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 配達から帰ってから娘の様子がおかしい。

 兎に角やたらと機嫌がいいかと思えば呆けたりしてやがる。

 友達がお昼頃に来るから一番美味しいチーズを梱包しておいてくれとか、仕事をしながら普段はやらない昼食の準備までしてやがる。しかも上機嫌でだ。

 俺が知ってる娘の友達で遊びに来るくらい仲が良いと言えば宿屋のケリー位だが、あの娘は魔導車の資格は持ってねぇし、漁師町から出てるゲベル行きの定期便は途中下車は出来ねぇ。


 って事はあれだ・・・男、だな。


 女心なんざ微塵も解からねぇ俺でも流石にここまであからさまに変わられたら解かるってもんだ。

 娘も今年二十歳になったし遅過ぎる位だ、が・・・・・


 問題は相手と言うより娘の見た目にある。

 母親譲りの亜麻色の髪に黒い瞳、親の欲目を除いても整った顔立ちの可愛い女の子ってのが俺の評価だ。


 が、それはあくまで『女の子』としてであって『女性』としてじゃない。


 娘は背が低いし体型が・・・まぁそう言う訳だ。


 娘が惚れた相手だし、行き遅れる位なら嫁がせてやりてぇ所だが、そのお相手の男が娘の事を如何思っているのかも問題になる。

 つーか娘の見た目に・・・と言う事ならそんな変態野郎に娘は絶対に渡さねぇし、二度と近寄りたくなくなる程度には殴らせて貰うぞ?

 まぁその辺は会って話をしてからなんだがなぁ・・・・・


 大きく溜息を吐いて仕事を続けていると母屋の方から叫び声が聞こえて振り向いた。


「おとうさん!おかあさん!助けて!オルト君が!オルト君が死んじゃう!!」


 娘の物騒な叫びに慌てて向かうと娘が泣きながら倒れている男?を揺すっていた。


「ほれ、アリサどけ」


「お、おどうざん・・・オルド君を助げでええぇぇぇ・・・・・」


 泣きじゃくる娘をどけて倒れている男の腕と首筋に手を当て脈をみる・・・・・ちょっと早いし熱を持ってるな・・・・・


 男の上体を起こして首に掛かった帯を外して頭の保護具を脱がして呼吸も確認したが少し早い程度で今直ぐ命に係わるような状態じゃなさそうだと安堵の息を吐いた。


「ミザリー、桶に水汲んで来てくれ」


「ええ、解ったわ」


「アリサ、こいつなら大丈夫だからおめぇはこいつの荷物を家ん中に運んどけ」


「ほ、本当に?!本当に大丈夫なの?!」


「ああ、ただの熱病だ。この糞暑い中、長袖の上着に頭の保護具付けっぱなしでここに来るまで休憩も碌に取らなかったんだろ。水分が足りなくなって身体の中に熱が籠っちまう病気だから風通しのいい木陰に水掛けて寝かせときゃ直ぐに治る」


「・・・・・よ、よかったぁ~」


 男の・・・オルト君だったか、が背負っていた鞄を下ろして上着を脱がし、娘に渡してオルト君を背負って木陰に寝かせ、妻のミザリーが持ってきた桶の水を全身にぶっ掛けてやった。


「・・・金髪に青い目かよ・・・我が娘ながらいい趣味してんぜ・・・・・」


 はぁ・・・まいったねこりゃ・・・・・いらん心配が一つ増えちまったじゃねぇか・・・・・


 大きな溜息を吐いて空になった桶を手に下げ、荷物を家に運び終えた娘がオルト君とやらに駆け寄って行くのを横目にミザリーと共に母屋へと戻った。


「・・・ったく人騒がせな・・・・・」


「そう言わないであげて、あの子が初めて好きになった人なんだから」


「あ~・・・まあ気が付かねぇ訳ねぇか、俺が気付いたくらいだし」


「ふふふ・・・でもちょっと心配だわ~彼凄くモテそうだし、あの子の事選んでくれるかしら?」


「・・・まぁあれだな、女の子は父親似の男を好きになるってのはありゃぁ嘘だな」


 黒髪に茶色の瞳の俺とじゃ似ても似つかねぇ。つーか線が細過ぎる。あんな生っちょろい優男の何処が良いんだかさっぱり解んねぇ。


「妬ける?」


「いや?正直心配しかしてねぇよ」


 如何見ても年下だし、何処から来たのかも知らねぇし何よりあの見た目だ、地元に帰りゃ選り取り見取りなんじゃねぇの?


 取り敢えず昼飯にするかと思ったんだが・・・あいつのために娘が作ったもんを先に食うのもなぁ・・・・・


 仕方がないのでミザリーと話しながら暫く待つ事にした。


 んだが何時まで経っても起きて来やがらねぇ。


 いい加減腹が立って来たんで起こしに行くと、娘が膝枕なんかしてやがって半ば切れ気味に無言で近寄り頭に平手打ちをかましてやった。


「ちょっ!お父さん何するの!」


「うるせぇ!何時まで寝かせてねぇでとっとと起こしやがれ!」


 娘に怒鳴られたが怒鳴り返してやると漸く動き始めた。クソ暢気な野郎だ。


「ぅ・・・・・ぁ・・・あれぇ?・・・・・」


「あ、オルト君!大丈夫?!」


「・・・あぁ・・・アリサさんだ・・・・・」


 目を覚ましたオルト君は娘しか見えていないみたいで、ゆっくりと上げた両手を娘の両頬へと伸ばした。

 おいおい父親の目の前で随分と大胆な奴だな。


「ふえっ?!お、オルト君?!」


「・・・そうだ・・・アリサさん・・・好きです・・・・・」


「へっ?!あっ、わ、わたしも・・・その、好き、です・・・・・」


 はぁ?なんだこれ?一体俺は何を見せられてんだ?


「・・・よかった・・・・・」


 そう言ってオルト君はまた目を閉じた・・・・・


「・・・フッ、フフフフフ・・・寝ぼけてんじゃねぇぞ!こんガキゃあ!!」


 流石にもう限界で、つい拳骨で殴ってしまったが俺は悪くない筈だ。


「あたっ!つ~・・・え?あれ?あっ!アリサさん?!すすす済みません!ってあれ?え~っとここは?」


「取り敢えずあそこの納屋の横で全身洗って来い。その後着替えてから飯にすんぞ、話はそれからだ」


「え?あ、はい」


「お、オルト君・・・その、着替えはバッグの中だよね?私取って来る!」


「あ、済みません」


 背中越しにオルト君と娘のやり取りを聞きながら母屋に向かうと真っ赤な顔をしてにやけた娘が俺を追い越し母屋へと入って行った。


 取り敢えず心配事が一つ減ったんだが・・・溜息しか出てこねぇ・・・・・

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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