第114話〜飼い猫計画2
【夕方:校門前】
「よし、全員そろったな?」
「ボクに悠希にキミ、あれから誰も誘ってないならこれで全員だね。」
「…(澪にはちょっと悪かったかしら…)」
前回、ノラネコの件で悠希に誤解を与えてしまったので夕飯を作ってあげることになりました。
…これで悠希が許してくれたらいいんだけどなぁ…
「…それじゃそろそろ行くか。」
「あ、うん。」
「…そうね。」
…どうか最後まで悠希に殴られませんように…
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「…あ、悠希。そういえば夕飯のリクエストは?もし材料が足りなかったら買い物に行くんだけど…」
「…別にそこまでしなくていいわよ。アンタが作った料理なら何でもいいから。」
「じゃあハンバーグでいいか?ほら、確かお前好きだっただろ?」
「…そんなのよく覚えてるわね。」
「まぁな。他にもオムライスとかも好きだったよな?ケチャップでハート描いてやらなきゃ怒ったり…」
「バ、バカ!!そんなことまで覚えてなくてもいいわよ!」
「へぇ…キミにもそんな一面があったんだ?」
「う、うるさいわね!!別にいいじゃない!」
「忘れないうちにメモしとこ♪」
「あ、コラ!!や、やめなさい!!」
…平和だなぁ。
どうやら悠希の機嫌もだいぶ良くなってるみたいだし…
この調子なら誤解を解くのも簡単かな?
「…ほら、もう着いたからそんなに騒ぐな。」
「あ、本当だ。こうやってふざけあって帰ると早いね。」
「とりあえず早くカギを開けなさいよ。」
「わかってるって。」
え〜と、カギカギ…
《…カチャッ》
…あれ?
「…?どうしたのよ?カギが開いたなら早く入りなさいよ。」
「いや…その……最初からカギ開いてたみたいなんだけど…?」
「…え?」
もしかしてカギ閉め忘れた…?
ちゃんと確認してから学校に行ったと思ったんだけど……
《…バンッ!!》
「少年よ、遅かったではないか!待ちくたびれたぞ!」
「ノ、ノラネコ!?」
な、なんでお前が!?
てか、今お前が出てきたらいろいろマズいって…!
「…む?後ろにいるのは少年の友達か?」
「…あぁ。」
「へぇ、この人がノラネコさんかぁ…」
「この人が恭也の家に泊まった人…!」
…あ〜、悠希からまた殺気が…
せっかくいい感じだったのに…
「なんでお前がここにいるのかとか、いろいろ聞きたいこともあるんだけど…とりあえず中に入れてくれ。」
「ふむ。では私は客人のために茶でも用意するか。」
いや、頼むからお前は大人しくしていてくれ…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「…で、なんでお前がここにいる?」
勝手にカギを開けて侵入してるなんて…
警察呼ぼうか?
「少年が私を飼ってくれると言ってくれるようにするため、部屋の掃除などをして好感度を上げておこうと思ってな。そうそう、風呂も沸かしておいたぞ。温かい内に入るがいい。」
「あ、どうも。…じゃねぇ!!いい加減に諦めろ!!ってか、カギはどうした!?」
「ここのアパートの管理人に事情を話したら快く合い鍵をくれたぞ?」
管理人さん、何やってんの!?
このアパート問題ありすぎじゃね!?
「それより…そこの2人の少女の名前を教えてくれないか?」
「…そうだな。まずは自己紹介した方がいいか。」
「じゃあボクからね♪ボクの名前は枕谷スイレン。趣味は睡眠。特技は早寝と情報収集。最近のお気に入りは恭也をイジメること♪よろしくお願いしま〜す♪」
イジメがお気に入り!?
ふざけんなテメェ!!
「…私は天野悠希よ。よろしく。」
「ふむ、2人ともよろしく。…ところで悠希とやらの機嫌が悪いようだが…何かあったのか?」
いろいろありました。
主にアナタのせいで。
「…単刀直入に聞くわ。アンタと恭也はどんな関係なの?」
「どんな関係って…少年は私の飼い主で、私は少年の飼い猫…になる予定だ。」
「か…飼い猫!?」
「恭也!アンタ人間をペットにするなんて最低よ!!」
「ち、違う!!そいつが勝手にそんなこと言ってるだけだ!俺はそんなこと認めてない!」
「そうなのだ。一体私の何が悪いのか…。少女たちも一緒に考えてくれないか?」
「…なるほど、確かに変人だね。」
…わかってもらえたようで何よりだよ。
「それではついでだから私も質問させてもらおう。」
「なんだ?」
「2人の内、どっちが少年の彼女なのだ?」
「ブッ!?」
な、なんて質問してるんだよ!?
「か、彼女って…!?わ、私はただの幼なじみよ!」
「じゃあボクが彼女〜♪」
「アンタはただの友達でしょ!!」
「失礼な!ただの友達なんかじゃないよ!ボクは彼の親友だよ!」
俺、お前のこと親友だなんて言ったっけ…?
「ふふ…。なかなか面白い少女たちではないか。」
「…そうか?」
「面白いとも。今の反応で少年がどれだけ人に好かれているかわかったしな。」
好かれている…?
どこが?
どっちかというとイジメられてるよ?
「こんなにかわいい少女2人と一緒にいるのなら学校生活も楽しいだろう?」
「楽しいというか…疲れるというか…」
「というか、2人だけじゃないよ。キミの周りには他にもかわいい女の子がいるもんね〜♪」
「ほう?他にもいるのか?少年よ、学校はハーレムを作るところでは無いぞ?」
そんなもん作ってねぇよ!!
イヤな言い方するな!!
「…とりあえず自己紹介も済んだし、後は…………」
「まだ自己紹介は終わってないわよ。この人が一体何者なのか、そこのところを教えてもらってないわ。」
…あー、それは聞くだけムダだと思うよ?
コイツ、自分のことは何一つ教えてくれないもん。
「私のことが知りたいのか?では自己紹介しよう。私の名前はノラネコ。今は公園に住んでいるが、近々ここに住みたいと思っている。趣味は特になし。特技…とは言えないが、だいたいのことはできるぞ。逆に苦手なことは無い。…こんなところか?」
「本名を教えなさいよ!!本名を!!それに、ほとんど何もわからないじゃない!」
「…な?困ったヤツだろ?ちなみに俺がコイツについて知っているのは、コイツが俺より年上ってことと家事全般ができること、それに人に勉強を教えられるほど頭がいいってことくらいだ。」
…ついでに言うなら、変人ってこともわかってるけどな。
「本名を教えろと言われても…私の名前はノラネコだと言っているではないか。」
「…あくまで教える気はないわけね。それならスイレン!この人について調べときなさい!!」
そうか!
スイレンの情報収集力なら…!
「えー、別に調べなくてもいいんじゃない?」
あれ!?
やる気なし!?
「何言ってんのよ!?アンタはこの人の正体が気にならないの!?」
「謎の多い女性ってカッコいいじゃん♪」
「ふむ。そこの少女、なかなかわかっているではないか。」
「えへへ♪」
えへへ…じゃねぇ!!
こういう時くらい役に立て!!
「…恭也、スイレンの夕飯抜きにしていいわよ。」
「ち、ちょっと待ってよ!?何でそんなことになるわけ!?」
「アンタが役に立たないからよ。」
「ヒドくない!?…てか、ボクも彼に夕飯作ってもらう約束したんだから!」
「そんなの関係ないわよ。」
「やっぱりヒドい!」
…ちゃんと夕飯は作ってやるから安心しろ。
ただ、悠希に没収される可能性があるから気をつけてくれ。
「…夕飯?少年の?」
「あぁ。この2人は俺の作った夕飯を食べるために来たんだよ。」
「少年の夕飯か…。そういえば少年の料理は弁当でしか食べていなかったな…。…ふむ、今日も私が作ってやろうと思っていたが、ついでだから私もご馳走させてもらおうか。」
「…はいはい、わかったよ。」
やっぱりこうなるよな……
まぁ、今さら1人くらい増えてもいいさ…
手間はたいして変わらないから…
「…ちょっと待ちなさい。今アンタ…なんて言ったの?」
…悠希?
「『弁当』…?『今日も』…?それってどういうことよ?」
「…あ!い、いや…!悠希、それは…!」
「…アンタ、何だかんだ言いながらもその人と仲が良いじゃない…」
「べ、別にそういうわけじゃなくて…!」
「…ふむ。嫉妬というやつか。これもまた青春ではないか。」
そんな呑気なこと言ってる場合か!!
少し黙ってろ!!
「…しかし少女よ。嫉妬するのは結構だが、勘違いはいけないぞ。」
ノ、ノラネコ…?
一体何を…?
「勘違い…?私が何を勘違いしてるって言うのよ?」
「まず弁当の件だが…私と少年が初めて会ったのは私がこの街に来たばかりの頃でな。だからどこで食料を確保したらいいかわからなくて困っていたのだ。それで私が少年に弁当を作ってくるように頼んだのだ。なぁ、少年。そうだろう?」
「え…?あ、うん…」
「そしてそのお礼として私が勝手に料理を作ってやっただけの話だ。少年に悪いことは何もない。すべて私の責任だ。誤解させるようなことをしてすまなかった。どうか許してはくれないだろうか?」
ノラネコ…
お前、悪いことは全部引き受けるつもりか…?
「…ふん、ウソをついてもダメよ。アンタはともかく、恭也の性格はわかってるんだから。」
「それならばもう少し少年のことを信じてやってくれないか?」
「………。」
「悠希…」
「…その前にアンタの勘違いも訂正してあげるわ。」
「む…?何だ?」
「私は嫉妬なんかしてないわよ!!恭也がどこの誰と仲良くなろうが私には関係ないわ!ただ、恭也がハッキリしないからイライラしてただけよ!それに私は最初から恭也を信じてるわ!まるで私が恭也を信じてないみたいな言い方しないで!」
「それはすまなかった。…では、少年のことは許してもらえるか?少年はただ少女を怒らせたくなかっただけなのだ。」
「…わかったわよ。許してあげるわ。」
ゆ、悠希が許してくれた…!?
まさかこんなことがあるなんて…!
ノラネコすげぇ!!
「…それにしても、アンタって本当に変わってるわね。こんなお人好しバカを庇うなんて…」
お人好しバカ…?
…俺のこと!?
「別に庇ってるわけではない。ただ、私のせいで少年に迷惑がかかっては飼ってもらえないだろう?」
だからその飼われようとしている行動が誤解を与えてるんだって!!
いい加減に理解してくれ!!
「…アンタって本当に何を考えてるかわからないわね。」
「私はノラネコだからな。自由に過ごすのが好きなのだ。だから私は住みたいところに住み、好きなように暮らす。そのための手段は問わん。」
「ふふふ…アンタ、なかなか面白いじゃない。…いいわ。アンタのことも信用してあげる。」
「それはありがたい。では、今後ともよろしく頼む。」
「えぇ、よろしく。」
悠希の信用まで得やがった…!?
ノラネコ…マジで何者なんだ…!?
「…ノラネコさんってスゴい人なんだね。」
「ここまでスゴいヤツだとは思わなかった…」
「…そこの2人?それってどういう意味よ。」
「い、いや…特に深い意味は無い。」
だってお前って一度機嫌が悪くなったらなかなか機嫌直らないじゃん。
それなのにノラネコのヤツ、簡単に機嫌を直させたから…
「まぁまぁ、女の子がそんなに恐い顔をしてはダメではないか。女の子は笑顔でいるのが一番だぞ?」
「…笑顔?」
「そうだ。男というのは女の子の笑顔に惹かれるものだ。常に機嫌悪そうにしていたら誰も振り向いてくれないぞ?」
「そういうものなの…?恭也、アンタはどう思う?」
「まぁ…、ムスッとしてるよりは笑顔の方がかわいいと思うよ。」
「そ、そう…?」
「ボクはいつも笑顔だよ♪」
…お前の場合、何か企んでる笑顔だろ。
「それなら私もなるべく笑顔でいようかな…?…あっ!べ、別にアンタに言われたからってわけじゃないからね!?女の子なんだからかわいく見られたいって思うのは当然でしょ!?そこのところは勘違いしないで!わかった!?」
「え…?あ、あぁ…。わかったよ。…まぁ、悠希も笑顔でいた方がかわいいからな。」
「なっ…!?な、なに変なこと言ってんのよ!?このバカっ!!」
《バシッ!》
「痛っ!?」
…え?
なんで怒られるの?
ただ、笑顔でいた方がかわいいって言っただけなのに…
「青春だねぇ。」
「うむ、青春だな。」
…何が?
「…ところでだな…」
「ん…?どうした?」
「さっきから悠希という少女のバッグが動いているようなのだが…」
《…ガサゴソ…》
…本当だ。
これってもしかして…
「…あっ!すっかり忘れてた!この子も紹介しなくちゃ!」
「この子…?なんだ?ペットでも飼っているのか?」
「そうよ。今出してあげるわ。」
「どれどれ?ネコか?犬か?」
…やっぱりペットって言ったら普通はそう考えるよね。
でも残念ながらどっちもハズレです。
「どっちも違うわよ。ほら、この子。私の相棒、イグアナのイグよ。」
「イ、イグアナ!?」
…これはやっぱりビックリするよな。
帰りの時にイグの姿が見えないとは思っていたけど、まさかバッグの中にいたとは…
「な、なかなか個性的なペットではないか。」
「かわいいでしょ?抱っこしてみる?」
「い、いや…遠慮しておこう。どうも爬虫類は苦手なのだ…」
へぇ、爬虫類苦手なんだ?
…ノラネコの弱点見っけ♪
「それにしてもイグアナをペットとしているとは…。ほら、少年も負けてられないぞ。」
「…何がだよ?」
「少年も変わったペットを飼ってみようとは思わんか?今ならこの私が……」
「…さて、そろそろ夕飯でも作るか。」
「…少年、無視は悲しいぞ?」
いい加減しつこいんだよ!
大人しくそこの2人と遊んでろ!
「…あまりしつこく言っても逆効果か。仕方ない、それならまた今度新たな作戦を立ててくるとするか。」
「何度来ても答えは同じだ!俺は絶対にお前を飼わん!!」
「そうか…。」
悲しそうにしてもムダだ!
例え何があろうと、絶対に…!!
「…キミ、ノラネコさんがかわいそうだと思わないの?」
「そうよ。それくらい別にいいじゃない。」
あれ!?
敵が増えた!?
「おい!?お前ら、さっきまで反対派じゃなかったか!?」
「気が変わったのよ。話してみたらいい人みたいだし…」
「それに住むところが無いなんてかわいそうじゃん?ボクとしてはノラネコさんがキミの所にいた方が面白いし♪」
そんな理由でコイツを俺の所に押しつける気!?
「…それとも何?アンタ、こんな状況なのに断るわけ?」
「い、いや…その…」
これ、完全に脅してるよね!?
笑顔はどうしたの!?
だ、誰か俺に助け舟を…!
「…まぁ待て、少女よ。私のためとはいえ、少年を脅すのはダメだ。」
ノ、ノラネコ…!?
え!?
まさかお前が助けてくれるの!?
「私が望んでいるのはそういうものではないのだ。少年が自分の意志で私を飼うと言ってくれねば意味がない。私は気が長く、諦めも悪い。いつか少年が認めてくれる日まで気長に待つさ。」
「…アンタってホントに変わってるわね。」
「そうか?」
「ボクだったらこのチャンスは逃さないのになぁ…」
自分のやりたいことは実行するまで諦めないけど、人に迷惑をかけてまではやろうとしない…
変わったヤツだけど、人のことを考えてるいいヤツかもな…
…………。
…ダメだな。
やっぱりコイツの悪いところが見当たらない…
悪いところがあればそれを口実にハッキリ断れるのに……
唯一、『誤解される』ってのがあったけどそれも自分で説明して解決しちゃったし…
…………。
…そもそも、何で俺はここまで頑なに拒否しているんだ?
近所の人に何を言われても気にしないタイプだから、世間体を気にしてるって理由だけじゃないはずなんだけど…
…………。
…もしかしたらただ意固地になっていただけなのかもな…
…………。
「…わかったよ。」
「む…?」
「ノラネコ、お前の好きにしていい。」
「少年…?それはつまり…?」
「…お前がここに住みたいなら居てもいいってことだ。…そのかわり、ちゃんと家事は手伝ってもらうからな。」
普通なら知り合いになったばかりの…しかもこんな変わってる人に対して家に居てもいいなんて言わないんだけど…
コイツなら問題ない…そんな気がする…
…俺も少し変わったヤツなのかもな…
「…少年…」
「よかったじゃない。これでアンタの目標は達成したわよ。」
「おめでと〜♪」
「…ありがとう。私は今とても嬉しいぞ。」
「ノラネコ…」
「…しかし、今の少年の言葉は聞かなかったことにさせてもらう。」
…はい?
「お、おいノラネコ…!?それってどういう…「ちょっとアンタ!!どういうことよ!?アンタはここに住みたいんじゃなかったの!?」
…悠希、それ俺のセリフなんだけど。
「今、少年が言ったこと…、これは恐らく私に対する同情によるものだろう。そんな一時の迷いでこんな大事なことを決めさせるわけにはいかん。」
「いや、同情なんかじゃ…」
「きっと心の奥底で同情してしまっているのだろう。後で冷静になってみれば後悔してしまうことになる。」
めんどくせぇな!?
お前本当にここに住みたいのか!?
「ノラネコさん、彼はきっとそんなこと考えてないと思うよ?」
「その可能性もあるが、とりあえず今回は退いておく。また今度、改めて少年の返事を聞くとしよう。…そんなことより少年よ、そろそろ夕飯の支度をするのではなかったのか?」
「あ、あぁ…でも…………本当にいいのか?」
「少年が本当に私を認めてくれたのならばまた今度来ても同じ返事をしてくれるだろう?でも万が一後悔するようなことになっては少年が困ってしまう。そうならないようにもう一度じっくり考えておいてくれ。」
…少し相手のことを気にしすぎだと思うけど、ノラネコらしいかもな…
「…わかったよ。それじゃ、俺は夕飯を作ってるからお前らは雑談でもして時間を潰しててくれ。」
「ふむ、了解した。…それでは少女たちよ、少女たちが通っている学校について聞いてもいいか?」
「いいわよ。」
「けっこう面白い学校だからね。話すことはたくさんあるよ。ついでだから彼に関する面白い話も教えてあげる♪」
「少年の…?ふむ、それは気になるな…」
…あまり変なこと教えるなよ?
もし変なこと教えたらお前のハンバーグだけミニサイズにするからな?
「例えば…間違って女子更衣室に入った話とか♪」(第99話)
…はい、ミニサイズ決定。
…ってその話はマズいからやめろ!!
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「…ごちそうさま。やはり少年は料理が上手いな。おいしかったぞ。」
「…昔より腕は上がってるみたいね。」
「そうかな?喜んでもらえてよかったよ。」
そうやって言ってもらえると作ったかいがあったってもんだよ。
「…確かにおいしかったんだけど、ボクのだけ小さくなかった?」
「…気のせいだ。」
「そうかなぁ…?」
…食う前に気づけよ…
「…それじゃ、後片付けでもするか。」
「それなら私も手伝おう。」
「お?手伝ってくれるのか?」
「うむ。2人でやった方が早く終わるだろう?せっかく少女たちが来ているのだから早く終わらせてゆっくり遊ぶがいい。」
…『遊ぶ』というより『遊ばれる』ことの方が多いけどな。
…主にスイレンによって…
「じゃ頼む。」
「うむ。」
「ってわけで俺たちは後片付けをしてるから、お前らは適当に遊んで待っててくれ。」
「はーい。」
「わかったわ。」
…冗談でもいいから『私も手伝う』とか言ってくれないかなぁ…
まぁ、コイツらなら食器を割る可能性があるから別にいいんだけど…
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《カチャ…カチャ…》
「…手伝ってもらって悪いな。」
「気にするな。そのうちこれが私の仕事になる。」
そういえばここに住み着いたら家事を手伝う約束だもんな…
「それに私は家事をするのはキライではないからな。…というより、こういうことをするのは久しぶりだから楽しいのだ。」
「楽しい?家事が?」
「うむ、楽しくて仕方がないのだ。毎日やっている少年にはわからないだろうな。」
まぁ、確かにわからないな…
料理を作ってる時は楽しい時もあるけど、それ以外の家事を楽しいと思ったことはないからな…
「…特に今日のように嬉しいことがあった日にはな。」
…嬉しいこと?
「嬉しいことって?」
「…例え一時の迷いだとしても、少年が私のことを認めてくれたことだ。」
「認めたっていうか…ただここに居てもいいって言っただけだろ。」
「普通、ここまで怪しい人物に対してそのようなことは言わないだろう。」
自分のこと怪しいって自覚してるんだ?
それならちゃんとした自己紹介してくれない?
「それに、あの少女たちとも仲良くなれたしな。」
「あぁ、それはよかったな。」
「うむ。少年が料理を作っている間、いろいろ面白い話を聞かせてもらった。」
アイツらの『面白い話』って俺をイジメてる話じゃないよな…?
それ、俺としては面白い話じゃないからな?
「…それって例えばどんな話だ?」
「少年には教えないでくれと言われているからその質問には答えられないな。」
…うん、確定したね。
「まぁ、いろいろ辛いこともあるだろうが少女たちをキライにならないでくれ。」
「…わかってるよ。」
アイツらのことをキライになるならとっくになってるさ…
「…なんだかんだ言っても、アイツらにはアイツらのいい所があるからな。俺はアイツらのことを信用してるよ。…ノラネコ、もちろんお前のこともな。」
「…はっはっはっ!少年よ、なかなか嬉しいことを言ってくれるではないか!」
「…自分で言ってて少し恥ずかしいけどな。」
「恥ずかしがる必要などない。人として、他者を信用するのは大事なことだ。少年よ、これからも少女たちのことを信用してやれ。」
「わかってるって。…ただし、イタズラされた時は別だけどな。」
「ははは!それはそうだな!」
「お前もアイツらと組んでイタズラとかするなよ?」
「そのくらいはわかってるさ。ペットは飼い主に忠実なのだ。飼い主に逆らうような真似はしないつもりだ。」
…お前、まだそんなこと言ってるのかよ。
「お前なぁ…いろいろと間違ってるぞ?」
「む?何がだ?」
「俺はお前をペットとしてここに住まわせるつもりはないからな?普通に友人のように接するからお前もそれに合わせろ。」
「友人…」
それくらいお前のことを信用してるってことだからな?
裏切るようなことはしないでくれよ?
「友人か…。私はノラネコなのだからペット扱いでもよかったのだがな…。少年がそう言うのならばそうしよう。」
ぜひそうしてくれ。
そうじゃないと俺が困る。
「…まぁ、そういうわけだ。ノラネコ、これからもよろしくな。」
《…スッ》
「…む?」
俺が出した右手を見て首を傾げるノラネコ…
…さてはコイツ、意味がわかってないな?
「ほら、握手だよ。握手。」
「あ…あぁ、握手だったのか。てっきり私の体に触ろうとしているのかと……」
そんなわけねぇだろうがっ!!
…いや、ある意味あってるのか?
「それでは…、こちらこそよろしく頼むぞ。」
《…ガシッ》
…コイツにはまだまだ怪しい部分が数多くある……
だけど、いつかその謎の部分が無くなれば……
そうすればもっと仲良くなれると思うのに……
「…では、友人としてもっと仲良くなるために私も学校に通おうか?」
いや、それはいろいろ厄介なことになるからやめてくれ!!
今回はダラダラと長くなってしまってスミマセン。
…ここまで来るとタイトルやオチを考えるのが難しくなりますね。
他の長期連載している人たちはスゴいと思います。
今回の内容に関してですが、ついに恭也がノラネコを住まわせることを決意したようです。
決断が早いかもしれませんが、そうでもしないとずっと同じパターンになりそうですからね。
なるべく早めにノラネコの正体がわかるようにしたいんですけど、それはいつになってしまうのか……
申し訳ありませんが、気長に待っていてください。
それでは、今回はこの辺で。
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