第19話〜再び復活、救世主!
【廊下】
〈ヒカリ視点〉
恭也さんが負傷していてツッコミが出来ない状況なのでまた私の視点です。
…これってもしかして視点になったキャラがツッコミをしないとダメってことなんでしょうか?
…………。
ま…まぁ、とりあえず今私たちは三人(+一匹)でカゲリちゃんたちの所へと向かっているところです。
恭也さんは自分で歩ける状態ではないので私が恭也さんの右肩、澪さんが左肩を支えています。
…それにしても、ついさっき恭也さんに聞いたんですがニセ恭也さんは首の所にゴキブリをセットしているそうです。
……何ていうか…もう少しマトモなものは無かったんでしょうか?
迫力が無いというか…
とにかくあまり緊迫感がありませんね。
「……ところで神堂君…?……この体で行ってどうするつもり…?」
…そうだ。
こんなボロボロな体だったら闘いに参加することも…
「もちろんアイツと闘うに決まってるだろ?」
いや、この体じゃ無理じゃないですか!?
もう少し自分の体の事を考えて下さいよ!
「……その体で闘っても足手まといになると思う…」
「…そんなにハッキリ言う?」
でも…確かにそうだ。
止めてもやめてくれるとも思えませんし、このままじゃ負けてしまうのはわかりきってることです。
…ここは少しでも恭也さんの力になりたい…
「恭也さん…どうしても闘いたいと言うならコレを使って下さい。」
「…これは?」
【音楽室前】
〈カゲリ視点〉
「ハッハッハ!どうした?俺を止めるんじゃないのか?」
「くそっ!一体どうしたら…」
…まさかこんなくだらない策でくるとはね。
でもこれじゃスイッチに触れることが出来ないからなぁ。
とりあえず何かスイッチを押す方法を考えなきゃ!
「何ボーっとしてるんだ?」
「…え?」
しまっ…!
「…カハッ!!」
ニセキョーヤの拳が私の腹にめり込んだ。
完全に油断していた為、まともに攻撃を受けてしまい、私はその場に倒れ込んだ。
「カゲリちゃん!?」
「お前も油断してるんじゃねぇよ。」
「うっ!?」
ユウキが私のもとに駆け寄ろうとしたが、ニセキョーヤの手刀を首の後ろに受けて倒れ込んでしまった。
「終わりだな。」
…くそっ…!
……私たちは…まだ……や…れ……………
私の意識は少しずつ薄れていく。
…ここまでか……
「…ったく、お前らってバカだよな。他のヤツの事なんか気にしてたらこの世界じゃ生きていけないぜ?」
………な…に…?
「オリジナルの俺も図書室で会った時にあんな女なんかかばわずに俺と闘っていればまだ勝率があったかもしれなかったのによ。仲間なんか助けた所で所詮は他人。信用なんか出来ない。本当に信じることが出来るのは己自身だけだ。だからそんなやつらは見捨てちまえばいいのさ。そう思わないか?」
「…ふざけないで!」
私は痛む体を無理やり起き上がらせる。
「信じることが出来るのは自分だけ?そんなこと無い!それはアンタが他の人を信用してないだけでしょ!人は一人じゃ生きていけない!だからこそ他の人と協力し合いながら生きて行かなきゃいけないのよ!」
「…なんだと?」
「それと、仲間を見捨てろって?そんな事出来る訳ないじゃない!さっきの発言からするとアンタ仲間とかいないんでしょ?でも私たちには仲間がいる!孤独なアンタにはわからないだろうけど、私たちはその仲間との絆を感じる事ができる!そんな大切な人を見捨てる事なんて出来ない!」
「…テメェ!」
ニセキョーヤが怒りの形相でこっちを睨み、少しずつ近づいてくる。
さっきの攻撃のせいで私はまだうまく動けない。このままじゃマズい!
「キャッ!」
ニセキョーヤが私の制服の襟の部分を掴んで持ち上げた。身長は私よりも相手の方が高い。必然的に私の体は宙に浮く形になる。
「テメェに俺の何がわかる!?」
「…そんなもの知らないよ!」
息をするのも困難な体勢でも、私はまだ抵抗を続ける。
「私たちは昔のキョーヤの事なんか何も知らない!…でも過去にどんなことがあったにしろ今のキョーヤはそれを乗り越えてきた!きっとそれはユウキやダイチが…仲間がいたからだと思う!だから…仲間はくだらないものなんかじゃない!かけがえのない大切なものなんだから!」
「…!」
急にニセキョーヤの手の力が抜け、私は床に落ちた。
「…そうか…さっきのあの記憶は…」
ニセキョーヤは宙を見つめた状態でそのまま何かを呟いている。
「…初めて俺が…あいつらを…仲間と認め…そして…絆を感じた時の記憶…?」
「…?一体何を…?」
何だか知らないけど、どうやら今コイツは少し混乱状態になってるみたいだ。
…今しかない!
「ハァァァッ!」
私は渾身の力を振り絞って拳を繰り出す。
狙いはニセキョーヤの右肩!
バキッ!
「っ!?」
私の拳は狙い通りの所に命中し、ニセキョーヤの右腕は廊下の奥へと転がっていった。
さっきからニセキョーヤは左手や蹴り技を中心に闘っていた。だから右腕が脆くなっているのかと予想しての攻撃だったけどどうやら正解だったようだ。
「…この野郎!やっぱりテメェは気にくわねぇ!今この場でぶっ殺してやる!」
キョーヤの顔で気にくわねぇとか言われると少し傷つくけど今はそれどころじゃない。
周りには闘えそうな人はいなく、私もまだ体が自由に動かすのが困難な状態だ。
…ここはもう出し惜しみなんかしている場合じゃないね。奥の手を使う時が来たようね!
「それ以上私に近寄らないで!もし近寄るようなら…」
私はポケットからそれを取り出す。
「これを使っちゃうんだから!」
「…何だそれは?」
ニセキョーヤは足を止めて私のもつ物を不思議そうに見ている。
それは楕円形の物体にボタンが一つしかついていない単純なもの。
…ちなみにハート模様が散りばめられているがそれは私たちの趣味♪
「このスイッチ…押したらどうなると思う?」
「…テメェ…まさか!」
「わかったらこれ以上近寄らないで!」
「…クソ!」
…理解力のあるヤツで助かった。
恐らくアイツはこれを自分の自爆スイッチか何かと勘違いしているみたいだけど実際は違う。
これはなるべくなら使いたくはない。
こんな所で使ったら私まで巻きこまれちゃうから…
「…近寄らなきゃいいんだな?」
「そうよ!絶対にこっちに来ないでね!」
「わかってるよ。それじゃ…」
ニセキョーヤは突然私に背を向けて離れていった。
…諦めたの?
「近寄らなきゃ攻撃してもいいんだな?」
「…え?」
私がその言葉を理解するより先に何かが私の所へ飛んできた。
「キャァ!?」
私は紙一重でそれを避けた。そして振り返って見てみるとさっき私が壊したニセキョーヤの右腕が後ろの壁の近くに落ちていた。
「さて、こんな危ないものは没収させてもらおうか?」
「…しまっ……!」
いつの間にか私の目の前にいたニセキョーヤは私からさっきのスイッチを奪い取った。
「…危険なスイッチの割に随分キュートな模様だな?」
「うるさい!私たちの勝手でしょ!?」
「そうだぞニセ恭也。これはこれで可愛らしいじゃないか?」
「「…え?」」
「…ところでお前、悠希やカゲリちゃんに何してんだコラ!!」
「うわっ!!」
ニセキョーヤは顔面にパンチを食らって少し離れた所に飛んでいった。
…それにしてもいつ起きたんだろコイツ?
「俺がいるからもう安心だよカゲリちゃん♪」
黙っていればそこそこカッコ良かったのに…
ま、所詮はダイチか…
「…また邪魔する気か?変態野郎!」
ニセキョーヤが起き上がってきた。
…でも左手にはあるはずのスイッチが無くなっていた。
「ちょっとアンタ?スイッチはどこに…」
「あぁカゲリちゃん、心配しなくてもちゃんと俺が持ってるから。」
え?
まさか…あの一瞬の間にスイッチを取り上げたっていうの!?
ダイチってこんなスゴいヤツだっけ!?
「…これ以上俺の邪魔をするならお前から殺すぞ?」
「はん、今の恭也ならまだしもお前みたいなヤツに誰がやられるか!片腕も無いくせに!」
「ちょうどいいハンデだ。これくらいじゃないとすぐに終わっちまうからな。」
「そうか?そんなに言うならやって見ろ!」
私はダイチからスイッチを手渡され少し二人から距離を取った。
こんなに満身創痍な状態のニセキョーヤが相手ならもしかして…!
【状況整理】
〈カゲリ&悠希&大地&ニセ恭也〉
現在地:音楽室前
悠希&カゲリ⇒戦闘不能状態の為戦線離脱
大地&ニセ恭也⇒戦闘開始
〈ヒカリ&小織&恭也&イグ〉
現在地:廊下
現在音楽室前に移動中
もう少しで到着予定
読んで下さってありがとうございます。 …最近主人公であるはずの恭也の視点が少なくなっちゃってますね(苦笑) 私が昔書いてた小説はほとんどが女の子が主人公のものが多かったのであまり男の視点には慣れていないのが原因だと思いますが…でもこれって言い訳になってませんよね(笑) とりあえず今回は(も)あまり話題がないのでこの辺で。