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アリサさんと他愛のない話をしながら昼食を摂った後、町の案内をして貰える事になった。
「でも、いいんですか?牧場に戻らなくて」
「大丈夫ですよ~。ここに来るのに半日かかるじゃないですか~。今から戻っても牧場に着くのは夜中になりますし~。だからいつも一泊して翌日に戻る事にしてるんですよ~」
と言う訳なので遠慮なく案内して貰う事にした。
ケリーさんのジト目に見送られて宿屋を出てお土産になりそうなものを売っている店を見て回る事に。
「王都だと魚の干物位しか見た事無いんですよ。正直あまり美味しいと思えた事も無いんで、生の魚貝類を食べた時の衝撃は凄い物でした」
「ん~、日持ちする海産物だとどうしても干物とか燻製になっちゃうんですよね~」
「やっぱりそうなっちゃいますよね」
「むふふ・・・でも実はそれだけじゃないんですよ~」
「えっ?!他にもあるんですか?!」
「と言う訳で私がお勧めするお店はこちら、ツクダニ屋さんになります!」
両手を広げて店の前に立つアリサさん・・・いや、ほんとに子供が親にドヤ顔で自慢してるようにしか見えないんですけど・・・・・
「じゃ、じゃあ入りますか・・・・・」
「はい~」
何て返したら良いか解らなくて取り敢えず中に入る事にして誤魔化した。
「あら、アリサちゃんいらっしゃい」
「おばさん、今日は人を連れて来ましたよ~」
「はじめまして、僕はオルトと―――」
「まあまあ!アリサちゃんが男の人を連れて来る日が来るなんて明日は嵐にでもなるんじゃないかい?!」
「違うから!そう言うのじゃないから!」
てな訳でまた勘違いされて説明したんだけど照れなくてもいいとかそう言う事にしておくとか言われて聞く耳を持ってくれそうも無かったので並んでいる商品の説明だけして貰って店を出た。
「ごめんね~おばさん変に興奮して聞いてくれなくて~」
「いえ、アリサさんの事を大事に思ってるって事ですから」
で、次に行ったカンブツ屋さんでも同じような対応されて引き攣った笑みで店を出る事になった。
「ごめん・・・・・」
「いえ・・・・・」
最早特徴的な語尾すら出なくなったアリサさんに何と声を掛けた物かと頭を捻りつつ町中を歩いた。
だけど僕は母以外の女性とあまり話をした事が無くて何も思い付かなくて、唯々何も言わずに俯いた彼女を連れて海岸へと向かった。
「・・・海って不思議ですよね・・・しょっぱいし、ずっと動いてるし・・・でも、なんか見ていると落ち着くんですよね」
「うん・・・・・」
「僕はもう一日滞在する予定なんですけど、明日こんな風に海岸沿いを歩いてみるつもりだったんです」
「・・・ごめん・・・・・私みたいな見た目の子とじゃ―――」
「僕は子供の頃に初めて見た魔導二輪の事しか頭に無くて今まで女性と仲良くした事なんて無かったんです。こんなに沢山話しをしたのはアリサさんが初めてなんですよ」
なんか彼女は負の感情に支配されてる感じがして、彼女の言葉を遮って自分の事を話し続ける事にした。
「へっ?!」
「学園で話し掛けられても最低限の受け答えしかした事無くて、友人からは『変人』扱いされてます」
「へ、へ~・・・・・」
「十三歳で商業組合に登録して配達の仕事をしてお金を貯めてあの日見た魔導二輪をようやくこの間手に入れてですね、学園生活最後の夏休みの記念にこの旅に出ました。友人には『何で四輪じゃないんだよ』なんて言われたんですよ?僕の勝手じゃないですか」
「そ、そうね・・・・・」
「まぁそんな訳でこんな時に女性になんて言ったらいいかとかさっぱりなんですけど、今の所アリサさんは僕にとってこの旅での『一番の思い出』なんです。だからその~・・・自分を卑下するような事を言わないで欲しい・・・かな?ほんと上手い事言えなくてすみません」
「う、ううん・・・あ、ありがとぅ・・・・・」
語尾は戻らなかったけど少し頬が緩んでいるのが見えて安心した。
「・・・少し早いですけど夕食もご一緒して頂けませんか?お嬢様」
「お、おじょ・・・揶揄わないで下さい!」
「いえいえ、あんなに素晴らしい牧場の跡取りなんですから僕からしたら十分お嬢様ですよ」
「止めて!恥ずかしいからほんと止めて!」
「それ!それですよ!むきになって否定するから勘違いされちゃうんだと僕は思うんですよ」
「え?だって否定しないで事実だって思われたらどうするのよ」
「そこは適当に軽く流して否定しておけば後日指摘されても『そっちが勘違いしただけでしょ』って言い返せるじゃないですか」
「・・・そ、そうかも」
「ケリーさんに言われた時は軽く流してたじゃないですか、あれでいいんですよ、あれで」
「あ・・・確かにそうかも・・・これからはそうしてみますね~」
すっかり語尾の戻ったアリサさんと顔を見合わせ笑みを零し、夕食を食べに商店街へと向かった。
機嫌が直ってくれたのは良かったけど、彼女が出来たらこんなご機嫌取りみたいな事しなきゃいけないのかと心の中で溜息を吐いた。
ここまで読んで頂き有難う御座います。




