I - iv:かべ②
レイフェル side
レイフェルはアメリアが出ていった扉をじっと見つめていた。
「・・・・何だったんだ。」
そう呟く。
アメリアはレイフェルがまったく相手にしていないにも関わらず、ギルバートが呼びにくるまでレイフェルに話しかけ続けた。何度も何度も。
レイフェルは理解できなかった。
彼女に初めて会ってからずっと自分の考えは言ってきた。もともと人と関わることは苦手で必要最低限しかしてこなかった。
それはこれからも変わらない。
逆にここまでレイフェルと関わろうとしたのはアメリアがはじめてだ。
だからこそ理解できない。
「殿下。アメリア様とはどうでしたか?」
「別に何もない。意味がわからん。」
何かを期待するような瞳でギルバートは聞いてくるが、レイフェルはにらみながら不機嫌そうに言った。
「だいたい、なぜ彼女がこんなところに来る?」
「それはもちろん殿下と一緒に過ごしたいとおっしゃられたからです。」
「それで。」
「いや、二人きりのほうがよいかと思いまして。」
ギルバートが答えるにつれて、どんどんレイフェルの声は低くなる。
「・・・・ギルバート。」
「はい。何でしょう?」
「夕食後に、鍛練所に来い。命令だ。」
「えっ?!ちょっー」
そう言って、ギルバートの返事も聞かずレイフェルは部屋を出ていった。
「レ、レイフェルさま?!」
残されたギルバートは顔を青くさせながら、ガックリと膝をついた。
レイフェルside終わり
自室に戻ったアメリアはお風呂に入り、身だしなみを整え、寝る準備をしていた。
そしてベッドに腰掛け、今日1日を振り返ってみる。
2人の先生に会い、城内を巡り、レイフェルと初めて二人きりで過ごした。
まだまだレイフェルとの関係は道のりが険しい。
レイフェルと目が合うことも、レイフェルが話すこともなかった。
本当にただ、同じ空間に二人でいるだけだった。
それでは意味がない。
――明日からはもっと頑張らないと。
アメリアはベッドの中の布団に入り、明日はレイフェルに何を話そうかと考えながら、眠りについた。