すぐ自爆するのに全然死なない師匠、もうさっさと死んでくれ……
伝説の格闘家と名高い、流派自爆粉砕拳の使い手【マスターエクスプロージョン】に弟子入りした俺は、日々心身ともに鍛えていた。
最高の師匠のもとで師事させてもらい、すごく恵まれた生活を送っている自負はある。
ただ、少しだけ……いや、ものすごく腹が立つ、マジでやめて欲しい師匠の狂行がある。
それは、すぐに自爆することだ。
「見ていろ、これが師匠最後の爆発じゃッ!」
「師匠ーーっ!」
今世紀最大の自爆技を放ち、辺り周辺を吹き飛ばした師匠は、インフレットドラゴンと相打ちになって消えていく。
荒野に吹き上がった粉塵が消え去るころには師匠の姿はなかった。次第に焦燥感が湧き上がってくる。
だが、俺には悲しみに暮れる時間はない。
ただ進み、修行を果たすんだ。
――かくして、命のバトンを受け継いで、修行を完遂した俺は、家代わりの洞窟に戻ってきていた。
「戻ってきたか、シェイン」
「師匠生きてらっしゃったんですね。嬉しゅうございます」
いつも通り、しれっと帰ってきてる師匠に、偽りの涙を流す。
こうしないと師匠納得してくれないから。
満面の笑みを浮かべる師匠は、食卓に料理を次々と並べ始め、イスに座るように促してきた。
このように師匠としては完璧だから、弟子を辞めるには惜しい。
それでも言わせてくれ、自爆するのはハラハラするからやめろ、本当に!
そして、終始イライラ、ムカムカしながら一日が終わる。
翌日、面持ちが暗い師匠が朝早くから精神を統一させていた。いつもの快活な性格な師匠からは想像ができない。
その雰囲気から話しかけづらい空気感が漂う。
恐る恐る話しかけると……
「し、師匠……?」
「――ついて来い」
そう一言、言い述べると、黙々と修行場へ歩いていく師匠。その背中は悲しみに溢れていた。
道中、話しかけるが、無視の一点張り。
どうやら師匠は何か覚悟を決めたようだ。
洞窟から少し歩いた先にある修行場に仁王立ちする師匠は、大きく見えた。
「お前に流派自爆粉砕拳の最終奥義を授ける」
「ッ!? ついに最終奥義を――」
「――しかし! これを伝授した時、私は死んでしまうだろう」
「……」
心の中でどうせひょっこりと帰ってくるくせにと甘えたことを考えていると……
「今までお前には心配をかけ続けていたな」
「?」
「幾度と繰り返した自爆技は実は最終奥義、その未完成技だったのだ。そして、今からお前に見せるのは、完成した技」
「まさか! 最終奥義とは!」
「その通り! 最終奥義は弟子に伝授する、その瞬間、完成し、一瞬の煌めきを見せる技なのだ!」
未完であったがゆえに、今まで師匠は死ななかったのか。つまり、完成してしまえば……
「やめてください、師匠ッーー!」
「ちゃんと見ておれ、これが完成した最終奥義――エクスプロージョンじゃッ!」
俺は師匠の命と引き換えに最強の技を受け継いだ。しかし、それ以上に大切な物を失った。
洞窟に帰ってきても師匠の姿はなく、一人での食事。憂鬱で長い一日だ。それでも毎日のルーティーンで勝手に動く体。疲れた心身を休ませるように眠りにつき、修行場に足を運んでいた。
そこには一つの人影が仁王立ちで映っていた。
すぐ自爆するのに全然死なない師匠、もうさっさと死んでくれ……。




