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 コン―――


 ―――君


 ―――コンコン


 ―――オルト君


 コンコン―――


「・・・ぅ、ん・・・・・」


 コンコン―――オルト君起きた?


 暗い室内に扉を叩く音と僕を呼ぶ声が聞こえた気がして目を覚ました。


「・・・・・ぁ・・・ぇ?・・・・・だれぇ?」


「あたし、アリサだけど・・・・・」


 寝ぼけ眼を擦りながら誰何の声を上げると声の主が名乗り、その名前を聞いて一瞬で目が覚めた。


「・・・えっ?!あ、アリサさん?!ちょ、ちょっと待って下さい」


 混乱しつつ脱ぎ散らかした服を着てカーテンの閉まった窓を横目に扉へと向かう。

 何時か解らないけど外は真っ暗で、普通に考えたら男性の部屋に女性がやって来る時間じゃないと思うんだけど・・・・・


 いや、まさかアリサさんがそんな事しに来るとか無い・・・よね?


 ケリーさんじゃあるまいし失礼だろと、軽く頭を振って扉を開くとちょっと俯いたアリサさんが居た。


「あ、あのね・・・その・・・・・」


「え、え~っと・・・なにか困った事でもありましたか?」


 何だか恥ずかしそうにしている彼女にドキドキしながら問いかけると彼女は意を決したように顔を上げて口を開いた。


「・・・ひ、日の出!早起きは苦手で昨日起きられなかったって言ってたから・・・そ、その・・・余計なお世話だったかな・・・・・」


 徐々に小さくなって行く彼女の自信無さげな台詞を聞いて僕は首を横に振った。


「いえ、助かりました。多分僕一人じゃ起きられなかったと思いますし。あ、よかったら・・・いや、アリサさんは今日帰るんですもんね、事故を起こしたら拙いですし寝直して下さい」


「え・・・一緒に行っちゃダメ・・・かな?」


「そ、そんな・・・・だ、駄目じゃないですよ。でも本当に大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ~。いつもこの位に起きてますから~」


 そんな悲しそうに上目遣いで可愛くお願いするのは反則だろと言う言葉をなんとか飲み込んで、彼女を心配する言葉を再度掛けると彼女は嬉しそうに何時も同じ時間に起きていると言った。何時も日の出前に起きてるなんて凄いなぁ・・・・・


「じゃ、じゃあ一緒に行きますか」


「はい~」


 彼女と宿を出て海へと向かう。

 船着き場で足を止めた僕を彼女は追い越して更に進み笑顔で振り向くと「この先の砂浜で見る日の出が凄く綺麗なんですよ~」と言った。


 アリサさんのお勧めならと更に先へと進むと、船着き場の先の一段下がった所に一面の砂地が広がる。

 サクサクと音を立てて砂地を少し進んだ所で立ち止まった。


 闇の中に波の音だけが響く。僕達は特に何かを話す事無く東の空を眺めていると徐々に明るくなってきた。


 東の空が朱に染まり始め太陽が顔を出す。


 夜の闇を払い、徐々に空と海が朱と青に変わって行くその様を見て感嘆の息を漏らした。


 海上を僕達に向かって伸びる朱色の光の帯が波に揺れる。


 この感動的な光景を見せてくれた彼女に感謝をと、隣に並ぶ彼女に目をやると、彼女は正面を向いたまま風に揺れる髪をその細く小さな指で耳に掛けていて、その様を見て僕は―――


 綺麗だ―――


 と、つい呟いてしまって慌てて右掌で口を塞ぎ正面に向き直した。


「でしょ?私時々この景色を見に来てるんですよ~」


 よかった・・・気が付いてないみたいだ・・・・・


 顔が赤く染まって行くのを感じ、早くなった鼓動を抑えようと深呼吸をしてから彼女に返事をした。


「・・・え、ええ・・・・・その、有難う御座います。アリサさんのお陰でいい経験が出来ました」


「いいえ~、私も見たかったからついでに誘っただけですから~」


 彼女の気遣いに心が温かくなっていく。

 彼女にとって僕はどんな存在なのだろう。

 そして僕にとって彼女は―――


 だめだ―――


 今の僕では彼女に相応しくない所か負担でしかない。

 だから社会人として、一人前の男になるまでは―――


「どうしたの?」


「あ、いえ、そろそろ戻りましょうか」


「はい~」


 年上であろう彼女に一人前になるまで待っていて欲しいなんて言える訳もなく、不甲斐ない自分に少し落ち込みながら宿へと帰った。


 ケリーさんに疑いの目を向けられながら朝食を摂りアリサさんを見送る。


「それじゃ明日の昼には伺いますので気を付けて帰って下さい」


「うん、用意して待ってるね~」


 走り去るアリサさんの乗った魔導車を見送りお土産を買いに昨日アリサさんに教わったお店へと向かう。

 ツクダニ屋さんで昨日と同じおばさんに色々言われたが商品の説明をして貰って幾つか詰め合わせて貰った物を開拓地の分と二つ買って店を出た。


 小粒の貝や凄く小さな魚も食べた事無いし楽しみだな。


 昼食を入った事の無い店で食べて海岸に向かい、砂浜で遊ぶ子供達を夕方まで眺めてから夕食を食べて宿に戻る。

 ケリーさんに話し掛けられたけど適当に相槌を打って部屋に入り、ベッドに転がって悶々としているうちに眠っていて気が付いたら朝だった。

 食堂で朝食を摂りケリーさんやおかみさん達に「また来て下さい」と言われて「長期休みが取れたら」と曖昧に濁して答えて駐輪場へ。

 リサの荷台に荷物を括り付けて出発し、逸る気持ちを抑えて安全運転で『モルクレイ牧場』へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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