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近所のカホさんは歩いてきました

作者: かまぼこ
掲載日:2026/10/16

あなたのお名前はなんですか?

 

ここにはどうやって来ましたか?

 

趣味はなんですか?

 

どんな仕事をしていますか?

 

悩みはありますか?


罪の意識はありますか?

 

カホさんは誰が殺したかわかりましたか?


最後に——。

いま、何人目だと思いますか?

 ①近所のカホさんはあなたの些細な不安を背負ってくれます。

 ②近所のカホさんはあなたの大きな不安を連れていってくれます。

 ③近所のカホさんは居座ることを許してはいけません。

 ④ 近所のカホさんとはできるだけ一緒にいましょう。

 ⑤近所のカホさんを殺してはいけません。

 ⑥近所のカホさんは傷つけないように大切にしましょう。

 ⑦近所のカホさんは奪ってはいけません。

 ⑧近所のカホさんは歩いてきます。

 ⑨近所のカホさんにはできるだけ優しくしてあげましょう。

 ⑩近所のカホさんを許してはいけません。


 ******


 すみません。頭がぐらぐらするので——。

 大丈夫です。目眩みたいなものなので——。

 初めまして、三浦と言います。

 今日は歩いて来ました。

 趣味は——読書でしょうか?

 前までは大きな大学の図書館で働いていましたが、現在は個人経営の本屋で働いてます。

 悩み、と言っても人によっては些細と思われる悩みですが——あります。ありました。


 ——部屋の中に誰かいる気がする——。


 そんな妄想に取り憑かれていたという悩みです。

 クローゼットの中、トイレの個室、浴槽、ベッドの下、ベランダ——。

 そんな場所に誰か知らない人間が潜んでいるんじゃないかと不安でしょうがありません。

 私が暮らしていたマンションは一階の101号室で、引っ越す際に初期費用を抑えるために鍵交換をしなかったことが原因かもしれません。

 それで、気にしいな性格が災いして、そんな妄想に取り憑かれていたのかも——。

 でも、もしもって考えたら怖くないですか?

 仕事から帰ってきてドアを開けたら知らない人間に刺されたらどうしようとか——。寝てる間に誰かが入り込んで寝てる私の顔を覗き込んでいるとか——。カーテンを開けたらベランダに知らない人間が立っていて、にっこりと笑ってたらとか——。

 もちろん、これはすべて私の妄想です。

 実際に起こったことではないです。

 でも、当時の私はそんな妄想を気にして、正気ではいられなかったんです。

 その時思い出したのが「カホさんのおまじない」でした。

 私が小学生の時に流行った遊びで、「カホさんへのお願い」とも言われていましたが、私のクラスで流行った時には「カホさんのおまじない」と呼ばれていました。

 「コックリさん」だとか、「不幸の手紙」とかと同じようなオカルトです。

 紙に最近あった嫌なことを書いて、人形を折り、それを他人のポストに入れると「カホさん」という存在が不幸を連れていってくれるという内容でした。

 私自身は、クラスメイトのCさんに教えてもらっただけ、やったことがありませんでした。

 というのも、その遊びが原因でいじめが起こったために学校が禁止したからです。

 私もつい最近まで忘れていました。

 私は、気休め程度のつもりで「気配が消えますように」と紙に書き、人形を作りました。

 次はこれを他人のポストに入れれば完了なのですが、同じマンションのポストに入れると住民と揉める可能性があったため、私は入れるポストを探すことにしました。

 私が住んでいるマンションの近くには、入り口にお地蔵さんが並んでいる地下横断歩道があり、その近くには民家が建ち並んでいます。

 私は、その中の一つの民家のポストに紙人形を入れました。

 プラシーボ効果みたいなものなのでしょうか?

 それからすっかり、「部屋の中に誰かいる気がする」という妄想に取り憑かれなくなりました。

 まあ、代わりにこの様ですけど——。

 

 何かできることがあったんじゃないかなって、思います。


 さあ、私にはわかりません。


 ******


 あー腹減ったー。

 え?ああ!大丈夫ですよ。気にしないでください。

 後藤っていいます。

 歩きっすね。

 趣味は、んーなんだろ?サイクリングですかね?

 スポーツ用品の販売の仕事とかしてます。

 悩み!聞いてくださいよ!


 ——標識が落ちてきそうで怖い——。


 帰り道にですね、通る道にあるんですよでかい地下横断歩道の標識が——。

 それをくぐんないといけないんですけど、毎回落ちてこないか怖くて怖くて。

 いや、別の道を通ればいいって思うでしょうけど、僕もそこの地下横断歩道通るんで、通らないわけにはいかないんですよ。

 まあ、標識自体は太い柱で固定されてるんでね。そうそう落ちてくることはないと思うんですけど。

 でも、やっぱり怖いじゃないですか。

 だから、久しぶりに「カホさんのおまじない」をすることにしたんですよ。

 知らない?

 僕らの小学校だけだったのかな。流行ったの。

 僕もめっちゃ仲良かったCに教えてもらって、真っ先にやったんだよ。

 不満とか、不安を紙に書いてさ。その紙で人形を折って誰かのポストに入れるって遊び。

 僕のクラスには「かほ」って名前の子がいたから僕はその子の家のポストに入れてたんだよなぁ。懐かしい。

 それで、久しぶりに「カホのおまじない」をやってみたんすよ。

「何も落ちてきませんように」ってさ。

 それで同じマンションの101号室のポストにこっそり紙人形を入れたんですよ!

 その後すぐに本当に落ちてこれなくなってさ——物理的に。

 いや、おまじないってすごいね。

 だから、僕もこうなったのかな?


 え?なんで?みんなやってることだったから。


 僕は知らないし、関係なくない?


 ******


 こっち?こっちを向いて話せばいいのか?

 ああ、ありがとう。

 盧山という。

 いや、徒歩で——いや、ウォーキングついで——いい運動になったよ。

 趣味は——あまり人に誇れることではないんだが、他人の家の様子を覗くこと、だね。生活感——って言うのかな?そういう雰囲気が好きで——。

 普通のサラリーマンだよ。

 悩みか、二つかな?一つは解決済みだがね。


 ——地下横断歩道の雰囲気が怖い——。


 私の住んでいた家の近くに地下横断歩道があるんだが、そこが——なんというか、ホラー映画に出てくるような雰囲気をしていて——。

 まず入り口の隣には地蔵が十体ほど、並んでいるのが不気味だ——。

 橙色を発し、規則正しく並んだ蛍光灯もなんだか雰囲気があるよな——。

 その人工の光に反射して、妙に光沢のあるように見えるタイル張りの壁も気持ち悪い——。

 何よりも奥の道が曲がり角になっていて、こちらからは行き止まりにしか見えないのが、もう、ね——。

 その癖、足音だけは響き渡る——。

 もう何もかもが不気味にうつってしょうがないよ。

 まあ、私は入ったことはないんだがね。

 なぜって、曲がり角にどんな人間が潜んでいるかわからないじゃないか。

 だが、こんなこと精神科に行くほどのことでもないし、かと言って誰かに相談して解決することでもないだろう?

 だから、まあ、なんだ——。

 昔やったおまじないというのかな。それを思い出してね。

「カホさんのおまじない」と言って、不安や嫌悪を書いた紙で人形をおり、他人のポストへ入れる。

 まあ、非科学的ではあるんだが、まあ元から根拠のない不安を取り除くにはうってつけだったから試してみたんだ。

 まあ、このおまじないは、かつて私の些細な不安は取り除いてくれたから実績はあるんだが——。

 小学校の頃に同学年にCという生徒がいたんだ。

 私はそいつとは別のクラスだったんだが、そいつには友達が多くて、何より地主の一族だったから金持ちだった。

 そいつはその日も仲間内に限定品だかなんだかの時計を見せびらかしていた。

 それが——なんだか、無性に欲しくなったんだ。

 少し借りるつもりだったんだ。でも思った以上に大事になってしまって——。

 しょうがないから、当時近所に住んでいた「かほ」という生徒のポストに紙人形と一緒に忍ばせたんだ。

 おかげで私は犯人とバレることはなかった。

 「かほ」という生徒は引っ越して転校してしまったがね。

 だから、私は今回も「あの地下横断歩道をどうにかしてくれ」と書いた紙人形を近くに建つマンションのポストの中に忍ばせた。

 見るからに普段から整理していないようなポストを選んだから、気づかれないはずだ。

 まあ、そのおかげというわけではないと思うが、悩みの一つはすぐに解決したよ。

 あの地下横断歩道で殺人事件が起こったんだ。

 腹部を切られて、腹の中身が全部ぶちまけられるという酷いものだったそうだよ。

 おかげで地下横断歩道は封鎖され、地上に横断歩道を作ったあとに塞がれるらしい。

 一件落着だ。

 

 悪いとは思ってるし、反省してる。だが、いつまでも気にしていてはキリがないと思わないか?


 少なくとも私ではないよ。


 ああ、そうだった。

 もう一つの悩みなんだが、私の目玉を知らないかい?


 ******


 いたたた。いや、ちょっと結構な高い場所から落ちちゃって。

 いやあ、不注意ってダメですよね。

 どうも椎名です。みんなからはCって呼ばれることが多いです。

 徒歩で来ました。いやー結構遠くないですか?

 趣味は色々ですね!BBQとか、旅行とか、あとカラオケ?

 とにかくみんなで騒げるのが好きですね!

 恥ずかしながらフリーターです。でも、めっちゃ楽しく生きてました。

 悩み、最近までなかったんですけど——。


 ——後悔してるんです——。


 この間、小学校の同級生の三浦って子のお葬式に行って来たんですよ。

 なんでも道路標識が落ちてきて、頭にぶつかったらしくて——。

 棺の中は見せられないってことで顔は見れませんでした。

 三浦って、大きな大学の図書館で働いてたんですけど、その大学で殺人事件が起きたらしくてですねー。

 しかも、その犯人に疑われちゃったらしくて——疑いは晴れたらしいんですけど、居づらくなってやめたらしいんですよ。

 本当に不運ですよねー。

 悩みって言うのがですねーその三浦の遺品に関してなんですけど——。

 紙人形を持ってたらしくて——中には「何も落ちてきませんように」って書いてたそうで、みんな皮肉だねって囁いてたんですけど——。

 それ聞いた瞬間に俺、ピンと来て——。

 それって「カホさんへのお願い」じゃないかなって——。

 嘘だろ!まだ覚えたの!ってなりました。

 いや、あのおまじないの発信源って、俺ですから——。

 婆ちゃんから聞いた話をめっちゃ仲良かった後藤ってやつに話したら面白がっちゃって、それで俺も気分よくしちゃって広げちゃって、ちなみに後藤は葬式には来ませんでした。

 ただ、そのせいでクラスの「かほ」って名前の子がいじられるようになっちゃったんですよ。

 「カホさんへのお願い」って、悩み事とか、嫌なことを書いた紙を人形にして、他人のポストに入れるじゃないですかー。

 その標的もその「かほ」って子に集中しちゃって、もうその子の家のポストがパンパンになっちゃってですねー。

 なんかそのうち悪いことが起こったら全部その子のせいにする雰囲気になっちゃって——。

 そしたら、なんか俺の持ち物が盗まれる事件が起こってですね。

 その持ち物が「かほ」って子のポストで見つかったから、みんなその子を犯人って決めつけちゃって——。

 まあ、高価な物を学校に持ってきてた俺が一番怒られたんですけどね。

 それが原因で「かほ」って子へのいじりが激しくなっちゃってですね。

 物隠されたり、落書きされたりとか。

 そのうち学校来なくなって、転校しちゃったんですよ。

 それからは平和でしたねー。

 でー後悔なんですけど、俺がみんなに広めた「カホさんへのお願い」のやり方、実は間違ってたんですよねー。

 なんか、三浦には悪いことしちゃったなって、思いました。


 え?俺は関係ないでしょう。


 知らないですねー。お力になれずにすいません。


 ******


 ゲホッ‼︎ゲホッ‼︎

 喉が焼けるように痛くて、ゲホッ‼︎ゲホッ‼︎——はあ、はあ——大丈夫——落ち着いたみたいだ——。

 ふぅ——新村という者です。

 ええ、もちろん徒歩で。

 趣味はお答えしてもしなくても意味はないのでしょう?聞きたいことは別にあるはずですから。

 とある大学で准教授をしていました。

 私には悩みはないので、かわりに私の疑問を述べさせていただきます。


 ——カホさんを殺したのは誰か?——


 私がかつて教育実習生としてとある小学校へ赴任した時、その学校では「カホさんへのお願い」あるいは「カホさんのおまじない」という遊びが流行っていた。

 まず、カホさんとは何者か——ということについて私の調査結果を聞いていただきたい。

 カホという名前は、漢字では「禍歩」と書きます。

 そして、本来読み方は「カホ」ではなく「カユム」です。

 とある地域で「カユムさま」として信仰されていました。

 おそらく、時代が進むにつれて漢字が当てられ、読み方が誤読して伝わったのでしょう。もしかしたら、「カユム」という名前も元は違う名前だったのかもしれません。

 「カユムさま」とは、いわゆる厄除けの神です。

 「カユムさま」を信仰していた集落では、「カユムさま」の依代を持ち回りで各々の家に招き、世話をします。

 独特なのはその信仰の仕方です。

 「カユムさま」は招かれた家の些細な厄を一挙に「押し付けられ」、また別の家へと招かれます。つまり、日常のちょっとした不幸をすべて「カユムさま」の所為にするのです。

 そんな「カユムさま」は一年も満たずに——あるいは集落に大きな厄が降りかかった際に村から追放されます。

 そして、村人たちは新たな「カユムさま」をお迎えするのです。

 聞いていただいているうちになんとなく理解いただいたと思いますが、「カユムさま」の依代とは生きた人間です。

 つまりは生贄ですね。

 「カユムさま」の儀式にはいくつかルールがあります。

 村民たちは「カユムさま」の依代となった人間に危害を加えてはいけません。殴ったり、嬲ったり、殺すなどもってのほかです。

 神様なので一応大切にしなければなりません。

 「カユムさま」の依代に選ばれた人間は畑を耕すことを禁じられていました。もちろん、盗むことを禁じられていましたので食べ物は村民の施しに頼るしかなかったのです。

 また、乗り物に乗ることも禁じられていました。馬や籠、舟などですね。それは村から追放された後も変わりません。

 その理由は徒歩圏内にいて欲しかったからではないかと私は考えています。

 間違っても別の国に行けないように、村民たちが探しに行けないところに行けないように——。

 「カユムさま」の一番大事なルールに「カユムさま」を殺したものには7倍の復讐をしなければいけないという血の報復があります。

 「カユムさま」を殺した者とその縁者六人を殺さなければ、それまで「カユムさま」に押し付けた厄災がすべて村民たちに帰ってくるからです。

 流石に時代が経つごとにその慣習も近代化されていったようで、「カユムさま」の依代は像や人形へと変わっていきました。

 それが現代の「カホさんへのお願い」あるいは「カホさんのおまじない」のルーツです。

 つまり、私に——おそらく私たちの身に起こっているのは7倍の復讐なのでしょう。

 私が一人目なのか、あるいは七人目なのか、それともその合間なのかはわかりませんが、誰かが「カユムさま」——カホさんを殺したのは間違い無いのでしょう。

 そして、それは悲しいことに私の縁者だったようです。

 私の大学では、一人が水死体で見つかり、一人が首を吊った状態で見つかり、一人の人間が行方不明になっていました。

 私も先日、何者かに毒を盛られて死にました。

 なぜ私が選ばれたのかはわかりません。

 

 罪悪感とは、何に対しての罪悪感でしょうか?


 わかりません。カホさんに当たる人物に私は心当たりがないからです。


 ******


 すみません、息苦しくて——。

 ちょっと緩めてもいいですか?

 品川です。

 歩きで来ました。

 趣味は写真を撮ることです。

 まだ大学生です。

 悩み——悩み——悔しい——許せない——。


 ——かほさんを不幸にした奴らを殺してやりたい——。


 僕には年の離れた幼馴染がいました。

 名前を「かほ」と言って、僕はかほさんが大好きでした。

 かほさんは優しくて、頼りになって——。

 でも、あの「カホさんへのお願い」って言うおまじないが広がっておかしくなった。

 みんながみんな、かほさんの所為にするようになっていった。

 悪いこと、嫌なこと、苦しいこと、不安なこと——。

 それをみんなかほさんの所為にしてた。

 表では気にしてないように振る舞ってたけど、かほさんは苦しんでた!

 僕だけには悩みを打ち明けてくれてたから!

 でも——かほさんはいなくなった——。

 あいつらがかほさんを居られなくしたんだ!

 だから、かほさんと大学で再会した時は運命だと思ったんだ!

 かほさんは相変わらず優しかった!

 かほさんは僕の被写体になってくれた!

 だから!今度こそ僕がかほさんを守るって!

 かほさんには恋人がいたけど、そんなのどうだってよかった!かほさんが幸せなら良かったんだ!

 なのにあいつ!田中のやろう!かほさんを捨てやがった!

 かほさんはまたいなくなった!


 罪悪感!あるよ!あいつらを全員殺せなかったことが僕の罪悪感だ!


 三浦!あいつは小学校の頃!かほさんの親友だったのに真っ先に裏切った!

 後藤!あいつが面白がってかほさんの家に最初に紙人形を入れたんだ!

 盧山!あいつはかほさんと家が近所だった!盗まれた時計がかほさんの家のポストにあるっていい出したのはあいつだ!

 椎名!あいつがあんなおまじないを広めなければこんなことにはならなかった!

 新村!あいつは当時教育実習生だったんだ!かほさんはあいつに相談したのに無視された!

 田中!かほさんを捨てた!しかもその後すぐに三浦となんて付き合い始めやがって!

 こいつらみんな不幸になればいいんだ!


******


 あの——水はありますか?

 いや、飲みたいわけじゃなくて、逆にもうお腹いっぱいなので——。

 田中といいます。

 歩いてきました。

 趣味は、ドライブですかね?

 大学で事務員をしています。

 悩みですね。


 ——元恋人がおかしい——。


 私の元恋人の話なんですが、その子の情緒が、そのおかしくて——。

 出会いは職場です。同僚だったので。

 最初は普通の人だと思ったんです。

 でも、生徒からストーカーの被害を受けてから様子がおかしくなって——。

 紙で人形を折るんですよ。

 何枚も、何枚も——。

 私——怖くなっちゃって——。

 多分、その頃にはもう気持ちが冷めてたんだと思います。

 ちょうど同じ頃、元恋人には盗み癖があるって聞いて、そういえば僕もペンとかよく無くすなって思って、もしかしてって、その時は思ったんです。

 だから、別れました。

 その後すぐに元恋人は、仕事を無断欠勤して来なくなってしまって、ずっと行方がわからなくなったみたいなんです。

 元恋人のストーカー生徒が乗り込んできたこともあって、いい迷惑でした。

 そのストーカー生徒は自室で首吊り自殺したみたいです。

 自室には無数の元恋人の写真と——それと同じぐらいの紙で折られた人形があったそうです。

 紙人形には私を含めた六人の殺害計画が書かれていたとか——。

 その後、私は大学内にある図書館で働いている方と付き合い始めたんですけど、その人も同じことしてたんです。

 紙で人形を何枚も、何枚も折っていて——。

 しかも、その人は無意識だったみたいで、注意したら何のことか分からないみたいでした。

 怖くなって——。

 結局、その人とも別れました。

 あれは——一体なんだったんでしょうか?

 私はいったい誰に沈められたんでしょうか?


 私——何も悪くないですよね?


 わからないです。

 もう、何も——自分が浮かんでいることしか——。


 ******


 初めまして、中村です。

 みんなからは「かほ」と呼ばれますが、本当の呼び方は「かゆむ」です。

 私はあなたに話しかけています。

 助けてください。

 私は罪人です。私は愚か者です。

 私は目立ちがり屋でした。私は寂しがり屋です。

 でもいじられるのは嫌いでした。

 私を許さないでください。私を許してください。

 私を助けてください。


 私が謝らないとなんで謝らないの、と考えてごめんなさい。

 私の好きなものを勝手に食べたことを怒ってごめんなさい。

 私の家を覗きにくるのを気持ち悪がってごめんなさい。

 私の机に登るのを注意してごめんなさい。

 私の話を聞いて欲しくて無理に絡んでごめんなさい。

 私の苦しんでるって周りに伝えるために利用してごめんなさい。

 私のダメなところを指摘してくれるのに逆らってごめんなさい。


 でも、知ってほしい。

 

 頭を下げて欲しかった。

 お腹を壊して欲しかった。

 見ないで欲しかった。

 落ちて欲しかった。

 悪口でもいいから話して欲しかった。

 息しづらいと周りに教えて欲しかった。

 一緒に落ち込んで欲しかった。


 私を助けてください。

 私はあなたに話しかけています。

 私はあなたと仲良くなりたいです。


 あなたのお名前はなんですか?

 私の名前は中村です。

 

 ここにはどうやって来ましたか?

 私は歩いてきました。

 

 趣味はなんですか?

 私は折り紙を折ることです。

 

 どんな仕事をしていますか?

 私は今は働いていません。

 

 悩みはありますか?

 私はあなたと友達になれるか悩んでいます。


 罪の意識はありますか?

 私はあります。


 カホさんは誰が殺したかわかりましたか?

 ここまで付き合ってくれたあなたにはわかるはずです。

 名は体を表すといいますから——。


 最後に——。

 いま、何人目だと思いますか?

 もしかしたら、全員一人目かもしれませんね——。


 ここまで読んでくださってありがとうございました。

 次のカホさんはあなたにお願いします。

 

誤字脱字などあればお教えください。

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