I - i:到着
あなたに最初会ったとき、
あなたは感情のない冷たい瞳でわたしをみていた。
「この扉の向こうに陛下がいらっしゃいます。お入りください。」
綺麗に装飾された扉の前。
わたしは今から、ミラウディア国王に謁見する。
あの森を抜けてしばらくして、わたしたちはミラウディア国に到着した。
遠目からでも城の大きさ、美しさがわかる。
「美しい城ね。本当に綺麗だわ。」
残念ながら、今回は城の正門には行けない。
安全面を考慮し、王都に繋がる正門ではなく城の者が出入りする3つの門の中の1つから入城する予定だったためその門に向かった。
正門のように大きく立派な門ではなかったが、ミラウディア城の人々が出迎えてくれた。
料理人や、侍女、そして騎士団など城に仕えているだろう人々がわたしを歓迎しているかのように感じて少しほっとする。
安全面というのは名目だけでわたしは歓迎されていないのかと思っていた。
正門からの入城ではないからひっそりとした到着だと。
城に入って一人の男性に連れてこられたのはわたしにはもったいないくらいに綺麗で大きな部屋だった。
思わず侍女のリーナと顔を見合わせたくらいに。
「本日からここでお過ごしください。今から国王陛下に謁見していただきます。
準備が整いましたらお声かけください。部屋の外でお待ちしています。」
「今日からここがアメリア様のお部屋ですね。」
「そうね。とても綺麗な部屋だわ。わたしにはもったいないわ。今日からここで過ごすのね。」
ここで第1王子妃として半年勉強してこの環境に慣れて、そして結婚するんだ。
本当にわたしはレイフェル王子と・・・・
「さぁ、アメリア様。謁見の準備をいたしましょう。」
「ええ。」
国王陛下との謁見か・・
失礼がないようにしないと。
レイフェル王子に会えるかな。
「よし。準備ができました。いってらっしゃいませアメリア様。」
満足そうにリーナはわたしを見ている。
リーナは数少ないわたしが信頼できる人の一人だ。
だから、こんな遠い国までわたしについてきてくれてうれしかった。
とても心強い。時に頑固な所もあるけど。
いつもより気合いが入ってるなと思っていたけど、自分の様子を鏡で見てみると。
普段はあまりしない化粧が今は少ししてある。
ドレスも華やかなものを着せられそうになったが、何とか説得して落ち着いた色にしてもらった。
華やかできらびやかなドレスはきっとわたしには似合わない。自分でもわかっているもの。
「それじゃあ、行ってくるわね。」
そう言ってわたしは部屋の扉を開け、待たせてしまっているあの男性のもとに行った。
そしてわたしは謁見の間の扉の前に案内された。
「こちらに国王陛下がお待ちです。」
そう言って彼は返事をする前に扉を開けた。
扉の中に一歩足を踏み入れた。
このときのわたしは予想もしていなかった。そして強い覚悟もなかった。
城の人々に歓迎されて浮かれていた。
今思えばよくわかっていなかったのだ。
レイフェル王子が“冷厳の王子”と噂されていること。
そして、その本当の意味を。