③
冒険者になって最初の三ヶ月は実習期間に入る。この間スキルの向上と武器の扱い、ダンジョン内の戦い方やモンスターの対処方法を徹底的に叩き込まれる。だが結局最終日まで俺だけスキルが発動することはなく。覚えたのと言えば、モンスターの対象方法ぐらいなものだ。
それならば武器を達人クラスまで極めればなんとかなると考えていたが、まさかの武器を使えるのは手の甲と同じマークだけと知り、さらに俺を追い詰めて来る。そんなの関係なく武器を使えばいいと武器に触れた瞬間、武器が拒否反応を見せ、手から自動的に離れていく。冒険者が扱う武器は普通の武器とは違い。ダンジョン内で取れる資源を武器に加工したもので、鋭さや耐久性に優れ、魔導士の威力を上げるにも一役買っている。
それなのに俺には何一つ戦う術が残されていない。果たしてダンジョンに行く意味があるのか?いや、ないだろう。ただでさえあっちは殺意むき出しで来るのに、俺だけ装備無しの丸裸。チームの役に立てるスキルならばやってる感を演じて誤魔化すつもりだったのに、それすらも叶わない。
「だいぶ、困ってるようだなぁ」
どこから聞こえる見知らぬ声。左右を確認するが、誰も居ない。
「そっちじゃない。おまえの右手だ」
言われた通り右手を確認すると、手のひらに顔が浮き出てきた。俺は思わず声を上げたもんだから、周囲の実習生達が俺の方を向く。これはまずいと思い、トイレに直ぐに逃げ込んだ。
俺は便座に座って一呼吸置いてから、もう一度右手を確認すると「騒がしいな」と、また話しかけてきた。
俺の頭はパニック状態で、あまりのストレスで幻覚を見てるのかと疑ったが、色々試しているうちにどうやら幻覚ではないようだ。
自分の右手に話しかけているのも変だが、まず最初に聞くことと言えば、こいつが誰なのか聞く必要がある。
「俺の名はサルビル。お前を手助けしてやる、妖精さんだよ」
どうやら話を聞く限り、スキルの解放を手伝ってくれるのはいいが、それにしても遅い。明日からもうダンジョンに行くって言うのに、何をしてたんだと言いたくもなるが、ほんの少しだけでも不安が取り除けたから、今は良しとするか。




