第九章:寵愛の序列 ―偽りの愛撫と真実の接吻―
厚い絹の帳が下ろされた女王の閨は、百合の香香と甘やかな情死の気配に満ちていた。
広大なベッドの中央に座すセリーヌは、薄物一枚ですらなく、ただ月光のような白い肌を露わにしている。その左右を、猛々しい執着を隠そうともしない二人の男が固めていた。
「陛下、私以外の男の指が触れること、これほど不快だとは思いませんでしたよ」
ビクトルが、セリーヌの細い手首を取り、その指先に吸い付くように接吻を落とした。翡翠の瞳は、対面に座るスズカを明確な敵意で射抜いている。
「不快なのはこっちだ。貴公子の綺麗な指じゃ、女王様の本当の熱さには届かねえだろ?」
スズカは嘲笑うと、セリーヌの腰を乱暴に引き寄せ、その豊かな太ももを逞しい掌で愛撫した。
二人の若き「妻」たちの間で交わされる、独占欲という名の火花。
ビクトルはセリーヌの耳元に唇を寄せ、とろけるような甘い声で「私だけを、正妃に」と囁き、スズカはその強靭な腕で彼女を組み伏せんばかりに抱きしめる。彼らは、いつの間にかこの傲慢で知的な女王に、魂ごと絡め取られていた。
だが、二人が競い合えば合うほど、セリーヌの視線が向かう先は決まっていた。
「……ルーク」
彼女が潤んだ琥珀色の瞳で名を呼ぶ。
足元、あるいは枕元に控えるルークへと、セリーヌは二人を振り切るようにして腕を伸ばした。ビクトルが与える洗練された快楽も、スズカが刻む野性的な律動も、彼女にとっては政治的な「遊戯」に過ぎない。
セリーヌはルークの、薄く這う傷跡がある頬を愛おしげに撫で、その隻腕の肩に顔を埋めた。
「ルーク、ここへ。……私に触れて。あなたがいなければ、私は凍えてしまうわ」
「……セリーヌ様、他のお二方が見ておいでですよ」
ルークは静かに、しかし抗い難い力強さでセリーヌの背中を抱きしめた。欠損した左腕の先でさえ、彼女にとってはどんな宝石よりも価値のある愛の証だった。
セリーヌは二人の「新人」たちを見せつけるように見やり、ルークの唇を貪欲に奪う。深く、心臓まで溶け合うようなそのキスに、ビクトルは屈辱に唇を噛み、スズカは獣のような唸りを上げた。
「……信じられん。我ら二人を侍らせながら、あのような不自由な男に、これほどまでの体温を向けるとは」
ビクトルが吐き捨てる。だが、その言葉とは裏腹に、彼はセリーヌの背中に指を這わせ、彼女の関心を少しでもこちらに向けようと必死に愛撫を続けた。
「へっ……だったら、その執事から女王を奪い取ってやるだけだ。なぁ、女王様。……今夜はまだ、終わらせねえぜ」
スズカがセリーヌの脚を割り、その奥深くに指を沈める。
ルークに背後から抱かれ、その耳元で愛を囁かれながら、セリーヌは左右の男たちが与える刺激に身を震わせた。一人の最愛と、二人の強欲。
スズカが一番乗りだと言わんばかりにセリーヌの足の間に割り入り自身の楔を深々と沈めた。セリーヌは腰をうねらせてその圧倒的な熱量に喘ぐ。ビクトルは枕元に立つといまだにルークと接吻を続けるセリーヌの唇を己の熱塊で塞いだ。喉奥まで女王を支配する。ルークはそんな二人を眺めながらもセリーヌの身体を優しく撫でさすり時折小ぶりな乳房の先端にある丸い突起を指先で捏ねた。
長い律動の果てにスズカが果てると、今度はビクトルが上書き戦とばかりに女王を背後から貫く。貴族の上っ面を脱ぎ捨て獣のように女王を犯すその必死さにセリーヌがあえやかな喘ぎ声をあげる。セリーヌはルークの上にまたがり、その顔の上に秘部を押し当てる、突き出した興奮でスズカの剛直を頬張る。三者が攻め立てる中、セリーヌは嬌声を上げて次第に高まっていく。
最後には男の役割を果たさぬルークの肉竿を口に収めて長い愛撫が始まった。ルークはそんな女王の背や肩を優しく撫でる。背後では上下に分かれたビクトルとスズカがともにセリーヌの中に潜りこんでいた。先に果てたのは誰だったか。ただ、二人の男の子種が熱い潮を噴き上げるセリーヌの子宮へと注がれたのは確かだった。
歪な四角関係が織りなす閨の宴は、沈みゆく島の運命を忘れさせるほどに、濃密で、狂おしい熱を帯びていった。




