第125話〜教える人と教えられる人
「……だから、そこはそうじゃなくて…」
「…う!また間違えたか…」
「……ほら、そこも違う…」
「え!?これも!?」
「……ここはこうやって…」
…なるほど。
この問題はそうやって解けばいいのか…
やっぱり澪の教え方はわかりやすいなぁ…
……………。
…………。
………。
「…って、ちょっと待て!!何で俺が休み時間に勉強なんかしなくちゃいけないんだよ!?」
「……今さら…?」
俺はただ宿題の答えを聞きに来ただけだよ!?
…あ、別に写すとかじゃないよ?
ただの答え合わせだからね?
悠希と違って、俺は俺なりに努力してるんだから。
「……恭也君の宿題…間違いだらけだったから…」
…無駄な努力だったみたいだけどね。
「それでなんでこんなことに!?」
「……せっかくだから間違いを正して、理解した方がいい…」
「それはそうかもしれないけど…」
…休み時間くらいは勉強したくないんだけど…
「…あら?恭也、アンタも澪に宿題写させてもらってるの?」
お前と一緒にするな!!
俺は一応自分なりに努力したんだよ!!
最初から写すのが目的のお前と同類にしないでくれ!!
「……悠希さん、たまには自分で宿題やったら…?」
「わかんないんだから仕方ないじゃない。」
「いや、だからわかるように努力しろよ。」
「十秒くらい努力したんだけど諦めたわ。」
早っ!?
せめて一分は頑張ってよ!!
「というわけで、いつも通り写させてくれない?」
「……せっかくだから悠希さんにも教えてあげる…」
「…へ?いや、別にそういうのはいいんだけど…。私はただ写させてもらえればそれで……」
「いや、お前も澪に教わっておいた方がいいぞ?澪の教え方はわかりやすいし。」
お前だけ勉強しないのもズルいし。
「いや、だから…」
「……ほら、ここ座って…」
「………。」
「…やっぱりヒカリに解いてもらうことにするわ。」
逃げた!?
写させてもらえなくなったからって他の人にやらせる気!?
ひどすぎるぞ!?
「…でも確かヒカリたちのクラスって次体育だったよな?準備があるからそんなヒマは無いんじゃ…?」
「ヒカリならあっという間に解けるから大丈夫よ。」
邪魔になるからやめろって!!
「……恭也君、ちょっと聞きたいんだけど…」
「ん…?何だ?」
「……恭也君は自分で努力する人と全部他人任せにする人、どっちが好き…?」
何でいきなりそんな質問!?
全く脈絡無いよね!?
「…そりゃ、やっぱり自分で努力するような人の方がいいとは思うけど…」
「……だってさ…」
「そ、それが何だって言うのよ!?恭也の好みなんか私には関係ないじゃない!!」
「……そうだね…」
「…で、でも…その…ア、アンタたちがどうしても私に勉強させたいって言うなら仕方なくやってやろうじゃないの!」
(……単純な人…)
…?
なんかよくわからんけど、自分でやる気になったならいいか。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「えっとこれは…さっきと似た問題だから…こうかな?」
「……恭也君、意外と理解力あるね…」
「いや〜、それほどでも♪」
今まで一夜漬けでテストを乗り切ってきたからな。
やり方を理解する力はそれなりにあると思う。
「……普段から勉強してたらもっと上位狙えるのに…」
やだ。
めんどい。
「……それに比べて悠希さんは…」
「…何よ?」
「……さっきから全然進んでない…」
「わかんないんだから仕方ないじゃない!!」
「……それ、さっきと全く同じ問題なんだけど…」
「えっ!?…あ、ホントだ。」
…問題を見た時点で考えるのやめたな?
ぱっと見て、複雑そうだったら考えるのを放棄する…
気持ちはよくわかるんだけどさぁ…
「お前なぁ…わかんなくても一応考えてみたらどうだ?」
「うるさいわね!私はアンタと違って理解力無いんだから仕方ないじゃない!!」
いや、お前は『理解力』が無いんじゃなくて『理解する気』が無いんだろ。
「だいたい、澪の教え方が悪いのよ!!もっと簡単に教えなさいよ!!」
ついに人のせいにし始めた!?
「……私のせい…?」
「私はまず基礎がわからないんだから!!わかってて当然みたいに説明されても理解できないのよ!!」
あ〜、わかるわかる。
大地に聞くとそういうことが多いんだよ。
だからアイツに教わるのはイヤなんだよな…
「……それなら恭也君が教える…?」
「「…は?」」
おい?
何言ってんの?
俺が悠希に教えれるわけないじゃん?
「……そういうわけで後はよろしく…」
「いやいやいや!?ちょっと待ってよ!?いきなり放任しないで!?」
「……カゲリさんに勉強教えたことあるんでしょ…?…それと同じでいいから…」
相手は悠希だよ!?
『教え方が悪い』って殴られる可能性だってあるんだよ!?
「アンタが私に…ねぇ。ふん、面白いじゃない。さっそく教えなさいよ。」
「…何でそんな乗り気なの?」
「なっ…!?べ、別に乗り気なんかじゃないわよ!!ただ、アンタの教え方がどんなものか興味があるから…!!」
「……何で怒ってるの…?」
「…あ〜も〜!!うるさいわね!!いいからさっさと教えなさいよ!!」
…教え方が悪くても怒らないでね?
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…ここでこの公式を使うと、これがこうなる。ここまでは理解できるな?さらにそこから出てきた数字を使って……」
「…なるほどねぇ。それならこの問題も同じように……こうして…こんな感じ?」
「そうそう。やればできるじゃないか。」
「そ、そう…?」
「次はちょっとした応用問題なんだけど…」
「難しそうね…。とりあえず1人で挑戦させてくれない?」
「あ…うん。」
…もしかして俺って教える才能ある?
悠希もそれなりに解けるようになってきたし、自発的に挑戦するようになってきたし…
これって少しくらいなら調子にのってもいいよね?
「……悠希さんには恭也君の教え方がいいみたいだね…」
「いや、俺はただ澪に教わったことをさらに細かく説明してるだけだよ。澪がいなかったらここまでうまく教えられなかったと思う。」
「……いや、やっぱり恭也君が一番いいと思うよ…」
…?
どうして?
「……悠希さんの場合、恭也君にほめられることがやる気に繋がるみたいだから…」
「な、なにバカなこと言ってんのよ!?そ、そりゃ悪い気はしないけど…!で、でもそこまで嬉しいってわけじゃないんだから!!」
「……はいはい…」
「ちょっと!!何よその反応!?」
「……別に…」
「なんかムカつくわね…!」
「……じゃあ恭也君、次の問題を悠希さんが自力で解いたら頭撫でてあげたら…?」
「へ…?」
そんなことしたら『子供扱いするな!!』って怒られるんじゃない?
大丈夫なの?
「そ、そんなこと別にされたくなんかないわよ!!…まぁ、一応自力で解く努力はするけど…」
「……へぇ…」
「が、学力を上げるためよ!!それ以外の理由なんかないんだから!!」
…お前が学力向上を目標とするなんてありえないだろ。
でも頭撫でられるくらいで頑張る意味もわかんないし…
何か他に理由でもあるのか…?
「……でも頑張るなら急いだ方がいいよ…休み時間、あと少ししかないから…」
「やばっ!?急がないと!!」
そういう問題って焦れば焦るほどわかんなくなると思うんだけどなぁ…
澪さぁ、悠希の反応見て楽しんでない?
てか、仮にその問題を解いても他の問題が残ってるような…
…って、そういえば俺もまだ宿題終わってなかった!!
「ここはさっき教わった通りにやって…!次にこっちはこうやって…!さらにそれを…いや、違うわね…こっちを公式に当てはめて…!」
「……へぇ、さっきまでとは別人みたい…」
「やべぇ!!時間がない!!澪、答えだけでも教えてくれない!?」
「……こっちも別人みたい…」
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「…できたわ!!」
「……どれどれ…?」
…まさかこの短時間であの問題を解いたの?
俺、あの問題を解くのに30分近く頑張ったんだよ?
…しかも間違えてたけどね。
「ど、どうなのよ…?正解…?不正解…?」
「………。」
「……途中まで正解…でもここで計算ミスしてる…もったいない…」
「うそっ!?くぅ〜!!悔しい…!!」
…もしかして悠希ってマジメに勉強したら俺より頭いい…?
…い、いや!
これはたった今やり方を教えたからここまでできたんだよ!
そうだ!
そうに決まってる!!
それに明日になったらもうやり方忘れてるはずだ!
俺が悠希に負けるなんてありえない!!
…………。
…明日からノラネコにこっそり勉強教えてもらおうかな…?
「……というわけで、罰ゲーム…」
どういうわけで!?
「はぁ!?な、何よそれ!?」
「……不正解だったから…」
「何で間違えたからって罰ゲーム受けなくちゃいけないのよ!?」
「……面白いから…」
「アンタが面白くても私は面白くないわよ!!」
必死に頑張ったのに罰ゲームはちょっとかわいそうな気が…
「……内容は…恭也君に対して今まで行ってきたことの謝罪…」
あ、それくらいの罰ならやってもいいと思う。
むしろやれ。
「はぁ!?何で私が恭也に謝らなくちゃいけないのよ!?」
「……ツンデレの子が謝るシーンはなかなかいいと思う…」
「だ、誰がツンデレよ!!」
デレの部分がほとんど無いもんな。
ツン9割、デレ1割くらいじゃない?
…それとも俺が気づいてないだけでもっとデレたりしてんの?
「……時間が無いんだから早く…」
「いやよ!何で私が恭也なんかに謝らなくちゃ……!」
「……次の休み時間、さっきの問題と似た問題にチャレンジさせてあげる…もし正解したらいいことあるかも…」
「…わかったわよ。」
簡単に折れた!?
プライドよりご褒美優先!?
「…恭也、今まで悪かったわね。」
「え…あ、うん…」
「ほら、これでいいでしょ?」
…ちょっと待てっ!!
謝るならちゃんと謝れよ!!
適当な感じで謝るな!!
「……やり直し…ちゃんと心を込めて…口調も丁寧に…」
「いやよ!何でそこまでしなくちゃいけないのよ!?」
「……恭也君だって納得いかないよね…?」
「あ、あぁ…できればもう少し本気で……」
「…恭也?アンタ調子にのってない?」
俺は聞かれたことに答えただけだよ!?
そんなに睨まないでくれない!?
「…やめたわ。よく考えたらそこまで必死になる必要ないもの。」
「……つまんないの…悠希さんが屈辱に顔を真っ赤にする姿見たかったのに…」
「…澪、歯を食いしばりなさい。」
やめろ!!
俺や大地ならともかく、澪にお前のパンチは本気で危ないかもしれないから!!
「悠希、落ち着け!お前の力じゃ澪の命に関わる!!」
「…じゃあ、アンタが代わる?」
何でそうなるの!?
イヤに決まってるじゃん!?
俺は身を挺して守るほど勇敢じゃ無いからね!?
「…冗談よ。一応アンタらには勉強教えてもらったからね。今回は見逃してあげるわ。」
…何様?
まぁ、でも助かったからいいか…
…俺は何も悪いことしてなかったけどね。
「……悠希さんにしては珍しく優しい…」
「…アンタ、実は殴られたいの?」
「……そんなわけない…」
「…まぁいいわ。それじゃ、私はそろそろ自分の席に戻るわね。」
「あ、俺も戻って次の授業の準備しないと…。澪、教えてくれてありがとうな。」
「……恭也君は教えがいがあるからいつでも教えてあげる…」
…そう言ってもらえると嬉しいね。
でも教えてくれるのはテスト前だけでいいよ。
それ以外は勉強したくないし。
…こっそりノラネコに教わるんじゃなかったかって?
めんどくさいからやめた。
多分三日坊主になりそうだからね。
三日坊主になるくらいなら最初からやらなければいい。
「…それにしても、アンタってけっこう教え方うまいのね?」
「そうか?」
澪の説明の他に、自分でちょっとつまづいたところをわかりやすく教えただけなんだけど…
やっぱりみんな同じところでつまづきやすいのかな?
「…ア、アンタさえよかったらまた教えてほしいんだけど…」
「…お前、勉強する気あんの?」
「う、うるさいわね!気がむいた時だけよ!」
コイツが勉強に対してやる気を出すなんて…
天変地異でも起こるんじゃないか…?
「…俺は人に勉強を教えられるほどじゃないんだけどな。それでもいいなら教えてやるよ。」
「役に立たなかったら他の人を頼るから大丈夫よ。」
…あれ?
あまり信頼されてなくない?
…まぁ、でも悠希が勉強に対してやる気出すのはいい傾向かもな。
悠希も俺やカゲリみたいにテスト前以外は勉強しないタイプだったからな。
カゲリがヒカリによって無理やり勉強させられるようになったんだから、このままじゃ悠希が最バカになるからね。
これでこの2人の最バカ争いも激しくなるかも…?
…………。
…この2人が俺と同レベルになったら俺もバカ扱いされんのかな…?
それはさすがにイヤかも……
今度からテスト前の勉強はもう少し早めにスタートするようにしようかな…?
…日々の勉強?
それは絶対やらん!
「…あ!」
「ん…?どうした?」
「そういえば私まだ宿題全部終わってないわよ!?」
あっ!!
俺もまだ終わってなかった!?
【授業開始のチャイムまであと30秒…】
遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
これから先、遅くなることが多々あると思いますが、それでも読んでいただけたら嬉しいです。
…今回の内容に関してですが、やっぱり恭也は勉強が大嫌いみたいですね。
やる時はやるんですが、やらない時はとことんやりません。
…でも学生って大抵こういうものですよね?
それとも私の周りだけなんでしょうか…?
悠希も少しはやる気を出したようですが、いつまでそのやる気が続くか……
悠希も基本的には勉強嫌いですから多分すぐにやる気無くなると思います。
とりあえず今回はこの辺で。
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