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09

「へ~・・・あれはロードローラーって言うんですか」


 一度は通り過ぎたけど、どうにもあの謎の魔導車達が気になって開拓現場まで戻ってしまった。


「そうそう」


「で、ハイドロアームの方はそれぞれグラブヘッド、ソーヘッド、バケットヘッドと用途に合わせて腕の先を取り替えて使うと」


 そして暫く作業風景を眺め、昼食時に作業員に話し掛けて皆さんの簡易宿泊所の隣にテントを張る許可を貰った。


「まぁ大抵は一度付けたら一現場終わるまでは取り替えないけどな」


「あ~、一通り揃ってたら交換する時間が勿体ないですもんね」


「時間が勿体ないって言うかめんどくさいだな。ははははは」


 テントを張り、スレイプニールの汚れを拭って作業を眺め、夕食後に仲良くなった方達から色々話を聞く事が出来た。


「ははは・・・それで、ここも畑か牧場になるんですか?」


「いや、ここは中継地になるから宿屋とか酒場が中心で奥の方が何かの工場とかになるらしい」


「何かの工場?」


「まだ決まってないって話だけど、ゴタードのお偉いさんが個人的な趣味の何かを建てるとか言う話だ」


「個人的な趣味で開拓とか凄い話ですね・・・・・」


「まぁツォアルとか見て来たんなら解かるだろ?ゴタードのお偉いさんってのはアバタ領のほぼ全てを握ってんだ、金が有り余ってんだろ」


 本当に何もかもが規格外と言うか僕の常識を遥かに超えていて驚かされてばかりだった。


「成程確かに・・・お疲れの所有難う御座いました。色々聞けて勉強になりました」


「ははは・・・いいって事よ。それじゃおやすみ~」


「はい、おやすみなさい」


 頭を下げて皆さんと別れてテントに入り、今聞いた話や今日見た景色をノートに記してから眠りについた。


 翌朝、もそもそと起き出し、保存食を食べていると作業員さん達の声が聞こえて来た。


「・・・・・今日も一日安全作業で頑張るぞ!」


「「「「「おう!」」」」」


 威勢のいい掛け声と共に足音が響いた後、魔導車の駆動音が聞こえて来た。

 僕はなんかかっこいいなと思いながらテントを出て伸びをしてからテントを片付けスレイプニールの荷台に括りつけて魔導内燃機関を始動した。

 ヘルメットを被り作業場の方を向いて一礼しスレイプニルに跨ると次々と作業車両から警笛が鳴った。

 僕は嬉しくなってスレイプニールの左ハンドルについている警笛ボタンを二回押してから走り出した。


 いい人達だった。突然現れて話し掛けた僕に嫌な顔一つせずに色々教えてくれた。


 絶対お土産にお菓子でも買って帰りに渡そうと素直にそう思えた。


*


*


*


 息子のオルトが一月近い旅に出てから私は毎日無事を祈りながら庭の手入れをしていた。


「ただいまサラ、元気そうでよかったわ」


「えっ!・・・かっ、母さん?!」


 そんな時、長年音沙汰の無かった母が突然帰って来た。


「ちょっとハビラ王国に用が出来てね、まだここに住んでてよかったわ」


「何暢気な事言ってんのよ!突然いなくなって手紙一つ出さなかった癖に・・・今更何の用よ!!」


 私が就職して直ぐの事だ、父は母と私を捨て、その数年後には母も私を捨てて出て行った。

 残された土地と家屋は支払いが残っていて私は一人で残金を払い続け、夫と出会うまで本当に一人で戦い続けていた。

 だと言うのに、何事も無かったかのように話す母に怒りしか沸いてこなかった。


「仕方ないでしょ、あんたと違って私は〝血〟が濃いから本能で『森』に帰りたくなっちゃうのよ」


「知らないわよそんなの!だとしたって理由位言ってからにしなさいよ!私だって子供じゃなかったんだから!」


「そんなに怒らなくても―――」

「出てけ!!あんたなんて親でもなんでもない!二度とその面見せんな!!ここはもうあんたの家じゃないのよ!!」


 大声で喚き散らし、母を門の外に押し出して泣きながら玄関に駆け込んで扉に鍵を掛けた。

 家に入る直前に背後から『ごめんなさい』と母の謝罪の声が聞こえたけれど許す事なんて出来そうになかった。

 ベッドに潜り込んで泣き続け、気が付くと夕日が部屋を赤く染めていてまた涙が零れた。


*


*


*


 畑や牧場に囲まれた街道の先にゲベルの防壁が見えて来たんだけど、領主邸の門衛さんがこの程度で~とか言っていた意味がよく解った。


「二倍近い規模とか言ってたけど防壁は二倍じゃきかないじゃん!」


 ツォアルの防壁は5m位だったけどゲベルの防壁は如何見ても軽く15mは有った。


「あっ!あれだ!戦争でここが狙われたから要塞化したんだ!」


 徐々に近づいてくる防壁には街の内側に開いた金属製の門とその両脇に鎖が見えた。

 

「あの鎖は吊り橋かな?だとしたら堀もあるって事だよね?」


 あの門の先は如何なっているんだろうと期待に胸を膨らませ、夕日に染まり始めたゲベルの防壁を眺めつつスロットルを制限速度まで戻した。

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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