第十九章:方舟の漂流と、三人の男たちの誓い
浮上から三ヶ月。方舟は風と海流に身を任せ、未知の大陸を求めて彷徨っていた。ルークを失った喪失感は、静寂の夜が来るたびにセリーヌの胸を締め付けた。だが、彼女が折れることを、残された男たちは許さなかった。
「湿っぽいツラしてんな、女王様。あんたが旗を降ろしたら、あの執事が化けて出てくるぜ」
スズカは、見たこともない魚を捌きながら笑いかけた。彼は日々、船体の補強に明け暮れ、セリーヌの「足」であり続けていた。
「セリーヌ様、私は……貴女が見つける新しい国で、二度とあんな悲劇が起きぬよう、新しい法を編む準備をしています」
ビクトルは、ルークから譲り受けた書物と格闘しながら、確実に成長していた。
「隊長。俺、見つけたぜ。あの地平線の向こう、鳥が飛んでいる。あいつらの向かう先に、きっと土があるはずだ」
アユはマストの最上部から、希望の予兆を叫んだ。
三人の男たちは、それぞれのやり方でセリーヌに寄り添い、ルークの遺志を繋いでいた。 「ああ。私は止まらん。この航海がどこへ至ろうとも、私は私の民を、そして私の中に残された命を導いてみせる。スズカ、ビクトル、アユ。お前たちの力を貸せ。この旅の終わりを、私に見せてみろ」
セリーヌは、微かに膨らみ始めた腹部に手を当て、地平線を睨み据えた。




