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06

 ニールさん達と別れてから街道を南下して行きアバタ領に入った。

 この辺りまで来るとアラバ塩湖の塩害は無くなり植生も変わって来て背の高い草や木々が目立つようになる。

 周囲の変化を楽しみながら進んで行き予定通り夕方には目的の町に着いた。


 アバタ領ヌメイラは衛星都市とアバタ領領都を結ぶ中継地点の町だ。

 特に名物とか有る訳でもなく、見て回る所も無いので宿で一泊して翌早朝に出発した。


 若干西へと曲がっている街道を南下し今日の目標である領都を目指す。

 そして日が傾き始める頃に視界が一気に開けて下り坂の先に領都の防壁が見えて来た。


 アバタ領領都ツォアル。アンモン伯爵家が治めるハビラ王国最大の領地。

 アンモン家は王家に絶対の忠誠を誓い、建国以来王家を支え続けている最も偉大な貴族家だ。

 南の交易都市ゲベルはハビラ王国の財布と言われていてアンモン様は国内外の貴族家から一目置かれている。

 過去アンモン家を唆し独立や反逆を企てようとした者達は悉くアンモン様の手によって処されていると歴史の授業で習った。

 当然のように周辺国がゲベルを狙ってきた歴史も有るが、ゲベルを落とす所か返り討ちに遭って逆に国土を減らす羽目になっていたりする。


 その防衛時に一躍買ったのがゴタード商会だと言われている。


 有り余る資金を投入し、大量の攻撃用魔導具を用意して圧倒的物量をもって押し返した上に敵国軍に壊滅的な打撃を与えたと言う。

 まぁ百二十年も前の話なので多少の誇張は有るんだろうけど。


 ツォアルでは二泊する予定だがその理由がゴタード商会の本部が有るからだ。

 アンモン伯爵邸も見るつもりだけど、自分が就職する商会の本部がどんな見た目と規模の建物なのか見ておきたかったんだ。

 何故王都やゲベルではなく本部をツォアルに置いたのか出来れば聞きたい所だけど・・・行き成りやって来て変な奴とか思われそうだよなぁ・・・・・


 ツォアルの北門を潜る。第一印象は兎に角広いだ。

 広い通りと整然と並ぶ建造物。建造物はほぼ全て二階建てまでで通りの先まで見晴らせる開放感のある街。

 その中で二階建てを超える伯爵邸でさえ三階建てと景観を良く考えた街作りになっている。


 観光は明日にしようと宿屋に入り二泊で部屋を取り夕食とお風呂を済ませて早めに眠りについた。


 翌日、朝食を摂っている時に気が付いた。昨日の夕飯の時は疲れていて気が付かなかったが、何の変哲もない食事が結構美味しい。

 ほんのり甘く柔らかいパンに卵の入ったベーコンと野菜の炒め物もトウモロコシのスープも材料自体の味がとても濃厚だ。

 これが庶民用の宿で出す食事とは思えない位に美味しかった。

 王都で売っている野菜なんかもアバタ領から運んでいる筈だけど・・・これが鮮度の差、なのか?


 困惑しながら食事を終えて街の散策に出た。

 噴水を囲むように屋台が並ぶ中央広場を西へ向かうと領主邸がすぐに見えた。

 金属製の柵に門とその両脇に衛兵も見える。


「柵の外からでも衛兵さんに許可を貰っといた方がいいよね・・・・・」


 いらぬ疑いを掛けられて捕まったら洒落にならないと衛兵さんに話し掛けた。


「済みません、王都から観光に来たんですけど、少しの間見学してもいいですか?」


「ん?ああ、構わんよ。御屋形様は寛大なお方だから心配はいらん」


「有難う御座います」


 大きな両開きの門から延びる石畳がその先に見える噴水をぐるりと回って屋敷へと続いている。

 屋敷を囲むように花壇と低木が並んでいて色とりどりの花が咲いていた。


「綺麗なお庭ですねぇ・・・何て言うか、お屋敷との調和がとれていて季節ごとに絵画として残して部屋に飾っておきたいです・・・・・」


「ほう、君は中々良い事を言うな。私から御屋形様に伝えておこう」


「えっ?!大丈夫ですか?失礼になるんじゃ・・・・・」


「ははははは・・・自宅を褒められて失礼にはならんだろ」


「ま、まぁそうですけど・・・・・」


「王都では如何か知らんが、御屋形様は酒場等で庶民から直接意見を聞いて領地の運営に活かしている。君が望むならお会いになられると思うぞ」


「い、いえ!流石に恐れ多くて謁見とか無理です!」


「ふむ、と言う事は王都では昔ながらの貴族風を吹かしている者ばかりと言う事か。御屋形様が聞いたら『時代の流れに取り残されても知らんぞ』と言うであろうな」


「はぁ・・・革新的な方なんですね」


「まぁな。それもこれもゴタード殿の影響が大きいのだがな」


「あ、そのゴタード商会の本部も見学したいんですけどどこら辺になりますか?」


 流石に領主様の話を続けるのは肝が冷えるので丁度ゴタードの話が出た事だしと本部の場所を聞いたら衝撃を受けた。


「ん?本部?しいて言うなら・・・この街の全て、かな」


「・・・・・は?」


「ゴタード会長が住んで居る場所と言うならあの商店だが、ゴタード商会の本部と言うならこの街の建物のほぼ全てがゴタード商会の所有物だ。各部門ごとで建物を変えているし個人商店に見えても店主はゴタード商会の会員なんだ。そうだな、例えば中央広場の露店もゴタードだぞ」


「す、すげぇ・・・街のほぼ全てが商会って・・・・・王都の支店数でも凄いと思ってたけど規模が段違いだ・・・・・」


「ははははは・・・この程度で驚いていたらゲベルには行けんな。あの街はここの二倍近い規模だぞ」


「なっ?!し、信じられない・・・僕、とんでもない商会の一員になるんだな・・・・・」


 次から次へと出てくるとんでもない情報に凄すぎて凄いと言う訳の解からない感想が頭に浮かんだ。


「ん?何だ、君もゴタードの一員になるのか。なら一つ良い事を教えてあげよう。『商いとは信用を売って信頼を得るものである』これがゴタード商会の経営理念だそうだ。まぁ、おそらく初日に教わるだろうがな」


「あ、有難う御座います、胸に刻んでおきますね・・・その、ちょっと混乱して来たので宿に戻ります・・・・・」


「ははは・・・少し休んで大陸一の大商会の一員になると言う事が如何言う事かよく考えておくといい」


「はい・・・失礼します」


 衛士さんに頭を下げて領主邸を離れ、宿屋に戻ってベッドに寝転んだ。信用を売って信頼を得る、か・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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