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第109話〜忘れ物

 




【深夜:学校】



「…さて、そろそろ説明してもらってもいいよな?」


「……何を…?」


「何で俺がこんな時間に学校に呼び出されたのか、その理由だ!!」




家でのんびりテレビを見てたのに、いきなり電話で『……今から学校に来て…』って呼び出されたんだぞ!?


理由も聞かされずに!!


何の用で呼び出したのかくらい教えてくれてもいいだろ!!




「……1人じゃ怖いからだって…」




俺が聞きたいのはそっちじゃねぇ!!


こんな時間に学校に来る理由の方だ!!



…ん?


『だって』…?


まるで自分のことじゃないような言い方だけど…?














「……だよね…?」


「ち、違うよ!!ボクはそんなに臆病じゃないよ!!…ただ、人がたくさんいた方がいいかなぁ〜って思っただけで…」




スイレン!?


お前が俺を呼び出した真犯人か!?




「…何の用で俺を呼び出した?」


「えっと…教室に忘れ物しちゃって…」


「…帰る。」


「待って!?ボクをおいて行かないでよ!」


「怖いわけじゃないんだろ?だったらいいじゃん。」


「い、いや…!ほ、ほら!このまま帰ってもヒマなんでしょ!?だったら少しボクに付き合ってくれても…!」




…素直に怖いって言ったらいいのに…




「…仕方ないな。少しくらいなら付き合ってやるよ。」


「ホント!?キミがこんなにあっさり了承してくれるなんて…。何が目的!?」


「…帰ってもいいなら帰るぞ?」


「あ、いえ…ごめんなさい。」




別に目的なんて無いって。


…ただ、断っても結局は無理やり連れて行かれそうだから了承しただけだ。




「…でも、何で澪まで呼び出したんだ?ただ付き添うだけなら一人で十分だろ?」


「え?ボクと2人きりになりたかったの?」




誰もそんなこと言ってねぇ!!




「俺が聞きたいのは、澪は俺たちと違ってこの近くに住んでないのに、何でわざわざ呼び出したのかってことだ!!」


「いやぁ、キミを呼んでもどうせ断られると思ったから最初に澪を呼んだんだけど、『……せっかくだから恭也君も呼ぼう…』って言われて…」




やっぱり澪が俺を呼び出した犯人かよ!?


一体何のために…!?




「澪!?何で俺を巻き込む!?」


「……逆に聞くけど、怖いの苦手な人を集める意味は…?」




…あぁ、お前らって全員怖いの苦手だもんね。


だから俺が呼ばれたのかぁ……


なるほどねぇ…




「…って俺だって怖いのは苦手だ!!」


「……でも幽霊さんと一番仲がいい…」


『そうそう。だから大丈夫でしょ?』


「だからそういう問題じゃ…!!」




…………ん?


今の声…スイレンじゃないよな…?



…………。



…ってことは!?






『ハロ〜♪私から会いに来てあげたよ♪さぁ、さっそくゆっくりたっぷりお話ししましょ♪』


「…やっぱりお前かよ。」




まさかこんなにすぐコイツに出くわすなんて…


23不思議の通り、1−F教室で待機してろよ…




「……恭也君…?」


「いきなり独り言なんて…まさかボクたちがイジメすぎたせいで壊れた!?ゴメンね!次からは控えるよ!」




壊れてねぇよ!!



…でも、イジメは控えてくれると助かる。




「違うって。さっそくアイツが出たんだよ。ほら、澪たちにも姿を見せろ。」


『うん。わかった。』



《…パッ!》



『…う〜ら〜め〜し〜や〜♪』


「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?出たぁぁぁぁっっ!!?」




だからスイレンを怖がらせるなって!!




「……そういうのは白い着物でやらないと…頭に三角のやつをつけるのも忘れずに…さらに人魂もあったら満点…」


『おぉ?それはいいかも…♪さすが澪ちゃん!ナイスアドバイス♪』




そこっ!!


変なこと教えるな!!


スイレンが余計にビビるだろ!








『…ところで澪ちゃん?そろそろ私の名前決まった?』


「あぁ、そういえばまだ名前決まってなかったな?もうお前の呼び名、幽霊でいいんじゃないの?」


『ダメ!!名前が無かったら他の幽霊と一緒にされるでしょ?私は私なんだから。他の幽霊たちと一緒にまとめちゃダメ!ちゃんと名前で呼んでもらわなくちゃ!一応、自分でも名前は考えてみたんだよ?幽霊だから《ユウ》とか。でもこれって悠希ちゃんと近いからややこしくなるもんね?他にもいろいろ考えたんだけど、やっぱり澪ちゃんに決めてもらうことにしたの。せっかく考えてもらってるんだからね。きっとかわいい名前なんだろうなぁ〜♪あ、そうそう、かわいいと言えば……』


「待て待て待て!!ストーップ!!」




このまま話してたら朝になるまでスイレンの忘れ物を取りにいけなくなるって!


おしゃべりしたい気持ちはわかるが、それは後にしてくれ!!




「……一応名前は考えてきたけど…そんなにハードル上げないで…」


『またまた〜♪澪ちゃんならそういうの考えるの得意でしょ?すっごく期待してるんだから♪』


「……ハードルが棒高跳び並に高くなっていく…」




…下手に会話しないでさっさと発表した方がいいんじゃない?



てか、澪がこんなに困ってるなんて…


幽霊、やるな…




『で?で?どんな名前?』


「……まぁ、シンプルなんだけど…《ユリ》…とか…」




ユリか…


うん、なかなかいい名前じゃん。




「いい名前じゃないか。ちなみに由来は?」


「……『幽霊』をローマ字で書いた時の一文字ずつの頭文字…つまり『Yu・U・Re・I』のYとUとRとIを繋げただけ…。…シンプルでしょ…?」




…これってシンプルなのか?


俺には思い浮かばん…




『ユリ…。うん!すっごくいい!気に入っちゃった♪すてきな名前ありがとう♪』


「……気に入ってもらえてよかった…」


『今から私の名前はユリね♪間違っても幽霊なんて呼ばないでよ?もし幽霊って呼んだら…憑いちゃうぞ♪』




冗談になってないからやめろ!!


スイレンが俺の後ろに隠れて怯えてるじゃねぇか!




『…あれ?もしかしてすべった?』


「いや、すべったというより、お前の場合は冗談なのか本気なのかわからんからビビってるだけ。」


『やだなぁ、友だちにそんな嫌がらせみたいなことするわけないじゃない♪』




…コイツらの場合は日常茶飯事です。 








「…ところで、ボクの忘れ物は?」


「あぁ、そういえばそうだったな。」




危うく忘れるところだったよ。


まぁ、俺は別に困らないけれど。




『忘れ物?』


「あぁ、コイツが教室に忘れ物したみたいでさ。それを取りに来たんだよ。」


『ふ〜ん、そういうことかぁ…。でも、今は取りに行かない方がいいと思うよ?』


「…?何で?」


『校内にまだ先生が残ってるの。アナタたちの担任と教頭先生が。』




…黒城と加賀だな。


また教頭に説教されてるのかよ…




「見つからなかったら問題ないけど、見つかったら面倒なことになりそうだな…」


「上手く隠れながら行かないとダメだね。」


「………。」


(…コソコソ…)



《…ガシッ!!》



「…逃げる気か?」


「……捕まった…!?」




俺を呼び出した張本人が逃げようとしてんじゃねぇ!!


お前が逃げるなら俺も逃げるぞ!!




「……ユリさんに名前を付けた時点で私の役目は終わった…後は帰って寝るのみ…」


「お前、そのためだけに来たの!?もうちょっと付き合えよ!」


「……よい子は寝る時間…」


「…あ、それなら俺も帰らなくちゃ。」




だって俺もよい子だもん。


そういうわけで、さよなら〜♪






「…2人とも、ボクを見捨てるの?へぇ、見捨てるんだ…。これは明日が楽しみだねぇ…」




…やっぱり帰してくれるわけないよね。




「…ス、スイレン?な、何を企んでる…?」


「いやぁ、ちょうどキミたちに関する面白い情報があるからさぁ。明日にでもみんなに公開しようかなぁ…と。」




…プライバシーの侵害で訴えてもよろしいでしょうか?




「……思った以上に厄介な人…」


「…わかったよ。見捨てないからその情報は消去しろ。」


「ありがとう♪……………(…消去なんかしないけどね。)」




最後っ!!


何かボソッと不吉なこと言ったろ!!


お前、今度から俺の所に来ても夕飯抜きにするからな!!




「……でもどうするの…?」


「そうだよな…。これって取りに行ったら絶対先生に見つかるパターンだもんな。」


「こっちには最強の不幸体質がいるもんね。」




不幸に巻き込まれる原因はほぼお前らにあることを忘れずに。




「…ユリ、お前なんとかできないの?」


『え?私?』


「ほら、何て言うか…ポルターガイスト的な力で。」


『ポルターガイスト?あれって普通にモノを持ってるだけだよ?普通の人には私たちの姿が見えないからそういう風に見えるだけ。』




へぇ…そうなんだ…


…ってことは…




「…つまり、モノを持つことはできるってことだな?」


『うん。でも、モノを持つって普通の人に姿を見せるより疲れちゃうけどね。』


「じゃ、持ってきてくれ。」


『えっ!?いや、だから疲れ…!』


「疲れてもいなくなるわけじゃないんだろ?」


『う、うん…。そうなんだけど…。そこの2人に姿を見せながらお話しできる余裕は無くなるかも…』


「俺が話し相手になるから安心しろ。とりあえず任せたぞ。」


『えぇ〜…』


「……幽霊をパシリにする人間…」


「なかなか珍しい光景かもね。」




これが最善の策だろ。


最善を尽くして何が悪い。




『…仕方ないなぁ。そのかわり朝まで付き合わせるから覚悟してね?』


「えっ!?朝まではちょっと…!せめて何日かに分けて……」


『行ってきまーす。』




いや、ちょっ…!?


俺の話を聞いてよ!?




「…ま、まぁいい!被害に巻き込まれるより、アイツの話し相手になってた方がマシだ!」


「……そういえば、ユリさんってスイレンさんが何を忘れたのか知ってるの…?」




…あ。


そういえば俺も知らない。




「まぁ、ボクの机にはそれしか入ってないからすぐわかると思うよ。」


「…で、その忘れ物って一体何なんだ?」


「ん?気になる?でも教えない♪」


「興味ないから別にいいけどな。」


「えっ!?」




どうせノートとかそういう類のモノだろ?


よくある話だ。




「……わざわざ私たちを呼んだんだから大切なモノなんじゃない…?」


「コイツに大切なモノなんかあると思うか?枕くらいしか無いぞ?」


「失礼な!!抱き枕も大切なんだから!」




結局は枕しかねぇじゃねぇか!!




「……で、結局何を忘れたの…?」


「ん?別に大したものじゃないよ。ただの日記帳。」




ほう、日記帳ねぇ…



…………。






「よし!何を書いてるのか、中を見せてもらおうじゃないか!」


「いやいやいや!?何言ってんの!?見せるわけないじゃん!?」


「……ちょっとだけだから…」


「ダメだって!!人の日記を見るなんて最低だよ!?」




…他人のヒミツを探ってそれをネタに脅すのは最低じゃないのか?




「いいじゃないか。どうせ『今日もたくさん寝た』とか、そういう感じのことしか書いてないだろ?」


「とにかくダメっ!!」




…ダメって言われると余計に気になるな。




「まぁいい。ユリが戻ってきたら俺が先に受け取って……」


「…一週間前、キミは居眠りしてた悠希に…」


「すいませんでしたっ!!もうお前の日記を見ようとしないからその話だけは…!!」


「……何かやったんだ…?」




その話がバレたら悠希に殺される…!!


ってか、何でコイツはそんなことまで知ってるんだよ!?




「わかったらいいんだよ。澪もボクの日記見ようとしちゃダメだよ?」


「……私は脅されるような事はしてないから大丈夫…」


「そう?三日前、居眠りしてた恭也に…」


「……ストップ…それはちょっとマズい…」




マズいって何!?


俺、三日前に何されたの!? 




「他にもまだまだあるよ。キミたちの知られたくない情報を言いふらされたくないでしょ?だからボクの日記を見ようとしないでよ。」


「…わかったよ。」


「……仕方ない…」




やっぱり日記は見られたくないもんなぁ…


まぁ、スイレンの場合は寝てばかりだから大した内容書いてないだろ。


とりあえず今回は諦めるか。








『…おーい!持ってきたよー!』




…お?


ようやくユリも戻ってきたみたいだな。




「あぁっ!?ボクの日記帳が宙に浮いてるっ!?」


「……もしかしてユリさん…?」




あ、やっぱり姿が見えなくなっちゃったんだ?


ってことは俺一人でユリとお話ししなくちゃいけないのか…


正直、朝までは辛いんだけどな…


…今から説得しても間に合う?




「…なぁ、ユリ?やっぱり朝までじゃなくって、何日かに分けて……」


『ゴメン!この日記帳受け取ったらすぐに帰って!』




…へ?


何で?


いや、俺にとっては好都合なんだけどさ…




「どうした…?俺とお話しするんじゃなかったのか?」


『したかったんだけど、廊下を通ってたら先生に見つかっちゃった!多分すぐ追いかけてくると思うから…』




見つかっただと!?


…しまった!


ユリ自身は見つからなくても、宙に浮いた日記帳は見られるのか!


盲点だった…!




「どうしたの…?」


「……問題発生…?」


「ユリが…っていうか、日記帳が宙に浮いてるのが先生方に見つかったらしい!すぐに逃げ……!」



《…ヒュンッ!》



………!?


い、今…!?


俺の右頬のすぐ横を何かが通って…!?




「…ちっ!外したか!…ん?何だ?誰かいるのか?」




出たーっ!?


黒城だーっ!!




『わっ!?もう来た!?』


「ユリ!日記帳をこっちに投げろ!!」


『えっ!?あ…うん!』



《…シュッ!》


《…パシッ!》




…よし!


うまく受け取れた…!




「ほら、スイレン!日記帳だ!」


「あ、ありがとう!」


「礼はいいからさっさと逃げるぞ!!…あれ?澪は…?」


「…あっ!もうあんな所まで逃げてる!!」




おいコラ!!


一人だけ逃げようとしてんじゃねぇ!!


俺たちを見捨てんな!!




「…どうやら複数いるみたいだな?どんなヤツがどんなトリックでモノを浮かせていたのか知らないが、捕まえて吐かせればいいだけの話…。この俺から逃げられると思うなっ!!」




《…ヒュンッ!ヒュンッ!ヒュンッ!》




ちょ…!?


危ないって!!


チョーク投げすぎ!!


そんなんだからすぐに給料無くなるんだよ!!




「と、とりあえずバラバラに逃げるぞ!!」


「う、うん!!」


「逃がすかっ!!」



《…ヒュンッ!》




うぉっ!?


左肩かすった!?


危なかった〜…!


でも、暗いからうまく狙いも定まってないみたいだし、この調子なら逃げ切れる…!


そう!


この状況で逃げ切るなんて簡単な話だ!!


よし!


このまま逃げ切ってやるぜ!!






…あれ?


今のセリフって死亡フラグ…?
















〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「…はぁ…はぁ…!」




に、逃げ切れた…!?


追いかけてきてるような気配はない…


そして、俺の帰るべき場所は目の前…!!


こういうパターンに巻き込まれ、なおかつ死亡フラグまで立てて無事に帰れるなんてそうそう無いのに…!



き、奇跡だ…!!


ありがとう神様!!


これからはもっと強くあなたを信じることにします!!


もしよければこれからも俺をお助けください!!






「…さて、とりあえず疲れた。さっさと帰って寝るか…」




明日こそ、平和な1日を過ごせたらいいなぁ…


神様、明日もよろしくお願いします……












『…お疲れ様♪』


「…!?」




…ユ、ユリ!?


お前…ついてきてたのか!?




『さて、これでやっと2人きりになれたね♪さっきはあんなこと言ったけど、アナタについていけばゆっくりお話しできるもんね。この近くにアナタの家があるんでしょ?それなら早く帰って朝までお話ししましょ♪』




…………。



…神様、もう少し残業してくれませんか…?

今回、ようやく幽霊に名前がつきました。


結構前に考えていた名前なんですが、発表が少し遅くなってしまいましたね…


これからはユリとして活動していきますので、よろしくお願いします。



それでは、今回はこの辺で。


感想・意見・要望・質問・助言・メッセージなど、お待ちしています。

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