですが何でこの人はいつでも『♪』を使っているんでしょうか?
全く…これだから最近の若い者は…っと、これ以上は言わない方がいいですね。長くなりそうですから。
「それでは早速見せてもらってもいいでしょうか?」
「何をですか?」
…話の流れを理解していないのでしょうか?
「テストですよ。」
「あ〜、テストですか♪でも何でですか?」
今説明したばかりでしょうが!!
「だから…………………………ということです。」
「あ〜、そうなんですか♪ご苦労様です♪」
本当に苦労させられますよ…
「…それでは見せてください。」
「何をですか?」
…この人はこの若さでボケてるんでしょうか?
見た目は完全に子供であるのに…
「教頭先生〜♪今何か失礼なこと考えませんでしたか?」
「…何も考えていませんが?」
勘は鋭いようですね。
「まぁいいです♪ところで教頭先生?テストっていつまでに作ればいいんですか?」
まだ作って無かったんですか!?
「…もういいです。」
どうせ言ったとしても人の話を聞かないような人ですから無意味でしょう。
他の国語担当の教師に頼んで作ってもらうことにしましょう。
…さて、次は…佐村先生の所にでも行きましょうか。
「佐村先せ…」
「何奴!?」
「うわっ!?」
後ろから話しかけた所、佐村先生は近くに立てかけてあった木刀を掴み、私の眼前に向けた。
…言っておきますが校内に敵はいませんのでそのような行動はやめて下さいね?
「ぬ?教頭ではないか。拙者に何か用件でもあるのか?」
「…まぁ、その前にこの木刀を下げてくれませんか?」
「おっと、これはすまぬ。」
ふぅ、何でこんなのが教師になったんでしょうか?時代劇の役者の方がピッタリだと思うんですが…
「それで教頭殿は何用でここまで参った?」
「実は………………という事でしてね。テストの確認をさせてもらいに来ました。」
「そういうことであったか。では是非ともご確認をお願い致す。」
…冷静に考えるとこの先生の言葉って少しおかしくはないでしょうか?
恐らく本人の独学で話している為実際の言葉とはおかしい所があるのでしょう。
まぁそれはさておき、さっさと確認してしまいましょうか。
〜数分後〜
「…どうであろうか?もし拙者に不備があるのならすぐにでも修正致すが?」
…心配性ですね。
サムライの真似をするならもっとしっかりしていないとダメですよ?
「…どうやら特に問題は無いようですね。」
外見や話し方以外は普通の先生のようです。
安心したようなそうでないような…
…でも気になる所はあるんですよね。
「…ところでこの問題用紙、筆で書かれているように見えるんですが…もしかして手書きではありませんか?」
「左様。拙者が一文字一文字丹精を込めて書き綴ったものだ。」
…パソコンで書いて下さいよ。後で私がパソコンで打ち直しておきましょうか。この文字だと一部の生徒には何が書いてるかすらわからないということにもなりかねないので。
「それでは他の先生の所にも行かないといけないので私はこれで。」
「ご苦労であった。そうそう、次から拙者に話しかける時は正面からお願い申す。」
…気をつけておきましょう。
…さて、次はジョームズ先生の所に行きましょうか。
「ジョームズ先生。」
「オー、どうしたんでスカ?」
この人は外国の方ですからきっとマトモなテストを作ってくれるでしょう。
「実は…………………というわけでどんなテストかを確認しに来ました。」
「そうデスか。それでハどうゾ。」
どれどれ…?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次の日本語を英語にしなさい。
・私の名前はケンです
・彼は寿司が好きです
…………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
…これは高校生がやる問題ではないでしょう…
「どうデスか?難しいでショ?私でも解くノに時間がかかりマス。」
本当にあなたは外国の方ですか!?
…どうやらこれも他の先生に任すしか無いようですね。
ところで…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次の日本語を英語にしなさい。
・戌
・申
・午
・酉
・未
……………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
干支…?
これは微妙に国語が混ざってませんか?
あ、ついでですし確認しておきましょうか。
上から『いぬ』『さる』『うま』『とり』『ひつじ』です。
知っている方は無視してください。
「…とりあえずジョームズ先生は後はやらなくて結構です。他の英語の先生に作ってもらいますから。」
「わかりマシた。」
…ふぅ、まだ三人だと言うのに結構疲れましたね。
でもここからが大変なのです。
次は『校内最狂の教師』こと加賀先生です。
「加賀先生。」
「は〜い♪あら、教頭じゃないですか。私に何か用ですか?」
「はい、実は…ってその前にあなたは今何をやっているんですか?」
色んな薬品を混ぜ合わせたりしているんですが…まさかまた何か危ないモノでも作ってるんでしょうか…
この前は敷地内の木をニトロで吹き飛ばしていましたし…
「ニトロより危険な爆薬でも作ろうかと思いまして…想像してみて下さいよ!ニトロのように少しの衝撃で爆発し、さらにニトロよりも威力の高いモノが完成したら…!フフフフ…!」
…相変わらず危険な先生ですね。
これさえ無かったら優秀な先生ですのに…
「…この小瓶は何ですか?」
机の端の方に他の薬品類とは別に小瓶が置いてありました。
…どうせまた危険物質なんでしょうけども。
「あぁ、それは『痺れ薬』ですよ♪それを使って今度こそあの銀髪少年を…!フフフフ…!」
あなたは生徒に何をするつもりですか!?
「それで結局何の用ですか?こっちに集中したいんですけど。」
「…そうでしたね。実は………………ということでどんなテストかを確認しておきたいのですが?」
「お断りします。」
えぇっ!?
「そこは話の流れから見せるのが筋ってものじゃないですか!?」
「どんな流れか知りませんが…安心してくださいよ。私が作ったんですから絶対にマトモですから♪」
あなたが作ったから不安なんですが…
「用が済んだらあっちに行って下さいよ。危険ですから。」
くっ!教頭に対して何たる態度!
…ん?床に何か紙が落ちて…ってコレテストじゃないですか!?
生徒に拾われたらどうするつもりだったんですか!?
まぁ、それはさておき内容ですが………
…至って普通ですね。
どうやら私の杞憂だったようですね。
…?『どうしても100点を取りたい人は裏を見ること!』…?
どういうことでしょうか?
裏返してみると…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『誓約書』
私はこのテストで100点をもらう代わりに、一生を加賀先生の実験材料として過ごすことを誓います。
_組_番______
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『コラーーッ!!』
「ひゃあ!?どうしたんですか…ってあー!私のテストが!!」
「『私のテストが!』じゃないですよ!!どこにこんな誓約書を書かせる教師がいますか!?あなたは教え子を何だと思っているんですか!?」
「…実験材料?」
「何を考えているんですかあなたは!?あなたに教師を名乗る資格はありません!!」
はぁ…はぁ…
落ち着かなければ…
血圧が…
「ヒドい…少し冗談で言っただけなのに…」
あ、泣いてしまった。
でもコレは許される事ではありませんからね。
あなたの場合、冗談ではなさそうですから。
「泣いても無駄ですよ。この裏面の文字は全部消させていただきますから。」
「………ちっ…!」
今舌打ちしませんでしたか!?
やっぱりこの先生は油断なりませんね!
ちゃんとテストを開始するギリギリまで問題用紙をすり替えられないように注意しないと…
…さて、後は特に心配な先生はいませんね。
これでやっと安心できました。
「…………Zzz…」
……まだいましたね。
勤務時間に堂々と居眠りをするとは…
「起きて下さい!黒城先生!」
「あ゛ぁ…?」
どこのヤクザですかあなたは?
「ちっ、教頭か。起きたばかりなのにそんなに頭の光を当てられると眩しすぎて目が開けられないんだけど?あ、それはヅラ取った時か。」
…給料減らしてやろうか?
はっ!
つい口調がおかしくなってしまいました!
気をつけないと…!
「…で?何の用だ?まさかただ起こしただけとか言わねぇよな?」
「確かに私は用件があって来ました。でもその前にその話し方を直しなさい!生徒を教育する立場である教師がそんな話し方をするなど…!」
「…………Zzz…」
「起きろーーーっ!」
全く何て教師なんでしょうか!
人の話の最中に寝てしまうなんて!
「話が長すぎるんだよ。ヅラ。単刀直入に用件だけ言いやがれ。」
………!
いや、ここでキレてはいけません!
この人のペースに合わせてはダメです!
「それでは率直に言いますよ。あなたの作ったテストを見せてください。」
「何で?」
「かくかくしかじか…ということです。」
「そんなんで通じる訳無いだろ?」
ここは話の流れ的に理解してくださいよ!
詳しく説明したら長くなるでしょ?
そうなったらどうせまたあなたは寝ちゃうんですから。
「とりあえずテスト見せたらお前はいなくなるのか?だったら早く見て早く帰れ。」
そう言ってテストを渡してくれたのはいいんですが…
「……………何ですかコレは…?」
「ボケたか?テストに決まってるだろ?」
それはわかっていますよ!
私が言ってるのはこの問題のことです!
「どうして問題が一問しか無いんですか!?」
この人は一体何を考えているのか…
普通の問題用紙の上の方に問題が書いてある以外は全部白紙のまま。
明らかに手抜きではありませんか!
生徒が見たら印刷ミスかと思ってしまうんじゃないでしょうか?
「0点か100点かで分かりやすくて便利じゃねぇか。問題作るのも採点するのも面倒だし。いっそのこと全部のテストをこういう形式にした方がいいんじゃねぇ?」
…何であなたは教師になったんですか?
さり気なく本音もらしてますし…
「とにかくこのままじゃダメですので作り直してくださ…」
「めんどくせぇ。他のヤツに作らせとけ。」
………。
「どうせ俺以外のヤツらも結局は別なヤツに作らせてるんだろ?だったら俺の分も…」
『いい加減にしろーーーーー!!!!』
もう我慢できません!
「小松先生といい、ジョームズ先生といい、佐村先生といい、加賀先生といい、あなたといい…何なんですかあなた方は!よくそれで教師になれましたね!?」
「ちょっ…落ち着けって!そんな大声で話されたら眠気が吹っ飛んじまう!」
あなたはまだそんな事言ってるんですか!?
「一体誰ですか!?あなた方を教師として採用したのは!?」
「…決まってるだろ?俺たちみたいなのを採用するような変人は一人しかいねぇ。」
…まさか……!
「この学校の『校長』だよ。あの野郎、『面白いから採用!』とか言ってやがったからな。お前と違ってノリがいいじゃねぇか。」
校長ーーーー!!
あんたは一体何を考えてるんですか!?
ノリとかそういう話じゃないでしょう!?
大体学校の事をほったらかしにしておいてるくせに何でこういう問題のある人たちを雇うんですか!?
大変なのはこっちなんですよ!?
「あ、そうだ!今の話で思い出した!」
「…何ですか?」
嫌な予感しかしないんですけど…
校長が何かしたんでしょうか?
「校長から伝言だ。『もしかしたら今年、この学校に戻ってくるかもしれないから』…だそうだ。」
私の顔から血の気が失せていくのがわかる。
『あの』校長が帰ってくる!
私自身会った事は2、3回しか無いんですが、その時は大変だった…
思い出すだけで頭痛が…!
「…って言ってもあの野郎が本当に戻って来るかどうかもわからないけどな。多分しばらくは来ないんじゃないか?」
…だといいんですが…
「それじゃ俺は寝るから後はよろしく。」
…え?
そうだ!テスト…!
「ちょっと!黒城先せ…!」
「………Zzz」
寝るの早っ!?
…仕方ないですね。
これも他の人に頼むしかありませんね。
…何か今日はものすごく疲れました。
たった5人の先生のテストをチェックしただけなのに…
…………。
…次からなるべくこの先生方には関わらないようにしましょう。
《ドカァーン!!》
!?
何事ですか!?
「大変だ!!加賀先生の机が吹っ飛んだ!!」
変な薬品作ろうとするからですよ!!
自業自得です!!
はぁ…
どうやらこっちが関わらないようにしても結局はあの人たちに巻き込まれるようですね…
…頼むから誰か私に平和な人生を与えて下さいませんか(泣)
今回は番外編ということで教頭先生視点で一度作中に登場した教師たちを再び出してみました。 …いらないキャラは作らない方がよかったですね(苦笑) あと、私は物語の始めと終わりの部分が苦手ですのでそこら辺は勘弁して下さい。(←今更!?) そうそう、あとがきも少し書き方を変えてみました。 見づらかったら言って下さい。前の書き方に直しますから。 …さて、とりあえず今回はこの辺で。 良かったら感想・評価お願いします。