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 ゲベルを出発して一時間位進んだ所にあった牧場の前に大きな看板が立っていて通り過ぎながら書かれている文字を読んで慌てて引き返した。


『先着二十名限定ミルクセーキ販売中!』


 ミルクセーキが何かは解らなかったが先着二十名限定と聞いて買わない訳にはいかないとスレイプニールで売店の前に乗り付けて店員の女の子に声を掛けた。


「済みません!ミルクセーキってまだありますか?!」


「え、ええ、まだ大丈夫ですよ~」


「よかった~、ひとつお願いします」


「はい、ミルクセーキおひとつですね~」


 スレイプニールを売店の横に止めてヘルメットを脱いで代金を払って受け取ったカップの中を覗き込んだ。


「え~っと、これって牛乳じゃないんですか?」


 カップの中身は牛乳にしか見えない白い液体で、店員さんにミルクセーキって牛乳の事ですかとの意味を込めて聞いてみた。


「ふふふふふ・・・お客さん初めてですね?ミルクセーキって言うのは牛乳に生卵と砂糖を入れて混ぜた物なんですよ~」


「ええっ?!生卵ぉ?!だ、大丈夫なんですか?生卵なんて食べたら食中毒になっちゃうんじゃないですか?!」


「やだなぁお客さん、そんな危険な物を大々的に看板まで立てて売ってる訳ないじゃないですか~。牛乳は搾りたて、卵も今朝産まれたてでそのまま食べられる程新鮮なんですよ~」


 確かに店員さんの言う通りゲベルから左程離れていない街道沿いでそんなものを堂々と売っている訳がない・・・んだけど・・・・・生卵かぁ・・・・・


「・・・い、いただきます・・・・・美味っ!何だこれ?!美味すぎだろ!!」


 覚悟を決めてカップの口を付けて目を瞑りながら一口含んで目を見開き飲み込んで余りの美味しさにカップを指さし大声を上げた。


「ふふふ・・・でしょ?うちの牛や鶏のエサは独自の配合飼料ですからね~、肉だけじゃなく卵も乳も他とは一味違うんですよ~」


「おお~・・・あの、僕王都から来たんです。帰りにお土産を買って帰りたいんですけど日持ちする物って売ってますか?」


「むふふふふ・・・勿論ありますよ~。チーズやお肉の燻製なんかどうですか?」


「チーズがいいかな?え~っと今から漁師町に行って二日は見て回りたいから・・・四日!いや、三日から五日後にまた来ますから20㎝位のが有ったら取っておいて下さい!」


 余りの美味しさに帰りにチーズをお土産に買う事に決めた。

 この牛乳で作ったチーズは相当期待出来そうだよね。


「在庫は沢山ありますから大丈夫ですよ~」


「それじゃ帰りに寄るんで宜しくお願いします。ご馳走様でした」


「はい~、またのお越しをお待ちしてま~す」


 お土産が一つ決まったな。後は漁港でいいお土産が見つかるといいなと上機嫌でスレイプニールに跨り南へと向かった。


*


*


 ツォアルに帰って来た俺達は真っ先に現ゴタード商会会長の所へ向かった。


「帰ったぜ、デクス」

「ただいま~」


 アインの息子のデクスは作業台に向かったまま手を止める事無く返事を返した。


「お帰り二人共。監査の方はどうだった?」


「そっちの方は問題無しだ。が、まぁこいつを読んでくれ」


 俺は懐からデクスにアルバハンから受け取った報告書を出して手渡した。


「はぁ・・・報告書ねぇ・・・・・こりゃまためんどくさい事になりそうだな」


「つー訳でお前の出番だ。例の計画前倒しすんぞ」


 嫌そうな顔をして作業の手を止めて報告書を読んだデクスに指示を出すとデクスは更に嫌そうな顔をした。


「やれやれ、のんびり出来たのはたった数年かよ・・・・・」


「よく言うぜ、お前だって楽しみにしてたじゃねぇか。それに、最近作ってたミニチュアだってこのためのもんだろ?」

「そうよ、売り物でもないのに十分の一の四気筒魔導内燃機関作るとかあんたもよくやるわね」


「いや、あんたが部屋に飾るアメリカンのバイクが欲しいって―――」

「別に置物なんだから実物と同じように動かなくてもいいのよ?」


「ほら、俺は職人だから腕を鈍らせる訳にはいかないし、小さく細かくなればなる程腕も上がるんだから一石二鳥だろ?」


「ほんと呆れるわ」


 こいつの職人としての腕は世界一だと俺は信じている。実際こいつが居なかったら魔導車の実用化は出来なかっただろう。


「まぁまぁアマンダ、そう言う事にしといてやれよ。デクス、開拓地の方も急がせるから準備出来次第お前も移動して貰うぞ」


「はいよ」


 なんだかんだ言いながらも作業台の上を片し始めたデクスの頬が吊り上がっていたのを俺は見逃さなかった。


「後、そろそろ跡取りの事も考えろよ」


「うへぇ・・・めんどくせぇ・・・・・」


 こいつは商会長なのに経営に関しては全て人任せで『物作り』にしか興味がない変人だ。

 転生前の俺の科学知識を魔導具として再現してきた天才だが、世界や環境が違っていたら間違いなく『マッドサイエンティスト』と呼ばれていただろう。


 俺はデクスに新しい『餌』を与えるためにアマンダを連れて南の開拓地へと向かった。

ここまで読んで頂き有難う御座います。

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