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その1

「逆に俺の恋人になって下さい!」


これはもう迷う必要は無いだろう。美人で性格も良いとか俺には勿体無いくらいだし。

しかも女性からの告白。断る材料が一切無い、逆に恐れ多い! だが、しかし・・・


「・・・」


何故か彼女は無言だ・・・

あれ?これは・・・やっちゃた系?今の男って、男からは告白しないとか?

分からん・・・やはりここは確認しておくべきだろう。


「えーっと・・・俺と恋人になってくれるのかな?」


「・・・」


やはり無言だ・・・

気になって彼女の顔を見てみたら青ざめていた。

なるほど。概ね理解した。たぶん彼女はめっちゃ緊張している。

今日も最初の方はずっと緊張してたって言ってたし。

彼女にとって先ほどの告白は一世一代のアレだったのだろう。

ならば今の俺に出来る事は・・・取り合えず、延長するってマスターに連絡しておこう。

そして、緊張を和らげるため深呼吸をするように彼女に言った。

暫くすると少し落ち着いたのか、やっと彼女が口を開いた。


「ほ、本当に私とご交際して頂けるのでしょうか・・・」


彼女は真剣だ。それは先程からの彼女の表情や態度から激しく伝わってくる。

俺はそんな彼女を安心させるよう真面目に答えねばと思った。


「勿論です!俺で良ければ是非、恋人になって下さい!」


「ほ、本当に私で良いのでしょうか・・・」


ループかっ!

まあ、好きな人と本当に恋人になれるって言う現実が信じられなくて何度も確認してしまうアレなのだろう。

分かるっ! それはもの凄く分かるのだが・・・さっきから全く話が進まない・・・

美人なのに、どんだけ自分に自信が無いんだよって思ってしまう。

今の女子全般がこうなのか、それとも彼女が特別なのかは分からんが・・・

いや、たぶん女子全般がこんなアレなんだろう、なんせ男子全般がダメダメなアレだし。

どうしたら、このループから脱出できるのだろうか・・・

仕方ない、ここはショック療法的に一か八かの賭けになるが禁断の秘儀を使うか・・・言ってみたいセリフもあるし。

彼女の肩を抱く、と言う禁断の秘儀、エンブレイスショルダーをついに使う時が来たか・・・彼女になるんだから問題無いよな。

流石に緊張するな・・・よしっ! ここだ! 秘儀エンブレイスショルダーっ!

なっ、なにいいいいいいいっ!!

妨害されなかった・・・だと・・・馬鹿な・・・いつもはここで必ずと言って良いほど阻止されていたのに・・・

いや、よくよく考えたらそれで良いではないか・・・いつも良いタイミングで阻止されてたから麻痺したか・・・

すんなり彼女の肩を抱きちょっとこちらに引き寄せて、念願のセリフを言う。


「エリカ、黙って俺の女になれ」


イケメンにだけ許される上から言うセリフ・・・

以前の俺なら言う資格が無かったが、今ならば、男がアレな状態の今ならば・・・俺が言っても大丈夫だよね?

って・・・本当に黙ってしまったかこれは・・・しゃべるなって意味じゃなかったんだけど・・・


「はい・・・」


彼女は小さな声で返事をした。

返事が貰えて良かった・・・このまま無言か、無限ループ状態に突入するかとヒヤヒヤしたぜ。

さて、無事恋人になる事が出来たのは良いが・・・流石にこの仕事を続けるのは彼女的には嫌・・・だろうな。

その辺をハッキリさせる為、彼女に確認してみた。

するとやはり今の仕事は辞めて欲しいと、申し訳なさそうな感じで言われたが、一緒に暮らすので生活面の心配は問題無いと、ぶっ飛んだ事も言われた。

会ったばかりの相手といきなり同棲とか、今の男女のアレってそう言うものなのだろうか・・・それとも彼女が特別とか・・・

まあしかし俺的に同棲は全く問題無いし、その間に仕事を探せるので、ひょっとしたら一番良いアレになったのではないだろうか?


彼女も大分落ち着いてきたみたいだし、そろそろ戻るとしますか。

彼女と連絡先の交換を行い戻ろうとした時に、ふとマスターの事を思い出した。

マスターに仕事を辞める事を言わなければならない・・・

短い間ではあったが今までお世話になったマスターに何て切り出せばいいか・・・それを考えると熱いものが込み上げてくる。

彼女と相談し、仕事を辞める事は数日後に言う事にした。



そして数日後。



今日の仕事終わりにマスターに仕事を辞める事を言うとエリカに言ったらエリカも来ると言った。

そして、仕事が終わりエリカと合流しマスターの所に行った。


「マスター、お疲れ様です」


「カズヤちゃん、お疲れさ・・・ク、クイーン!」


「変な風に呼ばないで下さい」


何かこのやり取りは以前もあったような気がする・・・

数日前の事なのに、ここを辞める事を考えると何か懐かしさを感じる。


「か、カズヤちゃん、これは一体・・・」


「マスター・・・今までお世話になりました・・・」


「なっ! ど、どうしてなの! 何があったのっ!」


マスターが結構動揺している。

まあ急にそんな事を言うと動揺もするか・・・


「えっと、それは・・・」


俺が何て言おうか迷っていたら、エリカ一歩前に出た。


「それは、私と交際をする事になりましたので、このお仕事は辞めて頂く事になりました」


エリカはハッキリと言った。初めて会った時の様に凛とした感じだ。

こう言う所にも魅力を感じる。


「こ、このメス豚がーっ!」


マスターが突然切れて、エリカに近寄ってきた。

マスター容赦ないなっ!


「気持ち悪いので近寄らないで下さい」


エリカも容赦ないなっ!

まあ、こう言う所にも惹かれるんだが・・・

いや、そんな事を言ってる場合では無い。軽く修羅場ってるこの状況を何とかせねば・・・

エリカはたぶん冷静だ、たぶん・・・緊張はしてるかもしれないが。

マスターはどう考えても冷静じゃ無いのでマスターを止める事にした。


「ま、マスター、落ち着いて下さい」


「カズヤちゃんごめんなさいね・・・このメス豚に無理矢理交際するように迫られて仕方なく・・・」


さっきから人の彼女をメス豚メス豚と・・・


「いや、彼女はマスターが思っているような感じの女性では無いですから大丈夫です」


「はっ! カズヤちゃん、そこまで皆の事を思って・・・」


マスター、何か変な妄想モードにでも突入したかこれ。

むしろ自分の事しか考えてなくて御免なさいね・・・


「カズヤちゃん、自分を犠牲にして・・・この街を守ってくれたのね・・・」


いや、意味が分からん。街とか言ってるし。

マスターは何か訳の分からない事を言い出した。


「全く意味が分からないんですけど・・・」


「クイーンと付き合う事によって店に来ないようにしてくれたって事は分かってるのよっ!」


なるほど、全く分かって無いって事は分かった。

しかしエリカへの誤解は解きたいが今は何を言っても信じてはくれないだろう。

良い感じに仕事を辞める理由も思いつかなかったし・・・

ならばここは乗るしかあるまい。このビッグウェーブに!

エリカには後でちゃんとフォローをしておこう。


「マスターには何もかも、お見通しのようですね。そんな訳で僕は今日限りで仕事を辞めて彼女と幸せに過ごします。短い間でしたが今まで有り難う御座いました」


マスターは泣きながら沢山話しかけてくる。そんなマスターを見ていると自分も目頭が熱くなってきた。

そして最後にマスターに今までのお礼を言い店を後にした。


その後、この街で二人の姿を見かける事は無くなった。

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[一言] アフターがはじまってた! またお付き合いさせてもらいます
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