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第111話〜ノラネコ

 




《ダダダダ…!!》



「くそっ…!俺としたことが…!!」




まさかこんな事になるなんて…!


もっとしっかりしていればこんなことには…!!


…いや!


まだ間に合うかもしれない!!


最後まであきらめちゃダメなんだ!!


走れ!


走るんだ、俺!!









…いや、まぁ…大げさに言ってるけど、単純に寝坊して遅刻寸前ってだけなんだよね。


でも遅刻したら黒城に処刑されるんだから大げさでもないかな…?


くそっ…!


目覚ましが壊れなければこんなことには…!




「チャイムが鳴るまで…あと5分か…!」




ケータイの時計を見ると、タイムリミットまであとわずか…!


このままのペースだとギリギリ…!




「…いや、待てよ?」




…確かこの先には公園があったな。


そこの柵を越えていけば近道になるはず…


柵を乗り越えるのがいい事だとは思えないけど、この緊急事態なら仕方がない…!




「…やるしかない!」




いつもの通学路なら決して入ることのない公園……


しかし、今日はあえてその公園に足を踏み入れる……






…それがどんな結果をもたらすかも知らずに…










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【公園】



「はぁ…はぁ…」




ここの公園は意外に広く、たくさんの木が植えられている。


森林浴にはちょうどいいような場所だ。


また、ここを散歩する人も多く、老人や犬を連れている人も多い。



…多分ここをこんなに全速力で走り抜けてるのって俺だけなんだろうなぁ…


ジョギングでもここまでスピード出さないもんね…


…まぁ、急がないといけないんだから仕方ないよ。


うん、仕方ない…




…おっと、そうこうしている間に目的の地点にたどり着いたようだ。



俺の目の前に広がる草むら…


この草むらの先にある柵を越えたら学校まであとわずか…


残り時間は…3分…


よし!


これなら何とか間に合いそうだ!


まさかこんな草むらのところまで散歩に来る人はいないだろ。


だから注意される心配もない!



…一応周りを見回しても、人の姿は遠くにしか見えない…


この距離なら見つかる心配も無いだろう…



それでは…!


いざ、出発!!




《ガサガサ…》



…それにしても、何でこの近辺だけ草が伸び放題なんだろう?


こんな状態になってるのってここの草むらエリアだけだよな?


他の場所みたいにちゃんと手入れしてたらいいのに……


手入れしてる人がサボってんのか?


それとも、自然っぽくするためにわざとそうしてるのか?


意外と広範囲だし、その可能性が高いよな…


まぁ、そんなどうでもいい話は学校に着いてから考えるか…




《ガサガサ…》


《ガサガサ…》


《ガサガサ…》


《ガサガサ…》










《…ガシッ!!》



「…?」




…ガシッ?


あれ…?


急に左足が動かなくなったぞ…?



………?






『…少年よ、人の家に入る時はあいさつくらいした方がいいぞ?』


「あ、それはどうもすみません…。」




…ん!?


今の声誰!?どこから!?




『…それと…』



《…ガサァッ!》



「…!!?」




く、草むらから何か…いや、誰か出てきた!?




「…人と話す時は目を合わせて話そうじゃないか。なぁ、少年よ♪」


「は、はぁ…」




いや、うん…まぁ…それは同意しますけど…


…アナタは一体何者でしょうか?




草むらからいきなり出てきたこの人……


身長は俺より少し高いくらいで、俺の右肩に手をポンポンしながらにこやかに話しかけてくる…


パッチリした瞳に、整った鼻…柔らかそうな唇……


大地が見たら間違いなく惚れるタイプだろう…


あ、アイツは女性なら誰にでも惚れるか。


服装は上下ともにジャージ…


普通にしていたらジョギングしている人っぽい感じだ。


多分活発なタイプなんだろうな…


制服じゃないから、まず間違いなく学生ではないだろう。


…というか、学生だったら今ごろ慌てふためいてる時間だもんな。


時折風に揺れる金髪のポニーテールには葉っぱがついてしまっている…


…うん、俺もビックリしたけど、この人女性だったんだね。


あの話し方だから男かと思ったんだけどな…




…まぁ、ここまで見たところで俺は気づいてしまったよ…


俺の知り合いの女の子って、みんな俺に不幸を持ってくるだろ?

(あ、千秋は例外。)


ということは、この人と知り合いになったらマズいことになりそうだと思わない?


俺はそう思う。


…それなら俺がとるべき行動は1つ!!




「あ、あの…俺、遅刻しそうなので…失礼します!!」




いつも通り、ヤバそうなことからは逃げる!!


これが最善の作戦だ!!






「…まぁ、待て。」



《…グイッ》



「ぐぇっ!?」




ちょっ…!?


く、首…!!




「な、何をする!?」


「引き止めただけだが?」




止め方を考えろ!!


襟を引っ張ったら首が締まるだろうが!!




「だから俺は遅刻しそうなんだって!…うわっ!?あと一分!?急がなくちゃ…!!」


「…だから待てと言っている。」



《…グイッ》



「ぐぇっ!?」




だから首っ!?


殺す気か!?




「だから…!!」


「まぁ、とりあえず私の話を聞け。」


「お前が俺の話を聞けぇっ!!」




いつもの俺ならもう少し冷静に対処できるだろうが、今の俺にはそんな余裕はない!!


一刻も早く学校へと行かないと…!




「あんたの話なら学校帰りに寄るからその時にしてくれ!!」


「私は少年と今話がしたいのだ。」


「だから遅刻するって言ってんだろうが!!」




なんなんだよ!?


ユリといいお前といい……


今、おしゃべりがブームなのか!?




「なに、少年に不利益は生じさせない。ここは1つ私を信じろ。」


「お前と会話している、今この瞬間が俺の不利益だ!!いい加減に俺を学校に……!」



《…キーンコーンカーンコーン…》



「………。」


「…ふむ、どうやらチャイムがなってしまったようだな。」




お、終わった…!


明日間違いなく殺される!!


黒城に処刑される…!!


あぁ、短い人生だったな…




「…もういいよ。お前の好きにしてくれ。」


「そうか。では、少年の生徒手帳とケータイを貸してもらってもいいか?」




…何に使うか知らないけど、ご自由にどうぞ…


どうせもう俺には希望なんか無いんだ… 




「名前は…《神堂恭也》か。ふむ、なかなかいい名前ではないか。」


「…どうも。」


「住所もここから離れてないんだな…。…そして望壮高校の1年B組か…。ふむ、やはり年下か。あ、高校生なんだから当たり前か。」




…年上だったんだ?




「…まぁ、関係ない情報を調べるのはやめて、さっさと目的の行動をするか。」




…?


何をする気だ…?




「少年、高校の電話番号はわかるか?」


「あぁ、ケータイに登録してあるはず…」


「…お、これだな。では、少しの間使わせてもらうぞ?」




使うって…


俺の高校に電話かけてどうするんだよ?




《プルルルル…プルルルル…》



「…あ〜、もしもし?そちらの高校に通っている1年B組の神堂恭也の保護者なんだが…担任はいるか?」




ちょっと待て!?


お前がいつ俺の保護者になった!?




「…あ、恭也の担任か?恭也のことなんだが、どうも今日は体調が悪いようなので欠席させてもらう。本人はどうしても学校に行こうとしていたのだが、私が無理だと判断して無理やり休ませた。なので、今日だけは見逃してやってほしい。…ふむ。ふむ。…それじゃあ、そういうことで。」



《…プツッ》




え、えぇと…?


今の会話の流れは…?




「…良かったな。今日だけは見逃してくれるそうだ。これで少年は今日1日自由だぞ♪」


「マジでっ!?」




ゆ、夢じゃないよな!?


今まで不幸なことしか起きなかったあの学校を平日に休めるなんて…!


一時はどうなるかと思ったけど、お前サイコーだよ!!




「どうだ?私はなかなかいいヤツだろ?はっはっはっ♪」


「本当にいいヤツだよ!最初はただの変人かと思ってたけど!」


「おぉう…。意外とキツいことを言うな…」




…あ、そういえばこの人って年上なんだっけ?




「あ、えと…すみません。でも何で俺を助けて…?」


「気にするな。つい手助けをしたくなっただけだ。やっぱり人生は自由きままに楽しく生きなくてはな♪」




…悠希と話が合いそうな人だな。




「それで、あなたは……」


「ストップ。」




…?




「さっきの慌ててた時のように普通に話してくれ。あっちの方が会話していて面白い。」


「いや、でも…」


「あっちが少年の素なんだろう?ならばいいではないか。…まぁ、どうしてもイヤなら今のままでもいい。そのかわり私も敬語で話すからな?そうなったら会話が一気につまらなくなるぞ?少年はそれでもいいのか?」




…確かにそれは困る。




「…そういう話なら、遠慮なくいくか。」


「ふむ、なかなかいい少年ではないか。私が見込んだだけはある。」




見込まれてたんだ…?




「…で、あんたは一体何者なんだ?」


「ふむ、私は自由きままに各地を旅している者。渡り鳥みたいなものだ。ここには昨日来たばかりなんだ。そして少年が今のっているダンボールが私の家だ。」




うわっ!?


足下にダンボールあったのか!?


気づかなかった…!


そういえば最初に話しかけられた時もそんなことを言っていたような…




「言っておくが、ホームレスというわけではない。このダンボールが我が家なのだからな。」




…ダンボールってホームレスの象徴みたいなものだろ。




「…てか、渡り鳥ってよりも野良犬みたいだな。」




あ、別にホームレスをバカにしているわけじゃないからね?


ただ、コイツの暮らし方を同じ動物で例えるならそっちの方がイメージにあうと思っただけ。


気に障った方がいらっしゃいましたらごめんなさい。




「少年よ、訂正しろ!私はネコ派だっ!!」




訂正する場所そこ!?




「ノラネコ…ふむ、なかなかいい響きだな。」


「あのぉ…?」


「よし!これからは『ノラネコ』と名乗ることにしよう!!少年よ、よろしく!」




…あ、やっぱりこの人も変人だ。


てか、本名はなんなんだよ…?




「いや、本名は…?」


「ノラネコだ。」


「うそつくな!!てか、それ今決めたばかりだろ!!」


「だから今からこれが私の本名だ。そう、私はもう《オウカ》なんて名前じゃ……あ。」




…自爆しやがった。




「《オウカ》…?それがお前の本名なのか?」


「…な、何の話だ?そんな名前は聞き覚えが無いが…?」




しらばっくれるな!!


お前、自分で言っただろうが!!




「《オウカ》ってどんな字なんだ?あとついでに名字も……」


「私の名はノラネコだ!あえて漢字で書くならば《乃良 祢子》だ!」




無理やり漢字にするなっ!!


本名の方の漢字を教えろ!!




「どうして本名を隠す!?」


「だからノラネコだと言っているだろう。別に隠しているわけではない。」




…ダメだ。


どうせこのまま粘っていても教えてくれないだろう…




「…じゃあ、次の質問だ。さっき年上と言っていたけど、お前は何歳なんだ?」


「見た目通りの年齢だ。」




わかんないから聞いてるんだよ!!


えぇい!!


次だ!次!!




「誕生日!」


「今から365日以内にある。」


「星座!」


「誕生日に合わせた星座だ。」


「血液型!」


「知らん。」


「干支!」


「えーと…。」 


「好きな食べ物!嫌いな食べ物!」


「好き嫌いはいけないぞ?」


「どこから来た!」


「あっち。」


「趣味・特技!」


「面接やお見合いじゃないんだから、そんなのどうでもいいではないか。」


「好きなタイプ!」


「私が恋に落ちるような男性。」


「何か一言!」


「質問しすぎじゃないか?」


「お前はマジメに答える気あるのかっ!!」


「私はいつだってマジメだ。」 




どこがマジメだっ!!


結局お前のこと何一つわからないじゃねぇか!!


質問してる意味が一切無いんだよ!!




「俺のことを教えたのにお前のことを教えてくれないのはズルくないか!?」


「少年の質問には答えてるではないか。何が不満だ?」




答えの内容に決まってるだろうがっ!! 




「だいたい、私も少年のことは教えてもらってないではないか。」


「俺の生徒手帳見ただろ!」


「ああ、そういえばそうだったな。でも、それとこれとは話が別ではないか?」




別じゃねぇ!!


俺の個人情報を知ったんだからお前のも教えろって言ってんだよ!!



…って言ってもどうせ無駄なんだろうな。




「…もういいよ。お前のことを知るのはもうあきらめた…」


「まぁ、今はわからなくてもいずれわかるようになるだろう。ゆっくりと互いのことを知っていこうではないか。」




いや、正直もう関わりたくないです。






「…と言っても、私は自由きままなノラネコ…。いつここからいなくなるかはわからないがな。その時まで仲良くしようではないか、少年よ。」


「…え?いつかここからいなくなるのか?」


「さぁな。ここが気に入ればここにいる。行きたい場所ができたらそこに移り住む。それが私の生き方だ。」




…本当に自由きままだな。




「本当なら明日にでも移動しようとしていたのだが、せっかく少年に会えたからな。もうしばらくはここにいようと思う。」


「昨日来たばかりなのにもう移動しようとしてたのか?」


「ふむ。この街には昔住んでいたことがあってな。懐かしかったからちょっと立ち寄ってみただけなのだ。…もっとも、私の家はすでに無くなっていたがな。」




この街の元住人だったんだ…


…お前、何年こんな生活してるんだよ?








「…さて、私の予想ではここで少年が『家が無いなら俺の所に来るか?』と言ってくれると思うのだが…」


「誰がそんなこと言うか!!てか、家あるだろ!そのダンボール!」


「こんなものを家と呼べるわけないではないか。」




お前がそれを家と言っていたんだろうがっ!!




「だいたい、お前は自由きままなノラネコなんだろ!?ノラネコ生活はどうした!?」


「たまには飼われるのも悪くないと思ってな。エサさえくれれば懐くぞ?」




飼い猫になろうとするな!!


ノラのプライドを見せろ!!




「炊事・洗濯・掃除など、家事全般はできるから安心しろ。」


「だから飼う気は無いって言ってんだろ!!」


「…ふむ。こんな、男なら喜びそうなシチュエーションなのに断るなんて珍しい少年だな?こんな美女と一緒に暮らせるのだぞ?なんならメイドにしても良いのだぞ?それに私が少年に害を与えることはしていないだろ?何が不満だ?」




…確かに、コイツはまだ俺に害を与えてなかったな。


それどころか助けてくれたし…



…って、そういう問題じゃねぇ!!




「…あのなぁ、俺が言いたいのは…」


「なるほど、彼女がいるのか。それなら誤解されないようにしなくてはならないからな。」


「違うわっ!!勝手に納得するな!!」




…はっ!


しまった…!


そういうことにしておけば話が終わったのに…






「…まぁ、少年がそんなにイヤがるなら仕方ない。」




…あれ?


あきらめた…?


結果オーライ?








「ノラはノラらしく……………勝手に住みつくことにしよう!!」




ふざけんなテメェ!!




「何考えてんだっ!!ダメに決まってんだろうが!!」


「はっはっはっ!冗談だ!思った通り、なかなか面白い反応をするではないか♪」




…はっ!


遊ばれてる…!?




「いやぁ、それにしても私にこのようなツッコミをしてくれる者と会ったのは初めてだ。普通の者ならまず私と関わろうとすらしないからな。」




いや、俺も関わろうとは思っていなかったんだけど…


…てか、それって遠まわしに俺を変人って言ってないか?


気のせい…?




「少年よ、悪かったな。こんな変人に付き合ってもらって。なかなか楽しかったぞ。…さぁ、せっかく自由な1日を手に入れたんだ!!存分に遊んで青春を満喫するがいい!!」


「…………。」




…コイツ、ただの変人じゃないんだな。


話してみたら悪いヤツじゃなさそうだし…


…時々おかしなことを言うけど…



……………。






「…いや、遊びに行ってもズル休みだってバレるだけだし、家に帰ってもすることもないからな…。せっかくだからもう少しだけお前に付き合ってやるよ。」


「…少年…」




たまにはこうして会話するだけの1日もいいだろう…


時々疲れるけど、話していて面白い人だし…


それに俺に悪いことをしてくるわけでもない…


…まぁ、俺の家に住みつくって言われた時は困ったけど…


でも本気じゃないみたいだからな。


もう少しくらいならコイツに付き合ってやってもいいだろう…















「…悪いが、私はこれから食料を探しに行こうとしていたのだ。また今度にしてくれ。」




空気読めやっ!! 




「ああそうかい!じゃあ、俺は帰るからな!」


「ふむ。気が向いたらまた会いに来てくれ。」




その時までお前がここにいるのかどうかわからないけどな。


まぁ、気が向いたら来るよ。




「じゃあな。」


「ちゃんと会いに来てくれることを期待してるぞ〜。」




…ヒマなんだな。














〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【翌日:公園】



「おーい、ノラネコ。来てやったぞー。」




…本当は来る予定なんか無かったんだけどな。


でも、なんとなく来てしまった…


なぜかアイツの分のお弁当も作っちゃったし…



…俺、アイツのこと気に入ったのかな?



…いや、そんなわけないか。


きっと単純に昨日助けられたお礼をしようとしているだけだよ。


うん、絶対そうだ。



…あれ?


でも冷静に考えたら、昨日のピンチってアイツが俺を足止めしたことが原因なんじゃ…?



………。



…まぁいいや。




《ガサガサ》


《ガサガサ》


《ガサガサ》




「…ノラネコ?」




あれ…?


確か昨日はこの辺にいたよな?


ここら辺だけ草が折れてるから間違いないと思うんだけど…




「いないのか…?」




しばらくはここにいるって言っていたのに…もう移動しちゃったのか…


…やっぱりアイツは自由気ままだな。




「…仕方ない、この弁当は悠希にでもやるとするか。」




せっかく作ってきてやったのに…


また今度会った時に文句言ってやる!



…会えたらだけど。



…………。



…会えるのかな…














《ガサァッ!!》



「弁当だと!?少年よ!それを早く言え!!」


「ぬわぁっ!?ノラネコ!?」




おま…!?


すぐ近くにいたのか!?


それなら何で返事しなかったんだよ!?




「ふむ。わざわざ私のために弁当まで作ってきてくれるとは…。少年よ、ありがとう。隠れたらどんな反応をするのか試して悪かった。」




…弁当渡すのやめようか?




「だが少年よ。私も行動することがあるのだ。だからいつもここにいるとは限らないぞ。もしもこの街からいなくなる時はちゃんと少年に声をかけてからいなくなることにするから安心しろ。だからあんなに寂しそうな顔をするな。」


「なっ…!?べ、別に寂しそうな顔なんか…!?」


「そうか?では私の見間違いということにしておこう。とりあえず弁当はありがたくもらっておくぞ。」


「あ、あぁ…」




ま、まぁ…こんなヤツでも急にいなくなったら寂しいからな…


きっとそういうことだよ、うん。






「…ところで少年よ。今日は遅刻じゃないのか?」


「あぁ、大丈夫だよ。ちゃんと家を出る時に時計で確認したから。」


「…つまりそれ以降は確認していないということだな?」




…?


確かにそうだけど、それがどうかしたのか?




「少年よ、ケータイを確認してみるがいい。」


「…?まだ時間に余裕はあるはずだけど……………って残り3分!?」




うそっ!?


もしかして家にあった時計、時間ずれてた!?




「さすがに2日連続はごまかせないだろう。急いだ方がいいぞ?」


「ああ!教えてくれてありがとう!じゃあまた後で!」


「お?また来てくれるのか。楽しみに待っているぞ♪」




その時まで俺の体力が残っていたらの話だけどな…















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【ノラネコ視点】



「…ふむ、なかなか面白い少年だな。」




この私に弁当を作ってきてくれるなんて…


普通ならばもう関わろうとしないと思っていたのだが…



…まさかこの街であのような少年に会えるなんてな…


どうやら戻ってきて正解だったようだ。




「…どうやら本当に渡り鳥をやめる時が来たようだな。」




そろそろ一カ所にとどまるというのいいかもしれないな…


ノラネコのように…しばらくは自分のテリトリーの中で行動することにしよう。






「…待てよ?あの少年に飼われるのも面白そうではないか?」




一度冗談で言ったものなのだが…


あの少年なら文句は言っても私を邪険にすることは無いだろう……




「…どうにかして飼い猫になろうとするノラネコ…ふむ、それもそれで面白そうだな。」




人生は一度しかないのだから楽しく生きねば損だ。


このような計画もきっと面白いであろう。




「…よし!そうと決まったら、次からはあの少年に飼われるように努力しようではないか!!ふっふっふっ…♪久々に面白くなってきたぞ…♪」




さぁ、まずはどのような作戦にしようか…♪


どうせなら面白くしなくてはな…♪


ふっふっふっ…♪






【…ノラネコによる『飼い猫計画』がスタートしたようです。】

ここだけの話なんですが、実は今回登場したノラネコというキャラは本来スイレンより前に登場する予定だったキャラでした。


そして学年レクの時に乱入するという話も考えていたんですが……


なぜか今ごろ登場するということになってしまいました…


また、ノラネコを登場させようとしたのは過去に何度かあり、その度に設定が違っていました。


今回の話以外にも3パターンくらい違う初登場の話がありました。


なぜかわかりませんが、ノラネコを登場させるのに躊躇していたんですね…


今でも少し抵抗がありますが……


皆さんに気に入っていただけたら幸いです。



長くなってしまいましたが、今回はこの辺で。


感想・評価・意見・要望・助言・メッセージなど、お待ちしています!!

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