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シンデレラは落とせない  作者: 流風
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7.女の戦い

 


 ジョシュアがパーティ会場へと姿を表すと、参加していた少女達が一斉に近寄ってきました。

 普通、王族に声をかけられるまでは待機しなくてはならない。また、挨拶に訪れるなら順番を守らなくてはならない。


 貴族なら当然のマナーだが、平民の少女達にはそのような知識はありません。また、そんな少女達を見て焦った男爵家の少女達も、平民の少女達を罵りながらもジョシュアへと迫ってきます。


 慌てたのは護衛の騎士達。必死に少女達を止めようとしましたが、目の前にジョシュア王子という餌を見せられた乙女の暴走はそう簡単には止まりません。


「おい!止まれ!落ち着け!」


「邪魔よ!どいて!ジョシュア殿下、お誕生日おめでとうございますぅ」


「ジョシュア殿下!ジョシュア殿下!私、カーミラって言いますぅ。あっちで二人っきりでお話ししませんかぁ?」


「臭い!!あなた、粗相してるわよ!早く殿下の前から消えなさいよ!殿下、こんな汚物は置いといて、私と一緒に……」


「誰が汚物よ!」


「あなたの事よ!臭いのよ!」


 まさかの王族を前にしての罵り合い。そして、確かに悪臭が漂っています。

 少女の群れと、それを制する護衛騎士の群れ。必死に前方を確認するジョシュアの目には、その隙間から一瞬見えたシンデレラが遠く離れた場所で皿を手に嬉しそうにしている姿が見えました。


「ちょっとあなた!殿下からいいかげん離れなさいよ!」


 カーミラのドレスに他の令嬢のドレスの飾りが引っかかります。すると、ビリッと破けます。


「ギャァッ!!」


「ちょっとあなた!なんなのよ!そのドレス!平民の服にしても生地がボロすぎるしダサすぎでしょ!」


「ボロいんじゃないわ!この繊細な生地が今の流行りよ!」


「流行ってないわよ!」


 デブラとカーミラが着ているドレスは、シンデレラの父の店から強引に奪ってきた物です。

 店員達は誕生日パーティの情報を仕入れた時に、イライザ達が確実に来ると判断し、脆い生地のセンスのカケラもないドレスを作り、イライザ達が来た時に「これが流行りです」と嘘をついて渡しました。


「それに、その白粉、肌の色に全然合ってないわね。これだから田舎者は……」


「誰が田舎者よ!」


 化粧品を購入しに行った店舗でも、「色白の皆様にはこのくらいの色の白粉が……」と、まったく合っていない白粉を渡されました。さながらバカ殿です。


 本屋では、一昔前の雑誌を渡され、謎の巻き髪にしてしまっています。


 デブラとカーミラは、悪い意味でパーティ会場で目立つ存在となっていました。

 そんな目立つ二人が王子殿下にまとわりつき、しかも周りへは傲慢な態度。周囲をイラつかせ、令嬢達とのバトルがどんどん白熱していきます。


「殿下!危険ですのでこちらに避難を!」


「でも……」


「早くこちらへ」


(やっと見つけたのに……)


 目の前のケバケバしい化粧の令嬢達との間に護衛騎士達が割り込み、ジョシュアと令嬢達との距離ができていきます。隙間から微かに見えていた意中の女性との距離もどんどんできてしまいます。

 護衛騎士に半ば引きずられるように、日中の平民・男爵家令嬢達が招待されたパーティは、早々に主役が退場するという事態に陥ったのでした。


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