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この世界で最も罪深い存在

作者: 小雨川蛙

 

 天使が死んだ人間を連れてきた。

 神様は穏やかに微笑みながら尋ねる。


「君は生前何をしていたのかね?」


 神様には嘘は通じない。

 そして、嘘を言う必要もない。

 故に彼は穏やかに答えた。


「私は生前、医者をしていました」


 すると神様の顔が微かに歪んだ。

 しかし、彼はそれに気づかないまま言った。


「私は多くの人を傷や病から救いました」


 彼の表情は自分が良い事をしたという自負に満ちていた。

 事実、彼は多くの人に感謝され、そして惜しまれながら死んだのだ。

 天国に行けるというのを彼は確信していたほどだった。


 しかし、彼の背後で天使が暗い顔になる。

 そして、彼の目の前で神様が憤怒の形相になる。


「罪を認めたことに免じて貴様を煉獄へ送る。途方もない苦しみがあろうが、貴様は必ず救われる」


 冷たく言い放たれた言葉に彼は呆然として申し開きをしようとしたが、それよりも早く神様は彼を煉獄送りにした。


 悲痛な叫びを聞きながら天使はため息をついた。

 その様子を見て神様もまた嘆息する。


「神様がつくった完璧な存在である人間……それを何であんなにも改悪してしまうのでしょうか」


 嘆く天使を神様は優しく抱きしめる。

 そう。

 神様は人間を完璧な存在として設計していた。

 外見や能力はもちろん。

 いつ生まれ、いつ死ぬかに至るまで。

 それを医者という人種は勝手に病気や怪我を治すことで勝手に変えてしまうのだ。


「仕方あるまい。人間は愚かな存在なのだ」


 そう言ってさめざめと泣く神様と天使を、煉獄や地獄に棲まう悪魔が眺めて言った。


「俺も悪には自信があるけど……やっぱり、ホンモノは違うわ」


 悪魔が何故、自信を無くしたのか。

 幸いなことに神様も天使も分からなかった。

 分かるはずもなかった。

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― 新着の感想 ―
 聖書でも圧倒的に被害人数に差が有りましたからね神と悪魔。  まあ教えに背く者はヒト扱いしない社会だから仕方ないか。
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