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01

 昔々大陸中を駆け回り商いをしていた旅商人の男女が居りました。

 二人は特徴的な青い上下の衣服を纏い、見た事の無い赤い魔導具の乗り物で町から町へと移動し人々の目を引いていました。

 或る日二人の前に天空神の眷属の竜が現れて女を攫って行きました。

 二人はその服装と魔導具で目立ち過ぎたのです。

 男は女を取り戻すために眷属の竜を追いかけ、遥か上空に聳える天空城へ消えた眷属に怒りの咆哮を上げました。


 すると奇跡が起こったのです。


 魔導具の乗り物がその形を恐ろしい獣の姿に変えて天空城へと男を乗せて空を駆け出したのです。

 天空城へと入った男と獣は押し寄せる眷属達を打倒し、最深部で天空神と相対しました。

 天空神はその手に持つ神剣から雷を放ち、先ずは獣を攻撃しました。

 獣は力を振り絞り、天空神をも超える速度で雷を躱し続け、天空神に一撃を与えて退かせると力尽き、その姿は光の粒となって消えてしまいました。

 男は獣が天空神と戦っていた隙に女を救い出し、手を取り合って天空城から脱出していました。


 しかし城から出た二人は足を止めます。


 遥か上空にある天空城から地上へと戻るための手段が無かったのです。

 二人の背後に天空神が迫り、勝ち誇った笑みで神剣を振り上げた時、再び奇跡が起こりました。

 男が天空神と同じ大きさへと変化し、その手にはこれまた巨大な鎌が握られていたのです。

 男と天空神は数度の打ち合いの末、天空神は男が放った全力の一撃で神剣と共に大鎌で両断され消え去りました。

 天空神を倒した男は神へと至り、天空城を破壊すると女と共に何時の間にか傍らにあった赤い魔導具の乗り物に乗って何処かへと立ち去りました。


*


*


*


「と、まぁこれが一般的に天神教衰退の原因と言われている物語な訳だが、殆どの神学者はこれを信じてはいない。理由は~・・・まぁ言わなくても解かるか」


 僕は学園生活最後の夏休み前の授業を上の空で受けていた。


 僕が初めて魔導二輪を目にしたのは三歳か四歳の頃だった。

 母に手を引かれ、買い物へと行く途中で見た真っ赤な魔導二輪。

 火と風の混合魔法による魔導内燃機関より発せられる乾いた破裂音に心を打たれ、その姿が見えなくなるまで足を止めたために母に叱られた。

 当時はまだまだ高価な魔導具で一般庶民が手に出来るような物ではなかったし、ここ王都でも滅多に見かける事すらなかったんだ。

 しかし数年後に販売された魔導四輪の利便性により生産量は年々増加し、それと共に価格も下がって行った。

 元々魔導二輪は魔導四輪の試作品とも言われているけど、そんな噂話は僕は信じていない。

 まぁ魔導四輪の人気と需要が高くなり過ぎたせいで魔導二輪を生産している商会は減ってしまったけど、僕のような学生でも頑張れば手に入れられるようになったのは有難い話だ。


「なあ、何で二輪なんだよ。しかも最初期の型とか意味解んねぇし。高くても四輪ならその分人や物も多く運べるし、転ばない分安全じゃん」


「別にいいだろ、理屈じゃないんだよ」


 友人の言いたい事はよく解る。でも理屈じゃないんだ。魔導四輪の資格も持ってるけど、それでも初めて自分で稼いだお金で買うのはあの日見た真っ赤な魔導二輪だって決めていた。


「ほんと変わってんなぁお前」


「ほっとけ。そんじゃな~」


「お~」


 授業を終えて友人と別れてから足早に自宅へと向かう。

 今日は全く授業に身が入らなかったがそんな事はどうでもよかった。


 自宅が近くなるにつれて頬が緩み鼓動が早くなる。


 僕は逸る気持ちを抑え切れずに駆け出した。


 自宅の前に止められた大型魔導四輪の後部に書かれたゴタード商会の文字が目に入り、幼かったあの日の記憶が蘇る。


 大型魔導四輪の荷台が開き、中から商会員に押されて出て来た物が見えて目尻に涙が浮かんだ。


 この日のために商業組合に登録をして街中で配達の仕事をしてお金を貯めて二輪と四輪の資格も取った。


 初めて目にしたあの日から十年以上の時を経て、念願の、僕の、僕だけの真っ赤な魔導二輪が自宅の塀の中へと運ばれて行く。


 僕は玄関先で息を整えながら配送してくれた商会員さんに頭を下げて見送った。


 受け取りのサインをしてくれた母から始動具を受け取り、握りしめながら僕の物になった魔導二輪に目を奪われ母に呆れられた。


「乗るのは制服を着替えて保護具を付けてからよ」


 そう言って家に入る母に「うん」と答えたけど心ここに在らずと言った感じで、日が傾き薄暗くなるまで眺めていて母に叱られたのはいい思い出・・・になる日が来るといいな。


 魔導二輪を押して車庫へと向かい、父の魔導四輪の隣に並べてほくそ笑んだ。


 ようこそ我が家へ、RS-01『スレイプニール』これから宜しくな!

ここまで読んで頂き有難う御座います

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