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欲望

作者: 雪猫
掲載日:2026/09/13


男の前に悪魔が現れて、こう言った。



「あなたの欲望の全てを叶えてあげましょう。


その代わり、死んだ後、魂を頂きます」


男は悪魔と契約した。



悪魔は言った。


「あなたのために、この『通り』を作りました。


ほら、ありとあらゆる食、性、酒、演、遊。全ての快楽がここにあります。


どれもこれも、あなたを満足させるでしょう」


男はきらびやかな店が並ぶ、自分のための通りに喜び、


毎日いて、楽しんだ。


どんな富豪も経験したことのない快楽の数々に酔い痴れた。



悪魔はほくそ笑んだ。


『この調子だと、数カ月後には身体を壊し、それでも快楽には抗えず、


早々に死を迎えるだろう。


直ぐに魂を手に入れる事が出来る』



しかし、悪魔は一つ決定的なことを見逃していた。




数カ月後、悪魔は通りを訪れ、男の様子を見た。


男は通りの前で佇み、ぼーっと何か考えているようだった。


そして、通りとは別の道へ歩いて行こうとした。


悪魔は驚き、男を引き止め、尋ねた。


「どうしたのです?


どこへ行こうというのです?


全ての快楽はこの通りにあるんですよ」


「分かってるよ」


「じゃあなぜ」


男は、ちょっと考えて、言った。



「飽きた」



あっけに取られている悪魔を置いて、


男は別の道へ行き、


そこで見つけたラーメン屋の


清潔でも不潔でもない店内で


美味くも不味くもないラーメンを、


とても美味しそうに食べた。




悪魔は思い知らされた。



人間の底知れぬ強欲さを。


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