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アバタ領交易都市ゲベル。
二重の防壁に二重の水堀には吊り橋が掛かり防壁上には遠距離狙撃用の魔導具が並ぶ一見要塞にしか見えない街。
周囲は広範囲が農地に囲まれ、主に東のダビラ王国と北東のマハン王国との交易が盛んだが過去にダビラ王国から攻め込まれ撃退した経歴を持つ。
領民からしたら心強い事この上ない強固な街だ。
堀に掛かった吊り橋を越えて一つ目の門を潜ると直ぐに二つ目の防壁と門があり、防壁と防壁の間には衛兵の詰め所や倉庫らしき建物や練兵場が見えた。
衛士の数もだけど確実に防衛力は王都を越えてるな。
そして二つ目の門を抜けた僕が目にしたのは巨大な倉庫群だった。
その倉庫群に記されている『ゴタード商会』の文字は一つや二つではなく、目にした倉庫の全てに記されていた。
倉庫群に圧倒されながら先へと、町の中心へと向かって行く。
噴水のある中央広場とそれを取り囲む商店や宿泊施設とここだけは普通の街のような風景で安堵の息を吐いた。
二泊で宿を取り夕食を食べて就寝。
明日は一日かけてこの巨大な街を見て回るつもりだ。
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俺達はマモン領都に入るとその足で領主邸へと向かった。
「ようジェスタ、頼みが有んだけどいいか?」
「・・・私に拒否権が有るのですか?」
「ねぇよ、一応聞いただけだ。頼みたいのは金属類の増産だ、金に糸目を付けずにじゃんじゃん作って増産分をツォアルに送れ」
「解りました・・・その、アマンダ様、警戒されるのは解りますがせめて睨むのは止めて頂けませんでしょうか」
正直アマンダをここに連れて来るのは避けたかったが、こいつ俺の傍から離れねぇんだよ。ちょっと姿が見えないだけでも怒るし・・・・・
「・・・・・私はねぇ、あんた達マモン一族を決して許す事は無いの。これは以前にも言ったけど『僅かでも裏切るような行動をした時はこの私が貴方達一族を地の果てまででも追いかけて直接この手で切り刻む』わ」
「解っております。父や祖父から『我々は許されざる罪を犯した』と聞いておりますから」
「いいこと、私はニール程優しくないわ。言葉遣いや仕草が僅かでも気に入らなければ容赦はしない。貴方達がこうして要職についていられる意味をよく考えておく事ね」
「はい。良く考え心に刻んでおきます」
「はぁ、アマンダ、何度も言ってるけど―――」
「解ってるわよ。でも、貴方の忠告を無視した奴の子孫なんて何代経っても許せないし信用も出来ないわ」
こいつ俺の眷属だった時の事を引き摺ってると言うか、俺が一番上じゃないと気が済まないんだよなぁ。
「はぁ、済まんなジェスタ」
「いえ、増産の件は早急に取り掛かります」
「おう、帰るぞアマンダ」
「は~い」
なんかこの間の『大陸統一』も本気で言ってる気がするんだよなぁ・・・・・
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日の出と共に目を覚まし、朝食を摂って街の散策に繰り出した。
大型の魔導車が行き交う大通りを中央広場から東に向かって歩いて行くと直ぐに商店が途切れて倉庫街へと変わる。
見える範囲全ての倉庫がゴタード商会の看板を掲げている様は圧巻で、その一員になる僕は少し誇らしい気持ちになった。
だけど大型の魔導車が列をなして僕の横を通り過ぎた時ふと思った。
一商会が国内の経済をほぼ掌握している現状をアンモン様や国王陛下は如何考えているのだろうかと。
先の戦争で多大な貢献をした事は知っているが、それなら貴族に推挙するとか、広過ぎるアバタ領を分割して代官にとか・・・・・あったんだろうな、そう言う話が。
だけどそうしなかった理由がある筈だ。
本人が断ったとしても陛下なら強制も出来た筈なのにそうしなかった理由か・・・・・
当時から現在に至るまでゴタード会長の意に背く事が国益を損なうと判断されたんだろうけど・・・・・
なんだか釈然としないんだよなぁ。
現在のゴタード商会を見れば解からなくも無いけど、昔は?戦前は如何だった?
創業年数は解らないけど建国に携わったと言う話は歴史の授業でも聞いた事が無いし、アバタ領自体が建国時は別の国だったと記憶している。
じゃあアバタ領として編入される前は如何だったのかと言うと『解らない』だ。
教科書に出て来るゴタード商会は戦争に貢献した事位で、当時を知っている人が居るとしたらエルフ位だろうし。
「う~ん・・・知った所で如何する気も無いって言うか如何する事も出来ないんだけど、なんだかなぁ・・・・・」
悶々としながら大通りを南回りで街を一周して宿へと帰り夕食を摂ってからお風呂に入って眠りについた。
あ、お昼に食べた魚貝のスープはとても美味しかったです。
干物以外の海産物って初めて食べたけど本当に美味しくてお土産に魚も買って帰りたくなったけど、日持ちしないよなぁ・・・・・
ここまで読んで頂き有難う御座いました。




