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第107話〜帽子を脱いだら…?

 




【休日:早朝】



…全く、せっかくの休日なのにこんな時間に起きなくちゃいけないなんて……


まぁ、被害を受けるよりは数倍マシだけどな。



俺が早起きした理由…それは単純に逃げるためだ!!


休日になると必ず誰かが俺の家に来るからな…


だから今日は誰かが来る前に出かける!


そしてケータイの電源は常にオフ!



…完璧だ!



これなら今日は平和に過ごせるはず…!


そう!

今日の俺は自由!!


貴重な休日なんだからしっかり満喫しよう!!




…といっても、どこに行こうかな?


まだ店はどこも開いてないだろうし…



……………。



…とりあえず適当に散歩でもしてようかな?


うん、そうしよう。










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


【近所の公園】



う〜ん…


やっぱりこの時間だと誰もいないなぁ…


ちょっと起きる時間早すぎたかな…?


いや、アイツらに見つからないようにするためにはこれくらいしないとな。


まさか休日の早朝から知り合いに会うことはないだろうしな。


少しこの公園でのんびりしていくか……










「…あれ?神堂じゃないッスか?」


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」


「うわぁぁぁ!!…っていきなり何スか!?」




超ビックリした!!


まさかいきなり話しかけられるなんて思ってなかったもん!!


ビックリして当然だよね!?


別に小心者ってわけじゃないからね!?




「い、いきなり後ろから話しかけてくるな!!」


「ちょっと声をかけただけじゃないッスか!!何で千秋が怒られなくちゃいけないんスか!?」




自分で名前言ったから説明する必要はないと思うけど、いきなり背後から話しかけてきて俺を驚かせたのは千秋だ。


…てか、お前もこの近くに住んでたの?




「…で、何で神堂がこんな朝早くにここにいるんスか?」


「…俺に不幸を届けにくるヤツらから逃げるため。」


「…同情したくなるような理由ッスね。」




同情してくれるなら助けてくれない?


もしくは代わって?




「そういうお前は何でここに?」


「千秋の格好を見てわからないッスか?」




…いつもの帽子にジャージ姿、手には木刀…




「…闇討ちでもするのか?」


「そんなわけないじゃないッスか!!」


「冗談だって。たまには俺にもボケさせてくれよ。」


「…迷惑ッス。」




俺より迷惑なヤツら呼んでやろうか?


もちろん、俺はすぐに逃げるけど。




「千秋は毎朝ここで特訓してるんスよ。」


「…お前さぁ、これ以上強くなってどうするの?」


「いやいや、千秋なんか兄貴の足下にも及ばないッスから。」




だからって毎朝……


…スイレンに見習わせたいな。




「そうだ。ついでだから千秋の相手になってくれないッスか?」


「ヤダ。」


「即答ッスか!?」




だってお前強いもん。


何でわざわざ早朝から痛い思いしなくちゃいけないんだよ…




「俺はただお前の特訓を見学してるだけでいいよ。」


「い、いや…人に見られてると集中できないッスよ…」


「実戦じゃそんな事言ってられないだろ?」


「そ、そうッスけど……」


「ほらほら、早く始めないと。時間がもったいないぞ?」


「…わ、わかったッスよ……」




…………。


こいつの特訓を見学するのってちょうどいい暇つぶしになるかもな。




「…まずは素振りからッスね。」


「ん?お前、特訓の時も帽子脱がないのか?」


「…いつもは脱いでるんスけど、今日は神堂がいるッスから。」




…お前、どんだけ恥ずかしがり屋なんだよ?


そんなに変な顔なのか…? 



…………。



…気になってきた。




「…なぁ、その帽子脱いでみてくれないか?」


「なっ…!?何バカなこと言ってるんスか!?千秋は人前では絶対に帽子を脱がないッスよ!!」


「…まさかその年でもうハゲてんのか?」


「そんなわけないじゃないッスか!?」


「じゃあ何で見せてくれないんだよ?」


「そ、それは…その…………は、恥ずかしいッスから…!」




…えぇい!


らちがあかねぇ!!




「こうなったら力づくで……!!」



《バシッ!》



「痛っ!?」


「来るなら来いッス!!返り討ちにしてやるッス!!」




っつ〜…!!


手の甲を木刀でいきなり叩くなんてヒドいと思わないか…!?


俺、素手なんだから!


ほら、赤くなってきたじゃん!



…………。



…せっかくだから利用させてもらうか♪




「いった〜…!!ヤバいって…!うわっ!?腫れてきた!?これ、折れたんじゃないか!?」


「…えっ!?そ、そんなに強くやってないはずなんスけど…!?だ、大丈夫ッスか!?」




…作戦成功♪


これだけ近ければ…!




《…バシッ!》



「…痛っ!?」


「…そんなウソに騙されるわけないじゃないッスか。男なら正々堂々、正面からかかってこいッス!!」




…くっそ〜!


やっぱりダメだったか…!


でも、正面から挑んでも千秋のスピードにはついていけない…!


何かいい方法は…!?










《…ピュ〜…》



「…あ!」


「…え?」



《…ファサッ》




か、風で千秋の帽子が…!


何という奇跡…!




「あ、あれ…?もしかして…空を舞ってるアレは千秋の帽子ッスか…?ってことは今千秋は…………!?」


「うん、お前の素顔は丸見えだぞ?」


「な…ななな……な…!?」




それにしても…全然変な顔じゃないじゃん。


それどころか、男に言うのもアレだけど、かわいらしい顔じゃん。


身長も小さいから、初対面の人は女の子と間違うんじゃないか?




《…ブォンっ!!》



「どわぁっ!?」




危なっ!?


目の前っ!!


目の前を木刀が横切った!!




「ち、千秋っ!?」


「…見られた!見られたっ!!見られたからには…消してやる〜っ!!」




消すって記憶を!?


それとも俺の命!?


とりあえず落ち着け!!


顔を見ただけだろ!?


泣きながら襲いかかってくるようなことじゃないじゃん!!


…ってか、『〜ッス』っていう話し方じゃなくなってるぞ!?




「ス、ストップ!ストップ!!とりあえず落ち着いて話し合おう!」


「うるさい〜!消してやるったら消してやる〜!」




そんな身長で子供っぽいこと言うな!!


周りから見たらただの子供じゃねぇか!!




「顔を見られたから何だよ!?全然変な顔じゃないだろ!?むしろ、女の子みたいにかわいい顔じゃないか!」


「…女の子みたい?」




…と、止まった!?




「…今…女の子みたいって言ったんスか…?」




話し方も戻ってる…!?


よし!


あと一息…!




「あ、あぁ!男にしてはずいぶんとかわいらしい顔を…!」



《バシィッ!!》



「…っつ〜!?」




あ、あれ…!?


も、もしかして逆効果だった…!?


てか、いくら千秋が非力でも木刀で頭を叩かれたら痛いんだけど…!




「…ここまでバカにされたのは初めてッス…」


「す、すまん!ほ、ほら!土下座でも何でもするから許してくれ!」




…プライド?


そんなもん知るかっ!!


被害を軽減することが最優先だっ!!




「…許さないッスよ!あんたは千秋をバカにしたっ!!」




いや、バカにしたつもりは無いんだけど!?




「わ、わかった!訂正する!帽子を取ったら意外と美少年な顔を…!」


「それがバカにしてるって言ってるんスよ!!」




えっ!?


今の発言のどこが!?




「え、えっと…!よろしければどの発言が悪かったのか教えていただけませんでしょうか…?」


「言わなくちゃわからないんスか!?」




だって怒るポイントって人それぞれだろ?


俺にはお前の怒るポイントがわからない。




「千秋がさっきから怒ってるのは…!」




怒ってるのは…?










「千秋のことを男扱いしてることに対してッスよ!!」




…はい?




「いくら千秋が男っぽくしてるからって、本当に男のように扱うことに腹が立ってるんスよ!みんなそうッス!澪さんに至っては『弟にしたい』なんて言ったくらいッスよ!?いい加減ガマンの限界ッス!!」




どういうこと…?


俺の解釈が間違ってなければ、とんでもない事実を聞いたような気が………




「…千秋?」


「何スか!!」


「お前って…その……女の子…だったの…?」


「当たり前じゃないッスか!!何で今さらそんなことを………もしかして本気で千秋のことを男だと思ってたんスか!?」




…ひ、否定しない!?


ってことはもう間違いない…!!




「ほ、本当にお前女なのか!?冗談ぬきで!?」


「そっちこそ本当に千秋を男だと思っていたんスか!?」


「だってお前学校でも男子の制服だったろ!?」


「女子が男子の制服着てもいいじゃないッスか!」




そんな紛らわしいことしてるから男と間違われるんだよ!! 




「…まぁ、確かに千秋のことを男だと思うのは仕方ないことッスよ…。学年レクの時も、着替えようと更衣室に入ったらいきなり叫ばれたッスからね…。」




…あぁ、確かそんなことあったな。(第35話)


あの時のあれってお前だったんだ?




「でも同じクラスの女子はお前が女って知ってるんだろ?体育の時に着替えるんだから。」


「…実は、他の人と一緒に着替えるのは恥ずかしいッスから誰もいなくなってから着替えてるんスよ。」


「…トイレとかはどうしてる?」


「兄貴と授業をサボっている間にこっそりと……って女の子にそんなこと聞くなッス!!」


「それは悪かった。…だけど、もしかしたらお前のこと女って知ってるヤツいないんじゃないか?」


「…え?」




だってお前の話を聞いてる限りじゃ、お前を女の子と特定できるような行動は何一つ無いだろ?


学年レクの時に誤解を解いた数人しか知らないんじゃない?




「い、言われてみれば…!!」


「だろ?だから俺がお前を男だと勘違いしてたのも仕方ないだろ?」


「…そうッスね。悪かったッス。」




…何だか、素直に礼を言われるなんて久しぶりな気がする。






「…そういえば赤樹はどうなんだ?お前が女の子だってこと知ってんの?」


「…兄貴は絶対に気づいてないッス。だって、千秋が帽子を外して会っても気づいてなかったみたいッスから…」


「え゛っ!?お前、学校で帽子外したことあるの!?」


「それどころか女子の制服も着てるッスよ。…ほら、神堂も兄貴から聞いたじゃないッスか。昼前になると兄貴にお弁当を渡す女の子……」




ああっ!!?


あ、あれってお前のことだったのか!?




「一度くらい女の子らしくしようとしたんスけどね…。気づかれてないなら意味が無いッスね。今さら千秋だって言えないから、結局そのまま……」


「…………。」








「…よしっ!俺が協力して……!」


「断るッス。」




おいっ!!?


即答すんなっ!!


間を空けた意味がないだろっ!!




「何でだよ!?」


「どうせもっと女の子らしくさせるとか、兄貴に気づかせるようにするために何かするつもりなんじゃないッスか?」




ぐっ…!


バレてる…!




「千秋は今のままで十分幸せなんスよ。だから…千秋のことは構わないでほしいッス。」


「…まぁ、お前がそれでいいなら…」




イヤだって言ってることを無理にやってもダメだもんな…


まずは本人に任せておくか…






「…あ、このことは絶対に他の人に言っちゃダメッスよ!?この際だから、千秋が女ってことも内緒にしてもらえるとありがたいんスけど…」


「え?別にいいけど何で?」


「何というか…千秋が女だとバレたら澪さんが……」




…なるほどね。


お前の判断は正しい。




「わかったよ。…でも、お前はそのままでいた方がいいと思うんだけどな…。」


「そのままって…あっ!!そういえば千秋の帽子!!」




…もしかして忘れてたの?



…おおっ!?

一瞬で顔が真っ赤に!


マンガとかだったら『ボッ』とかいって湯気が出るんだろうな…




「………こ…」




…こ?




「…これ以上千秋を見るな〜っ!!」



《バキッ!!》



「ぐはぁっ!?」




だからいちいち木刀で殴るなっ!!


グーならまだしも、木刀で殴られたらマジでケガするから!! 




「だから落ち着けっ!!今さら恥ずかしがることじゃないだろ!!」


「うるさいっ!こっちを見るなっ!帽子どこっ!?」




何なんだよお前は!?


帽子が無くなっただけでここまでパニクるのかよ!?


お前はマトモな部類だと思ってたのに…


とりあえず早く帽子を見つけないと…!






「…って顔を隠すなら別に帽子じゃなくてもいいじゃん。」


「…え?」


「お前、特訓に来たんだろ?タオルとか無いの?」


「…なるほど!その手が…!」






《…ピュ〜…》



「…………。」

「…………。」




…あ〜、タオルもどっかに飛んでいっちゃったね。


…どんまい。




「…さて、それじゃ俺はそろそろ帰らせてもらおうかな?」


「えっ!?千秋をこのまま放置して帰る気!?」


「だってお前、顔を見られたくないんだろ?」


「そ、そうだけど…!このままだと千秋、家に帰れない……」




…まったく…


…仕方ないな…




「…ほら、俺の上着やるからそれで顔を隠しておけ。」


「え〜…」




嫌そうに言うな!!


他にいいモノが無いんだから仕方ないだろ!




「…とりあえずありがとう。」


「あ、どういたしまして。」




…『とりあえず』は余計だけどな…






「…どうだ?これなら大丈夫だろ?」


「う、うん…。これなら何とか……」




ふぅ…


ようやく落ち着いてくれたか…




「…ところで、『〜ッス』って話し方はどうした?さっきから使ってないみたいだけど…?」


「あっ…!パ、パニクるとつい素になっちゃって…!ほ、ほら!これでいつもの千秋になったッスよ!」


「なるほどねぇ…。ってあれが素なの!?パニクって子供っぽくなったわけじゃなくて、もとから子供っぽかったってこと!?」


「う、うるさいッスね!だからあんな情けない状態にならないように兄貴のもとで修業してるんスよ!」




…あんなヤツに弟子入りするから女の子らしくなくなるんだぞ?


まぁ、ここまで落ち着いた性格になってるんだから大したもんだけど…


冷静になりたいなら澪に弟子入りしたらいいのに……



…変な趣味に目覚める可能性もあるけどな。










「…それじゃ千秋は帰るッスね。」


「…あれ?特訓は?」


「こんな状態でできるわけないじゃないッスか。」




あぁ、確かに。


今のお前ってテレビでよく見る『捕まった犯人が連行されていく時』みたいな感じだもんな。


周りの人が見たら不審者として通報されそうなくらい怪しい…




「これ、ちゃんと洗濯してから返すッスね。学校で渡しても問題ないッスか?」


「あぁ。別に問題ないよ。」


「それと…もう一度言っておくッスけど、千秋の帽子の中のことは絶対に……」


「わかってるって。誰にも言わないよ。」




…ってか、今のお前に言われるとかなり怖いんだけど…


一瞬ビクッとしたじゃないか…!




「それじゃあ千秋はお先に失礼させてもらうッス。たまには千秋もそっちのクラスに遊びに行くッスね。」


「おう。スイレンは連れて来なくてもいいからな?」


「ちゃんとわかってるッスよ。」




うん、やっぱり千秋はいい子だ。


赤樹の弟子なのがもったいないな…




「じゃ、さよならッス。」


「おう、さよなら。」




…だいぶ千秋とは仲良くなれてきたな。


あとは赤樹か……


アイツは最難関だな…


どうやったらアイツとも仲良くなれるかな…?



…まぁ、アイツとは別に仲良くならなくてもいいか。


アイツ、怖いし…








「…さて、俺はこれからどうするかな?」




朝から余計な被害を受けないように早起きして来たんだけど…


まさか朝から木刀で叩かれるとは思わなかったなぁ…


叩かれた所が痛い…



…とりあえず帰って休もうかな?


どうせ今日は誰も来ないだろ?


うん、きっとそうだよね。


早起きしたらいいことがあるんだもんね?


だったらきっと大丈夫だよ。


もし誰か来たら居留守使えばいいもんね。



さぁ、そうと決まったらさっさと帰って寝るとするか♪

















「…あっ!キョーヤ見っけ♪」




…帰る以前の問題でした。

今回の話、実は千秋初登場時から考えていた話でした。


そのため、当時から伏線を用意してたんですけど…間を開けすぎましたね。


あまりにも開けすぎたため、一時はこの設定を破棄しようとしたくらいです。


でもまぁ、せっかくなのでこうして今回書かせていただきました。


基本的に千秋への対応は変わらないつもりですが、今後は千秋の恋愛系の話もあるかもしれません。



…それでは、今回はこの辺で。


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