表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/166

#002 北条と言えば鎌倉幕府よね、えっ違う…?

何分初心者で不慣れな点、ご容赦願います。

天文20年(西暦1551年)春 小田原城


 私は転生者だ。

 それも業界(?)では多分レアケースに該当するであろう、パラレル戦国時代への転生である。

 なぜここがパラレルワールドと言い切れるのか。

 別に周囲の男女がアニメみたいな美男美女揃いだとか、妖怪変化がウロウロしてるとか、呪術が当たり前のように使われているとかそういう理由ではない。

 私が産まれた家――北条という家名に聞き覚えがないからだ。

 ぶっちゃけ私は別に歴女でも何でもないので、日本史知識は平成令和の義務教育レベルだと認めざるを得ない。

 しかし。

 しかしである。

 伊豆、相模、武蔵の三カ国を領有し――これでも日本トップクラスらしい、大多数の戦国武将は一国治めるのも一苦労だとか――めちゃくちゃ広いお城に住み、しかも広大な城下町を抱える北条が、義務教育で取り上げられないなんてことがあるだろうか?いやない。

 しかも――家族や家臣からそれとなく聞き出したところによれば――「豊臣秀吉」も「徳川家康」も聞いたことがないというのだ!唯一「織田」は見付かったが、「尾張国にその姓の一族あまたありて、守護斯波殿の下相争いてうんぬん」つまりよく分からなかった。

 以上のことから私が導き出した結論は――ここはパラレル戦国時代!多分、北条氏が鎌倉時代から戦国まで続いていたら、とかいうイフ設定もの!


 勝った。


 今度こそ勝ち組人生間違いなし。


 前世はそりゃあきつかった。思い出すのも嫌なので簡潔にまとめると、実の両親に虐待まがいの暮らしを強いられて、我慢して我慢してやっと家を出たと思ったら病気で散々苦しんだ挙句死亡。いい思い出なんてない。

 死に際に枕元に立った“自称”神様にダメもとでお願いしたら――希望通り、お金持ちの家に転生させてくれた訳だ、性別もそのままで。

 現代日本に比べれば娯楽が少ないとか、食事が味気ないとか、照明が薄暗いとか、男女平等もへったくれもないとか文句を言い出したらキリがない。

 しかし私は今や北条の娘。むやみにお家の方針に逆らったり、政治や軍事に口出ししたりしなければ、この安心安全な生活が保証されるのだ。

 あとは父上、つまり現当主の氏康(うじやす)――時代劇と違って本名を軽々しく口にしてはいけないらしい――に全力で媚を売り、北条と同格の大大名に嫁がせてもらうだけ。

 見てなさい、前世のクソオヤジにクソババア、あんたたちの何千倍も幸せになってみせるんだから!




「ちちうえ、ちちうえは初代執権殿から数えて、何代目に当たるのでございますか?」

 演技半分、不可抗力半分の舌足らずで尋ねたのは、久しぶりに父上が私達――私や母上、兄上達と一緒に夕食をとりに来た時のことだった。

 私が産まれたのは天文15年――西暦何年か分からないのがたまにもどかしい――よってまだ私は5歳だ。もっとも、この時代は誕生日が余り重視されていないし、産まれた瞬間に1歳、年が明けるごとに年を取ったことになるので、数えで6歳とカウントされているが。12月生まれの損してる感半端ないなこのシステム。

とにかく大人のように流暢に話すのは、不可能だし不自然だ。

 この喋り方は武器にもなる。無邪気さを演出して大人の保護欲を呼び起こし、さり気なく褒めることで歓心を買うのだ。今回は父上が北条一族の何代目に当たるのかを聞き出して今が時代のどの辺りなのかを探るとともに、父上の回答に「戦に強く、民を慈しまれる父上の子に産まれて、結は幸せものにございます」と言えば好感度急上昇は確実――


「はぁ?何言ってんだおめぇ。」


 ぎろり。鋭い眼差しとドスの効いた声が私を捉えた。


 やらかした?

 いやいやいや意味が分からない。というかにらまないで欲しい。父上は体格はいいし、着物の着こなしもパリッとしているのだが、いかんせん色黒、立派なあごひげ、額のでっかい刀傷と乱暴な口調のせいで正直暴力団の組長とか海賊船の船長とか言われた方がしっくりくる。私が産まれた年にあった合戦で最前線で戦っていた時に付いた傷だと母上に聞いたけど、大将って本陣でどっしり構えてるもんじゃないの?どんだけ戦好きなのよ?

 ――って今はそんなこと考えてる場合じゃなくて!


「父上、お許しあれ。結は先代様のご深謀を存じておらぬゆえ。」


 両手に持っていたお椀と箸を置きながら助け舟を出してくれたのは向かいに座っていた9歳上の兄、西堂丸だった。ちなみに私には彼を含め兄が4人、腹違いの弟が1人いる。夜も元気ですってか、やかましいわ。


「…そうかい、結には話したことがなかったかい。」


 兄上の言葉に父上は視線を切り、食事を再開した。

 こ、怖かった…目を逸らしたら斬られるかと思った…。後で兄上にお礼を言っておかないと。


「込み入った話だ、そのうちゆっくり教えてやらぁ。日が暮れる前にさっさと食っちまえ。」


 表面上取り繕いながら、私も食事を再開する。照明に使う油がもったいないとかで、夕日に照らされながら夕食をとるのが我が家の習慣だ。大大名なんだからケチケチしなきゃいいのに。


「一言で言やぁ、うちのご先祖様は鎌倉の執権殿とは縁もゆかりもねぇってこった。」


 ほおばった玄米ご飯を吹き出さなかった私を誰か褒めて欲しい。


順次修正して参ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 結姫、実在の人物なんでしょうか? 流行のAIで検索したところ、自信満々の答えが返って来たんですが・・・・ Q:日本の戦国大名、後北条氏第3代目当主の北条氏康(1515~1571)の長…
[一言] 北条は北条でも後北条だよねー パラレルでもなんでもないよ ブギャー こう煽ればいいですかね ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ