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余命6千億8千万字。


「大変申し訳ないのですが、あなたの本当の余命は残り6千億8千万字です」


「……はい?」



 医者の言葉におれは耳を疑った。

 絶対の絶対になんらかの間違いだと思った。



「あのう……この前は余命3千億5千万字って言ってた気がするんですけど、なんか増えていません……?」


「はい。症状が悪化しているのか、3千億3千万字増えました。文量が680億万字に到達しない限り、あなたは死にません」


「ええっ……。それって余命って言えますぅ?」


「微妙なところです」



 呆れるおれを相手にせず、医者は無機質にカルテをめくっている。

 他人事だからって。



「……はぁ、不死身って辛いですね。ヴァンパイアにでもなった気分ですよ」


「ヴァンパイアは太陽の光を浴びたら消滅します。あなたとは違います」


「チッ」



 無駄に文量を積み重ねようとしたが、中身のない会話にしかならなかった。

 もはや今が何文字なのか計算すらもしていない。



「680億万字なんて無理ですよ」


「はい」


「分業制とかだとダメなんですか?」


「仮に200人の作家が毎日1万字執筆しても93年かかります」


「えっ、わりと良い数字では……?」


「現実的なことを考えたら不可能に近いです。 あなたの様な味気のない主人公を題材にして、何年も何十年もモチベーションを高く保ちながら物語を書き続けてくれる作家がそう何人もいると思いますか」


「チッ」



 ちょうど70歳前後くらいで死ねないものだろうか。



「とりあえず……伸ばし棒を使ったり、記号を用いたり、無駄な会話や描写を延々と繰り返して物語の体裁を整えて文量を増やせばいいんでしょ。……あ、大事なことを忘れていた! AIだ!! AIを使用すれば容易く到達可能では!?」


「ダメですよ、この病気は反AIなんで」


「反AIなんだ……」


「もういいでしょうか。あなたにはそれを考える膨大な時間があるはずです。私には他の患者の治療もありますので。そろそろ、お引き取りを」


「そんな!薄情者ッ……!!」


「あなたと違って、私には時間がありません。一人でも多くの患者の命を救いたいんです。……この、命が尽きる前に」



 ゴホッ……ゴホッ……と医者が血を吐いた。

 どうやらこの人の命は残り僅からしい。

 どうせなら寿命を分けてあげたいと思った。



「だ、大丈夫ですか……? ちなみにあなたの残りの余命は?」



 医者は天を仰ぎながら、静かに微笑んだ。




「私の余命は……残り8文字です」




「ダメじゃーーん」




 医者が死んだ。

 彼をベッドに寝かせて、おれは帰宅した。

テーマ『余命3千億5千万字』

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