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第十三話 会議1

作品内でなんだかんだ進まなかった対天竺司会議です。お読みいただ、楽しんで頂けたら幸いです。明日、1月9日も六時半に続きを投稿予定です。よろしくお願いいたします。

「で、どうするんだ?」


 あの事件から一週間、僕は彼女と守田さんの三人で会うことになった。

 結局、あの時の話し合いは僕と守田氏のくだらない論争で終わってしまった。そこで、改めて話し合いがしたいと予め聞いておいた連絡先にお願いすると喧嘩腰に承諾してくれた。

 集まったのは、市が管理するホールで一階はエントランス、二、三階は図書室兼自習室、その他の階は集まって打ち上げやクリスマス会などができる広い畳の部屋だ。

 因みに僕たちがいるのは一階エントランスの受付の横にある談話室でルールに従えば出入りや使用は自由だ。

 さらに、この市民会館は電波の悪いことで有名であり、勉強に集中できるとして多くの学生がやってくる。情報を遮断でき、木にもなれる絶好の秘密基地スポットだ。


「まず、彼の容姿からまとめましょう。まず、身長は179.7㎝、体重は65.3kg、この身長にしては痩せ型ですね」


 僕が読み上げた情報を元に彼女はノートを取り出し、すらすらと絵を描き始めた。彼女の絵はそれで生計を立てられるのではないかと思わせるもので、どこかで賞を取ったと聞いたこともあった。

 勉強とスポーツに全振りしてしまった僕には到底敵わなかった。成績も、これだけは彼女の足元に及びすらしなかった。


「髪はセンター分けで四角いフロント部分の黒い眼鏡、視力は0.07、かなり悪いですね」

「はい、ただ、最近はコンタクトの上に伊達眼鏡をかけているかもしれません。この間、私の勉強を見ていた時に私の手元にある教材が眼鏡を外した状態で読めていましたので、」

「おい」

「つまり、弱点にはなり得ないと、」

「おい」

「困りましたねえ、どうしましょうか守田さん」

「人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!まず説明をしろ、説明を、その情報はどこで手に入れた。」


 僕の正面に座っていた彼は身を乗り出して僕を睨みつけた。何も、犯罪を犯したわけでもないのに大袈裟だ。

 彼女の笑顔を作ると彼のこめかみがぴくりと動いた。


「話していませんでしたっけ?」

「ふざけるな。わざと話さなかったのだろう?」

「ああ、バレていましたか。では、何故話さないのか考えましたか?嫌がらせだと思いましたか?残念です。私の想いも熱意も何一つ伝わっていなかったんですね。」

「……」


 今回の非は自分にあることをわかっているのだろう。普段の僕に騙された彼が悪い。

 そもそもオオカミ少年は、少年の普段の愚行を常に疑いもしなかった他の村人の落ち度でもある。


「……私は信用ならないか?」

「えぇ、まあ、会ってたったの一週間の人間を信用しろという方が無茶ではありませんか?」

「……確かに、そうだな、あまりにも君が自然に話すものだから、すっかり忘れていた。」

「これは外用の面ですから」

「ははは、君らしい、……どうしたら、信用してもらえるだろうか?」


 空笑いをして少し俯いた守田は、意外にもショックを受けたらしい。彼の職業上そこら辺は了承済みと思っていたが、悪いことをした。

 僕はぎこちなく優しい笑顔を浮かべた。


「正直、これは時間とあなたの態度次第としか言えません。あなたを信用し、協力する方がこちらにとっても手っ取り早く助かりますが、あなたが情報漏洩をしたり、裏切らないという確信がなければ信用はできません。そうですね、できることとしたら、貴方の個人情報全てを私たちに渡していただくことくらいです。ですが、私はそのような恐怖政治的手段は使いたくありません。少なくとも警察組織については貴方の方が詳しい、敵に回すことはしたくないですね。」

「……なら、個人情報を渡そう。」

「守田さん、本気ですか!?」

「いいんですか?私は彼女のためなら何でもしますよ。危険なことくらいわかっているでしょう?」

「だからこそだ、君は彼女の言う事には従順だ。彼女がやめろと言うことはやらないし、逆に彼女が何も言わなかったらいくら危険であろうとも敵の陣地に侵入するような奴だ。そして君は君が思うより情に熱い人だ。僕が君らを裏切らない限り、君らにふりを働かない限り、君は僕の情報を利用することはしない。そうだろう。」


 驚いた。ここまで僕のことを見てくれている人が今までにいただろうか?出会い頭に彼を利用とした自分を初めて恥じた。それでも彼は利用できるし、信用できる。

 僕が虚を突かれた表情をしていると、彼は少し悲しげに苦笑した。何がそんなに悲しいのだろうか。

 僕は小さく息を吐いた。


「わかりました。貴方の情報を頂きます。名前、生年月日、住所、連絡手段の情報と、ああ、あと携帯の暗所番号も教えてください。携帯は一台だけですか?」

「ああ、それだけでいいのか?家族構成とか、人質が一番手っ取り早いと思うが」

「家族を売るとは感心しませんね。そもそも貴方、独り身でしょう?」

「指輪をつけていないだけかも知れないぞ」

「それだったら日焼けの後のような物がつきます。私たちとこんなことをしている場合でもないでしょう。それとも別居中とかですか?」

「いいや、僕には妻も子供もいないよ」


 こう言う人間は仕事に走り、家庭を顧みず、そして捨てられる。そう言うタイプだ。いくら満面の笑みを見せようと、彼女の笑顔を見抜ける僕に彼の笑顔に隠れた涙を見つけられないわけがなかった。

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