02
朝食を摂り終えて鞄を背負い、玄関でハーフブーツを履いていると見送りに来た母に釘を刺された。
「ちゃんと約束は覚えてるわよね?」
「うん。法を犯さない、学業を疎かにしない、でしょ」
「解ってるならいいわ。せっかく決まった就職先から断られるような事にならないようにね」
「解ってるって。それじゃ、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
ヘルメットを脇に抱えて車庫へと向かい、魔導二輪が視界に入ると頬が緩んだ。
ちょっと緊張しながらポケットから出した始動具をハンドルの中央にあるイグニッションへ差し込み左へと回した。
インジケーターランプが光り、ギアがニュートラルに入っている事を確認し、車体右側に畳まれたキックペダルを開いて左足で踏み下ろした。
バララン!カンカンカンカンカン・・・・・
魔導内燃機関が始動し、排気管の出口に付いた消音器から乾いた音が車庫内に響くと僕の鼓動も跳ね上がった。
ヘッドライト、ウィンカー、ブレーキランプが点灯する事を確認してからヘルメットを被り、ハンドルを握って車庫から押して門へと向かう。
玄関から出て来て手を振る母に笑顔で答えてヘルメットのシールドを下げてクラッチを握りシフトペダルを踏みこんでギアを一速に入れた。
「行ってきます!」
手を振る母に一声かけてアクセルを回してクラッチをゆっくりと放して行く。
フロントスプロケットが回転を始め、魔導内燃機関の動力がチェーンを伝ってリアタイアが回転して地面を蹴った。
ウィンカーを出して門で一時停止をし、左右の安全確認をしてから左へと曲がり公道へと出て直ぐに二速へとギアを上げる。
徐々に速度を上げて学園へと向かう。勿論魔導二輪通学と駐輪場の使用許可は取ってある。
十字路では速度を落として進入し通過。緩い上り坂を魔導内燃機関の回転数を上げて昇って行った。
都市内及びその周辺での最高時速は六十キロと定められている。RS-01『スレイプニール』の性能の半分にも満たない速度だが、法定速度を破る気は無い。
両親との約束と言うのも有るが、町中を走るのは初めてだし、買ったばかりの魔導二輪で事故を起こしたくないからだ。
学園へと到着し、指定された駐輪場へとスレイプニールを止める。
ギアがニュートラルに入っている事をインジケーターランプで確認してからクラッチを放して始動具を右に捻って魔導内燃機関を止めた。
「ふぅ・・・・・」
スレイプニールから下りてヘルメットを脱いで一息着く。
少しの緊張と興奮の初めての運転が何事もなく終わり、始動具をイグニッションから抜いてバッグに仕舞いヘルメットを脇に抱えて教室へと向かった。
カラーン・・・カラーン・・・・・
昼を告げる鐘が校内に響き渡る。午前の授業が終わると僕はロッカーからバッグとヘルメットを手にそそくさと教室を出た。
今日は週末、授業は半日なのでこの後は商業組合で配達の依頼を受けるつもりだ。
スレイプニールも有るし、少し遠目の配達が出来る分受けられる依頼の幅も広がる筈だ。
廊下を進み始めて直ぐに友達に呼び止められて振り返った。
「お~いオルト~!」
「ん?なに?如何したの?」
「お前二輪で来たんだろ?うちまで乗せてってくれよ」
「は?だめだめ、二人乗りは資格を取ってから一年経ってからだし、何よりヘルメットが無いじゃん」
「硬てぇ!硬てぇなぁお前は。早々捕まりゃしねぇって」
「じゃ、捕まったら全責任を負ってくれるの?両親にばれたら二輪も取り上げられちゃうし、就職もおじゃんになるかもしれないんだけど?」
「うっ・・・わ、解ったよ・・・・・」
「それじゃまた来週~」
「お、おう・・・・・」
友人からの『お願い』をかわし駐輪場へ向かう。冗談抜きで勘弁してほしい。
学園を出て商業組合へと向かった。良い依頼が有るといいなぁ。
「こんにちわ~、配達の依頼を受けに来たんですけど何か有りますか?」
「はい、ありますよ。え~っと、こちらが近場の物でこちらが遠めの物になりますね」
商業組合に入り受付カウンターで会員証を出して職員さんに話し掛けると幾つか依頼表を出してくれた。
遠目の依頼だと休日中に帰って来られそうにない距離だけど、近場なら報酬は安いけど期限内に三軒回れるなと近場の三件を受ける事にした。
「ではこちらが受注書になります。受け取りサインを貰うのを忘れないようにね」
「はい」
受注書を受け取り、配達する荷物を受け取って組合を出た。一番近い配達先は自宅が有る南地区だったのでそこだけ配達をする事にした。
配達の仕事を始めてから使い続けている地図を広げて大まかな配達先を確認してから出発する。自宅の南東にある個人商店みたいだ。
速度超過に一時停止等、標識を見ながら違反しないように配達を済ませ自宅へと帰った。
ここまで読んで頂き有難う御座いました




