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お出かけとプレゼント


 フレイヤ様とアメリア仲良し大作戦(作戦名募集中)をどうしようかとノアに相談してみた。


 「は? 馬鹿じゃないの? 私を巻き込まないでよ。まだ死にたくないわ」


 って一蹴された。なぜ。

 え、というか私は命の危険にさらされるようなことをしようとしてるの?


 ついでに先日の一件で考え事をしながらアメリアの頭を撫で続けていたみたいで気づいたらアメリアが真っ赤になってたし、フレイヤ様の天岩戸スキルが発動された。なぜ。


 

 休日の昼間。

 フレイヤ様は相変わらず天岩戸状態なので私はひとり街中をぶらついていた。

 ふたりの仲を取り持とう作戦はまぁ、そのうち考えるとして。今は天岩戸を解除するための貢物……じゃなくて、日頃の感謝を込めてプレゼントをしようと思って街に出てきた。スタンプラリーの一件で心配かけちゃったからね。そのお礼も兼ねて。

 …………フレイヤ様にいつまでもお籠もりされると私の成績がピンチだっていうのもある。座学苦手。

 ちなみにノアは変なところでスパルタなのでお願いしても断られることが多いから、フレイヤ様頼みなんだよね。

 

 王都の大通りをぷらぷらとウィンドウショッピングをしつつ目的のものを探す。

 あまり豪奢なものは好まれないし、かと言って公爵令嬢に安すぎるものを贈るわけにもいかない。そこの塩梅が難しい。

 ああでもない、こうでもないと雑貨屋さんや宝石店を冷やかしながら歩き回っていたらだんだんお腹が空いてきた。


 「……とりあえず何か食べようかな」


 お昼も近かったし屋台が左右に立ち並ぶ通りで香ばしい匂いがしていた串焼き屋さんを見つけて、思わず2本買って近くのベンチに座って食べることにした。


 「んん! やっぱりこういう屋台メシは外で食べるに限るなぁ」


 天気もいいし行楽日和だ。ご飯も食べてぽかぽかしてて眠くなっちゃうよねぇ。

 ついついベンチでうとうとしかけてたら声をかけられた。


 「ユーリさん?」

 「あ、アメリア」

 「こんにちは。どうしたんですか、こんなところで」

 「天気もいいしお腹いっぱいになったからお昼寝しようかなって思ってたところ」

 「ユーリさんはどこでもお昼寝してますね」


 くすくすと笑うアメリア。うーん、そんなにお昼寝してるかな、私。


 「アメリアはどうして?」

 「私は実家に帰る途中です。その前に買い出しをしていこうかと思って」

 「そうなんだ。あ、よかったら私も一緒に行っていいかな」

 「え、いいんですか? 何か用事があったんじゃ……」

 「うん。欲しいものがあって街歩きしてたんだけどね。なかなかいいものが見つからないから気分転換にお手伝いさせてよ」

 「えっと……じゃあお願いします」

 

 アメリアに了承を得たところで、ふたりで連れ立って大通りのを抜け一本入ったところにある市場へと向かうことになった。

 新鮮で安くて王都の住民御用達のお店が多いんだそうだ。下町という感じかな。

 周りのお店に目を向けながらアメリアとの会話を楽しむ。


 「アメリアはよく買い物に来るの?」

 「はい。私は王都出身なので。学園に入る前は家の手伝いで食料品の買い出しや料理をしてたんです」


 アメリアが台所に立って料理しているのってなんか想像しやすいな。うん、すごい似合ってそう。家庭的な女の子って感じがするんだよね。

 

 「そっか。ふふ、エプロン姿のアメリアもかわいいだろうね」

 「えっ」


 アメリアがぴたりと止まった。急に隣を歩く彼女が消えたから、私も思わず立ち止まる。

 どうしたんだろう、と顔を覗き込むと耳まで真っ赤になっていた。


 「アメリア? 大丈夫?」

 「だ、大丈夫、です」


 大丈夫じゃなさそうだけど……両手でパタパタ顔を仰いでるし、暑いのかな。

 

 「そ、それより! ユーリさんの欲しいものって何ですか?」

 「え、ああ。ちょっと贈り物をね」

 「贈り物?」

 「うん。日頃の感謝を込めて、かな? でもなかなかこれっていうのが見つからなくて」

 「……あの、よかったら私も一緒に探します。かわいい雑貨屋さん、知ってますし」

 「え、いいの? 急いでない?」


 アメリアに案内してもらえるなら願ったり叶ったりだ。そもそも私は女性好みのものがいまいちよくわからない。どうしても機能性を求めてしまって、無骨なものになっちゃうからね。


 「はい。買い出しを手伝っていただくので、そのお礼、ということで」

 「……うん、わかった。そしたらお願いしようかな」


 アメリアの買い物の前に私の買い物を済ませることにした。さすがに食料品を大量に抱えたままショッピングというわけにもいかないし、何よりアメリアが知っている店というのが市場の手前にあったからだ。

 案内されるがままに、通りを少し逸れる。

 観光客やこの辺に詳しくない人だとあまり通らなさそうな道を右に左に折れ、たどり着いたのは小さな雑貨屋さんだった。

 こじんまりとした店構えの店内にはところ狭しとアクセサリーが置かれている。

 

 「かわいいお店だね」

 「はい! 私のお気に入りなんです」


 にっこりと笑いながらアメリアは楽しそうに店内を見回している。

 私も商品を物色することにした。

 キラキラと陽の光を反射しているネックレスやピアスの他に髪留めやリボンもある。ひとつひとつ細工が凝っているし、丁寧な作りだ。同じものもないし、手作り一品物なのかな?


 装飾品コーナーを見ているときに、ふとひとつのネックレスが目に留まった。

 細いチェーンにワンポイントがあるものだ。そのワンポイントを見た瞬間、そのネックレスを気に入ってしまった。深い蒼の小さな石と、薄い金色のチェーンが相まってフレイヤ様みたいだな、と思ったのだ。

 うん、これにしよう。


 店員さんに声をかけ、商品を包んでもらっている間にちらりとアメリアのほうを見る。

 彼女は私から少し離れたところでピアスや指輪を見ていた。

 うーん、せっかくこんな素敵なお店につれてきてもらったんだし、アメリアにも何かプレゼントしたいなぁ。あ、これなんかいいんじゃないかな。


 追加でプレゼントを包んでもらい、アメリアに声をかけた。


 「おまたせ」

 「え、もう買われたんですか?」

 「うん、一目惚れしちゃった。アメリアに案内してもらえたおかげだよ。ありがとう」

 「いえ、ユーリさんに気に入っていただけたのなら嬉しいです」

 

 雑貨屋さんをあとにし、私達は改めて市場へと向かった。



 

 

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