千文字の望み
千文字喋るか何かすると気が狂う呪いの噂話をする令嬢のうち、
一人が同じ呪いにかかったようですわ~~~~~!!!!!!
さて、お友だちさん達のうち、付き合いを続けてくれるのは一体誰なのかしらね。
私は歓喜した。
ついに自分の左手に醜い王室の紋章のあざが浮かび上がったのだ。
(やった、やった、やった~~~!)
いつもは侍女に怒られるまでうたた寝してるのに
今日は手の甲を見るなり飛び起きてしまった。
(これでやっと、あの方への取材が叶う)
千文字の呪いの悪化条件は諸説ある。
千文字喋ると気が狂うとか、
何日あけて喋れば大丈夫とか、
文字を書くのは大丈夫だとか。
安全とされているのは、絵やジェスチャーで物事を伝えること。
その事実を公表したのは、かなり前に千文字病にかかり、
未だに正気を保っていると噂の深層の令嬢、
イザベラ・ホワイト公爵令嬢。
建国時からこの国の盾と名高い、戦闘に特化した高度な魔法を操るホワイト家の秘蔵っ子。
結婚適齢期だが呪いを恐れるあまり王家との縁談は宙に浮いたまま、
彼女は社交界から姿を消した。
私とは年齢が多少離れており、お茶会などでもちょうどすれ違いでお会いすることはなかった。
オーロラに輝く絹糸のような髪と、陶磁器のドールのようななめらかな肌を保つ絶世の美女。
彼女は社交界から姿を消した後、たった一文だけ新聞に広告を掲示した。
――千文字のあざを持つ者のみ会う。 イザベラ・ホワイト
彼女は秀才と名高い。
きっと可能な限り実験を繰り返し、
呪いについての知見もたくさんあるはず。
破滅は恐ろしかったか?
答えはNOだ。
私にとっては調べたいことを調べられないことが何より嫌だった。
それに自分は最初から気が狂っているのだから、狂っても大丈夫な気がしていた。
お父様とお母様は手の甲の文様を見るなり、がっくりと肩を落とした。
スケッチブックに木炭で、ホワイト家の簡易紋章を描く。
勉強しておいてよかった、貴族必須知識の紋章!
意図を察したお父様は地面にめり込みそうなほど更に肩を落とした。
「粗忽者のファリア、止めても行くんだろう。 彼女もお前なら会ってくれるだろう」
お父様は先触れを出し、以前から忠実に仕えてくれている、
従者の男の子スピキオをつけてくれた。
いくつかの緊急時のハンドサインや
防犯対策を家族とスピキオで話し合った。
お母様は絶対に喋らないでね、
なんとか解呪できないか私も調べると抱きしめてくれた。
全く、娘の私は知識欲ジャンキーだというのに、
我ながら恵まれた家庭に生まれたものだ。
同じ国内とはいえ、移動手段は馬車のみ。
私に移動手段になる魔法があればよかったのだが。
万全の態勢でもって、私はホワイト家の門をくぐった。
ファリアは父母を慕っていないわけではありませんわね~~~~~~!!!!!
ただ同じように愛することができないだけなんですわね~~~~~~!!!!




