表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

最後のカードは、めくられない-間宮響子-

作者: 江渡由太郎 原案:J・みきんど

 その古びた西洋風建築の家は、地元では「占いの館」と呼ばれていた。

 廃館になってから数十年以上が経ち、アルミサイディングの茶色い外壁は剥がれ、白い窓枠は黄ばみ、窓ガラスは黒く濁っている。


 だが噂だけは今もなお生きていた。


「当たる」


「帰ってこない者がいる」


「最後のカードを見るな」




 放課後、肝試しのノリで集まった四人の女子高生は、その噂を笑い飛ばした。


「ねえ、これから皆でその占いの館へ行ってみようよ」


 星川舞がそう言うと、新川若菜、出雲崎莉奈、柏葉麻里の四人は黄昏が落ちた校舎を去った。




 陽が沈み、星が瞬いている。静寂が闇とともに辺りを支配している。その中に占いの館は異質なまでに存在感を示していた。


 居間に入ると、中央に木製のアンティークな細工を施されている古びたテーブルがあり、埃をかぶった箱が置かれていた。


 箱の中には、異様なほど保存状態の良い年代物のタロットカードが収められていた。


「占いやろうよ。やり方、スマホで調べれば出てくるし」


 星川舞がそう言い、誰も止めなかった。

 カードを混ぜ、引く。画面越しに読み上げられる意味。




 その瞬間、間宮響子は遠く離れた自宅で、はっきりと“封印が解ける音”を聞いた。

 ——めくる音。




 その夜から、彼女たちの身の回りに異変は始まった。

 最初の犠牲者は、よく笑う星川舞だった。

 部屋の天井から、女の髪が垂れてきたという。


 次は新川若菜か犠牲となった。自宅の風呂場。鏡の中に、背後から立つ形相な女。


 四人の女子高生たちは逃げても、眠っても、目を閉じても、女は“占うように”彼女たちを見つめていた。


 やがて恐怖は絶望へと変わる。星川舞はネットで調べてお祓いをしてもらうために、震えながら間宮響子のもとを訪れた。


 響子は、彼女たちを見るなり一瞬にして顔色を変えた。


「……あなたたち、“引いた”わね。最後のカードを」



 翌日――

 廃館へ戻った夜、居間は異様に整っていた。

 テーブルの上にはタロットが並び、そして立っていた。


 長い黒髪、ねじれた笑み。

 女は囁く。


「次は、あなたの番」


 響子は一歩も引かなかった。

 震える手でカードを集めた。そして女の“名前”を呼び、最後の一枚を伏せる。


 ——封印は、成功した。




 翌朝、女子高生たちは解放された。

 悪夢も、影も消えた。


 だが、響子は一人この忌まわしい箱を見つめていた。

 タロットは確かに戻っている。だが、枚数が一枚多い。


 そのカードには、あの女ではなく――

 目を閉じた間宮響子自身が描かれていた。


 響子は、それを決してめくらない。




 占いとは、未来を見る行為ではない。

 未来に“見られる”行為なのだから。


 そして今日もどこかで、誰かが軽い気持ちでカードを引いている。



 ――(完)――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ