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まだいた攻略対象その3


 せっかく買ってきたネックレスはフレイヤ様に渡すことができないまま私の部屋にて待機しています。


 いや、違うんだ。言い訳をさせてくれ。

 渡そうと思ったんだよ? 渡すつもりだったんだ。

 でもね。寮に帰ったところでフレイヤ様に凍らされまして。


 あ、天岩戸終わったんだぁなんて呑気にしていた自分を殴りたい。


 「フレイヤ様」

 「……どこに行っていたの?」


 自分の部屋の前にいたフレイヤ様に私はついルンルン気分で近づいた。

 だから気づくのが遅れたんだなって後から思う。それも言い訳なんだけど。

 何も考えてなかったんだよねぇ。


 「街に行ってきました! あ、アメリアに会ったのでアメリアの家に行ってきました!」


 ノアに「馬鹿なの」って後から言われた。

 なんで「アメリア」って出すんだって。え、出しちゃいけないって知らなかったからしょうがなくない?

 いつからNGワードになったの?


 そこから何が起こったのか私にはわからない。ちょっと意識飛んじゃっててね。

 気づいたらノアに解凍されてたよ。凍らされても大したダメージにならないのがゲームっぽいなとちょっと感心してしまった。私の魔法防御力高いのかな。


 で、事の顛末を説明してさっきの「馬鹿なの」をもらったんだけど。


 「フレイヤ様ってそんなにアメリアのこと嫌いなのかな?」

 「いや、あんたのせいでしょ」

 「え? 私がアメリアと仲いいとだめなの? あ、貴族とか平民とかってやつ?」

 「……なんで何もわかんないかなぁ、このにぶちん」

 「?」

 「私からヒント出すわけにもいかないから、自分で考えなさい」


 結局何もわからなかった。

 

 

 そんなこんなでこの一週間ほど。

 フレイヤ様のご機嫌斜めが直らない。

 ノアには放っておきなさい、なんて言われたし。自然と直るのを待つしかないのかなぁ。


 「この……!」


 振り下ろされた剣を避け、地面にたどり着く前に斬り上げられる。さっきから同じような剣筋だし考え事をしながらも右に左に避けることは忘れない。反射的に身体が動く。

 大振りだから避けるのも楽だ。わかりやすいからね。


 「ちょこまかと!」


 ふわり、と跳び上がり相手の腕から駆け上り、肩に右足を乗せた。そこからまた跳躍して襲ってきた剣を斬りつける。

 金属同士がぶつかる音が運動場内に響く。

 相手の力を殺しきらずに利用して後ろに跳び、そのまま地面へと降り立つ。いい感じに距離が取れた。

 周りからおぉーっと歓声が上がっていた。

 

 「ユーリ、少しは真面目にやってやれ」


 王子に怒られた。考え事しながらだったのがバレてるみたいだ。

 片手間に剣を振るのは私としてもあまりしたくないんだけど、フレイヤ様のことが頭から離れないし体動かしながらのほうが捗るんだよなぁ。

 それにちょうどいい単純さなんだよね、相手が。

 そう思いながら私の目の前に立つ青年を見る。

 短く刈り上げた赤髪に凛々しい顔。ガタイがいい。王子が細マッチョならこの青年はただのマッチョだな。同い年にしては老けて見えるけど。


 「真面目にやってますよ」

 「真面目にやってる奴はわざわざオレの言葉に応えん」

 「殿下を無視するわけにもいきませんから」

 「オレのことはいいからちゃんとイーサンの相手をしてやれ」


 イーサンっていうのかこのオッサン。


 「……お前、対戦相手のこと知らなかっただろ」


 バレた。


 「いえ、ソンナコトナイデスヨ」

 「お前、嘘が下手くそだってわかってないだろ」


 王子にため息をつかれた。

 ふむ。仕方ない。フレイヤ様のことはひとまず脇に置いておいて、今は剣術の授業に集中しましょうかね。


 改めてグッと脚に力を込め、相手の剣に向かって下から斬り上げる。

 カキン、と甲高い音がしてイーサンさんが持っていた剣が宙を舞った。イーサンさんって言いづらいな。


 「勝負あり」


 王子が終了の掛け声を上げた。

 結構強めにいったから手が痺れているのだろう。イーサンさんが両手をわなわなさせている。


 「くそっ! こんなやつに……!」

 「諦めろ、イーサン。こいつはこう見えて剣術大会の最年少優勝者だ」

 「! 俺だって去年剣術大会で優勝しています!」

 「こいつがいなかったからだ。オレだって10歳の頃に優勝したさ」

 

 あー、アレね。1回出たらもういいかなってなってそれ以来出てないんだよね。

 そっか。この人、去年の優勝者なんだ。


 「8歳の小娘が訓練用とはいえ鉄の剣を真っ二つにしたんだ。バケモノだぞ」


 失敬な。アレくらいだったら折れるでしょ。……折れるよね?


 王子の言葉にイーサンさんが口を噤む。悔しそうに唇を噛んでいる。

 はぁっと王子が大きくため息をついた。

 

 「そんなに悔しいなら来週の運動大会で競えばいいだろう? たしか剣舞の披露があったはずだ。そこでなら仕合とは違う結果が得られるかもしれない」

 「運動大会?」

 「なんだ、ユーリ。聞いてなかったのか? 学園内で催される祭りだぞ。剣術、武術、舞踏の技術を二組に分かれて競うんだ」


 体育祭ですか?


 「剣舞は純粋な力と力のぶつかり合いではなく、いかに正確に型を魅せるかという競技だな。イーサンはその道で名の知れた剣士でもある」

 「……それ、未経験の私にとっては不利なのでは?」

 「お前なら一週間で覚えるだろ」


 聞いてくれない。

 いや、今それどころじゃないのに!!

 フレイヤ様のこととか、アメリアとフレイヤ様のこととか! 考えることいっぱいあるのに!!


 私が拒否するよりも前にイーサンさんが乗り気になってしまい、なぜか運動大会で剣舞対決をすることになってしまった。

 あ、ちなみにイーサンさんは騎士団長の息子だった。

 


 

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