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頭に強い衝撃を受けて目を覚ますとアリサさんの顔が視界一杯に広がっていて混乱した。
近い近い!なにこれ?!えっ?!膝枕されてるの?!
慌てて起き上がって取り敢えずアリサさんに謝罪すると隣に居たおじさんに全身洗って来いとか言われて困惑しながら言われた通りにした。
ひょっとしてアリサさんのお父さん?だとしたら第一印象最悪じゃん!
「オルト君、着替えここに置いとくけど・・・その、大丈夫?」
「・・・大丈夫って?・・・・・ごめん、正直ここに来る途中からの記憶が無くて何が有ったのか解らないんだ・・・・・」
「そ、そうなんだ・・・じゃ、じゃあ!その・・・・・ううん、何でもない。あのね、売店の横に魔導二輪を止めた後、倒れちゃったんだよ?」
「えっ?!止めた後倒れた?!じゃ、じゃあリサ、あ、いや僕の魔導二輪は?倒れたりしてない?!」
「・・・オルト君が大切にしてるのは解るけど・・・・・私、凄く心配したんだからね!目の前で倒れて・・・オルト君が死んじゃうんじゃないかって・・・・・オルト君が、オルト君が死んだら私・・・・・」
「ご、ごめん・・・僕何も覚えて無いから実感が無くて・・・いや、こんなの言い訳にもならないよね・・・本当にごめん、アリサさんの気持ちとか考えられ無かった僕がダメだった」
涙を流す彼女を見て如何に自分がダメな人間だったか思い知った。
目の前で知り合いが倒れたんだ、驚いただろうし辛かった筈だ。
「心配してくれてありがとう。これからはアリサさんの事もっと考えるようにするから許して欲しい」
「う、うん・・・・・」
彼女の頭を抱えるように優しく抱くと彼女は許してくれた。
その後は背中とか洗ってくれると言う彼女に恥ずかしいからと遠慮して貰って体を洗い、ついでに汚れた服も洗ってリサに干してから屋内へと入った。
よし!覚悟を決めてご両親に認めて貰うぞ!
*
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力が―――
力が欲しい―――
主を護るための力が―――
目の前で崩れ落ちる主に何も出来ず―――
ただ見ているだけしか出来なかった自分が悔しい―――
誰か―――
誰でもいい―――
誰でもいいから私に力を―――
主を護るための知識と術を―――
*
*
*
「ただいま」
リビングでミザリーと今後の事を話し合っていると娘が一人で帰って来た。
「おう、オルト君は大丈夫か?」
「うん。なんか途中から記憶が無いって言ってたけど身体の方は大丈夫みたい」
そんな状態でここまで来たのかよ・・・呆れるわ。
「そうか、それじゃお前も服着替えて鍋温めて来な、あいつに食わせるために作ったんだろ?」
まぁそんだけ娘に会いたかったって事なんだろうが。
「う、うん・・・・・その、お父さん、わたし―――」
「いいから、悪いようにはしねぇから行ってきな」
「・・・・・はい」
俺に反対されるかもしれないと言う不安を隠そうともしないで話し始めた娘を遮って着替えて台所へ行くように言うと、娘は少し安心したような顔をして台所へと向かった。
「本当にいいの?」
「ああ、爺さんがよく言ってたんだよ『時の流れに乗り遅れるな』ってな」
「そう、ありがとうあなた」
「気にすんな、多分これが向こうの両親も含めて一番いい結果になるだろうからな。まぁあいつの為人を見極めてからだがな」
「そうね、でもそれは大丈夫なんじゃない?」
「多分な」
ミザリーとの話し合いもケリがついたしと安堵の息を付いた時玄関を叩く音と元気な声が聞こえて妻と二人で立ち上がった。
「さて、未来の息子を出迎えるとしますか」
「クスクスクス・・・もう、あなたったら気が早いわよ」
まだ未成年みたいだから酒は無理だが、一緒に美味い飯は食えそうだ。
*
*
*
玄関の前に立ち両手で頬と叩いて気合を入れてノックをしてからお腹に力を入れて声を上げた。
「すみません!お邪魔します!」
扉を開けて中に入ると奥から足音が聞こえて来たのでその場で姿勢を正した。
「おう、大丈夫そうだな。まぁ何だ、自己紹介とか後でいいから入ってくれ」
「いらっしゃい、遠慮しないで入って頂戴」
「・・・・・はい」
リサさんの両親と思しき男女がやって来て優し気な笑顔で中に入るように言われた。迷惑かけたし怒られると思っていたから拍子抜けしたって言うか、機先を削がれて緊張が解けて自然な足取りで二人の後に付いてリビングへ通され、椅子に座るように言われて席に着いた。
「初めまして、オルト・フィールズと言います」
「俺はゴードン・モルクレイでこっちは妻のミザリーだ」
「ミザリーです宜しくね」
「こちらこそ宜しくお願いします。それでですね―――」
「まぁ待て、先ずは飯を食ってからにしよう。腹減ってんだろ?ミザリー頼むわ」
「はいはい」
自己紹介をしていざアリサさんと結婚を前提にと話し始めたらお父さんのゴードンさんに遮られ飯を食ってからと言われた。
あ、あれ?僕が何を言おうとしたか解ってる?解った上でご飯?
てっきり軟弱な奴とか言われて追い出されたりするんじゃないかと思っていたから困惑した。
リサさんとミザリーさんが料理を運んで来てテーブルの上に並べて行くのを無言で眺め漂ってきた香りにお腹が鳴って顔が赤くなるのを感じた。
「クックックッ・・・さて、おめぇさんのために娘が丹精込めて作った料理を頂くとしようか」
「フフフ・・・そうね」
「も~お父さんお母さん、やめてよ~」
僕のためにと聞かされて嬉しさが込み上げて来た。
アリサさんはばらされて恥ずかしそうに顔を赤らめていて可愛かった。
「え・・・あ、はい!いただきます!」
「おう、食え食え」
「お替りも有るから遠慮しないで沢山食べてあげてね」
「はい!アリサさんありがとう!凄く美味しいよ!」
「う~・・・・・」
恥ずかし過ぎて涙目になったアリサさんに笑顔を向けて食べ続け、満腹になるまで遠慮なくお替りもした。
好きな人の手料理は今まで食べた物の中で一番美味しくて最高に幸せな気分になれた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




