はじめての魔法講座
ついに、この日が来た!
待ちに待ったこの日が来ましたよ!
6歳の誕生日から数日、今日は初めての魔法の授業の日だ。
朝からうきうきワクワクが止まらない。朝も早くに目が覚めて、抑えきれない興奮に庭を走り回り、朝ご飯も早々に済ませた。準備も万端。
もうすぐ先生が来るからと、私が玄関の前を行ったり来たりしていたら弟のルイスが後ろについてよちよち歩いていた。お姉ちゃんのマネがしたいお年頃かな、かわいいね。
玄関ベルが鳴った。
使用人さんが扉を開けると、先日お父様に紹介された私の魔法の先生が立っていた。
「こんにちは、ユーリさん」
「マルス先生、こんにちは」
THE魔法使いという感じの黒いローブを着た爽やか青年、マルス先生がにっこりと笑う。
水色の髪が爽やかさを倍増させてる感じがする。好青年ってこういう人のことを言うんだろう。
童顔で年齢よりも若く見える彼は、実際に若い。23歳だって言ってた。20代の魔法使いにとって本業だけでなく家庭教師をすることは収入と経験値を得るのにちょうどいい仕事だそうだ。前世での大学生みたいな感じかな。
「ではさっそく、中庭で授業を始めましょうか」
「はい!」
私達は中庭へと移動した。
「では、まず魔法について説明しますね」
「はい!」
「魔法には『初級魔法』から順に『中級魔法』、『上級魔法』、『特級魔法』があります。
『初級魔法』は比較的誰でも使える魔法、生活魔法とも言いますね。小さな火を起こしたり、飲水を出したり、ちょっとした生活に便利な魔法、というところです。
『中級魔法』以上は適性が必要になってきます。多くの貴族は元来魔法使いの血筋であることが多いので、貴族であれば使えることが多い、というのが『中級魔法』です。
それ以上、『上級』や『特級』はそれ以上に適性が必要となり、『特級』ともなると使える人も一握りとなります」
つまり努力でどうこうできるものよりも生まれながらの体質のほうが優位、ということかな。
でも才能を伸ばすことも可能みたいだ。
この世界には魔法がある。
しかし生まれながらにして使える人とそうでない人がいる。割合としては半分ずつくらい。だが『使える人』の多くは貴族だ。魔力は遺伝するらしく、魔法が使える者同士が血を繋いでいった結果、割合の多くが貴族に偏っている。もちろん魔法だけが貴族の貴族たる所以ではない……らしい。魔法が使えない貴族もいるからね。
魔法が使える平民の数は少ないので、お父様が作っている魔道具が普及する。科学の代わりに便利な魔法が組み込まれた魔道具が魔法を使えない人たちの生活を支えているんだって。
「また、魔法には属性があります。火、水、土、風……派生として氷や雷。人によって得意、不得意があることが多いですね。なので全体をくまなくというよりは、得意なものを伸ばすことを目標にしましょう」
「はーい」
「ということで、まずはユーリさんの適性を見るところから始めましょう」
私の適性魔法かぁ。
魔法が使える世界っていうだけで楽しみだったのに、これでなんか特別な魔法とか使えたらすっごく夢がある。チートってやつ?そんなのあったらもう騎士様より冒険者とか目指してみたくなっちゃうな。
マルス先生に言われて私は先生の手を取った。
魔法が使える人が対象者の体内にある魔力の傾向を見るのが一般的な確認方法なんだって。
繋いだ手からもやもやっとしたものが伝わってくる。ちょっとくすぐったい。
「ふむふむ……そうですね。ユーリさんの適性は、風ですね。多少火や水にも適性が見られますが、風が圧倒的に多いようです」
「風魔法……」
ほほぅ。風ですな。特別な何かではなかったけど、これはこれで面白い。
どうやって使おうかなぁ。これからの訓練次第かな。
「次に、魔力の使い方をお教えしますね」
「はーい!」
身体の中にある魔力を感じるのはなかなか難しかった。もやもやーっとした何かを掴む感覚がどうにもうまくいかなくて、掴んだと思ったら手からこぼれ落ちる。砂や水を掴んでるみたいな感じだ。
そうやって何度も掬い上げようと躍起になっているうちに、初めての魔法の授業は終わった。
一人で魔法を放出することは危険が伴うからと魔力を感じ取ることを宿題に出され、私は暇を見つけてはもやもやっとした魔力を掴む日々を送ることになった。