第106話〜不良とお弁当
「…最近思ったんだけど、いつも教室で弁当を食べるっていうのも飽きてきたわね。」
…は?
悠希?
お前、これから弁当って時に何言ってんの?
もしかして今日は違う場所で食べるって言うつもり?
「…いや、別にどこで食べても同じだろ。」
「そういうわけで、今日はいつもと違う場所でお弁当を食べるわよ。」
…いつものごとく、俺の話は無視ですか?
お前が無視するなら俺もお前の話は全部無視するぞ?
…殴られそうだからやっぱりやめておこう。
「……急に言われても…いい場所はもう他の人に取られてる…」
「俺は女の子がいてくれるならどこでもいいけどね♪」
「じゃあ、あの世に送ってあげる。きっとアンタの好きそうな子がたくさんいるわよ?」
「何でそうなるの!?」
お前がくだらないこと言うからだよ…
「でも澪の言う通り、いい場所はもう無いだろ?中庭はもうたくさん人がいるし…」
「……図書室は飲食禁止…」
いや、図書室は最初から選択肢に無いよ!?
飲食可能だったとしても、あんな静かな場所でお弁当を食べるのはヤダからね!?
「他に弁当を食べれそうな場所は……」
「屋上があるじゃない。」
あぁ、屋上ね…
確かにいい場所だけどさ…
「……屋上と言えば不良…」
「そうだ!屋上には絶対赤樹のヤツがいるだろ!!」
「それに屋上には女の子がいないじゃん!!」
お前は黙ってろ!!
「だからこそ人が少ないでしょ?」
「でも、赤樹たちと同じ場所で弁当を食べるなんて…」
「ほら、早く行くわよ。」
だから俺たちの意見を聞けって!!
勝手に行動するな!!
「……どうする…?」
「どうするって…アイツの事だから、ついていかないと怒るだろ…」
「屋上には女の子いないんだけどなぁ…」
お前の頭の中には女の子しか無いのか!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【屋上】
「思った通り、屋上にはほとんど人がいないわね。」
…思った通り、見知った人影はあるけどな。
「…あっ!神堂たちじゃないッスか!?」
「…あ?」
何かすごく機嫌悪そうなんだけど…
やっぱりここで弁当を食べるのやめない?
ここだと落ち着いて弁当食べれないじゃん…
「…何でお前らがここに来た?」
「ここは千秋たちの場所ッスよ!」
「アンタたちに用は無いわよ。これだけ広いんだから私たちも使っていいでしょ。」
「邪魔なんだよ。」
「何よ?もしかしてアンタたちってそういう関係なの?」
「消すぞっ!」
だから赤樹にケンカ売るような事言うなって!!
俺たちも巻き添えくらうだろ!!
「……よかったら一緒に食べる…?」
「お前らなんかと一緒に食うわけねぇだろ。」
「……私は千秋君に言ってる…関係ない人は黙ってて…」
澪ーっ!?
これ以上赤樹を挑発しないでっ!?
「千秋は別に構わないッスけど…兄貴が…」
「……あんな人、関係ない…」
「…ふん、好きにしろ。」
…あれ?
急に歩き出して…
どこ行くの?
「あ、兄貴?どこに行くんスか?兄貴も一緒に……」
「コイツらと一緒に飯が食えるか。俺は教室に戻って食う。」
そうだそうだ!
お前がいなくなれば平和になるんだ!
早く帰れっ!!
「……逃げた…」
「逃げたわね。」
「…あ゛ぁ?」
だから何でお前らは赤樹を挑発するんだよ!?
赤樹もそれに反応してんじゃねぇよ!!
「てめぇら…何ふざけたこと言ってるんだ?」
「実際に逃げてるじゃない。」
「てめぇらと関わりたくねぇだけだ!!」
「……言い訳…」
「てめぇ…!!」
「待て待て待て!!ストップ!ストップ!!千秋!赤樹を止めろ!!大地はこっちを手伝え!!」
「り、了解ッス!」
「わ、わかった!」
何で弁当を食べる前に暴動を止めなくちゃいけないんだよ!?
頼むから普通に弁当食べさせてくれない!?
「離せっ!!アイツら、今度こそ確実に消してやる!!」
「ダメッスよ!!相手は女の子なんスよ!?一緒にお弁当を食べるくらいいいじゃないッスか!」
「あんなクズ共と一緒に食えるか!!二度と俺の前に出ないように叩き潰す!!」
「……クズはそっちじゃないの…?」
「だからお前らはしゃべるなって!!」
「離しなさいよ!!」
《バキッ!!》
「ぐふぁっ!?」
「大地ーっ!?」
えぇい!
考えろ!!
この状況を何とかするには…!!
………………。
……………。
…………。
………!
「赤樹!コイツらの非礼は詫びる!だから一緒に弁当食わないか!?」
「あ゛ぁ!?ふざけんな!誰がてめぇらなんかと…!!」
「でも、教室に戻ったらスイレンがいるぞ?」
「…………。」
悩んでる!?
まさかの効果あり!?
やっぱり赤樹はスイレンのこと嫌いなんだ!?
「…仕方ねぇ。こっちで妥協するか。」
お前…そんなにスイレンのこと嫌いなの?
「恭也!勝手なことしないでよ!」
「……私、あの人嫌い…」
「ま、まぁまぁ…お前らには好きなおかず一つやるから。」
「…仕方ないわね。今回だけよ?」
「……玉子焼き…」
…お前らも単純だな。
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「…へぇ、お前らは購買かと思ってたけど、ちゃんと弁当作ってきてるんだな?」
「もちろんッスよ!千秋はちゃんと手作りッス!お弁当くらい自分で作れないとダメッスよ!」
千秋…やっぱりお前は不良に向いてないわ。
赤樹の弟子はやめて俺たちと友達にならない?
…そうしたら俺の被害が軽減されるから。
「でも、ずいぶん小さい弁当箱ね?」
「……私の弁当箱と同じくらい…」
「千秋は少食だからいいんスよ。」
「だからアンタは小さいままなのよ。」
「……悠希さん、わかってない…小さいからこそかわいい…」
「う、うるさいッスよ!!」
いやぁ、楽しそうで何より。
…それに比べて…
「えっと…赤樹も弁当なのか?」
「…見りゃわかるだろ。」
「お前も大地と同じで購買かと思ったけど…」
「弁当だって言ってんだろうが。」
「…あ〜、…その弁当は自分で作ったのか?タコさんウィンナーとか、何だかずいぶんかわいらしい弁当だけど…」
「お前には関係ねぇだろ。」
「…………。」
「…………。」
…何この話しかけにくさ!?
会話が常に一方通行なんだけど!?
会話のキャッチボールって知ってる!?
受け取ったボールは返さなくちゃいけないんだよ!?
そこら辺に捨てちゃダメ!!
「…ち、千秋?赤樹の弁当って本人の手作りなのか?」
「あ、いや…それはッスね……」
「…余計なこと言うなよ?」
「ち、千秋にもわかんないッス!」
千秋を脅すなっ!!
それくらい教えてくれてもいいじゃん!
「……私は一度だけ見たことがある…」
「…澪?」
「……赤樹君が女の子からお弁当をもらっているのを…」
「!?」
マ、マジで!?
赤樹が女の子からお弁当を!?
「うぉーっ!?お、女の子からお弁当だと!?俺ももらえないのにーっ!!」
「落ち着け、大地!!」
お前がもらえないのは当たり前のことだから!
「…うるせぇな。だから言いたくなかったんだよ。」
「そ、それって…もしかして…彼女なのか?」
「そんなわけねぇだろ。よくわからないけど、昼前になったら勝手に持ってくるんだよ。」
「兄貴はモテるッスからね。」
もうお前その子と付き合っちゃえよ!
そうしたら少しは丸くなるだろ!?
「…あ!よく見たらふりかけがハートの形!」
「…うるせぇな。」
「……不良のくせに…似合わない…」
「うるせぇっつってんだろ!!」
いや、でも正直お前にその弁当は似合ってないと思うぞ?
お前のイメージが崩れる…
「千秋、その女の子ってどんな子なんだ?」
「あ、それは気になるわね。」
「……私も、遠くから見ただけだからよくわからなかった…教えて…」
「…じ、実は千秋もよくわからないんスよ。」
「…あの女、千秋がいない時に来るからな。」
…その女の子、本気でお前のこと好きなんじゃないの?
「ぬぬぬ…!な、なんとうらやましい…!」
「大地、お前は少し黙ってろって。」
「赤樹、アンタは何回も会ってるんでしょ?どんな子なのよ?」
「知るか。常にうつむいてて顔も見れねぇし、無言で弁当を渡して走っていくから声も聞いたことねぇ。空になった弁当箱は机の上に置いておけばいつの間にか無くなってる。」
「……恥ずかしがり屋なんだ…」
「アンタはその子のこと気にならないの?」
「…弁当箱を返すために一度だけ捜したことはある。…だが、それらしい女は見つけられなかった。」
…へぇ、一応捜したことはあるんだ?
あの赤樹がねぇ…
「それなら私たちが捜してあげるわよ。」
「断る。お前らはからかうだけだろ。」
「……バレてる…」
そこは否定しろっ!!
少しはマジメに協力してやれよ!
「それに相手だって知られたくないだろ。だから無理に捜す必要はない…」
「兄貴…」
「赤樹…お前、もしかして本気でその子のこと…」
「…あんまりふざけたこと言ってると本当に消すぞ?」
「わ、悪い!もう言わないから!その木刀を置いてくれ!」
「そこのお前らも余計なことするなよ?」
「わかってるわよ。アンタがどうなろうが私には関係ないんだし。」
「……私も興味ない…どっちかと言うと千秋君の方が気になる…」
「ち、千秋はそういう話無いッスよ!」
「……本当に…?」
「好きな人くらいはいるんじゃないのか?」
「そ、そんなのいないッスよ!」
…何だ、つまんないヤツだな。
まぁ、今回は赤樹の話を聞けただけでもよしとするか。
ここまで素直に話してくれる赤樹なんて初めてだし。
「…千秋、行くぞ。」
「…えっ?あっ、はいッス!」
え?
もう行っちゃうの?
てか、急すぎない?
「何だ?もう行くのか?こういう機会はあまり無いんだからゆっくりしていけばいいだろ?」
「…俺はお前らのことが嫌いなんだよ。」
いや、それはわかってるよ。
こっちもお前のこと嫌いだもん。
でも、お前らがいると俺がイジメられなくなるんだよ。
だからせめて昼休みの間はここにいてくれよ。
「ほら、行くなら早く行きなさいよ。シッシッ!」
「……千秋君だけ置いていってもいい…あなたはいらない…」
「てめぇら…!」
だから何回言ったらわかるんだよ!?
赤樹を挑発するようなことはやめろって!!
いい加減しつこいぞ!!
「兄貴!ほ、ほら!早く教室に…!」
「……また逃げ……」
「ストーップ!!ほ、ほら!残ってる玉子焼きやるから!」
「……あーん…」
一つだけ残しててよかった…!
…でも、結局俺は今日玉子焼き食べれなかったな…
けっこう上手く作れたのに…
「…まぁいい、今日は見逃してやる。明日からはここに来るなよ?」
「アンタが来なきゃいいだけの話じゃない。」
「い、今の発言はスルーしてくれ!なるべくここに来ないようにするから!」
「…ったく。」
…あ、本当に見逃してくれた。
もしかして意外といいヤツ…?
判断基準は俺に被害を与えるか否かだけど。
「……行っちゃったね…」
「行っちゃったな…」
早めに教室に戻ったらスイレンにからかわれるのに…
「恭也!さっきは何で止めたのよ!私がアイツと戦って負けるとでも思ってるの?」
「そ、それは…!お、お前にケガしてもらいたくなかったから…!」
…本当は俺が巻き込まれる危険を回避するためなんだけどね。
とりあえずこう言っておけば文句は言われないだろ。
「なっ…!?…バ、バカね!私がケガするわけないじゃない!無駄な心配してんじゃないわよ!」
「……悠希さん、顔真っ赤…」
「う、うるさいわねっ!」
…?
俺、何か悠希の機嫌を損ねるようなこと言ったかな?
…まぁ、いいか。
「…それにしても、アイツらもそんなに悪いヤツじゃないんだな。」
「……千秋君は最初からいい子…」
「赤樹は全然いいヤツじゃないわよ!」
まぁ、アイツはな…
口調が悪くなければそれなりにいいヤツだと思うんだけどな…
何より、数少ないマトモな部類の人だし!!
「…いつかアイツらとも仲良くなれたらいいんだけどな。」
「……そうだね…特に千秋君…」
「そうね。千秋とは仲良くしたいわね。」
…お前ら、本当に赤樹のことが嫌いなんだな?
「そんなに赤樹を嫌うなよ…。ほら、話してみたら意外といいヤツかもしれないだろ?今日だって意外な話を聞けたんだから。」
「それなら加賀先生と2人きりで話してみたら?」
それはムリ!!
話をする前に実験体にされちゃう!!
「……明日のお昼に呼んでみる…?」
「あ、それはいいわね!」
よくねぇよ!!
どう考えても大変なことしか起きないだろ!!
俺は絶対に反対だからな!!
今日みたいに会話だけで終わる平和な昼休みを過ごしたい!!
「…あれ?そういえば大地は?」
「……大地君…?」
「ここにいるわよ?」
「あ、いたのか?何か途中から会話に加わらなくなったからいなくなったのかと……」
「…え?もうしゃべってもいいの?」
…お前、もしかして俺に『黙ってろ』って言われた時からマジで黙ってたの?
……ご苦労さま……
今回は赤樹と千秋のお弁当について書いてみました。
ちなみに、先生方のお弁当の話は今のところ書く予定はありません。
ネタを思いついたり、要望があった時に書きたいと思います。
それでは今回はこの辺で。
感想・意見・質問・リクエスト・メッセージ・アドバイス・ツッコミ(!?)など、お待ちしています!!
「(キャラ名)で返事してください。」というのもありですよ♪
…なんて調子に乗ってたら怒られますね。
一度言ってみたかっただけですので、あまり気にしないでください。
それでは、今度こそこの辺で失礼させてもらいます。